この魔術師に祝福を!   作:妖精絶対許さんマン

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この魔術師にデュラハンを!

「な、何でよおおおおおおっ!」

 

ギルド中にアクアの悲鳴が響き渡る。アクアは涙目になりながらギルドの職員に掴みかかっている。

 

「だから、借りたオリは私が壊したんじゃないって言ってるでしょ!?ミツルギって人がオリを捻じ曲げたんだってば!それを、何で私が弁償しなきゃいけないのよ!」

 

どうやら御剣が捻じ曲げたオリの修理費がアクアに請求されているらしい。

 

「・・・・・・今回の報酬、壊したオリのお金を引いて十万エリスだって・・・・・・。あのオリ、特別な金属と製法で作られてるから、二十万もするんだってさ・・・・・・」

 

報酬を手に戻って来たアクアは鼻を啜りながら戻って来た。なんというか・・・・・・ちょっと不憫だ。

 

「あの男、今度会ったら絶対ゴッドブローを食らわせてやるわっ!そしてオリの弁償代払わせてやるから!!」

 

アクアは歯軋りしながら席についてメニューを握りしめる。

 

「すいません、シュワシュワ一つください」

 

店員にシュワシュワを注文して、届いたシュワシュワをアクアに渡す。

 

「・・・・・・なにこれ?」

 

「約束のシュワシュワ。オリから出たら奢ってあげるって約束しただろ?」

 

アクアはシュワシュワが並々と注がれているグラスを不思議そうに見ながら、聞いてきた。

 

「えっ・・・・・・あれって私をオリから出すための嘘じゃないの?」

 

「嘘じゃないよ。僕は約束とか契約とかは守る主義なんだ。今回もその約束を守っただけだよ」

 

魔術師は契約を遵守する生き物だ。今回も口約束とは言っても守る。

 

「・・・・・・ありがと」

 

アクアが珍しくシュワシュワをちびちびと飲んでいく。普段ならイッキ飲みなのに、珍しいこともあるものだ。

 

「ここにいたのかっ!探したぞ、蒼崎秋!」

 

ギルドの扉が勢いよく開き、御剣が肩で息をしながら入ってきた。御剣は僕らが座っているテーブルに近づいてくると、バンッ!とテーブルを両手で叩いた。御剣の後ろには泥まみれの仲間二人が睨んできている。

 

「蒼崎秋!君と佐藤和真の事は、ある盗賊の女の子に聞いたら居場所をすぐに教えてくれたよ。佐藤和真はパンツ脱がせ魔だってね。他にも、女の子を粘液まみれにするのが趣味だとか、色々な人の噂になっていたよ。鬼畜のカズマだってね。そして、その鬼畜のカズマのストッパーの蒼崎秋だとね」

 

「おい待て、誰がそれ広めてたのか詳しく」

 

佐藤君の悪評が思った以上に広まっているね。まあ、パンツ脱がせ魔は自業自得なんだけど。それにしても、盗賊の女の子・・・・・・クリスの事かな?彼女とはそこまで接点はない筈なんだけどね。隣に座っていたアクアがゆらりと立ち上がった。

 

「・・・・・・アクア様。僕はこの男から魔剣を取り返し、必ず魔王を倒すと誓います。ですから・・・・・・・。ですからこの僕と、同じパーティーぐぶえっ!?」

 

「「ああっ!?キョウヤ!」

 

アクアの無言の左ストレートが御剣の顔面にクリーンヒットした。殴られた勢いで床に転がる御剣に仲間二人が駆け寄る。

 

「ちょっとあんたオリ壊したらお金払いなさいよ!おかげで私が弁償する事になったんだからね!三十万よ三十万、あのオリ特別な金属と魔法で出来てるから高いんだってさ!ほら、とっとと払いなさいよっ!」

 

御剣に馬乗りになったアクアは胸ぐらを掴み上げて体を揺さぶる。御剣はアクアに気圧されながら素直にサイフから金を出した。それにしても、三十万ってかなり吹っ掛けたね。

 

