この魔術師に祝福を!   作:妖精絶対許さんマン

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FGO、皇帝(ツァーリ)を狙ったらすり抜けでドレイク船長が来ました。嬉しいけど少し複雑な気分です。あと、アヴィケブロン先生好き。アナスタシア可愛い。


この魔術師にキャベツを!

アクアの話によると、この時期にはキャベツの収穫が行われるらしい。ただし、この世界の野菜は新鮮な物ほど動き回るらしく、今回の緊急クエストも各地に移動するキャベツの収穫らしい。一匹一匹はたいしたことはないが、集団での体当たりはそれなりに強力らしい。それにギルドがキャベツの量に応じて報酬をくれる。極貧冒険者の僕らにはありがたいクエストだ。

 

「ずっと気になっていたのですが、シュウはルーンナイトなのに何故武器を持っていないのですか?」

 

キャベツの群れが来るであろう方向に向かって歩いていると、めぐみんが話しかけてきた。

 

「武器を持たないルーンナイトがいるのは変かい?」

 

「いえ、そういう訳では無いのですが・・・・・・」

 

でも・・・・・・そろそろこの世界の魔法にも慣れてきたし、前衛職らしいところも見せようか。

 

「めぐみんの要望に応えて、今回は魔法を使わないでおくよ」

 

「えっ!?む、無理はしなくていいのですよ?私が爆裂魔法でキャベツの群れを吹き飛ばしますから!」

 

どうやらめぐみんに僕は接近戦が出来ないと思われているらしい。

 

「キャベツが来たぞぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」

 

冒険者の一人が指差して叫んだ方から緑色の物体が大量に押し寄せて来ている。

 

「ふ、ふふっ・・・・・・あれだけのキャベツの群れの体当たりだ・・・・・・それはさぞ素晴らしいものなはずだ!!」

 

一人興奮している女騎士がいるけど放置しておく。

 

「あれほどの敵の大群を前にして爆裂魔法を放つ衝動を抑えられようか。はあぁ・・・・・・いやない!」

 

めぐみんがマントを翻して前に出る。そして、めぐみんの足下に赤い魔法陣が展開される。

 

「光に覆われし漆黒よ。夜を纏いし爆炎よ。紅魔の名の下に原初の崩壊を顕現す。終焉の王国の地に力の根源を隠匿せし者。我が前に統べよ!エクスプロージョン!!」

 

杖の先が赤く光とキャベツの群れが爆発した。

 

「おお・・・・・・あれが爆裂魔法」

 

対軍宝具・・・・・・いや、対城宝具クラスの一撃だ。

 

「佐藤君。めぐみんの魔法はすごいね。追い出すのはやめた方がいいと思うよ」

 

「威力が凄いのは認めるよ。ただ・・・・・・あれを見てみろよ」

 

佐藤君が爆裂魔法を撃ち終わっためぐみんを指差す。めぐみんはキメ顔でポーズを決めている――――――と、思ったら崩れ落ちた。

 

「はへへ・・・・・・カズマ、シュウ。やりましたよ、キャベツ八匹倒しました」

 

魔力を使いきったのか、めぐみんは倒れながら冒険者カードを僕たちに見せてきた。

 

「なるほど・・・・・・燃費が悪いね」

 

「だろ?」

 

あの威力なら当たれば一撃だけど、外したら無駄撃ちな上に二撃目も撃てないとなると使いどころが難しい。・・・・・・一撃必殺って事を考えたらまさに必殺技と呼べる魔法だね。

 

「カズマさぁぁぁぁぁぁん!!シュウゥゥゥゥゥゥ!!だずげてぇぇぇぇぇぇ!?」

 

アクアはアクアでキャベツに追い回されて泣きながら逃げている。いや、逃げてないでゴッドブローで殴れよ。

 

「待っていろアクア!今助けに行くぞ!『デコイ』!!」

 

