「なになに?シュウに呪いを掛けて一週間が経ったのに、ピンピンしてるから驚いてるの?このデュラハン、私達が呪いを解くために城に来るはずだと思って、ずっと私達を待ち続けてたの?始めっから、呪いが掛かってないって知らずに?プークスクス!ちょーうけるんですけど!」
アクアがデュラハンに指を差して笑っている。・・・・・・前々から思ってたけど、アクアの煽りスキルは高すぎる気がする。今もデュラハンの体がプルプル震えている。
「・・・・・・おい貴様。俺がその気になれば、この街の冒険者を一人残らず斬り捨てて、街の住人を皆殺しにすることだって出来るのだ。いつまでも見逃して貰えると思うなよ?疲れを知らぬこの俺の不死の体。お前達ひよっ子冒険者どもでは傷もつけられぬわ!」
冒険者だけならともかく街の住人を皆殺しって・・・・・・元騎士が言うことじゃないよ。
「見逃してあげる理由が無いのはこっちの方よ!今回は逃がさないわよ。アンデットのくせにこんなに注目を集めて生意気よ!消えてなくなんなさいっターンアンデット!」
アクアが突き出した手から光が放たれる。デュラハンは避けようともせず、余裕綽々と言った感じだ。デュラハンに白い光が迫る。
「魔王の幹部が、プリースト対策も無しに戦場に立つとでも思っているのか?残念だったな。この俺を筆頭に、俺様率いる、このアンデットナイトの軍団は、魔王様の加護により神聖魔法に対して強い抵抗をぎゃあああああああああー!!」
魔法を受けたデュラハンは、鎧の隙間から黒い煙を吹き出しながら、なんとか持ち堪えた。
「ね、ねえカズマ、シュウ!変よ、効いてないわ!」
「いや、効いてると思うよ?叫び声あげてたし」
かなりのダメージを与えたと思うけど。
「ク、ククク・・・・・・。説明は最後まで聞くものだ。この俺はベルディア。魔王軍幹部が一人、デュラハンのベルディアだ!魔王様からの特別な加護を受けたこの鎧と、そして俺の力により、そこら辺のプリーストのターンアンデットなど全く効かぬわ!・・・・・・効かぬのだが・・・・・・・・・・。な、なあお前。お前は今何レベルなのだ?本当に駆け出しか?駆け出しが集まる所だろう、この街は?」
アクアの神聖魔法で成仏しかけたのがよっぽど堪えたのか、アクアのレベルを確認してきた。
「・・・・・・まあいい。本来は、この街周辺に強い光が落ちて来ただのと、うちの占い師が騒ぐから調査に来たのだが・・・・・・。面倒だ、いっそのこと街ごと無くしてしまえばいいか・・・・・・」
どこぞの人類最古のジャイアニストみたいな事を言い出すデュラハンは、右手を高く掲げた。・・・・・・彼の英雄王なら視線を合わしただけで『不敬であろう雑種!疾く失せよ!』って言いながら
「フン、わざわざこの俺が相手をしてやるまでもない。・・・・・・さあ、お前達!この俺をコケにしたこの連中に、地獄というものを見せてやるが良い!」
「あっ!あいつ、アクアの魔法が意外に効いてビビったんだぜきっと!自分だけ安全な所に逃げて、部下を使って襲うつもりだ!」
「日和ったね」
「日和りましたね」
「日和ったな」
「ちちち、違うわ!逃げてもおらぬし日和ってもおらんわ!最初からそのつもりだったのだ!魔王の幹部がそんなヘタレな訳がなかろう!いきなりボスが戦ってどうする、まずは雑魚を片付けてからボスの前に立つ。これが昔からの伝統と・・・・・・」
「セイクリッド・ターンアンデット!」
「ひああああああああああー!?」
アクアに魔法をかけられたデュラハンは、悲鳴を上げながら体についた火を消すように地面を転げ回っている。
「・・・・・・最後まで言わせてあげなよ」
「いやよ。アンデットのくせに女神の私を差し置いて目立つなんて許せないもの」
「君って奴は・・・・・・」
自分より目立つのが気に入らないからって成仏させようとしないでよ。デュラハンは大剣を杖の代わりにして立ち上がった。
「ど、どうしようカズマ、シュウ!やっぱりおかしいわ!あいつ、私の魔法がちっとも効かないの!」
アークプリースト、特にアクアの神聖魔法で成仏できないとなると、デュラハンが言った魔王の加護とやらがデュラハンを護ってる可能性があるね。
「こ、この・・・・・・・・・・っ!セリフはちゃんと言わせるものだ!ええい、もういい!おい、お前ら・・・・・・!」
デュラハンは黒い煙を吹きながら、右手を掲げる。
「街の連中を。・・・・・・皆殺しにせよ!」
右手を振り下ろした。
―――――――――――――――――――――
「おわーっ!?プリーストを!プリーストを呼べー!」
「誰かエリス教の教会行って、聖水ありったけ貰ってきてくれえええ!」
デュラハンの部下のアンデットナイトに襲われ、切羽詰まった冒険者達の叫び響くなか、アンデットナイト達は街に侵入しようと進行する。アンデットナイトの進行を迎え撃つ冒険者達。
「クハハハハ、さあ、お前達の絶望の叫びをこの俺に・・・・・・。・・・・・・俺・・・・・・に・・・・・・?」
デュラハンの哄笑が途中で止まる。
「わ、わああああああーっ!なんで私ばっかり狙われるの!?私、女神なのに!神様だから、日頃の行いも良い筈なのに!」
いや、アクアの日頃の行いは結構酷いよ。酒を飲んで酔っぱらって暴れて、路地裏で吐いて、クエスト報酬を一夜で使いきったり。女神というには酷い行いだ。
「ああっ!?ずっ、ずるいっ!私は本当に日頃の行いは良い筈なのに、どうしてアクアの所にばかりアンデットナイトが・・・・・・っ!」
「・・・・・・・・・・ダクネスもアクア程とは言わないけど大概だよ?」
「!?」
だから・・・・・・どうしてダクネスは自分を常識人枠だと思ってるんだろう?
