この魔術師に祝福を!   作:妖精絶対許さんマン

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この魔術師に求人募集を!

佐藤君とアクアに晩御飯を奢った翌日。僕たち三人はクエストを請けて街の外に来ている。

 

「佐藤くーん、そのモンスターはここら辺だと一番弱いらしいから頑張って倒してねー」

 

「ならお前も手伝えよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!?」

 

今回の目的は佐藤君とアクアに実戦慣れしてもらうこと。その為、僕は二人より離れた場所で事の成り行きを見守っている。

 

「プークスクス!やばい、超うけるんですけど!カズマったら、顔真っ赤で涙目で、超必死なんですけど!」

 

佐藤君が必死に蛙型モンスター、カエルから逃げ回っているのをアクアは笑いながら眺めていた。

 

「あっ」

 

佐藤君を追い掛けていたカエルが爆笑していたアクアを頭から丸呑みした。カエルの口の端からアクアの足が飛び出ている。

 

「アクアー!おま、お前、食われてんじゃねええええええ!」

 

佐藤君は腰のショートソードを抜いて、カエルに向かって走っていった。

 

 

―――――――――――――――――――――――――

 

 

「ぐすっ・・・・・・うっ、うええええええっ・・・・・・、あぐうっ・・・・・・!」

 

カエルの口から引っ張り出されたアクアは粘液で大変なことになっている。

 

「ううっ・・・・・・ぐずっ・・・・・・あ、ありがど・・・・・・カズマ、あ、ありがどうね・・・・・・っ!うわあぁぁぁぁぁぁぁぁぁん・・・・・・っ!」

 

女神も捕食は応えるんだ。初めて知った。

 

「だ、大丈夫かアクア、しっかりしろ・・・・・・、その、今日はもう帰ろう。請けたクエストは、三日の間にカエル五匹の駆除だけど、これは俺達の手に負える相手じゃない。もっと、装備を調えてからにしよう。俺なんて、武器はショートソード一本、防具すら無くジャージのままだ。せめて、冒険者に見える格好になってからにしよう」

 

確かに佐藤君の服装はジャージだ。かくいう僕の服装もこの世界に落ちた時の服装だ。

 

「ぐすっ・・・・・・。女神が、たかがカエルにここまでの目に遭わされて、黙って引き下がれるもんですか・・・・・・っ!私はもう、汚されてしまったわ。今の汚れた私を信者が見たら、信仰心なんてダダ下がりよ!これでカエル相手に引き下がったなんて知れたら、美しくも麗しいアクア様の名が廃るってものだわ!」

 

「でも実際問題、アクアはアークプリーストだから攻撃魔法は使えないよね?カエルと戦うにしても、どうやって倒すつもり?」

 

「私は女神なのよ!必殺技の一つや二つ隠し持ってるに決まってるじゃない!」

 

アクアはそういうと僕達より離れた場所にいたカエルに向かって駆け出した。

 

「神の力、思い知れ!私の前に立ち塞がった事、そして神に牙を剥いた事!地獄で後悔しながら懺悔なさい!ゴッドブローッ!」

 

アクアの拳に白い光が宿り、カエルに向かって殴りかかる。感じる魔力からして、Cランク相当の宝具と同等ってところかな?

 

「なあ、あのカエルって打撃系の攻撃って効かないよな?」

 

「ギルドの人がそう言ってたね。アクアもその場にいたから聞いてたと思うけど?」

 

僕と佐藤君が遠巻きに見ているなか、アクアの拳はカエルの無防備な腹に直撃した。アクアの一撃はカエルの柔らかい腹に威力を吸収され、カエルの体表を揺らしただけだった。

 

「ひゃふっ!」

 

アクアの悲鳴が聞こえてきた。

 

「・・・・・・また食べられた」

 

「冷静に解説してんじゃねえぇぇぇぇぇぇぇ!!」

 

佐藤君はショートソードを抜いて、アクアを捕食しているカエルに向かって駆けていった。

 

「んっ?」

 

「ゲコッ」

 

どうやらカエルはもう一匹いたらしい。今まさに僕の事を呑み込まんと、大きく口を開いている。

 

「ライトニング」

 

右手を振り向きざまにカエルの口に向けて魔法を放つ。・・・・・・魔術師として『魔法』って言葉を使うのは気が引けるけどね。

 

「ゲコッ!?」

 

右手から出た雷は寸分の狂い無くカエルの口に飛んでいき、一瞬だけカエルの体が跳ねると、白目を剥いて倒れた。

 

「ホント・・・・・・便利だね、この世界の魔法は」

 

元いた世界で雷を起こすとなると、数人規模の儀式で天候操作して起こすのに、この世界は呪文を唱えるだけで良いんだから魔術師としては立つ瀬がない。

 

 

ジャイアントトード、三匹撃破。

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――

 

 

「アレね。三人じゃ無理だわ。仲間を募集しましょう!」

 