アクアを追い回していたキャベツが向きを変えてダクネスに迫る。他のキャベツ達もダクネスに向かって体当たりしていく。

 

「ふ、ふふっ・・・・・・ふふふふふふっ!!いいぞ!!もっとだ!!もっとぶつかって来い!!お前たちの力は・・・・・・そんなものかぁぁぁぁぁぁ!!」

 

言ってることはアメフトとかラグビーの監督みたいだけど、実際はダクネスがキャベツの体当たりに興奮して変な事を口走っているだけだ。

 

「はぁ・・・・・・佐藤君。泣いてるアクアとめぐみんの回収よろしく」

 

「えっ!?あっ、秋!?」

 

二人の回収と介抱を佐藤君に任せて、キャベツの体当たりに興奮しているダクネスを助けるために走る。・・・・・・止めるの方が正しいのかも知れない。

 

「――――――起動せよ(セット)身体強化・Ⅱ(ブースト・ツヴァイ)

 

魔術回路を起動させる。体内の回路に魔力が通っていく。うん、この世界でも上手く使えた。両手を軽く振るい、刃が無い柄が片手に三個ずつ、計六個が飛び出した。

 

「ダクネス!そのまま動かないでよね!!」

 

柄に魔力を流して投擲する。投擲された柄はダクネスに体当たりしようとしていたキャベツに命中。流した魔力が刃を形成し、柄から飛び出す。刃はキャベツを貫いた。

 

「シュウ!?」

 

驚いたダクネスが後ろを振り向いた。

 

「ダクネスはそのままスキルを使ってキャベツを誘き寄せて!キャベツの収穫は僕がするから!」

 

「わ、わかった!」

 

ダクネスが再度スキルを使い、キャベツを誘き寄せる。僕はダクネスの前に立ち、新たな投擲剣――――――黒鍵を構える。

 

(なんで僕は黒鍵まで出してキャベツの収穫なんてしているんだろう・・・・・・)

 

体当たりしてくるキャベツを斬り裂き、黒鍵を投げて貫き、時にキャベツを受け止めて他のキャベツに投げながら冷静な部分でキャベツの波が過ぎ去るまで考えていた。

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――

 

「何故たかがキャベツの野菜炒めがこんなに美味いんだ。納得いかねえ、ホントに納得いかねえ」

 

「同感」

 

隣に座る佐藤君に同意しながら野菜炒めを食べる。さっきまで新鮮に動き回っていたキャベツは料理となって振る舞われている。

 

「シュウ。シュウが使っていた武器はなんなのですか?」

 

「うむ、私もそれが気になっていた。私も冒険者を長くしているがあのような武器は初めて見た。あれはどこの武具屋で買ったのだ?」

 

「あの武器どんなギミックしてるんだ?いきなり刃出て来てたけど」

 

「すいませーん!シュワシュワのお代わりくださーい!!」

 

佐藤君とめぐみん、ダクネスに黒鍵の事で詰め寄られる。一人だけシュワシュワを頼んでいるアークプリーストがいるけどそのままにしておく。アクアまで参加したら収拾がつかなくなるからね。

 

「あれは黒鍵っていってね、死徒・・・・・・ここだとアンデットって言った方がいいのかな?対アンデット用の武装なんだ」

 

懐から柄だけの状態の黒鍵を取り出して佐藤君に渡す。佐藤君は柄を受け取ると色々な角度で見ている。

 

「刃は聖書のページを精製したものだから、下級と中級のアンデットぐらいなら一撃だと思うよ」

 

死徒になったばかりの食屍鬼(グール)動く死体(リビングデッド)程度なら倒せる。ただ、それが何百年と存在する死徒となると無理だけどね。

 

「てことは、秋の武器はそのこ、こっけん?って武器と魔法なのか?」

 

「うん、今はね。大抵の武器は使えるし、なんなら素手でも戦えるよ」

 

ルーン文字を刻んだ革手袋で殴れば大抵のモンスターは一撃だと思う。

 

