メダロット2 番外短編集   作:鞍馬山のカブトムシ

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おまけにキクヒメのロボトルもあります。
描かれることなく敗退したスクリューズ子分二人(イワノイ、カガミヤマ)と、主人公イッキの幼馴染であるアリカが、イッキのライバル・コウジと戦う場面。



番外1.メダロッ島ロボトル大会(スクリューズとアリカ)

 スクリューズとは、ギンジョウ小学校にその人ありならぬ、その三人ありと称されるほどのメダロッターであり、若干、破天荒な行動をとることでも知られる悪ガキ三人組である。

 メダロッ島選手控え室。

 三人のロッカーは離れていたので、子分であるイワノイとカガミヤマはキクヒメのロッカー前に集まった。いつもの調子はどこへやら、さすがに大勢の外国人と大人の目があるので、三人は普段よりかは大人しかった。イワノイは改めて、周りを見た。人人人。黄色人種もいれば、黒人と白人もいる。

 

「すっげえなあ。カオスって、こういう時にいうのかね」

「うん。洗濯のしがいがありそうな状況だな」とカガミヤマ。

「そんなことより、イッキの試合はどうなったんだい?」

 

 周りの人々なだ少しも気にせず、キクヒメは子分たちにイッキの試合はどうなったか聞いた。イワノイとカガミヤマは、キクヒメに代わって、二回戦で戦うことになるであろうイッキとの試合を視察するよう命令されていた。

 

「ああ、へい。それがですね。イッキの奴ったら、相手のカリンちゃんていうかわい子ちゃんにメロメロで、手を抜いていたんです。そしたら、その女の子にやる気を出せと叱られて、ロクショウまでに叱られて……」

「長い! 結果だけ話せ」

「女の子のメダロット。セントナースが押さえつけられた時、敵わないと見て、カリンという子がギブアップしやした」

 

 カガミヤマが簡潔にまとめた。キクヒメは不敵に微笑んだ。どうしやんたですかと、イワノイは恐る恐る聞いた。

 

「ふっふっふ。イッキ、恐るるに足らず! 少しは強くなったかと思いきや、そうでもないらしいね。まっ、一応、全力は出してあげるか。ここんところ、あいつ調子に乗っている感じがするしね。自分がどの程度の物か、思い知らせてやろう」

 

 おーっと、子分二人はキクヒメ姉御に拍手を送った。さすが、我らが親分。強くて傲慢で頼もしい。キクヒメはじろりとイワノイとカガミヤマを睨んだ。

 

「準優勝やベスト4は譲ってもいいが、優勝は誰の手か分かっているね?」

 

 もちろんですともとイワノイは揉み手をし、カガミヤマは帽子の位置を直した。幸いにも、二人はキクヒメとはある程度、離れていた。順調に行けば、本当は後半戦となる四回戦か五回戦で当たることになるのだが、そこは三人とも気にしなかった。

 キクヒメは立ち上がり、一回戦の相手となるキール王子を見た。王子といっても、ガキじゃん。私より背がでかくて、乗馬が上手ければ、考えないことも無かったのに。

 闘技台に着くと、キール王子に先にメダロットを出させた。王子のメダロットは人体模型を模した機体、マッドマッスルだった。キクヒメは当然、赤い猫型のペッパーキャットことセリーニャ。

 

「セリーニャ。王子様だろうと構わねえ。軽く揉んでやりな」

 

 うにゃあとセリーニャは返した。

 ミスター・うるちが試合開始を告げる。ロボトルファイト!

 マッドマッスルが脚部のエンジンを全開。片側のキャタピラともう片方の車の車輪が回転し、セリーニャに向かってマッドマッスルが突進する。右腕のコードの先っちょを模した右腕で押さえつけようとしたが、セリーニャは突きだされた腕を台にマッドマッスルの顔面に向かって飛ぶ。マッドマッスルは頭部に電流を帯びたパンチを食らわされて、動きが鈍る。追撃に車輪側にも電流を浴びせておいた。

