ガンダムSEED 天(そら)の英雄    作:加賀りょう

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第44話 プラントの闇

 数ヶ月という期間を要して、漸く停戦交渉が無事に締結した。ユニウスセブン条約というものだ。

 

 シリウェルも交渉の場に参画することで、大西洋連邦とはお互いに譲歩することで最終的な条約を決めることができたのだ。元々核エネルギーを使用可能にしたのはプラント側であるため、一度は核を放棄するとしたプラントが核を用いたMSを開発したことの責任を問われ、カナーバはプラント側の条件を通すことが難しくなっていた。そこへシリウェルが現れ、オーブへの戦火やアラスカでの大西洋連邦での行動を非難し、プラント側だけの責任を回避することができたのだ。アラスカでは実際に、シリウェルは暗殺の標的となっており、サイクロプスが起動するその場にいた。Nジャマーキャンセラ―を非人道的行為だというのならば、サイクロプスにてザフト軍や地球軍の多数を虐殺しようとした行為とて、責められるべきものだと。

 この件において引くつもりはなく、連邦側も弁解できずに終局を迎えたのだ。こ

 

「……ファンヴァルト、今回は助かった」

「拘束されていたのだから、多少は仕方ないと思う。俺は、開き直っている連中が頭にきただけだ……」

「ファンヴァルト……」

 

 指揮官として戦場に出ていたシリウェルと、安全な場所にいて戦況をきいていた大西洋連邦の幹部たち。違いが出て当然だ。言葉の重みも全く違う。シリウェルが負けるはずがないのだから。

 

「カナーバは、これで議員を降りるのか?」

「……混乱させたのは我々評議会の罪だろう。引退するべきだとは考えている」

「選挙により選出された場合はどうする?」

「……その時考えるさ」

「わかった」

 

 プラントに戻り、カナーバと別れたシリウェルは、司令本部にある私室へと戻ってきた。

 ユニウスセブンからトンボ帰りに近い形で帰ってきたので、流石に疲労が溜まっているようだ。椅子の背もたれに体重をかけて座り込むと、そっと目を閉じた。

 停戦条約が結ばれたが、どの程度の期間効力を発揮するのか。大西洋連邦の連中の顔を見れば、納得しているような人物はいなかった。なれば、条約は本当にただ結んだもので、いずれは再び戦火を起こすつもりである可能性が高い。ザフト側も、状況に甘んじることなく保険をかけておく必要があるだろう。

 今後についてつらつらと考えていると、ピーと来客を知らせる音が鳴った。パッと目を開け、端末を操作する。

 

「何だ?」

『……隊長、お疲れのところ申し訳ありません。お話があります』

「レンブラントか……わかった。入れ」

『はっ』

 

 扉が開くと、そちらも疲れた様子でレンブラントが入ってきた。少し遅れてマリクも入ってくる。まさか二人が揃っているとは思わずに、わずかに眉を寄せた。

 扉が閉まり、シリウェルの前まで来ると二人は敬礼をする。

 

「まずは……停戦交渉、お疲れ様でした。うまくいったようですね」

「さてな。だが、五分に持ち込んだ。これ以上は難しかっただろう。落としどころはその辺りだ」

「あの状況で、そこまでできれば御の字でしょう。ひとまず、これで戦後処理はひと段落ですね」

 

 細かい人的支援などは残っているが、概ね終了と言えるだろう。落ち着いたわけではないが、宇宙を飛び回るのは避けられる。

 

「こちらのことはいい。それで、話とは何だ?」

「……」

「レンブラント?」

 

 一気に表情を真剣なものへと変えるレンブラントに、シリウェルは留守中に何か問題でもあったのかと不安がよぎる。マリクも複雑そうな顔でシリウェルを見ていた。

 

「おい、何があった?」

「これを」

「これ?」

 

 レンブラントは、一枚のディスクをシリウェルへと手渡す。これを見ろということなのだろう。意図はわからないが、とりあえずPCへとディスクを挿入し中身を確認する。

 画面に映し出された情報をみて、シリウェルは言葉を失った。

 

「っ……」

「ここ数ヶ月……いえ、戦争が終わってから色々と調査をしました。事の発端は、クルーゼと隊長との会話です。申し訳ありません、隊長の指揮官席にあるPCを覗いてしまいました」

 

 画面に表示されているものは、L4コロニーで行われた研究だった。シリウェルもよく知っているものだ。だが、文章などは別物。恐らくは、レンブラントらが資料としてまとめたものなのだろう。

 先へと進めて行けば、研究ノートの写真がつらつらと出てくる。

 

「クルーゼは、クローン体としてそこにいたことがあり、貴方は……その特異遺伝子のために、その場にいたのですね」

「……隊長の情報は、既にブルーコスモスに渡っています。恐らく先の戦いのナチュラルは、何かの形で隊長の因子を与えられたのではないですか?」

「研究を破棄したのは、テルクェス閣下。隊長の父上です。そして、そこの残った研究者としてギルバートがいます。その彼が残したものがこれです」

 

 手が止まったシリウェルから操作を奪い、レンブラントが画面を映す。ギルバートの日記のようなものが残っていたようだ。それが示すものとは。

 

「……上にもまだ誰がいるかわかりません。ですから、隊長にお伝えしようと思いました。お話は以上です。マリク、戻るぞ」

「……わかりました」

 

 シリウェルから何かを聞くでもなく、レンブラントはそのまま部屋を出て行った。マリクもそれを追う。声をかけることもできず、シリウェルはただ画面をじっと見つめていた。

 

 

 

 ☆★☆★☆★☆

 

 

 一方、レンブラントたちはそのままヘルメスへと戻ってきた。国防所属となったマリクは本来なら部外者だが、今回は仕方がないと言えるだろう。本音を言えば、マリクはシリウェルから何かを聞きたかったのだ。それをレンブラントが止めた。内容が内容だけに、外で話すことはできない。だから艦へと戻ってきた。

 

「……艦長、隊長はどうすると思いますか?」

「ギルバートの情報以外は、概ね隊長は知っていたようだ。と言っても、当時……隊長はまだほんの子どもで、理解していても納得できるものではないだろう。いかに優れていても、隊長はまだ十代で、私たちから見れば子どもと言っていい年齢だ。……だが、知らねばならない。国防委員長という肩書を得た隊長にも」

「本当は艦長がどうにかしたかった、と?」

「隊長を守るのは、ファンヴァルト隊の役割だ。誰にも譲らん」

「……なるほど。そこは賛成ですよ。下らないことを考えたお偉いさんには消えてもらいたい、ですから」

「そちらは任せる」

「えぇ、きっちりと払ってもらいます」

 

 頼もしいような黒い笑みを浮かべたマリクを、レンブラントは信頼していると言った風に頷いた。

 

 その後シリウェルが知らないところで、数人の議員や元議員、研究者がプラントから消え去ったらしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

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