この魔術師に祝福を!   作:妖精絶対許さんマン

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ゴブリンは皆殺しだってゴブリンゴブリンいってる変なのも言ってた。


この魔術師にゴブリン退治を!

ゴブリン。子供程度の体格に子供程度の賢さの亜人のモンスター。魔術世界でも幻想種の中で『魔獣』の階位に属するとされる。一説にはノームやドワーフと同種だと唱える魔術師もいる。この世界では群れで行動して、家畜を襲うらしい。

 

「しっかし、なんでこんな所に住みつくのかなゴブリンは。まあ、おかげでゴブリン討伐なんて滅多に無い、美味しい仕事が出てきた訳だけどさ!」

 

ゴブリンは本来、森に住んでいる。今回は隣街に続く山道に住み着いた。住んでた森に強いモンスターが現れて住処を奪われたのかな?

 

「カズマ、大丈夫?少し持とうか?」

 

「大丈夫だ。それに今の俺の仕事は荷物持ちだからな。いつもみたいにアクアがバカやらかしたり、めぐみんが爆裂魔法を撃って地形を変えたり、ダクネスがモンスターの群れに突っ込んで行ったりしないからすっごい安心感があるんだよ」

 

「あー、まあね。気持ちは分からなくないよ?」

 

いつものパーティーでクエストを受けると高確率で何かやらかす。僕でもそう思うんだから、カズマの気苦労は計り知れないだろう。

 

「ゴブリンが目撃されたのはこの山道を天辺まで登り、やがてちょっと下がった所らしい。山道の脇にゴブリンが住みやすそうな洞窟でもあるかも知れない。ここからはちょっと気を引き締めてくれ」

 

先頭を歩いていたテイラーは足を止めて、地図を広げて言ってきた。・・・・・・隣でカズマが何故か目が潤んでいる。山道は完全な一本道で、岩肌の山の間を細い道が続いている。しばらく無言で山道を登っていると、カズマがふと立ち止まった。

 

「何か山道をこっちに向かって来てるぞ。敵感知に引っかかった。でも、一体だけだな」

 

敵感知スキル。盗賊職の冒険者が修得できるスキルの一つだ。近くのモンスターの気配を察知できる便利なスキルだ。カズマの言葉を聞いて腰から下げている鞘から白と黒の夫婦剣、干将・莫耶を抜く。――――――前回の冬将軍に殺された経験を生かして、あらかじめ干将・莫耶を装備しておくことにした。鞘は特注で作って貰ったからそれなりの値段がした。

 

「・・・・・・カズマ、お前敵感知なんてスキル持ってるのか?というか、一体だと?それはゴブリンじゃないな。こんな所に一体で行動する強いモンスターなどいないはずだが・・・・・・。山道は一本道だ。そこの茂みに隠れた所で、すぐ見つかっちまうだろう。迎え撃つか?」

 

テイラーが盾を構えながら言う。

 

「いや、茂みに隠れてたら多分見つからないぞ。潜伏スキルを持ってるから。このスキルは、スキル使用者に触れてるパーティーメンバーにも効果がある。せっかく都合よく茂みがあるんだし、とりあえず隠れとくか?」

 

カズマの言葉に三人は驚きながら茂みに隠れた。

 

「やるじゃん。さすがは我らのパーティーリーダー」

 

「最弱職の特権ってやつだよ。もしもの時は任せたからな」

 

「りょーかい」

 

カズマと話しながら僕らも茂みに隠れた。しばらくするとさっきまでいた場所にソイツは来た。猫科の猛獣のような体格に全身を黒い体毛で覆い、大きな牙を二本生やしている。猛獣はさっきまで僕らがいた地面の臭いを嗅いでいる。僕とカズマ以外の三人が息を飲む音が聞こえた。猛獣はしばらくその場に留まって辺りの臭いを嗅ぐと、街に向かう道に消えていった。

 

「・・・・・・ぶはーっ!ここここ、怖かったあっ!初心者殺し!初心者殺しだよっ!」

 

「し、心臓止まるかと思った!た、助かった・・・・・・。あれだ、ゴブリンがこんなに街に近い山道に引っ越してきたのは、初心者殺しに追われたからだぜ」

 

「あ、ああ・・・・・・。しかし、厄介だな。よりによって帰り道の方に向かっていったぞ。これじゃ街に逃げ帰ることもできないな」

 