「コ…茶:@0lp:ooダ…ビi!」キール王子が怒ったように、ショーチュー王国の難解な言語で指示をする。

 マッドマッスルは左腕の球体状の腕を闇雲に振り回したが、当たるはずもなく、力を込めて振って空振りしたら、セリーニャに両腕を掴まれて大量の電流を注ぎ込まれた。ぼんと音がし、マッドマッスルの左腕がショートして内側から破裂した。キール王子が益々叫ぶ。

 武器を失い、足と頭にもダメージを負ったとなれば、後はもうただの消化試合となった。

 セリーニャは尻尾で横っ面を引っ叩くと、マッドマッスルの両肩に乗り、止めに二回、左右の腕からそれぞれ拳骨を繰り出した。第一試合二回戦はキクヒメの勝利。

 泣き喚いて連れ去られるキール王子を見て、キクヒメは挑発的に舌を出した。

 

「何が王子様だ。笑わせるんじゃないよ! ただのボンボンの糞ガキじゃん」

 

 通路では、待機していたイワノイとカガミヤマがキクヒメの勝利を祝った。

 

「さすがっす姉御。あんな王子なんて目じゃないっすね」

「うんうん。洗濯が良かったな」

 

 試合は進んでいき、いよいよイワノイの番が来た。イワノイの対戦相手は、ジョー・スイハンというネイティブアメリカンの青年だった。

 

「へえ、さっきのガキよりかは幾分、良い男と言えるかもね」

 

 キクヒメの言葉に、イワノイはムッとした顔をジョーに向けた。ジョーがこちらを振り向き、歩み寄る。挑戦を叩きつけられるかと身構えたが、ジョー・スイハンは笑顔で手を差し出した。

 

「よろしくお願いします、イワノイくん」

「ええ!? はあ」

 

 ジョーの満面な笑みを向けられて、イワノイは瞬時にして敵意を無くした。そして、ジョーと握手したとき、優男な外見に寄らず、意外と握力が強くてびっくりした。

 

「行ってこい、イワノイ!」ばしりとキクヒメに背中を叩かれた。

 

 闘技台でジョー・スイハンと向かい合う。ジョー・スイハンはネイティブアメリカン型メダロット・ティーピーを転送した。イワノイはブルースドッグである。

 

「負けるもんか。ブルースドッグ」

 

 ブルースドッグは腕を上げて応じた。試合開始!

 ジョー・スイハンのティーピーが動く。ティーピーの動きには隙が無く、早い。格闘型は総じて動きが早く、弾は当てづらいが、イッキのヘッドシザースはパーツ性能に頼っているのに対し、ティーピーは明らかに慣れていた。

 ティーピーの腕から硫酸砲が発射。ブルースドッグは頭を伏せたが、、間髪入れず左腕から射出された硫酸は避けきれず、ばしゃりと右腕に当たり、飛散した硫酸の一部は頭と左腕にもかかり、ダメージ大。右腕はどろどと溶けて、崩れた装甲と銃身が床に落ちる。一発目の硫酸は囮だったのだ。

 

「撃てー! 撃ち返せ! ティーピーの装甲は薄めだから、一発でも当たれば、勝機はある」

 

 ブルースドッグは左のライフルで撃ち、胸部の左右ギミックを展開して、ヘッドキャノンをティーピーに発砲。だが、ティーピーは難なく避わし、更に硫酸砲をブルースドッグに当てる。今度は左足が溶けた。ブルースドッグがひぃぃと悲鳴を上げる。イワノイはジョーを見やった。こんにゃろと言ってやろうと思ったが、言えなかった。

 先ほどの好青年はどこへやら、ジョー・スイハンの眼はぎらぎらと光っており、イワノイはジョーの(たん)に押された。

「楽にしてやれ」ジョーが顔色変えず、命じる。

 近づいたところをヘッドキャノンで迎撃しようとしたが、ティーピーは近づかず、両腕と胸部の三か所から酸を放った。ぎゃああと断末魔を上げて、ブルースドッグは左腕とティンペットを残し、頭部と胸部に右足が溶けて混じり合う。

 全く何もできず、溶ける自身の愛機を見て、イワノイは何も考えられなくなっていた。ジョーが済まなそうな顔で来た。

 

「済まない、イワノイくん。やりすぎた。僕も修復を手伝うよ」

 

