この魔術師に祝福を!   作:妖精絶対許さんマン

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この魔術師に休憩時間を!

僕は久しぶりにウィズの店に行くために、お土産を買いに市場に寄っている。

 

「あ、これ四つください」

 

「はいよっ!・・・・・・兄ちゃん、また貧乏店主さんのところに行くのかい?」

 

「ええっ、久しぶりに。それが何か?」

 

「いやー、ようやく店主さんに春が来たと思ってよ!店主さんのことよろしく頼むぜ!」

 

頼むぜって・・・・・・市場の人の間で僕とウィズの関係をどう思われてるわけ?別に男女の関係とかじゃなくて、ただの友人同士なんだけど。

 

「あっらー、お兄さん!ウィズちゃんの店に行くのね!これも持っててちょうだい!やっだー、お金なんて要らないわよ!おばさんの奢りよ奢り!」

 

八百屋の前を通れば生きの良い野菜の詰め合わせを渡され、

 

「おっす、兄ちゃん!店主さんのところに行くんだろ?これ持ってきな!」

 

肉屋の前を通ればカエル肉の唐揚げを渡され、

 

「あっ、冒険者さん!ウィズさんのところに行かれるんですよね!?これ!お二人で食べてください!」

 

ケーキ屋の前を通れば人気のシュークリームの詰め合わせを渡された。ウィズの店の前につく頃には両手が使えなくなるほどの量を渡されていた。

 

「確保ーっ!」

 

店の扉をどうにか頑張って開けると、アクアがウィズに襲い掛かっていた。

 

「待ってーっ!アクア様、お願いします、話を聞いてください!」

 

取り押さえられているウィズがじたばたともがいている。

 

「・・・・・・なにこの状況?」

 

とりあえず荷物をレジのカウンターに置く。

 

「やったはねカズマ!これで借金なんてチャラよチャラ!それどころかお釣りがくるわ!宿を借りるどころか家だって買えちゃうわよ!」

 

どうもアクアはウィズを取り押さえるのに夢中で僕が店に入ってきたのに気づいて無いらしい。アクアの後ろに移動してカズマに向かって、人差し指を口元に持っていき静かにするように指示する。

 

「アクア?とりあえず、一回ウィズの上から退かない?」

 

「あっ!シュウも来てたのね!聞いてちょうだい!このリッチー、なんと魔王軍の幹部なのよ!」

 

・・・・・・今、すごい聞き逃せない事をアクアが言った気がするが、それは後で聞くとしよう。

 

「ほら、アクアがウィズの上から退かないと話進まないから」

 

「ぐえっ!?」

 

アクアの服の襟を掴んでウィズの上から引き釣り下ろす。その時にカエルを潰したみたいな声が聞こえたけど、まあ良いや。

 

「あ、ありがとうございます・・・・・・」

 

ウィズは立ち上がりながら服についている埃を払う。

 

「ところでウィズ。魔王軍の幹部ってどういう事だ?流石に魔王軍のスパイとかだと、冒険者の手前、見逃すって訳にも・・・・・・」

 

「ちっ、違います!魔王城を守る結界の維持の為に、頼まれたんです!勿論、今まで人に危害を加えた事は無いですし、幹部って言っても、なんちゃって幹部ですから!私を倒したところで、そもそも賞金も掛かっていませんから!」

 

僕とカズマ、アクアは顔を見合わせる。

 

「・・・・・・良く分かんないけど、念のために退治しておくわね」

 

「やめい」

 

「ぐえっ!?」

 

拳に魔力を溜めだしたアクアの服の襟を引っ張って黙らせる。

 

「えっと、何だ?つまりゲームとかによくある、幹部を全部倒すと魔王の城への道が開けるとか。そんな感じか?で、ウィズは、その結界とやらの維持だけを請け負っていると」

 

「げーむとやらは知りませんが、そういう事です!魔王さんに頼まれたんです、人里でお店を経営しながらのんびり暮らすのは止めないから、幹部として結界の維持だけ頼めないかって!魔王の幹部が人里でお店やってるなんて思わないだろうから、人間に倒されないだけでも十分助かるって!」

 

「つまり、あんたが生きてるだけで人類は魔王城には攻め込めないし、私たちには十分な迷惑って事ね。二人とも、やっぱりこのリッチー退治しましょう」

 