大衆浴場で汚れというか粘液を落としたアクアはギルドで晩御飯を食べながらそう言った。口の端にカエル肉の唐揚げの衣がついている。

 

「アクア。衣ついてる」

 

「あ、ありがと」

 

僕はナプキンでアクアの口についてる衣を取る。・・・・・・どうして僕は女神相手に子供の世話みたいな事をしてるんだろう。

 

「でもなあ・・・・・・。仲間ったって秋だけならともかく、駆け出しでロクな装備もない俺達と、パーティー組んでくれる奴なんかいると思うか?」

 

「ふぉのわたひがいるんだはら、なかああんて」

 

何を言っているのかわからない。

 

「飲み込め。飲み込んでから喋れ」

 

アクアは口に入れてた物全部を飲みこんだ。もう、女神というか仕草の一つ一つがおっさんだ。

 

「この私がいるんだから、仲間なんて募集をかければすぐよ。なにせ、私は最上級職のアークプリーストよ?あらゆる回復魔法は使えるし、補助魔法に毒や麻痺なんかの治癒、蘇生だってお手の物。どこのパーティーも喉から手が出るぐらい欲しいに決まってるじゃない!」

 

アークプリーストの肩書きだけなら確かにどこのパーティーも欲しいだろうね。ただ、アクアの中身を知ったらどうなるかはわからないけど。

 

 

―――――――――――――――――――――――――

 

 

 

「・・・・・・来ないわね・・・・・・」

 

ギルドで求人の張り紙を出して半日。僕はギルドの酒場でお茶を飲みながら、寂しそうに呟くアクアを見ている。

 

「そもそも条件が高すぎるのが問題だよ」

 

「そうだぞアクア。お前と秋は上級職かもしれないが、俺は最弱職なんだ。周りがいきなりエリートじゃ俺の肩身が狭くなる。ちょっと、募集のハードル下げて・・・・・・」

 

アクアが求人募集で出した条件は上級職のみ募集だった。それだと誰も来ない。そもそも、上級職はそうそういないだろうに。その事を僕と佐藤君が再三説明したのに、押しきって募集をかけた。

 

「上級職の冒険者募集を見て来たのですが、ここで良いのでしょうか?」

 

・・・・・・まさかあんな頭の悪そうな求人で来てくれる冒険者がいるとは。アクアがドヤ顔をしている。しかも「どやっ!」って言っている。

 

「我が名はめぐみん!アークウィザードを生業とし、最強の攻撃魔法、爆裂魔法を操る者!」

 

声をかけてきたのは年齢は十二か十三歳ほどの少女。片目を眼帯で隠し、小柄で細身な体にマントを羽織っている。

 

「・・・・・・冷やかしに来たのか?」

 

「ち、ちがわい!」

 

佐藤君の言葉に慌てて否定した。確かに冷やかしに聞こえないこともない。

 

「・・・・・・その赤い瞳。もしかして、あなた紅魔族?」

 

「いかにも!我は紅魔族随一の魔法の使い手、めぐみん!我が必殺の魔法は山をも崩し、岩をも砕く・・・・・・!・・・・・・という訳で、優秀な魔法使いはいりませんか?・・・・・・そして図々しいお願いなのですが、もう三日も何も食べてないのです。できれば、面接の前に何か食べさせては頂けませんか・・・・・・」

 

めぐみんのお腹辺りからキューという音が聞こえてきた。

 

「すいませーん。ジャイアントトードの唐揚げ追加お願いしまーす」

 

僕は近くを通り掛かったウエイトレスに唐揚げの追加を注文して、唐揚げが乗った皿をめぐみんの前に置いてもらった。

 

 

――――――――――――――――――――――――――

 

めぐみんに唐揚げを食べさせた後、めぐみんはパーティーに加入した。佐藤君とアクア、めぐみんは早速昨日のクエストの続きに出ていった。僕は別行動でこの街、アクセルの街を探索している。ずっとクエストに通い詰めで街の地理には詳しくない。

 

「ウィズ魔道具店?」

 

住宅街の中に看板を立てた家があった。魔道具なんて売ってるのか。魔術師としてこの世界の魔道具には興味がある。

 

「失礼しま・・・・・・す?」

 

店に入るとレジでうつ伏せに倒れている女性がいた。なにこれ?なにかのサスペンスドラマ?

 

「あ・・・・・・い、いらっしゃい・・・・・・ませ」

 

一度顔をあげたと思ったら、またうつ伏せになった。すごく顔色が悪い。店内にキューという音が響いた。それもめぐみんから聞こえたような可愛らしい音じゃなく、かなり大きい音だ。

 

「・・・・・・唐揚げ食べます?」

 

「す、すいません・・・・・・いただきます・・・・・・」

 

女性の前に酒場で紙に包んでもらった唐揚げを置く。

 

「ううっ・・・・・・久しぶりのたんぱく質です。美味しいです・・・・・・」

 

女性は一心不乱に唐揚げを食べていく。五分もしない内に五本の唐揚げを食べきった。

 

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