「三十万取られた君に残念なお知らせだ。君の魔剣は僕から佐藤君の手に渡ったんだ。返してほしいなら佐藤君に交渉しなよ」

 

「な、なんだって!?」

 

三十万の追い討ちに魔剣を佐藤君に渡した事を告げる。御剣は急いで佐藤君の元に向かう。

 

「佐藤和真!何でも言う事を聞くと言った手前、こんな事を頼むのは虫がいいのも理解している。・・・・・・だが、頼む!魔剣を返してくれないか?あれは君が持っていても役には立たない物だ。君が使っても、そこらの剣より斬れる、その程度の威力しか出ない。・・・・・・どうだろう?剣が欲しいのなら、店で一番良い剣を買ってあげてもいい。・・・・・・返してくれないか?」

 

御剣は佐藤君に頭を下げた。随分と虫の良い話だ。自分から喧嘩を売ってきて、負けて魔剣を取られたら代わりの剣を買うから返して欲しい。それは反則だ。

 

「私を勝手に景品にしておいて、負けたら良い剣を買ってあげるから魔剣返してって、虫が良いとは思わないの?それとも、私の価値はお店で一番高い剣と同等って言いたいの?無礼者、無礼者!仮にも神様を賭けの対象にするって何考えてるんですか?顔も見たくないのであっちへ行って。あっちへ行って!」

 

まるで喧嘩した子供みたいな言い方で御剣を追い払おうとする。

 

「ままま、待ってくださいアクア様!別にあなたを安く見ていた訳では・・・・・・っ!」

 

「いや、安く見てたでしょ」

 

思わずツッコミを入れてしまった。アクアと魔剣を賭けの対象にしてる時点で安く見てる気がする。アクアに必死の弁解をしている御剣の袖をめぐみんが引っ張る。

 

「・・・・・・?なにかな、お嬢ちゃん・・・・・・、ん?」

 

めぐみんは袖を引っ張っていた指で佐藤君の腰を指さす。

 

「・・・・・・まず、この男が既に魔剣を持っていない件について」

 

「!?」

 

御剣は上から下へと佐藤君を見つめ、脂汗を流している。

 

「さ、佐藤和真!魔剣は!?ぼぼぼ、僕の魔剣はどこへやった!?」

 

御剣は佐藤君に縋りついた。そんな佐藤君を御剣を見下ろしながら一言。

 

「売った」

 

佐藤君は腰から吊り下げていた革袋を見せた。

 

「ちっくしょおおおおおおお!」

 

御剣は泣きながらギルドから走り去った。

 

「・・・・・・まあ、自業自得なのかな?」

 

「か、かもしれないな・・・・・・?」

 

ダクネスが苦笑いしながら、そう言った。

 

 

―――――――――――――――――――――

 

 

「・・・・・・ところで。先ほどから、アクアが女神だとか呼ばれていたが、一体何の話だ?」

 

あー、そう言えばそんなことを御剣が口走ってたね。普段のアクアの姿を見てたら女神って事をたまに忘れそうになる。酒場で他の冒険者に酒をたかり、帰りは路地裏で吐き、カエルに食べられて泣いてたら女神だなんて誰も思わないよね。

 

「今まで黙っていたけれど、あなた達には言っておくわ。・・・・・・私はアクア。アクシズ教団が崇拝する、水を司る女神。・・・・・・そう、私こそがあの、女神アクアなのよ・・・・・・!」

 

「「っていう、夢を見たのか」」

 

「違うわよ!何で二人ともハモってんのよ!」

 

二人ともまったく信じなかった。

 

『緊急!緊急!全冒険者の皆さんは、直ちに武装し、戦闘態勢で街の正門に集まってくださいっっ!』

 

「またかよ・・・・・・?最近多いな、緊急の呼び出し」

 

「そうだね。もしかして、今回の緊急召集も魔王軍の幹部がまた来てたりして」

 

「やめろよな、そんな不吉なこと言うの」

 

冗談を口にしながら、椅子から立ち上がる。

 

