ガンダムSEED 天(そら)の英雄    作:加賀りょう

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第3話 会合

 議会が解散されると、ナンナを伴ってシリウェルは軍の自室へと戻った。

 そしてすぐに椅子へともたれ掛かり、項垂れるように顔を下に向ける。

 

「シリウェル様……」

「……」

 

 気遣うナンナの声が聞こえるが、シリウェルからの反応はなかった。それほどに衝撃を与えるものだったのだ。

 だた、連合がMSを製造する技術力を持っているというだけの報告ならば、そこまで気落ちすることはない。しかし、ラウが持ってきた情報は違ったのだ。

 中立コロニーヘリオポリス。オーブ連合首長国に属する自基コロニーだ。

 そのコロニー内にて極秘裏に開発されていたMS。シリウェルにとって、もう一つの故郷ともいえるオーブが地球軍に協力していた。

 事実、MSが存在し母艦も確認できたという。モルゲンレーテが協力していたことは間違いないだろう。

 

(まさか伯父上が……いや、そんなはずは……)

 

 伯父であるウズミが地球軍に協力するはずはない。オーブの国家元首であり、シリウェルにとって伯父であるウズミ・ナラ・アスハ。彼が指示していないのならば、オーブ内にいるブルーコスモスよりの連中が行ったことかもしれない。オーブとて一枚岩ではないということはわかっている。実際に、コーディネーターでありザフト軍に所属しているシリウェルを良く思っていない首長家もいるのだ。

 反プラント陣営が独断で行ったと思いたいが、それだけで済ませるレベルではない。このまま抗議もせずにいるわけにはいかない。

 

 その時、ピーッと来客を示す音が鳴った。シリウェルは微動だにしないため、ナンナが応答する。

 

「はい、何か御用でしょうか?」

『……シェルはいるかね?』

「どちら様でしょうか?」

 

 ナンナは名乗らない相手に不機嫌を隠さない声色に変わった。シリウェルを愛称で呼ぶのは軍内部にはほぼいない。ユリシアでさえ、呼ばないのだ。それが許されている相手だとしても、護衛という立場から名を名乗らない相手へとつなぐわけにはいかないだろう。

 しかし、聞こえていたシリウェル当人は顔をあげ、机の上にあるマイクをオンにする。

 

「ラウ、か……何の用だ?」

『その声からすると相当なダメージのようだね。どうだい? 少し話さないかね?』

「……あぁ。先に行っていてくれ」

『わかったよ』

 

 机の側にある応答機で会話をしていたため、わざわざ動く必要はなかった。

 

「全く……タイミングのいいことだ」

「シリウェル様?」

「悪い。少し出てくる」

「……わかりました」

 

 先ほどの相手と会いに行くことはわかっているからか、ナンナはすんなりと納得した。

 シリウェルとの付き合いが長いとは言っても、交友関係すべてを把握しているわけではないのだ。とはいえ、ここは軍内部。相手が軍関係者であることは間違いない。故に何も言わないのだろう。

 シリウェルは立ち上がると、そのまま自室を後にした。

 

 回廊の奥にある宙を見ることのできるスペースがある。そこは、隅にあるためなのか滅多に人が通らない場所だった。一人になるにはうってつけの場所でもあり、ラウとシリウェルが会うのは大抵がこの場所だった。

 

 行き交う人もいないまま目的地につけば、仮面を被った白い軍服の男がいる。先ほど議会の場でも姿を見かけた人物だ。

 

「こうして会うのは一月振りかな?」

「さぁな。覚えていない……」

 

 振り返りもしないが、シリウェルが来たことは察知したのだろう。

 隣に並ぶと、ラウに習ってシリウェルも宙を見上げた。

 

「……用件はなんだ?」

「怒っているか? 私のしたことを」

「黙ってへリオポリスに行った挙げ句に、厄介なモノを釣り上げてきたことか?」

 

 思わず感情が乗ってしまったのは仕方ないだろう。

 ザフトの軍人としてみれば、ラウの行動は褒めたものではないが利があるものだ。しかし、シリウェル個人としては厄介以外の何モノでもない。

 オーブを信じたい感情と、一部の者達に対する怒りが渦巻いていた。

 

「確かな情報だったからね。独断で行ったのは申し訳なかったが、君に教えたとしても君が動くことはない。違うかな?」

「……」

 

 知っていたとしても別の任務があり状況的に参加できなかった。それは間違いない。シリウェルが合流するまで待つということもないだろう。とすれば、どちらにしても結果は変わらなかったということだ。

 

「確かに、お前が行ったことで明るみに出た。結果としては悪くない。状況としては良くないがな」

「残りの1機は私の隊が落とすさ」

「随分な自信だな」

「今年のルーキーは優秀なのだよ」

「それでも一人失ったんじゃないのか? 物事に絶対はない。間違えばそこにあるのは死だ」

 

 シリウェルはラウへと向き直った。その視線には批難の意が込められている。

 たが、向けられた本人はニヤリと口許を作る。

 

「フッ相変わらず君は優しい。しかし、いずれその優しさが君を殺す」

「……」

「そういう世界なのだよ、ここは……優しさだけでは何も救えない」

「ラウ……お前」

 

 再びラウは宙を見上げる。今、ラウが秘めている想い。それは自身の生まれのことだろう。ラウは既に未来を諦めているのだ。

 

「シェル、君もそう思わないかね?」

「……」

 

 ラウの言っていることは間違ってはいない。だからこそ、シリウェルも力を手にしたのだから。それでも、肯定することも出来なかった。肯定することは、即ちラウを諦めることに等しい。

 

「ラウ、俺は──―」

「今はその先は聞かないでおこう。君が全ての希望を失う時にでも考えてほしいかな。私の数少ない友人である、君に」

「……俺がお前の元まで堕ちるのを待つ、ということか」

「君の想像に任せるよ。……君が堕ちた時は世界が終わる時だと思うがね」

 

 それだけ言ってラウは後ろを向けて去っていった。最後に何か言っていたようだが、シリウェルには届いていなかった。

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