 ブルースドッグのパーツは速やかに回収された。イワノイは大会運営の係りとジョーに連れられて、控え室に戻った。

 キクヒメは無言でイワノイの肩を叩いた。

 

「気落ちするな。私が勝つから。よし、カガミヤマ。次はあんたの番だよ」

 

 へいとカガミヤマは胸を叩いた。イワノイには無理に応援させず、ブルースドッグの居る治療室前にいさせた。

 カガミヤマの相手はいくら待っても現れなかった。うるちが不戦勝を告げようとしたとき、観客席から待てと声が上がる。そして、観客席から飛び出し、くるりと回転して着地した。

 

「待て! 正義の味方であるリョウ様はここにいるぞ!」

 

 辮髪頭の中国人と思しきメダロッターリョウは、赤いキノコ頭のメダロットを出した。時間が無いので、うるちはそれぞれの選手の名前だけを言って、試合を開始させた。

 

「カガミヤマぁ! あんなふざけた奴に負けるんじゃないよ!」

「へい姉御」

 

 キースタートルの鋼太夫もへいと返す。カガミヤマと鋼太夫は、イワノイとブルースドッグの敗北を知り、勝てねばいけないとやる気満々。だがしかし、リョウのメダロットの実力はそんな二人を遥かに上回っていた。

 

「いっけーーぇ!! ビューティ・キィッス! キラキラーン・ムチュー♥」

 

 リョウの舐めているとしか思えない叫びを合図に、謎のメダロットは両腕のドリルを回転させて、目にも留まらぬ速さで鋼太夫に向かって一直進した。

 カガミヤマは右のメガトルレーザーで応戦するよう命じ、鋼太夫は右腕を向けようとした。右腕を上げた時にはもう遅く、リョウのメダロットは鋼太夫の目前に迫っていた。そして、鋼太夫は両腕から繰り出されたドリルパンチをまともにくらい、場外に吹っ飛ばされた。機能停止はしなかったものの、場外に落ちても、機能停止の判断が下される。よって、カガミヤマと鋼太夫は一瞬にして敗北を宣言された。

 ブルースドッグに続いて、鋼太夫も治療室に運ばれた。黙して座る子分二人の前に、キクヒメが立つ。慰められると期待したが、やはりというか、キクヒメは子分二人の頭をごごんとぶった。

 

「えーい! 情けないね。天下のスクリューズの名折れだよ。特にカガミヤマ。せめて、イワノイより持てよ」

 

 しゅんとカガミヤマは肩を落とした。

 

「こうなったら、どいつもこいつもはったおしてやるよ」

 

 子分二人が気落ちしようと気にせず、我が道を行くキクヒメ。さすが姉御、凄いっす。でも、たまには気にかけて。二人は同じことを思った。

 しかし、後には結局、キクヒメもイッキに負けてしまうことになる。負けて戻ったキクヒメに対し、イワノイとカガミヤマはどう声をかけたものかと迷った。子分二人の気遣いなど要らぬとばかり、キクヒメは買い物に行くよと言った。

 

「私らがいない試合なんて、見ていても意味がないよ。ほら、行くよ」

「行くって、どこにですか?」とイワノイ。

「メダロットを買いに決まってんだろ! 次は勝つよ!」

 

 キクヒメの勢いに押されるように、イワノイとカガミヤマは立ち上がった。負けた直後にも関わらず、すぐに次のことを考えられるキクヒメ。そこは、素直に尊敬に値すると二人は目を合わして頷いた。そうして、スクリューズは負けたショックを吹っ飛ばすぞというキクヒメ提案の下、今までの戦利品の大半を売っ払い、通常より安く売られていたメダロットのセットを購入した。

 イワノイは接近戦主体のカマキリ型ヒパクリト。カガミヤマは、ビームを放つ赤い流線型ボディが目立つザリガニのロールスター。キクヒメはペッパーキャットとは対になる、雪だるま型のフラッペを仲間に加えた。

 三人と六機は手を重ねると、えいえいおーと拳を突き上げた。

「新生スクリューズ結成!」

 

 

 