「だからやめなって」

 

「痛いっ!?」

 

またも拳に魔力を溜めだしたアクアは頭をチョップして黙らせる。

 

「そ、それにですね。アクア様の力なら、幹部の二、三人ぐらいで維持する結界なら破れるはずです!魔王の幹部は元々八人。私を倒したところで、後六人も幹部がいたなら流石にアクア様でも結界破りはできません、魔王城に攻め込むには、私を浄化したとしても、どのみちまだまだ幹部を倒さないといけませんし!せめて、アクア様が結界を破れる程度に幹部が減るまで、生かしておいてください・・・・・・!私には、まだやるべき事があるんです・・・・・・」

 

どうも訳ありっぽいね。

 

「別に良いんじゃない?ウィズも人に危害を加えるつもりも無いみたいだし、今すぐどうこうする必要はないと思うけど。アクアもそれで良いよね?」

 

「そうだな。それに、ウィズ以外の幹部が誰かに倒されるまで気長に待てば良いし」

 

「はぁーっ!?何で女神の私がリッチーを見逃さないといけないのよ!」

 

アクアが襟を掴まれながらじたばたともがく。この駄女神・・・・・・頑なな。

 

「とにかく!この話は終了!アクアも文句があるなら後で聞くから!」

 

不満そうなアクアから手を離す。

 

「でも、良いのか?幹部って連中は一応ウィズの知り合いとかなんだろ?ベルディアを倒した秋に恨みとかは無いのか?」

 

それはちょっと気になる。恨まれてたら・・・・・この店に来るのも今日が最後かな。

 

「・・・・・・ベルディアさんとは、特に仲が良かったとか、そんな事も無かったですからね・・・・・・。私が歩いていると、よく足元に自分の首を転がしてきて、スカートの中を覗こうとする人でした」

 

あのデュラハン・・・・・・そんな事してた変態なんだ。アンデッドだけど高潔な騎士だと思ってたのに・・・・・・。

 

「幹部の中で私と仲の良かった方は一人しかいませんし、その方は・・・・・・まあ簡単に死ぬような方でも無いですから。・・・・・・それに」

 

そう言った後、ウィズは寂しそうに笑ってこんなことを言った。

 

「私は今でも、心だけは人間のつもりですしね」

 

 

―――――――――――――――――――

 

 

「え、えっと。それでは、一通り私のスキルをお見せしますから、好きな物を覚えていって下さい。以前私を見逃してくれた事への、せめてもの恩返しですので・・・・・・」

 

ウィズが自分の冒険者カードを見せてきて、僕とカズマ、アクアを交互に見てオロオロしだした。

 

「どうかした?」

 

「あ、あの・・・・・・私のスキルは相手が居ないと使えない物ばかりなのですが、つまりその・・・・・・。誰かにスキルを試さないといけなくて・・・・・・」

 

ウィズは怯えながらおずおずとそう言った。ウィズの視線は特にアクアに向けられている。・・・・・・浄化されかけた訳だししょうがないか。

 

「なら、僕が相手をするよ。アクアが相手だと浄化しようとするだろうし」

 

「そんな事しないわよ!!・・・・・・たぶん

 

「たぶんってちっちゃく言ったの聞こえてるからね」

 

隙あらばウィズを浄化しようとするんだから。

 

「僕が相手だから怯えずにスキル使ってくれていいからね。あ、でも、死ぬようなスキルは止めて欲しいけど」

 

「つ、使いません!いつもお店に来てくれるシュウさんにそんな事はしません!」

 

「冗談だよ。ウィズがそんな事するなんて思ってないから」

 

「もう!か、からかわないでください!」

 

ウィズはからかうと面白い反応をしてくれるから、たまにこうやってからかう事がある。

 

「あの二人、仲いいな」

 

「そ、そうね。べ、別にシュウが誰と仲良くしようが私には関係なんて無いけど、女神の従者(仮)がリッチーなんかと仲良くするのはいただけないわね!」

 

「秋はいつからお前の従者になったんだよ。秋に知られたら泣かされるぞ」

 

カズマとアクアが小声で何かを話している。大方、アクアがまたウィズを浄化しようとしたのをカズマが止めてくれたんだろう。

 