「どんな武器が使えるのですか?」

 

めぐみんがキャベツをシャリシャリと噛りながら聞いてきた。噛むスピードが早い。口に咥えたかと思えば一瞬で食べ終えている。

 

「んーと、長剣、短剣、大剣、双剣、刀、長刀、槍、薙刀、弓、投擲剣に、あっ、投擲剣っていうのは黒鍵の事ね。あとは素手かな・・・・・・って、どうかした?」

 

「「「・・・・・・・・・・」」」

 

指を折りながら使える武器を数えていると話を聞いていた三人が口を開けて呆けていた。アクア?シュワシュワを飲みながら唐揚げをむしゃむしゃと頬張っている。あ、また衣ついてる。

 

「そ、それだけの武器を使えるなら王都に常駐している一流冒険者に引けをとらないぞ」

 

「残念だけど今上げた武器の中でまともに使えるのは四、五種類ぐらいなんだ。あとは三流止まりがいいところだよ」

 

双剣、長剣、刀、素手に投擲剣ぐらいが上手く使えるって自負はあるね。

 

「だから、前衛の攻めは僕に任せてよ。ダクネスが守って僕が攻める。めぐみんは後衛で爆裂魔法の準備をして撃ち込む。佐藤君は後衛でめぐみんの守りながら全体の俯瞰をしつつ、スキルでモンスターからアイテムを奪う。並びとしたら良い方だと思うけど?」

 

「そ、それはつまり・・・・・・私に肉盾になれということだな!?」

 

「いや、誰もいってないし」

 

「お、お前もカズマに負けず劣らずの鬼畜具合だ・・・・・・!私を囮にしてモンスターに襲われているのをニヤニヤと笑いながら見ているつもりだな!!」

 

「いや、しないし」

 

「モンスターに襲われる私・・・・・・鎧は砕け、剣は折れ、モンスターに連れ去れ、巣に連れていかれた私はこう言うのだ!『私の体は堕とせても、心は堕とせると思うな!!』と!モンスターにあらゆる辱しめを受ける私!!しだいにモンスターから受ける辱しめが快楽に変わり、そして最後には・・・・・・にゃふぅぅぅぅぅぅ!!」

 

「ねえ、君変態なの?一人で変な解釈して興奮するのやめてくれない?」

 

一人で変な解釈して頬を赤くして、体をモジモジとさながら変なことを口走っている。見る人が見れば今のダクネスは魅力的に見えるんだろうけど、中身を知っている僕にしたらドン引きものだ。

 

「ねえねえ、シュウ。私は?私は何をしたら良いのかしら?」

 

左手にシュワシュワが並々と注がれているジョッキ、右手には唐揚げを握っているアクアが目をキラキラとさせながら聞いてきた。・・・・・・普段は動きたくないとか、女神なんだから敬ってとか言ってるくせに、仲間外れは寂しいのか。佐藤君の方を見るが、目どころか顔ごと逸らされた。

 

「・・・・・・アクアはこのパーティーの貴重なアークプリーストだから、出来るだけ危ない目にあってほしくないんだ。後方で僕たちが戦っているところを見守っておいてほしいんだ。つまり、アクアはこのパーティーの勝利の女神ってことなんだ」

 

後ろから佐藤君とめぐみんの『うわぁ・・・・・・』という引いたような声が聞こえるが無視。ダクネスは一人で妄想の幅を広げている。想像力豊かなことだ。

 

「そ、そうよね!!私は水の女神アクア!アクシズ教の御神体!安心しなさいシュウ!あなた達がどれだけ怪我をしても私が癒してあげるわ!」

 

何故か頬うっすらと赤くしているアクアが胸を張ってそう宣言した。よし、これで少なくともアクアが前線に出てくることが無くなった。

 

(そういえば・・・・・・今、女神とか口走っていたけど誰も気にしてないみたいだしいいか)


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