 アリカはイッキの前では強がって見せたものの、不安だった。コウジとアーチェの強さはパーツの性能うんぬんではなく、本当に強いからだ。

 メダロッ島に来るまでの間、そこそこロボトルはこなしたが、一発でも当てられるかどうか、ブラスも自信が無かった。

 

「やるだけやるわよ」

「はい、アリカちゃん」

 

 ブラスを伴い、いざ闘技台へ。コウジは少し遅れて、ウォーバニットと共に登場。久しぶりに会い、和やかにご挨拶とはならなかった。

 

「アリカといったな。悪いが、手加減はできない。一発もあてさせず、早々に蹴りをつける」

 

 アリカはコウジの挑戦を受け取った。

 

「あんたこそ、負けてもピーピー泣かないでよ」

 

 ここまで言われて、黙って引き下がっては女ジャーナリストとして廃る。試合開始と同時に、ブラスとアーチェは互いのライフルを向けて撃ちあう。アリカは索敵全開を指示。ブラスはどんな動きにも対処できるよう、索敵レーダーを発動させた。

 だが、アーチェの動きの前に、索敵は無意味であった。アーチェはどんどんとスピードアップした。いくら動きが見えるといっても、自身がその動きについてこれなければ意味がない。ブラスはアーチェの動きに付いて行こうとするが、追いつくはずもなく、動きを予想して撃っても、アーチェは軽々と避けて、ブラスが撃たれる。ブラスの装甲が凄まじい勢いで削れていく。

 ブラスは気合いを込めて、ゲッチュゥ! とショートショットを撃つと、アーチェも右ライフルを発射。ブラスの銃身は一つに対し、アーチェの銃身は二つ。一発ずつは衝突しあって弾けたが、残る一発はブラスの右腕に直撃。ブラスの腕から装甲ごと弾倉が吹っ飛び、右腕が使用不可となる。

 一発でも、一発でも当てなければ。

 イッキはラッキーパンチとはいえ、コウジに勝利した。勝てなくてもいい。せめて、一発でも当てなければ、会わせる顔が無い。

 コウジは一撃で仕留めようとはせず、マシンガンで体力を削って行く戦法に変えた。ブラスは右半身を盾に、防御する。アリカはここしかないと決めた。機関銃掃射による衝撃で少しだけなら、動きが鈍るはず。ブラスに伝えると、そうですねと返ってきた。

 

「ですが、それでも素早すぎです」

「根性でカバーよブラス」

「了解」

 

 ブラスはダメージを覚悟で、パリティバルカンで応射。二人は読んでいたのか。ブラスがパリティバルカンで応射するや、アーチェはすぐさまマシンガンからライフルに切り替えた。ブラスの右リボンが吹っ飛び、頭に穴が空く。

 アリカはがっくりと膝を付いた。やられた。一発もあてられないとは、我ながら情けない。

「やるな」コウジがアリカとブラスの健闘を称えた。

 

「世辞はよしてよ」

「世辞じゃねえよ。ほら、見ろ」

 

 アリカは闘技台に立つアーチェを見て、目を丸くした。アーチェの左肩口だが、よく見ると、肩当ての先が微妙に欠けていた。一発だけ当たってたのだ。

 

「一発も当てさせないと言ったのに、これだもんな。恰好付けといて、これはカッコ悪いぜ」

 アリカは呆れたように笑った。「何言ってんの? 圧倒的だったじゃない。今のあんた、かっこよく勝ったと言えるわよ。カッコ悪いのは私の方よ。途中から、一発でも当たりさえすればいいとか、負けを認めていたし」

 

 後が控えているので、それ以上は無駄な会話をしなかった。見事に惨敗したが、一発だけでも当てることができた。一応、イッキと顔を合わせられるかな。

 アリカは気持ちを前に、選手控え室へ戻った。

 




名前のみの登場で出番はありませんでしたけど、今回はクワガタバージョンからの視点です。基本的な流れはカブトと一緒ですので、カブト側を期待していた人、ごめんなさい。次回はカブト側の視点です。
カブト側なら、ブルースドッグは氷漬け。鋼太夫は蜂の巣。ブラスはラムタムに切り刻まれていました。
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