「それでは、カズマさんには『ドレインタッチ』というスキルをお教えさせていただきます。ドレインタッチはアンデッド特有のスキルで、相手の体力や魔力を吸い取ったり、逆に味方に分け与える事が出来るスキルです」

 

「なるほど。つまり、そのスキルがあれば爆裂魔法を撃った後のめぐみんに魔力を分けて、もう一発爆裂魔法を撃てるってことか!?」

 

「それは無理だと思うよ」

 

「えっ、どうしてだよ?」

 

カズマは不思議そうに首を傾げた。カズマの考えは悪くない。悪くないんだけど・・・・・・。

 

「カズマの考えは悪くないと思うよ。でもね、爆裂魔法は全魔力を使って撃つから、術者の魔力量に依存するんだ。めぐみんはこのパーティーでアクアの次に魔力量が多い筈だから、めぐみんの魔力を全快させるには、アクアの魔力の殆どをめぐみんに分けないと、爆裂魔法をもう一発撃つのは厳しいと思うよ」

 

「なるほど・・・・・・そうなると、回復魔法しか取り柄の無いアクアが本当のお荷物になるわけか」

 

「ねえ、今このヒキニート私のこと回復魔法しか取り柄の無いお荷物って言った?ふざけんじゃないわよこの童貞ニート!誰がお荷物よ!あんたにだけは言われたくないわ!」

 

「どどどどどど、童貞じゃねーし!?お前がお荷物なのは本当の事だろうが!」

 

「なら、今度爆裂魔法を撃った後のめぐみんの魔力全快させてやろうじゃない!女神の魔力量を甘く見ないことね!」

 

「上等だ!お前がめぐみんの魔力を全快させられたなら、その時は何でもしてやろうじゃねえか!!」

 

・・・・・・どんどん話がややこしい事になってきたね。

 

「言ったわね!言ったわねカズマ!その時は覚悟しておきなさいよ!」

 

「ああっ、良いぜ!ウィズ!そういう訳だから俺にその『ドレインタッチ』ってスキルを教えてくれ!」

 

・・・・・・ようやく終わった。見てる分にはカズマとアクアのやり取りは面白いけど、巻き込まれたりしたらたまったものじゃない。

 

「わかりました。それではシュウさん。手を出してください」

 

「ん、了解」

 

ウィズに言われた通りに右手を出す。ウィズは出された右手に両手を添えて来た。

 

「それではいきます。『ドレインタッチ』!」

 

「おおっ!?」

 

体から力が抜けていく感覚に驚いて変な声を出してしまった。今まで体験したことが無いタイプの感覚だ。

 

「・・・・・・・・・・」

 

「ね、ねえ、ウィズ?そろそろ良いんじゃないかな?手を離して欲しいんだけど・・・・・・」

 

「ま、まだダメです!教えるならちゃんと教えないと!」

 

ウィズはそう言ってるが、目が怖い。しかも、吸いとりのペースが上がって来た気がする。

 

「いつまで手を握ってるのよ!いい加減離しなさい!」

 

「あうっ!?」

 

業を煮やしたアクアがウィズの手を叩いて引き剥がした。今回はアクアに感謝しないと・・・・・・。

 

「す、すいませんシュウさん!」

 

「大丈夫だよ、気にしないで。どうカズマ?スキルは発現してる?」

 

「えーと・・・・・・おっ、これだな」

 

カズマは自分の冒険者カードを確認して、弄り始める。

 

「よし、問題なくスキルを習得できた」

 

カズマも無事にスキルを覚えられたみたいだ。確かにカズマが思い付いた爆裂魔法二連打は使えないけど、それでも価値がある。相手から体力や魔力を吸いとってる間に不意討ちで倒すとか。

 

「それじゃあ、ウィズ。俺達は帰るとするよ。秋はどうする?」

 

「僕はもう少しいるとするよ。ウィズに色々と聞きたい事が出来たしね」

 

「あうっ・・・・・・す、すいません」

 

魔王軍幹部の事を何で黙ってたのかを問いただす――――――のは冗談で、本当は久しぶりにウィズの店に来たわけだしゆっくりしたいのが本音だ。

 

「ごめんください、ウィズさんはいらっしゃいますか?」

 

カズマとアクアが店から出ていこうとすると、店の扉が開いて中年の男性が入ってきた。・・・・・・ゆっくりするのはもう少し先になりそうだね。

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