三人の反応からすると、あの『初心者殺し』と呼ばれる猫科モンスターは危険なようだ。

 

「えっと、さっきのヤツってそんなにやばいのか?」

 

カズマの言葉に三人が信じられない物を見るような目で見た。

 

「初心者殺し。あいつは、ゴブリンやコボルトといった、駆け出し冒険者にとって美味しいといわれる、比較的弱いモンスターのそばをうろうろして、弱い冒険者を狩るんだよ。つまり、ゴブリンを餌に冒険者を釣るんだ。しかも、ゴブリンが定住しない様にゴブリンの群れを定期的に追いやり、狩場を変える。狡猾で危険度の高いモンスターだ」

 

「「なにそれ怖い」」

 

モンスターなのに悪知恵が働くということか・・・・・・。

 

「とりあえず、ゴブリン討伐を済ませるか?初心者殺しは、普段は冒険者をおびき寄せる餌となる、ゴブリン達を外敵から守るモンスターだ。ゴブリンを討伐して山道の茂みに隠れていれば、俺達が倒したゴブリンの血の臭いを嗅ぎつけて、さっきみたいに俺達を通り過ぎてそっちに向かってくれるかもしれない。近づいてくればカズマの敵感知で分かるだろうし、帰ってくるかどうかも分からない初心者殺しを待って、いつまでもここに隠れている訳にもいかない。まずは目的地へと向かうとしよう」

 

初心者殺しはゴブリンを守るのか・・・・・・。モンスター同士で共生関係を築いてるのか。ゴブリンは冒険者以外の外敵を初心者殺しが追い払って、初心者殺しはゴブリン目当ての冒険者を狩る。上手い共生関係だね。

 

「もし初心者殺しに会ったら、皆で逃げる時、カズマも身軽な方がいいからね。あたしも持つよ。そ、その代わり、潜伏と敵感知スキル、頼りにしてるよ?」

 

リーンはカズマが背負っている荷物の一部を手に取って背負った。

 

「「べ、別に、俺達はカズマを頼りきってる訳じゃないからな?」」

 

男のツンデレは需要無いよ?

 

 

―――――――――――――――――――

 

 

「カズマ、どうだ?敵感知には反応あるか?」

 

山道が下り坂になる地点に出た。

 

「この山道を下がっていった先の角を曲がると、いっぱいいるな。俺達が登ってきた方の道からは、初心者殺しが近づいてくる気配は今のところ無いよ」

 

「いっぱいってどれくらい?」

 

「探知できる範囲でも数えれないぐらい。ゴブリンの群れってこんなに多いもんなのか?」

 

ギルドに置いてあったモンスター図鑑にはゴブリンの群れはだいたい十匹ぐらいで行動するらしい。敵感知で数えられない数となると相当多いのだろう。

 

「ね、ねえ。そんなにいるの?カズマがこう言ってるんだし、ちょっと何匹いるのかこっそり様子をうかがって、勝てそうなら・・・・・・」

 

「大丈夫大丈夫!カズマばかりに活躍されてちゃたんねえ!おっし、行くぜ!」

 

キースが叫ぶと同時に下り坂の角から飛び出した。それに続いてテイラーも飛び出す。

 

「「ちょっ!多っ!!」」

 

叫ぶと二人に続いて僕らも角を曲がる。下り坂のしたには三十を優に越えるゴブリンがこちらを向いていた。緑色の肌に薄汚れた腰みの、手には錆びた短剣や手作り感満載の棍棒を握っている。・・・・・・これは凄いね。

 

「言ったじゃん!だから言ったじゃん!あたし、こっそり数を数えた方がいいって言ったじゃん!!」

 

泣き声を上げるリーンとアーチャーのキースを後ろに庇う形でテイラーが前に出た。

 

「ゴブリンなんて普通は多くて十匹ぐらいだろ!ちくしょう、このまま逃げたって初心者殺しと出くわして、挟み撃ちになる可能性が高い!」

 

テイラーが叫ぶ。リーンとキースが悲壮感漂う顔で攻撃の準備を始める。それを見て、ゴブリン達が山道を駆け上がってくる。

 

「ギギャッ!キー、キーッ!」

 

