この魔術師に祝福を!   作:妖精絶対許さんマン

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この魔術師に異世界転移を!

――――――何だこれ?

 

目の前に広がる光景は現代日本のビル街や住宅密集地では無く、ヨーロッパの石造りの街道と辺りには草原が広がっている。

 

「・・・・・・異世界だ。・・・・・・おいおい、本気で異世界だ。え、本当に?本当に、俺ってこれからこの世界で魔法とか使ってみたり、冒険とかしちゃったりすんの?」

 

年齢は十代半ば程のジャージを着た青年はぶつぶつと何か言っている。

 

「あ・・・・・・ああ・・・・・・ああああ・・・・・・」

 

青年の隣で頭を抱え込んでいる女性が呻き声をあげている。

 

「はぁ・・・・・・」

 

僕――――――蒼崎秋は嘆息してとりあえずここに至るまでの経緯を思い出す。

 

 

―――――――――――――――――――――――――

 

 

「先生も買い物ぐらい自分で行ったら良いのに」

 

僕の義母兼師の蒼崎橙子のお願いという名の命令で近所のコンビニまで日用品の買い出しをして、今は帰路についているところだ。

 

「それにしても、先生もこんな雑誌読んだりするんだ」

 

買い物の一つにファッション雑誌もあった。先生はてっきり服とかには興味がないと思っていたが、ちょっと意外だったりする。

 

「あんまり帰るのが遅くなると先生が怒るね」

 

足を一歩前に踏み出すと――――――落下した。

 

「はっ・・・・・・はあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!?」

 

柄にもなくすっとんきょうな叫び声を出してしまったが、僕は悪くない。抵抗することも出来ず、僕は穴に落下していった。

 

 

―――――――――――――――――――――――――

 

 

(完全に被害者だ、僕)

 

どうやら僕は目の前で喧嘩している二人に巻き込まれて、こんな中世ヨーロッパみたいな場所に落とされたと考えていいだろう。

 

「ねえ、君たち。少し僕の話を聞いてもらってもいいかな?」

 

とりあえず――――――目の前の二人に事情を問い質すとしよう。

 

 

―――――――――――――――――――――――――

 

 

 

「なるほどねぇ・・・・・・君は大型トラックに轢かれたと思ってショック死したと」

 

「あっ、しかもその時に失禁してたのよ?なっさけないわよねー。ぷーくすくす!」

 

「うっせえ!人の死因を笑うんじゃねえよ !」

 

手早く自己紹介をした僕は、話を聞いて頭の中で話の整理をする。青年の方が名前は佐藤和真。トラクターを大型トラックと勘違いして、尚且つトラックに轢かれたと勘違いしてショック死して、自称女神のアクアと一緒に転生したって訳か。

 

「ねえ、アクア。元の世界に戻るには『魔王』とやらを倒さないと僕は帰れないわけ?」

 

「その通りよ」

 

・・・・・・時間はかかるけど二人と一緒に行動した方が確実か。まあ、最悪僕一人で魔王の居場所を探しだして魔王を倒せば良いか。

 

「佐藤君。これから君はどうするんだい?」

 

「こういう時の定番は酒場って相場が決まってるんだ。酒場に行って情報収集から始めるんだ。それがロールプレイでの定番だ」

 

ロールプレイって・・・・・・まあ、見た感じそんな感じだけどさ。そこまで上手く物事が進むか?

 

「アクア、とりあえず冒険者ギルドの場所だ。どこに行けばいいんだ?」

 

「・・・・・・?私にそんな事聞かれても知らないわよ。私はこの世界の一般常識は知っていても、街の事なんかは分からないし。というか、ここは大量にある異世界の中の一つの星、更にその中の街の一つよ。そんなのいちいち知る訳ないでしょ?」

 

あっ、佐藤君の顔が「こいつ使えねえ」って顔になってる。佐藤君は通りすがりのおばあさんを見つけると、おばあさんに冒険者ギルドの場所を聞きに行く。そうなると必然的に僕とアクアの二人きりになるわけだ。

 

「その・・・・・・ごめんなさいね?あなた、私とあのヒキニートがこの世界に来るときに巻き込まれたのよね?」

 

驚いた。女神なんて言うぐらいだから人間を見下してるろくでなしの自然現象だと思っていたけど、素直に謝れるんだ。

 

