主人公視点!設定話をようやく少し出せましたw
自由前に作った設定話なのでアコードとかそういうのはありません(汗
「流石に、これは予想外だったな……」
「大丈夫ですか、ファンヴァルト隊長?」
「あぁ……」
ここにいるのは、シリウェルとアスランの二人。それ以外に人の気配はない。そしてここが国防本部ではないことも間違いなかった。
何故ここにいるのか。シリウェルはここに来る前のことを思い返す。アスランを伴い、シリウェルは最高評議会の審議に参加していた。議題はロゴスの件だ。議長であるウルスレイはリモートでの参加、それ以外の者たちは顔を突き合わせてである。
『議長、何故ロゴス討伐をご自身のみの決断で進めるのですか? 我々との審議をしてからでも――』
『これまでの状況、地球で見てきた光景。それによって時間はないと判断しました。プラントにいるよりも、現場にいる私の方の判断が優先されてしかるべきだと思ったまでです』
『独断専行による混乱が、先の大戦でなにをもたらしたのかおわかりなはす。それでもご自身のみの判断で決めると仰るのですか?』
『ベルリン侵攻の折もそうですが、人を人とも思わぬ所業、強化人間として子どもを実験道具とし、戦場へ送り込む。非人道的な行動をする彼らを、このまま野放しにしたままの方が宜しいと?』
『そうではありません』
『そもそもこちらは決して攻撃をしかけるでもなく、ただ防衛と支援のみに徹してきました。それでも彼らの行動は収まるどころか広がるばかり。議論をしている間に、戦火が広がり、多くの人々が犠牲になるのを見ていると?』
審議ではあるが、ウルスレイの独断による言動を非難する者たちとそれを擁護する者。行われているのはその応酬だ。感情論にされてしまえば、ウルスレイの方に軍配が上がってしまう。だがそもそも、こういう場にいる者たちは感情論に流されてはいけない者たちばかりだ。わかっていても、先の大戦、ユニウスセブン落下以降の大西洋連邦の動き、やるべきことはやってきたというウルスレイの姿勢。頷く議員たちも多く出てきた。いつまでも構えているだけでは何も変わらないと。動く必要がある。これは戦争ではない。虐殺に対する正義の鉄槌なのだと。
『シリウェル様はどうお考えですか?』
『……ロゴスを放置できない件については同感だ。だが、最高評議会を待たずに行動した点については議長の先走りだろう』
『私に非があると』
『議長の言いたいこともわかる。だが為政者が感情論に流されれば、それは政治ではない』
『……なるほど、一理あります』
といいつつ納得はしていないという表情だった。この時にせめてアスランだけでも離席させておくべきだったのだろう。何を想ったところで今更だけれど。
休憩を挟み、再び審議が始まるところで、シリウェルは酷い眠気を感じた。周りを見渡せば、同じように頭を抑えている者、蹲る者が多くいる。隣を見ればアスランも同じように頭を抑えていた。近年では滅多に使われない催眠ガスだ。とはいえコーディネーターならば、多少のものは耐えられる。当然、それに特化したものだろう。そんなことを考えながら、シリウェルは意識を失ってしまった。
拘束されているのは手と足。全く動かせないというわけではないが、窮屈なのは変わらない。武器もすべて取られている以上、下手に動けば自らを傷つけるだけだ。
「すまない、アスラン」
「え?」
「抵抗したかっただろ? そう簡単に君が意識を失うとは考えられない」
「……おかしな動きがあれば何もせず黙っているようにと、そうおっしゃったのは閣下ですが」
「真面目だな、君は本当に」
最高評議会の面々を巻き込んで行動するとは思わなかったが、確かにアスランに釘をさしたのはシリウェルだ。それでもアスランは第二世代コーディネーターで、特に優秀な部類に入る。催眠ガスごときでは完全に意識を刈り取られるまではいかなかったはずだ。つまりわざと拘束されたことになる。シリウェルの指示に従う形で。
「まぁいい。それでここがどこかは把握しているか?」
「えぇ。それと……閣下の言う通り、ギルバート・デュランダルは既にここから逃げているようです。少なくとも以前拘束されたと言っていた場所にはいませんでした」
「……ウルスレイの仕業だな」
少なくともオーブが大西洋連邦との同盟に参加する前までは、拘束されていたことを確認している。その後、世界情勢もありシリウェルの目が届きにくかったことはあるが、議長自身が手を回していれば無理な話だ。誰かを責めることもできない。
「彼と議長は何をしようとしているのか、わかりますか?」
「まぁ……ギルの方は見当がつく。ウルスレイと意見が一致するとは思えないが……」
ギルバートを拘束した時、ディステニープランについてウルスレイとも話をしたことがあった。ただそれに従うだけならば、そこに生きている意味はない。確かにウルスレイはそう言っていた。何かが起きて、考えが変わったのであればまだしも、彼女はそう簡単に考えを変えるような人間ではない。あの時からではなく、それ以前からずっとシリウェルの信奉者であることに変わりがないように。
「腑に落ちないな。あの二人が同じ終局を考えているとは思えない」
「……であるならば、違う結末を描いている、と?」
「あぁ」
だからこそわからない。ただ、ここにずっといることもできないことは確かだ。さすがのシリウェルも、ここにいては情報が得られないのだから。
「ここを出る必要はある。すんなりと出してくれるとは思えないが……行けるか、アスラン?」
「はい、問題ありません」
「頼もしいな、本当に」
「俺はそのためにここに来ましたから」
元ザフトレッドのエリートであるアスラン。シリウェルもハーフコーディネーターとしては色々と特殊ではあるので除外するとして、現時点のザフト軍の中でもアスランに敵う者は早々いないだろう。これほど心強い味方はいない。
「俺も手段を選んではいられない、か。本当は使いたくなかったんだが仕方ない」
「ファンヴァルト隊長?」
「……」
シリウェルはアスランの拘束具へと視線を向け、ある一点だけを睨みつける。その瞬間、拘束具の部品がパリンと割れた。外れたことでアスランの手が自由になる。同じように足、そして自分の手足からも拘束具を壊す。
「あの……」
「人前でやるのは久しぶりだったんだが、うまくいって良かった」
拘束から解放された手首を撫でながら、動きを確認する。アスランがどう反応していいかわからないといった様子でシリウェルを見ていることに苦笑した。
「副作用なんだ、これは」
「え?」
「キラたちがいたメンデルに、俺がいたことは話しただろ」
「はい」
「そこで俺は……要するに実験体のようにされていたから。その過程で色々とな……そうしていつの間にかできるようになっていたことだ」
ハーフコーディネーターとして生まれたシリウェルだったが、生まれたばかりの頃は体調を崩すことも多かった。心配をした両親が遺伝子研究をしていたメンデルを頼ったのが始まりだ。体調は落ち着いたものの、その過程で見つけた特異遺伝子の有用性を巡って、シリウェルを色々な理由を以てメンデルに留まらせた。不審に思った父が連れ出してくれなければ、シリウェルもメンデルで死を迎えていたかもしれない。
「たい、ちょう」
「利用できる力だから今はもういい。気にするなとは言わないが、見られちゃ説明するしかないもんな」
「……」
「君にだから言うが、もしかするとキラも……いや、これは憶測の域を出ないか。忘れてくれ」
「そ、れは」
「まずはここを出よう。話はそれからだ」