『緊急!緊急!全冒険者の皆さんは、直ちに武装し、戦闘態勢で街の正門に集まってください!・・・・・・特に、冒険者サトウカズマさんとその一行は、大至急でお願いします!』

 

「「・・・・・・・・・・えっ」」

 

佐藤君とハモってしまった。

 

 

―――――――――――――――――――――

 

 

正門前に駆けつけると、いつぶりかの魔王軍幹部のデュラハンが首の無い馬に騎乗している。デュラハンの後ろにはボロボロの鎧を纏い、腐敗した体が見え隠れしているアンデットナイトが整列している。佐藤君達三人は最前列に、僕は中列にいる。ダクネスは重武装で遅いから後から追いかけてきている。

 

「なぜ城に来ないのだ、この人でなしどもがあああああっ!!」

 

デュラハンの怒りの叫びが轟く。佐藤君はめぐみんを庇うように前に出た。

 

「ええっと・・・・・・。なぜ城に来ないって、何で行かなきゃいけないんだよ?後、人でなしって何だ。もう爆裂魔法を撃ち込んでもいないのに、なにをそんなに怒ってるんだよ」

 

前回のデュラハン襲来から佐藤君とめぐみんは爆裂魔法を撃ちに行っていないはずだ。めぐみん一人で行ったとしても、魔力を使い果たした状態のめぐみんだと一人で帰ってこれない。

 

「爆裂魔法を撃ち込んでもいない?撃ち込んでもいないだと!?何を抜かすか白々しいっ!そこの頭のおかしい紅魔の娘が、あれから毎日欠かさず通っておるわ!」

 

「えっ」

 

佐藤君が隣のめぐみんを見た。

 

「・・・・・・・・・・お前、行ったのか。もう行くなって言ったのに、あれからまた行ったのか!」

 

「ひたたたたたた、いた、痛いです!違うのです、聞いてくださいカズマ!今までならば、何もない荒野に魔法を放つだけで我慢出来たのですが・・・・・・!城への魔法攻撃の魅力を覚えて以来、大きくて硬いモノじゃないと我慢できない体に・・・・・・!」

 

めぐみんがモジモジしながら、そんな事を言う。そうなるとめぐみんを連れて帰る人がいるわけだ。佐藤君は無し。ダクネスも実家で鍛練してたとか言ってたし無し。僕もウィズの店に入り浸ってから無し。そうなると・・・・・・。

 

「お前かああああああああああっ!」

 

「わああああああーっ!だってだって、あのデュラハンにろくなクエスト請けられない腹いせがしたかったんだもの!私はあいつのせいで、毎日毎日店長に叱られるはめになったのよ!」

 

・・・・・・やっぱりアクアだよね。しかも腹いせって・・・・・・。

 

「この俺が真に頭に来ているのは何も爆裂魔法の件だけではない!貴様らには仲間を助けようという気は無いのか?不当な理由で処刑され、怨念によりこうしてモンスター化する前は、これでも真っ当な騎士のつもりだった。その俺から言わせれば、盗賊という日陰の職業とはいえ、勇敢に仲間を庇って呪いを受けた、あの者を見捨てるなど・・・・・・っ!」

 

・・・・・・何だろう、呪いを受けても無いし、盗賊でもないけどそこまで評価されるとむず痒いと言いますか・・・・・・。

 

「むっ。シュウ、こんな人混みの真ん中で何をしているのだ?こんな真ん中ではなく、最前列に行くぞ」

 

「あっ、ダクネス・・・・・・って、ちょっと待って。手を引っ張らないでくれるかな!?」

 

ダクネスに引っ張られる形で真ん中から最前列に連れていかれた。

 

「あの・・・・・・なんか、ごめんね?」

 

デュラハンの頭部と目が合い、気まずい空気に耐えかねて謝ってしまった。

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あ、あれえ―――――――――――――――っ!?」

 

僕を見たデュラハンがすっとんきょうな声を上げた。




・おや、アクアの様子が・・・・・・。

カズマの鞭とシュウの飴が絶妙に合わさり、シュウの言うことを聞くようになってきた。

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