ガンダムSEED 天(そら)の英雄    作:加賀りょう

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原作で言うところのアフリカが終わってオーブへ向かう辺りの時間軸です。


第11話 別離

 クライン邸から戻ったシリウェルは、リビングにてクレアたちを呼び出した。

 

「一体どうしたの?」

「兄様?」

 

 改まって話があると言われれば不思議にも思うだろう。だが、今の時期でなければならない。これ以上戦火が広がり、ナチュラルが住み難くなるまえに。

 

「……母上、プラントから避難してもらえませんか?」

「えっ?」

「今ならばまだ間に合います。動けるうちに、オーブに行って下さい」

「あっ……」

 

 オーブへ避難する。その言葉の意味がわからないクレアではない。プラント、即ちコーディネーターの国から脱出せよということだ。

 

「……私の身が危険ということなのね」

「はい。今後の戦況次第では、そうなることが考えられます」

「そう……貴方の足枷かしらね、私とアーシェは」

「……」

「何も言わなくていいわ。足枷になる可能性は考えていたもの。離れるのは勿論寂しいけれど、貴方の邪魔にはなりたくないのだもの」

 

 クレアはすっと立ち上がると、シリウェルの隣に座った。そのままシリウェルを抱き締める。突然のことに、シリウェルは動揺を隠せなかった。

 

「は、母上!?」

「……本当に立派になったわ。あの人も喜んでいるでしょう。でも……忘れないでほしいの」

「……?」

「貴方はシリウェル・ファンヴァルト。プラント英雄でも、アスハ家の子でも、友好の象徴でもない。私、クレアとテルクェスの子。それは忘れないで……愛しい子」

「……」

 

 ゆっくりと身体を離すと、クレアはその頬に手を添える。

 

「……他の誰でもない貴方にしか出来ないことがある。信じて進みなさい。私とアーシェのことは心配いらないわ」

「……はい。ありがとうございます、母上」

 

 その様子をじっと見ていたアーシェは、顔を俯かせて膝の上の拳を握りしめた。

 

「アーシェ……貴女も来なさい」

「!? ……母様」

「暫く会えなくなるのだから、ね」

「は、はいっ」

 

 クレアの反対側へとアーシェが座り、シリウェルの背中へとぎゅっと抱きつく。これから暫くは会えなくなる。シリウェルは、好きなようにさせることにした。ポンポンとアーシェの頭を撫でる。離れがたいのはシリウェルとて同じなのだから。

 

 

 そうして、翌日クレアとアーシェはオーブへと飛び立った。シリウェルは空港まで見送りに行ったが、その足で軍本部へと戻っていった。

 

 同じ頃、地球軍の足つきがオーブ領海内へと入っていた。

 

 

 

 

 

 ☆★☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

 

 本部へと顔を出した後は、シリウェルは母艦であるヘルメスへとやってきた。

 

「シリウェル様!」

「ご苦労だな。調子は変わらないか?」

「はい、いつでも問題ありません」

 

 常に出撃出来るようにしておくのは当然だが、現在戦闘は地上に移っているため宇宙戦艦であるヘルメスの出番はない。それでも、警戒を怠るわけにはいかないのだ。

 適度に休息を取るように指示を飛ばし、中へと入っていった。

 

「隊長、お待ちしてました」

「レンブラント、何か変わったことでもあったのか?」

「これを」

 

 艦の内部の司令、指揮官の席に着くとレンブラントが待っていた。言葉と共に渡されたのは一枚のディスク。

 受け取り直ぐに自席のPCへと入れる。ヘルメスはファンヴァルト隊専用ということもあり、シリウェルが使いやすいようにカスタマイズがされている。指揮官席には技術者でもあるシリウェルがいつでも作業出来るように高性能のPCが備え付けられていた。

 

 ディスクの中身は地球での戦闘内容だ。降下前から現在に至るまでの状況がそこにある。

 

「バーサーカ……か」

「隊長?」

「バルトフェルドがそう称している。彼の予想では、あれのパイロットはコーディネーターだそうだよ」

「それは……」

 

 さすがのレンブラントも言葉を失う。しかし、それと同時に理解もしているだろう。ナチュラル側に加勢しているコーディネーターも少なからずいるのだ。その理由は様々だろうが、コーディネーターだからといって必ずしもザフトではない。

 

「このディスクはどうやって届いた?」

「……砂漠の虎の副官が隊長に渡すようにと」

「なるほど。ならば、アフリカ以降はクルーゼ隊からのデータをつけただけか」

 

 バルトフェルド隊はアフリカにて壊滅している。生き残った者はプラントに戻ってきているということだ。どういった理由で、シリウェルに渡したのかはわからないが。

 

「……バルトフェルドとはそれほど話したことはないんだけどな。お前はどうだ?」

「私、ですか? ……軽い男ですよ。ですが……信用できる男でもあります」

「変な評価をするな?」

「事実ですので」

 

 よくも悪くも軍人ではあるが、抜くところは抜く。己の使い方をよく知っている人物、というのがレンブラントの総評だった。ならば、信頼できる情報ということだろう。

 シリウェルは引き続き中身を確認する。

 コーディネーターだという相手のパイロット。恐らく上層部はこの事を知らない。地球軍側は知っているだろう。ということは、このパイロットの行き着く先は飼い殺しか。どちらにしてもそう遠くない未来に抹殺の対象となるはずだ。

 ブルーコスモスが蔓延る地球軍に、コーディネーターの居場所はないのだから。

 

「……そしてオーブ、か。つくづく厄介事を持ち込んでくるな」

「……隊長」

「万が一の保険でも作っておくか……」

「?」

「こっちの話だ……俺は評議会に向かう。夜には戻る」

「はっ!」

 

 この後シリウェルは最高評議会に呼ばれていた。それは、最高評議会の議長を決める重要な会議に参加するためだ。既にほぼ決定となってはいるが、議会の承認なくしては本決まりにはならない。

 穏健派でもったシーゲルから、推進派であるパトリックへと変わるプラントの最高権力。昔の父と話をしていた姿を知っているシリウェルとしては、今のパトリックの変わりよう、強硬姿勢には疑問を抱く。ナチュラルを殲滅しようとしているのではないかと、危惧しているのだ。

 それこそが、ザフトの不安要素でもある。この先、どのような戦況へと導いていくつもりなのか。シリウェル自身も見極めなければならない。それがどれほど険しくとも、平和を諦めるわけにはいかないのだ。父のような犠牲を二度と生まないために。

 

 シリウェルは足早に評議会へと向かった。

 

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