ガンダムSEED 天(そら)の英雄    作:加賀りょう

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短めです。


第13話 翌朝の困惑

 翌朝、いつもより早いうちに目が覚めたシリウェルは仮眠室のベッドから上半身を起こした。ふと横を見れば、いまだに寝ているユリシアの姿がある。布団から見えた肌を隠すようにかけ直すと、寝返りを打ちシリウェルの腕に手を触れてきた。温もりを求めているのだろう。昨日は泣き顔だったが、寝ている姿は幸せそうな笑みを浮かべている。

 

「……」

 

 己の所業を後悔しても遅いが、ユリシアが落ち着いたのならば必要なことだったと割り切るしかないだろう。

 脱いだ上着を羽織って、シリウェルはシャワーを浴びに行くことにした。

 スッキリしたまま軽くシャツを着た状態で戻れば、ベッドの上で膝を抱えて座っているユリシアがいる。

 

「……ユリシア?」

「あ……シリウェル様……その」

「おはよう」

「お、はよう、ございます……」

 

 挨拶をすれば顔を真っ赤にしながら、ユリシアも返してくる。布団で身体を隠しているところをみると、羞恥でどうしていいかわからないと言ったところか。昨日のユリシアは、彼女らしくはなかった。

 衝撃が大きかったこともあるが、冷静になればおかしいことだと思うはずだ。

 シリウェルはベッドに近づき、ユリシアの前に座った。

 

「……あの……昨夜は、その……申し訳ございませんでした」

「……別に、気にしていない」

「ですが! ……私、あんな言い方で……迫って……」

 

 昨日の己の言動を後悔している。冷静さを取り戻したからこそ思うのだろう。

 本来のユリシアは消極的すぎるほどではないが、昨日のように何かを縋るようなことはなかったのだから。

 

「俺と関係を持ったことを後悔しているか?」

「いえっ!! それは絶対にありませんっ」

「……なら、何を謝る?」

「……あんな言い方はずるかったです。シリウェル様の本意ではなかったのに」

 

 卑怯な言い方をしたという自覚があるらしい。その通りだとは思うが、不安定なままどこかにいかれるよりはましだったとシリウェルは思っている。こういうところが冷めているのだろうが、今本題は別だ。

 

「いずれ俺と君は結婚する。早いか遅いかの違いだ。俺も……君との婚姻を避けるつもりはない」

「えっ……?」

「俺は、君が俺に抱いてくれている感情と同じものを持っていない。だが、君以外と関係を持つつもりもない」

「……シリウェル様」

「だから気にすることはないんだ。ただ……君も知っている通り、俺はハーフだ。君は二世代ではあるが、他の相手よりも子どもはできやすい」

「はい……わかっています」

 

 遺伝子で決められたプラントルールの婚約者。更にシリウェルは一世代に限りなく近いイレギュラーな存在の一人だ。通常の婚約者同士よりは、子どもができやすい。

 元々婚約者が決められた時も、父であるテルクェスは自由に相手を決めてもいいと受け入れないつもりだったのだ。有力者の子供ということで婚約を受け入れたが、他のコーディネーターよりは可能性が高いのは事実である。

 

「……俺は後悔していない。君も同じ気持ちなら、この話はこれで終わりだ。掘り返すなよ」

「……はい」

「あとは……その恰好ではまずいだろ。着替えを持ってこさせるか?」

「え?」

 

 ここは言うまでもなくシリウェルの私室だ。シリウェルのものしかない。女性ものがあるわけもなく、男物を着せるわけにもいかないだろう。

 

「ナンナに頼めばいい」

「いえ……あのご迷惑でしょうし」

「……ここに君がいることなら知っている。昨夜、屋敷に俺も帰っていないし君も同様だ。ならば、一緒にいることは言わずともわかる。……今更じゃないか?」

「そういう問題ではありません!!」

 

 その時、呼び出しベルが鳴る。外からのだ。

 

「俺だ」

『シリウェル様……その、ユリシア殿のお着換えをお持ちしましたが、入ってもよろしいでしょうか?』

「……気が利くな。今行く、少し待て」

『はい』

 

 頼まなくともよかったらしい。流石は、付き合いが長いだけはある。一方、会話から筒抜けであることを理解してユリシアは顔を両手で覆って悶絶していた。

 

「……一応言っておくが、アマルフィへは言伝を頼んである。俺と共にいることはアマルフィも知っている」

「お、お父様に?」

「無断で外泊させるわけにはいかないだろう?」

「それは、そうですが……って……」

 

 ユリシアが考えている間に、シリウェルは着替えを始める。軍服の上着を羽織ったところで、仮眠室を出て執務室へと行くと、戸を開けた。思った通り、着替えを持ったナンナが立っている。

 

「おはようございます、シリウェル様」

「あぁ。悪かったな」

「それは構わないのですが……その、ユリシア殿は?」

「仮眠室にいる。俺は艦へ向かうから、後は頼む」

「……はぁ、仕方ありません。わかりました」

「準備が終わり次第ユリシアには、艦へ来るように伝えてくれ」

「はい」

 

 軽く準備をすると、シリウェルはそのまま部屋を出て行った。その後ろ姿にため息を吐いたのは仕方ないだろう。

 

 

 

 

 指示された通りにナンナが仮眠室へと向かう。一応ノックをすれば、奥から了承の声が聞こえた。

 中に入ると、ベッドに乗ったままで恐らく何も来ていないであろうユリシアが顔を赤く染めながら座っていた。

 

「ユリシア殿……まずはシャワーへどうぞ」

「あの……えっと」

「案内しますから、大丈夫です」

「……すみません、お願いします」

 

 シャワーを浴びさせて、着替えを置いておく。それほど時間をかけずにユリシアは出てきた。待たせていると思っているのだろう。急いで着替えたのがまるわかりだった。

 仕方なくナンナは髪を乾かすのを手伝う。それさえも申し訳なく思っているのだろうが、風邪をひかせるわけにはいかない。そうしてようやく準備が終わった。

 

「ありがとうございました、マイロードさん」

「いえ、少しは落ち着かれましたか?」

「……はい」

「それはよかったです。……昨夜のことは父君にはお伝えしておりますので、ご安心ください。それと、準備が出来ましたら艦へ来るようにと、シリウェル様より言伝をいただいています。シリウェル様も一足先に行かれましたので」

「わかりました。直ぐに向かいます。……ご迷惑をおかけしてすみませんでした」

 

 深く頭を下げるユリシア。元々彼女は気遣いのできる人物だ。昨日のようにシリウェルの元に突然訪問したり、迷惑をかけるような行動をする人ではない。ナンナもそれはわかっていた。

 

「頭を上げてください。……ユリシア殿、どうかこれからもシリウェル様をお願いします」

「……は、はい」

 

 関係を持った以上、シリウェルは彼女を見捨てることはしないだろう。

 今まで義務としてかかわってきた関係も変わる。せめていい方向に変わることをナンナは祈るだけだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

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