ガンダムSEED 天(そら)の英雄    作:加賀りょう

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時間軸は第8艦隊壊滅~アフリカにいる頃位のつもりです。


第9話 未来への力

 パトリックとの会合の後、シリウェルはクジラ石の前に立っていた。

 全ての始まりであり、平和の終わりの象徴でもあるもの。

 

(……人はどこまでも愚かになれる、か)

 

 戦争をしていて負けたいと考える者はいない。兵の誰もが勝利を信じて戦場に立つ。指揮する上官を信じ、仲間を信頼して。その先に、目指す未来が在ることを祈って。

 それは連合側とて同じ。相手が何かを仕掛ければ、その上を行く手段を用いて更に上を目指す。壮大なイタチごっこだ。止めたいと思っても、今のシリウェルにはまだ力が足りない。軍内部ではかなりの権限を持つが、それでも足りないのだ。シリウェル自身が更に力を持つ必要がある。知恵と力、そして周囲を巻き込む力を。

 

『……君は運命を信じるか? ……私は、信じない。決められた未来など、認めはしない』

 

 ふと、ラウの言葉が頭に響いた。あの時、シリウェルは何も言えなかった。誰よりも今の世界を呪っているのは、間違いなくラウだ。

 人は誰でも限りある時間を生きている。だが、ラウたちにはその時間が特段に少ない。既に見えている命ならばと、ラウは人が破滅に向かうことに嬉々するだろう。止められるのは、シリウェルだけだ。

 

「未来は必ず変えて見せる……俺はそのために……」

 

 誰もいないフロアで、シリウェルは拳を強く握りしめた。

 

 

 

 

 

 ☆★☆★☆★☆★☆

 

 

 

 夕刻のファンヴァルト邸。

 軍本部から帰宅したシリウェルは、自室にいた。パトリックから受け取ったディスクの中身を確認するために、PCを起動させた。ゆっくりと取りかかるわけにはいかない。ある程度の目処は付けて、製造までの工程を作る必要がある。

 起動したPCにディスクを読み込ませると、流れてきた文字列を凝視した。

 どれだけそうしていたかはわからないが、一通りの内容を読み切るとシリウェルは新たにディスクと取り出す。

 研究が進んでいるとはいったものの、どの程度かは話に出てこなかったが、ディスクの内容を見る限りでは、ほぼ実践に使用できるまで成果は出ているようだった。一体いつから取り掛かっていたのかはわからないが、戦争に投入するつもりだったことは明らかだ。

 

「急がなければならない、か……」

 

 時刻はすでに夜も遅い。おそらく、母も妹も寝ている時間だろう。もしかしたら、部屋をノックしにきていたかもしれないが、集中していたシリウェルには届いていない。食事をとることもしていないが、今はこちらの案件が優先だ。

 シリウェルは再び、キーボード叩き始める。

 連合のMSの性能も考慮し、その上の機能をもつMS。パイロットは選ばなければいけないだろうが、それでもかまわないだろう。

 依頼された数は3機。だが、シリウェルはもう一つ製造するつもりだった。

 自身の力として使えるMSを。

 

 最初の機体は、多くの火力を持つものとした。機体は射程距離がない場合でも戦えるように、全距離からの攻撃を可能とするオールマイティーな力を持つ。パイロットに技量がなければ、宝の持ち腐れになるだろうが……。

 これだけの力は、核を動力とするからこそ可能なものだ。いずれは、核ではない別のエネルギーを動力と出来るように考えるべきだが、今は時間がない。

 

 次の機体には、攻撃手段を多く搭載する。最初のものが後方支援も可能なものなので、その援護を得ることで攻撃特化として戦場を駆けることの出来るように。この二つの機体はセットで使用した方がいいだろう。

 

 基本設計が固まれば、シリウェルは設計図を書き始める。脳内でシュミレーションしながら駆動部分へも手を伸ばした。

 

 最後の機体は、この二つの機体とは違うものがいいだろう。

 三体全てが同じ戦場にいるとは限らない。ならば、砲撃をメインとし単独でも優位に立てるような武力を持たせた方が良いだろう。

 

 シリウェルの集中力は、翌日も続いた。

 

 粗方の構図が決まり、初期段階としては仕上がりかけている。そんな中で自身が乗るMSについても設計を考える。だが、どうしても核エネルギーを使うことに嫌悪を感じてしまっていた。

 父の命を奪った力を自分が使う事が嫌なのだ。子どものような感情ではあるが、シリウェルとしてこの一線を越えることだけはしたくなかった。幸いにして依頼された機体は3つ。シリウェルが行っているのは入っていないため、核エネルギーは使用不可だろう。ならば、やはり別のエネルギーを考えなくてはならない。

 

(核に代わるもの、か……簡単に思い付けば苦労しないよな……)

 

 核のように無尽蔵に動ける力。動力。それは何かないのか。

 設計を進めつつもシリウェルはこの難問に頭を悩ませるのだった。

 

 

 

 緊急の連絡が入ることもなく、自室に籠ること3日。さすがに心配になった母クレアが扉をノックし、開けるとそこには机に覆いかぶさるように眠るシリウェルの姿があった。

 

「シェル……?」

「うっ……」

 

 声をかければ、シリウェルが身動ぎをし体を起こす。寝ぼけたような顔で、クレアを見た。

 

「……? 母上……?」

「……まったく、帰ってきてからずっと部屋にいるんですもの。一体、今何日だと思っているの?」

「……えっと……どれくらいですか?」

「3日です」

 

 カレンダーをみれば、確かに邸へと帰ってきてから3日が経過していることが理解できる。クレアに視線を戻せば、にっこりと笑みを作っていた。

 それは、怒っている顔だ。それもとてつもなく。

 

「シリウェル、何を言いたいかわかりますか?」

「……申し訳ありません。仕事をしていたので」

「言い訳はそれだけ? 食事も睡眠もとらずに? それで隊を預かる責任を持つ人が、それでいいのかしら?」

「……」

「……貴方の立場はわかっているわ。けれど、どれほど力があってもそれでも、人に休息は必要なの。わかる?」

「はい……」

 

 今回ばかりは、シリウェルが悪い。クレアのいうことは正しいのだ。この後30分程度、クレアの高説を聞くこととなった。

 

 

 

「ごほん……では食事にするわ。アーシェも待っているのよ。お風呂に入ったら来なさい」

「……わかりました」

 

 パタンと閉まる音にシリウェルは重い息を吐く。安堵したのか気を抜けば眠ってしまいそうだった。

 それでもこれ以上食事をとらないと再び説教が始まることは間違いない。息をつきながら、重い身体を動かし、シリウェルは着替えを始めた。

 

 

 

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