ガンダムSEED 天(そら)の英雄    作:加賀りょう

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いろんな意味での裏切りです。


第25話 裏切り

 時間になると、シリウェルはオーブ避難民が避難している住居近くの広場への向かった。ここは一時避難場所だ。以前のアカデミー宿舎の一つであり、今は使われていない場所だった。住居としては不十分かもしれないが、すぐに体制を整えられる場所はここくらいだ。

 

 集まったオーブ避難民たちの前に立ち、彼らの表情を見る。不安。期待。戸惑い。それらが伺えた。まだ生活をするには至っておらず、安堵することは出来ないということだ。

 

「皆、昨日は疲れただろう。ゆっくり休めただろうか……?」

「……」

 

 頷く者。困ったように顔を見合わせる者。僅かに首を横に振る者。他者多様な表情を浮かべていた。現状に不満が出るほど、精神的に安定していない。落ち着けばおのずと出てくるだろうが、今はそんな悠長なことはしていられない。

 

「今後についてだが……一時避難とはいえ、同じプラントで過ごすこととなる。子どもらには不便を強いるかもしれないが、成人済みの者には仕事を斡旋することも考えている。無論、すぐにではない。今暫くは、待機してもらうことになるだろう」

 

 ここで伝えることは、住む上での確認事項が主だ。自分たちがどうなるのかという不安を、道を示すことで和らげる。きちんとその先をプラント側が考えているということを。そういう意味では、他の議員が行うよりもシリウェルが対応して方がいい。パトリックがそこまで考えているとは思わない。あくまで、シリウェルを遠ざけるのが目的なのだろうから。

 

 情報をある程度伝えると、マリクへと引き継ぎシリウェルはナンナを連れて一度病院へと向かうのだった。

 

 

 

 ☆★☆★☆★☆

 

 

 傷口が開いたため、病院で治療をしている時にそれは起きた。

 包帯を巻いていると、シリウェルの端末が鳴り響く。医師に許可をもらい、端末を操作すれば出てきたのはレンブラントだった。

 

「レンブラント? 一体何があった?」

『……隊長、特務隊のアスラン・ザラが脱走しました』

「……何を言っている?」

 

 意味がわからなかった。脱走した。アスランが。その前に、何があったのか。

 合点がいっていないシリウェルに、レンブラントは情報画面を渡した。そこには国防から寄せられた情報が記載されている。

 

 特務隊アスラン・ザラ。地球軍と思しきシャトルにて帰還。拘束。議長の命により移送中に、脱走し行方不明。

 その後、新造艦エターナルが命令なしに出港。

 

「……」

『追跡命令が出ていますが、どうなさいますか?』

「……無駄だ。あれはヘルメスよりも速い。ヤキンに任せるしかないだろう。動く必要はない」

『はっ』

 

 通信を切り、シリウェルはため息をつく。次から次へと面倒事は重なるものだ。

 

「……シリウェル様、あまり身体を酷使しないようにお願いします。完治するのに時間がかかることは申し上げていると思いますが」

「わかっている……」

「これで処置は完了しました。……激しい動きは控えてください。勿論、MSに搭乗もできれば」

「……邪魔したな」

 

 頷くことなくシリウェルは、処置室を後にした。最後の注意については約束できないからだ。

 必要であれば、どのような状態であってもシリウェルは出撃する。パトリックの意向と食い違っていても。

 

「シリウェル様、どうでしたか?」

「……お前も心配症だな、ナンナ」

「当たり前です」

「治療は終わった。……いったん、本部に戻る」

「何かあったのですか?」

「……面倒事だ」

「はぁ……」

 

 アスランという人物はラクスを通してか知らない。だが、オーブでの参入を考えればパトリックと意見の相違でもあったのだろうと想像できる。パトリックがザフトをどこに連れて行こうとしているのか。シリウェルにも想像が出来ていた。

 更にエターナルが命令違反を起こしたという。新造艦ではあるが、あれはフリーダムとジャスティス専用の運用艦だった。となれば、動いたのは間違いなくクライン派だろう。

 ラクスが宇宙へと旅立ったのだ。アスランも間違いなく一緒にいる。

 

「……俺も、覚悟を決めるべきなのかもしれないな」

「シリウェル様?」

 

 パトリックが目指す未来も、ラウが望む未来も、どちらもシリウェルは望まない。ならば、どうするか。

 これまでの動きを見ていても、最終局面は近い。

 戦場は地球ではなく、宇宙へと移ってきている。地球軍も動くだろう。ザフトも迎え撃つに違いない。ラクスも動き出した。シリウェルにできるのは、今後のザフトがどう動くのかを監視することだ。

 

「このままでは終わらせない……急ぐぞ」

「は、はい」

 

 

 ☆★☆★☆★☆

 

 本部に戻ると騒ぎが未だ収まっておらず、しきりに人が走り回っていた。その中をシリウェルはまっすぐヘルメスへと向かう。

 艦に到着すると、レンブラントやユリシアが集まっていた。艦に来るのは随分と久しぶりだ。

 

「隊長っ!」

「シリウェル様……」

「隊長、お怪我はどうですか?」

「もう、大丈夫なんですか?」

 

 心配の声が一斉にかけられた。目の前に迫ってきそうな勢いの部下に、シリウェルも後ずさる。

 

「……その、心配をかけたみたいだが……大丈夫だ。皆、すまなかった」

「大丈夫、ではないでしょう。安静に、とマリクから聞いています」

「レンブラント……お前な」

「無理をさせないようにと、強く言われていますから」

 