「まあね。予想としては君たち二人がこの世界に来た時に僕がいた世界に一瞬だけ孔が空いたんだろうね。その結果、僕はこの世界に落とされた訳だ」

 

まさか生きている内に『第二魔法』擬きを経験するとは思わなかった。帰ったら先生に自慢できる話ができた。

 

「あっ、佐藤君が戻ってくる。この話はおしまい。これから行動を一緒にするんだし、あんまりそんなことは気にしなくていいよ」

 

「・・・・・・ありがとう。そんな優しいあなたには水の女神たる私の加護をあげちゃうわ!」

 

「あっ、そういうのは結構なんで」

 

「なんでよ―!?ただで私の加護が貰えるのよ!?お得よ!ものすごいお得なんだから!」

 

「神様の加護なんてろくでもないだろ?下手したら加護って名前の呪いだし」

 

うん、ただの呪いだ。貰っても災いしか招かないからね。

 

「ふーんだ!気が変わって『美人で素敵なアクア様!どうか私にあなたの加護をください!!』って言ってもあげないんだから!」

 

「ないない。そんなことは絶対に無い」

 

天地がひっくり返ってもない・・・・・・世界移動はしたけど。

 

「ギルドの場所聞いてきたから行こうぜ」

 

佐藤君を先頭に僕たちはギルドに向かう。・・・・・・時代的にはやっぱり中世のヨーロッパっぽいね。建物のレンガ造りが多いし。出店も果物や揚げ物も売っている。街並みを観察しながら歩いていると、目的地のギルドにたどり着いた。佐藤君は扉の前で立ち止まると生唾を飲んだ。

 

「よ、よし・・・・・・行くぞ」

 

佐藤君は覚悟を決めたのかギルドの扉を開けた。

 

「あ、いらっしゃいませー。お仕事案内なら奥のカウンターへ、お食事なら空いてるお席へどうぞ!」

 

ウェイトレスの女性が笑顔で出迎えてくれた。薄暗い店内には酒場が併設されていて、鎧やローブを来た人が飲み食いしている。ただ、やたらと視線が集まっている・・・・・・アクアに。

 

「ねえねえ、いやに見られてるんですけど?これってアレよ、きっと私から滲み出る神オーラで、女神だってバレてるんじゃないかしら?」

 

この子、黙ってたら美人だけど口を開いたら残念さが露呈するタイプだ。

 

「・・・・・・いいかアクア、秋、登録すれば駆け出し冒険者が生活できる様に色々なチュートリアルしてくれるのが冒険者ギルドだ。冒険支度金を貸してくれたり、駆け出しでも食っていける簡単なお仕事を紹介してくれ、オススメの宿も教えてくれるはず。ゲーム開始時は大概そんなもんだ。本来なら、この世界で最低限生活できる物を用意してくれるってアクアの仕事だと思うんだけど・・・・・・。まあいい。今日は、ギルドへの登録と装備を揃えるための軍資金入手、そして泊まる所の確保まで進める」

 

・・・・・・あくまでゲームの話だからその理論を現実に当て嵌めるのは間違いだと思うんだけど?とりあえず佐藤君はゲームに詳しいみたいだし、ここは任せよう。僕ら三人は登録するために受付に並ぶ。

 

「・・・・・・ねえ、他の三つの受付が空いてるのに、何でわざわざここに来たの?他なら待たなくてもいいのに。・・・・・・あ、受付が一番美人だからね?全く、ちょっと頼りがいがあると感心したら矢先にこれですか?」

 

アクアが呆れたように言う。

 

「アクア。佐藤君にも何か考えがあるんだよ。ここは佐藤君に任せよう」

 

「秋の言うとおりだ。いいかアクア?ギルドの受付の人と仲良くなっておくのは基本だ。そして、美人な受付のお姉さんとは色々なフラグが立つ。今後、あっと驚く隠し展開とかが待ってるわけだ。お姉さんが、元は凄腕冒険者だった、とかな」

 

・・・・・・なるほど。そういう考え方も出来るね。元冒険者なら冒険者として重要なことも教えてくれる筈だ。列に並ぶこと数分、僕ら三人の番が回ってきた。

 

「はい、今日はどうされましたか?」

 

「えっと、冒険者になりたいんですが、田舎から来たばかりで何も分からなくて・・・・・・」

 

「そうですか。えっと、では登録手数料が掛かりますが大丈夫ですか?」

 

・・・・・・どうやら、僕らの冒険はスタート地点からつまずいたようだ。

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