「こっ、こらっお前達!そんなプリースト一人にかまけてないで、他の冒険者や街の住人を血祭りに・・・・・・!」
アンデットナイトは本能的に女神のアクアに救いを求めてるんだろう。
「おいめぐみん、あのアンデットナイトの群れに、爆裂魔法を撃ち込めないか!?」
「ええっ!?街中ですし、ああもまとまりがないと、撃ち漏らしてしまいますが・・・・・・」
「・・・・・・・・・・まとまればアンデットナイトを一掃できるんだね?」
「もちろんです。紅魔族の名にかけて、必ずやアンデットナイトを一掃してみせましょう!」
めぐみんの自信に満ちた目で告げた。彼女の爆裂魔法にかける熱意は本物だ。
「佐藤君。アクアは僕がどうにかするから、爆裂魔法を撃つタイミングは君に任せるよ」
「えっ!?あっ、ちょっ、待てよ秋!?」
佐藤君に後を任せて、アンデットナイトに追いかけ回されているアクアを追いかける。ステータスの差か、アクアの逃げ足が思ったより速い。
「ああ、もう!こんなところでステータスの差を痛感するとは思わなかったよ!――――――
強化の魔術を使って身体能力を使ってアクアに追い付いた。
「アクア!」
「だずげでシュウぅぅぅぅぅぅっ!!アンデットが、アンデットが私を追いかけてくるのよおぉぉぉぉぉ!!」
アクアの横に並んで走ると、アクアの顔は涙と鼻水で酷いことになっている。・・・・・・ゴッドブローで吹き飛ばせばいいのに。
「アクア、まだ走れる?」
「無理!!私女神なのよ!?なのにどーして私が追いかけ回されないといけないのよー!?」
アクアは泣き言を良いながらも走る。アンデットナイトとの距離も少しずつ縮まってきている。仕方ないか・・・・・・。
「アクア。あとで張り手でも何でも受けるから、今は我慢してね」
アクアの右手を僕の肩に回して、アクアを抱き寄せる。そして、そのままアクアを持ち上げる。いわゆるお姫様だっこと言うものだ。
「アクア、しっかり掴まっていてね」
「――――――――――」
アクアからの返事が無いが、まあ了承してくれたと思っておこう。アンデットナイトと付かず離れずの距離をとりながら街中を走り回りながら、街を出る。
「めぐみん、やれーっ!」
「何という絶好のシチュエーション!感謝します、深く感謝しますよカズマ、シュウ!・・・・・・我が名はめぐみん!紅魔族随一の魔法の使い手にして、爆裂魔法を操りし者!魔王の幹部、ベルディアよ!我が力、見るがいい!エクスプロージョン――――――ッ!!」
めぐみんの爆裂魔法が街から誘きだしたアンデットナイトの群れの中心に炸裂、土煙が晴れると地面にはクレーターが出来上がり、アンデットナイトの姿は無くなっていた。
「よっと・・・・・・」
抱えていたアクアを下ろすと、アクアは地面にぺたりと座り込んで、両手で顔を隠して蹲ったまま動こうとしない。
「・・・・・・アクア?ここだと危ないからあっちに行こうよ」
「・・・・・・・・・・腰が抜けて立てないから連れてって」
この女神ほんといい加減にしてくれないかな。内心でため息を何度も吐いて、アクアを再度お姫様だっこして佐藤君達の元に戻る。佐藤君達の視線がとてつもなく痛いが、我慢しよう。
「クハハハハ!面白い!面白いぞ!まさかこの駆け出しの街で、本当に配下を全滅させられるとは思わなかった!よし、では約束通り!」
デュラハンは地面に突き刺していた大剣を引き抜いた。
「この俺自ら、貴様らの相手をしてやろう!」
デュラハンは大剣を構えて駆け出した。デュラハンとの戦闘に備えて、指輪型の魔術礼装『七天』を起動。腰から吊るしている魔導書が脈動しているのを感じながら、両手に『