 過保護過ぎるほどだが、艦長と副官は連携が取れているようだ。それについては、反論できるわけがない。諦めつつ、シリウェルは指揮官席に座った。

 

「……隊長、これが先ほどの話になります」

「エターナルが出て行ったというやつか」

「はい……艦長はバルトフェルドです。そして、軍港にラクス・クラインの姿が映っていました」

 

 監視カメラの映像には、隠しているのだろうがピンクの髪が見えていた。間違いなくラクスだ。

 大胆というか、思い切りがいいというか。

 

「……最後、だという意味だろうな。あいつも」

「隊長?」

「それで、他には?」

「ヤキンの防衛軍から、エターナルよりラクス・クラインから通信があったそうです」

 

 音声があるらしく、それが再生される。

 

『私は、ラクス・クラインです。願う未来の違いから、ザラ議長と敵対することとなってしまいましたが、私たちは貴方方との戦闘は望みません。どうか、船を行かせてください。そして、もう一度考えてください。私たちが戦わねばならないのは何なのかを』

 

 艦内が静まり返る。そして、視線はおのずとシリウェルへと向けられる。この中で一番ラクスと親しいのはシリウェルだ。皆、それを知っている。

 

「……あいつらしいな」

「そう、ですか?」

「だが、甘い。……それもあいつの願い、ということか」

「結局、攻撃をしたそうですが……MSの邪魔が入り、追撃は出来なかったようです」

「フリーダム、か……全く、やってくれる」

「隊長……我らはどうされますか?」

 

 エターナルを撃つことは、ザフト軍に通達されたようだ。といっても、どこへ向かったのかはわからない。データから見れば、いずれかのコロニー群を拠点とするだろう。しかし、シリウェルは追撃をするつもりはなかった。

 

「動かなくていい」

「……理由をお聞きしても?」

「必要ないからだ」

「……隊長、それは……」

「この艦に配置されているMSでは、フリーダムとジャスティスには勝てない。撃墜されて終わりだ」

 

 一番の理由はこれだった。フリーダムとジャスティス。現段階において、ザフトの最高戦力の機体だ。もう一機あるとはいえ、乗れる者は限られる。下手に追撃をしても、墜とされることがわかっているのだ。それに、ラクスは決してプラントを裏切ったわけではないのだから。

 

「俺が造った最新機体だからな……パイロットも技量的には上だろう。地球軍の攻撃に備えて、無駄に兵たちを消耗させるわけにはいかない」

「地球軍が攻めてくると?」

「……ビクトリア基地から上がってきている。ということは、宇宙での戦闘を準備しているということだ」

 

 ブルーコスモスはコーディネーターの殲滅を狙っているはずだった。ならば、プラントを直接狙ってきてもおかしくはない。それだけは絶対にさせるわけにはいかないのだ。

 

「ラクスに構っている暇はない、というのが本音だな」

「……隊長は、ラクス嬢を信じているのですか?」

「……俺は、あいつがほんの小さい頃から知っている。歌姫ではないラクスを。……悪いな、俺は命令書よりもあいつの言葉の方が信じられる。戦闘を望まないというのなら、放置しても構わない。それが俺の判断だ」

 

 隊長としてではなく、シリウェルとしてラクスを信じていると話しているようなものだった。裏切り者として手配されていることは、既にザフト軍ならば誰でも知っている。それを信じるということは、背信行為にも等しい。無論、シリウェルとて百も承知のことだ。ここで拘束されたとしても、本心を偽ることはできなかった。

 

「……貴方なら、きっとそういうと思っていましたよ」

「……レンブラント?」

 

 非難されても仕方ないと思ったが、レンブラントは苦笑をまじえながらも否定することはなかった。それどころか、当然の様に話す。

 

「ラクス嬢は、貴方にとって大切な方でしょう。……我らも、貴方がそう望むならば従います」

「……」

 

 シリウェルは答えに詰まった。面と向かって、追従すると宣言されたのだ。これには予想外だったが、どこかで安堵したのもまた事実。

 そんな想いを隠すように、シリウェルは苦笑する。

 

「パトリックが聞けば、直ぐに拘束に走るな……」

「それは無理だと思われますよ。……万が一、シリウェル様がラクス嬢側に付けば、ザフト軍の多くはシリウェル様と共に行くでしょう」

「……何を言っているんだ?」

 

 思わず目を見開くシリウェル。ザフト軍兵士がどれだけいると思っているのか。その中でシリウェルが関わったものなど、それほど多くはない。指揮官として、ほとんどの軍人の顔や技量などは把握しているシリウェルだが、直接の関りはないことが多い。

 

「アラスカで、隊長に救われた兵は多いのです。貴方は、やはり英雄なのですよ。我々にとっては、ラクス嬢よりも」

「……随分と買いかぶってくれる」

「貴方の行動の結果です」

「そうか……」

「ですから、いかに議長といえど貴方を拘束することはできません。……ラクス嬢が手配された時、貴方が拘束される可能性はゼロではありませんでした。でも、上はそう判断しませんでした。その理由は、貴方が重傷だったからだけではありませんから」

「……」

 

 随分と不穏な会話だ。聞きようによっては議長よりもシリウェルに従うと言っているようなもの。

 レンブラントの周りの部下たちをみても、真剣なまなざしで見ているだけだった。どうやら、本気のようだ。面倒事が次々と来ているというのに、さらなる面倒事が舞い込んだと、シリウェルは頭を抱えてしまった。

 

 

 

 

 




上手く説明できてないかもしれません。すみません。
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