坂を駆け上って来るゴブリンの後方、弓を構えたゴブリンが矢を撃った。矢の軌道はキースに当たる直撃コースだ。

 

「ふっ!」

 

矢の軌道のコース上に体を滑り込まして干将で弾く。矢は木と石で粗悪な物だ。

 

「サ、サンキュー。助かったぜ」

 

「礼は良いから。奥の弓を持ったゴブリンは狙える?」

 

「おう!任せろ!リーン、風の防御魔法を!」

 

キースが弓で奥の弓を構えたゴブリンを狙い撃つ。キースがゴブリンに狙いを定めている間にも矢が飛んでくる。キースを狙う矢を僕が防ぎ、リーンをテイラーが盾で守り、カズマが風の初級魔法で矢を落とす。

 

「『ウィンドカーテン』!!」

 

リーンが風の防御魔法――――――以前、ダンジョンに潜った時にクリスにかけた魔法だ――――――が僕ら五人を包み込む。

 

「こんな地形なら、この手が効くだろ!『クリエイト・ウォーター』ッッ!」

 

カズマは水の初級魔法を唱えて、下り坂に広範囲にぶちまけた。

 

「カズマ!?一体何やって・・・・・・」

 

「ああっ・・・・・・なるほどね。身体強化・Ⅲ(ブースト・ドライ)

 

僕は何となくカズマがしようとすることに感づいて、強化の魔術を使う。

 

「『フリーズ』ッッ!!」

 

「「「おおっ!」」」

 

広範囲に撒いた水に初級の氷結魔法を使い、水を凍らせた。ゴブリン達は足下が凍りついたことであっちこっちで転んでいる。

 

「任せたぞっ――――――秋っ!!」

 

「了解っ!!」

 

カズマの横を駆け抜ける。下り坂を必死に登ってきたゴブリンを蹴り倒してスノーボード代わりにして滑る。足下からゴブリンの呻き声が聞こえるが無視をする。下り坂を滑りながら手近なゴブリンの喉を切り裂き、頭を叩き割る。下り坂を滑りきり、坂の上のカズマに向かって叫ぶ。

 

「カズマー!討ち漏らしは任せるからねー!!」

 

「おうっ!下は任せるからなーっ!!あと、あんまりやり過ぎんなよぉー!」

 

「気を付けはするよー!!」

 

足下の動かなくなったゴブリンを崖下に蹴り落として、夫婦剣に着いた血を払う。

 

「さてと・・・・・・」

 

今から下り坂を登ろうとしていたゴブリン達を見る。ゴブリン達は各々武器を手にしてゆっくりと近づいてくる。

 

「弱いものいじめは趣味じゃ無いんだけど・・・・・・君達に恨みは無いけど、これも依頼だからさ」

 

「「「「「キッー!!」」」」」

 

ゴブリン達が一斉に飛び掛かってきた。

 

 

―――――――――――――――――――

 

 

「あー、終わった終わった」

 

全てのゴブリンを討伐し終わり、僕の回りはちょっとした地獄絵図とかしていた。頭を割られたゴブリンや喉を裂かれたゴブリンの死体があっちこっち転がっている。

 

「・・・・・・やり過ぎた」

 

人型に近いし急所も同じだから殺りやすいこと。ただ、後片付けをどうするかだ。・・・・・・そうだ。最近は食事を与えてなかったし、ちょうどいいや。

 

「食べて――――――」

 

「秋ーっ!何してんだよ!さっさと帰ろうぜー!」

 

下り坂の頂上からカズマが呼んできた。テイラーにキース、リーンは僕の周りの惨状を見て顔が引きつっている。

 

「――――――食べていいよ(・・・・・・)

 

何もない虚空にそう告げて、下り坂を登る。――――――背後から、肉と骨を咀嚼する音を聞きながら。




オマケ・ゴブリン討伐ダイジェスト

「キッー!!」

「よっと!」

グチャ

ゴブリンから棍棒を奪って頭を砕く。

「キキッー!」

「せいっ!」

ザシュ

干将で首を切り裂く。

「「キキッー!!」」

「はあっ!」

「キッー!?」

グチャ

二匹同時に襲ってきたのを一匹を崖に蹴り飛ばし、もう一匹を岩肌剥き出しの壁に頭を叩き付ける。

以降、ゴブリンが全滅するまで無限ループ。
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