港に着くと、艦をレンブラントへ任せシリウェルは空港に降り立った。
「お疲れ様です、シリウェル様」
「ナンナ? 迎えに来ていたのか?」
満面の笑みを浮かべる少女は、ナンナ・マイロード。シリウェルとの付き合いは長く、2つ年上の幼馴染である。ファンヴァルト家の使用人だったが、軍に入りシリウェルの専属に近い形で動いている。ファンヴァルト隊に所属しているのだが、今回はプラントにてシリウェルの家族の警護をしてもらっていた。
「当然です。それと、報告を……クレア様もアーシェ様もお変わりありません」
「そうか。ありがとう」
「礼など不要です。ファンヴァルト家の皆さまをお守りするのは当然なのですから」
元はファンヴァルト家の使用人であるため、その考えが抜けきらないのは仕方ないだろう。
軍人としても優秀なナンナは、今回主にシリウェルの母であるクレアの護衛として残っていた。クレアは、ナチュラルなのだ。それも、オーブ連合首長国のアスハ家の者。
プラントは主にコーディネーターが住んでおり、ナチュラルなどほぼいない。ファンヴァルト家が名家であるから、今までも何とかなっているが、シリウェルが不在の時に何かが起る可能性はゼロではない。アーシェはコーディネーターだが、まだまだ成人していない子どもに過ぎない。テルクェスも亡くなり、反ナチュラルの声が高くなりつつある今はナチュラルであるクレアにとって、決して住みやすい場所ではないのだ。
「それで、シリウェル様はお屋敷に戻られるのですか?」
「評議会に呼ばれている。その後は一度帰るつもりだ。皆に、伝えておいてくれ」
「かしこまりました。ではその後は、私は控えております」
「助かる」
空港の中を歩いていれば、多くの視線を感じる。まるで見世物にでもなった気分だが、今に始まったことではない。適度に笑みを浮かべてこの場を去るに限るのだ。
空港を出てエレベーターに乗り込み、議会へと向かう。既に議会自体は開始されているようだ。
部屋の前にいる兵がシリウェルの姿を見て、敬礼をする。
「では行ってらっしゃいませ」
「あぁ」
ナンナに見送られ、部屋へと足を踏み入れると、扉が開く音に反応したのか、議員たちの視線が集まった。
「シリウェル・ファンヴァルトです。遅れての参加、申し訳ありません」
「いや、こちらこそ任務中に呼び出して済まなかった」
声を掛けてきたのは評議会の議長であるシーゲル・クラインだ。シリウェルとは家族同士の付き合いがある。とはいえ、この場は公の場。親し気に会話をすることはない。
「問題ない。それよりファンヴァルト、今報告を受けているところだ。早く席につけ」
「ザラ委員長……わかりました」
こちらは国防委員長であるパトリック・ザラだ。視線だけを向けると直ぐに正面を向く。国防委員長ということで、軍人であるシリウェルにとっては上司のような立場にある。公の場という意味であれば、シーゲルよりも言葉を交わすことは多い。
周りを見渡しながら席に着くと、参加者を確認する。ここにいるのは、最高評議会の議員と国防委員長であるパトリック。報告者の席についているのは、パトリックの息子であるアスラン・ザラとその隊長であるラウ・ル・クルーゼだった。一軍人であるシリウェルだが、このように議会に参加することは多い。準評議会議員のような扱いだが、その実は軍の中で最も影響力を持っている人物とされているからだった。
「では報告を始めてくれ」
「はっ」
敬礼とともにアスランが立ち上がる。
モニターに映像が映され、全員がその内容に釘付けになった。
そこに映っていたのは、一機のMS。青と白を基調としたものだ。それ以外にも全部で五機のMSの映像が流れた。
(……これは)
MAの機動性を持ち、それ以上の火力を備えた機体がMSだ。未だプラント-ザフト軍にしか持ちえていないものだった。だが、このような機体を製造したという報告はない。それが意味するものは……。
「これは連合の機体です」
「なんと……!?」
「馬鹿な!?」
「ナチュラルがこのような機体を製造したというのか!?」
このMSが連合の製造したものだというパトリックの言葉に議員らは狼狽する。ナチュラルー大西洋連邦にそれほどの技術力があるなどという報告はいまだかつて挙がっていないのだ。動揺するのも当然だろう。
「説明致しましょう」
ざわめきの中、アスランの隣にいたラウが立ち上がる。仮面をかぶっているため、その下にどのような表情を隠しているのかはわからない。淡々とした言葉からもたらされる情報に、皆が聞き入る。
(連合がMS、か。世界が動く……かもしれないな)
説明を聞きながら、シリウェルは誰にも気づかれないように息を吐いた。