ガンダムSEED 天(そら)の英雄    作:加賀りょう

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第45話 デスティニープラン

 一人きりとなった私室で、シリウェルはPCを閉じた。

 あらかたの情報は見終わったからだ。今後どう行動すべきかを考えさせられる内容だった。これだけの情報を集めるために、どれだけ苦労したことだろうか。

 

「知る必要はない、と言ったんだがな……」

 

 ここまで知られてしまえば、もう巻き込む以外にないだろう。気づかれれば、たとえレンブラントたちでも消されてしまう。その前に、原因を落とさなければならない。

 

「……まさか、ギルバートがこんなことを考えているとはな……もう計画を始めている可能性もある。ならば、俺がすべきことは」

 

 拳を握りしめる。

 ラウとも友人であったギルバートならば、その運命を知っているはずだ。そして、レイのことも。

 

「ギルバート……お前は堕ちたんだな……」

 

 世界を閉じることを決めたギルバートの計画。平和への道。しかし、それを認めるわけにはいかない。出なければ、人々の想いが無駄になってしまうのだから。

 シリウェルは覚悟を決めると、部屋を後にした。急がなければ、取り返しがつかなくなる。彼に、権力を渡してはいけない。シリウェルは足早に先を急いだ。

 

 

 ☆★☆★☆★☆

 

 その頃、最高評議会では臨時評議会の解散と新評議会の召集が行われていた。臨時だが、議長を兼ねているカナーバがその場に立ち議員達を見回す。

 

「では、これで臨時評議会を解散する。では、新最高評議会議長ギルバート・デュランダル、以後は任せる」

「えぇ、引き受けます」

「……頼むぞ、未来を」

 

 両者が握手を交わし、これで全てが整ったとばかりに、ギルバートは口許に笑みを浮かべた。その時だった。

 突然、評議会の場が騒がしくなる。

 

「……何事だ?」

「ちっ……」

 

 何が起こったのかと驚きを顕にするカナーバと、舌打ちをするギルバート。ざわめきの中で登場したのはシリウェルだ。

 

「ファンヴァルト!?」

「シリウェル様だ」

「だが、何故シリウェル様が?」

「国防委員は本会に関係ないはずだが……」

 

 その通りだ。今回はあくまで最高評議会の召集が目的である。多忙であるシリウェルを気づかってか、参加はしなくとも良かったのだ。戻ってきたばかりなのはカナーバとて同じだが……シリウェルは真っ直ぐにギルバートの元へと歩いていく。

 

「……やぁ、久しぶりになるか。シリウェル」

「ギルバート……」

「何をしに来たのかな?」

 

 柔らかな口調ではあるが、本心では歓迎していないことだとシリウェルにはわかっていた。本音と建前を使い分けるのが上手い男だ。

 

「おいっ、ファンヴァルト!」

「デスティニープラン」

「……」

「お前は本気か?」

 

 柔和な表情がギルバートから一気に消える。この時点でそこまで気がつかれているとは思わなかったのだろう。

 

「人の運命を固定し、人から意志を奪う世界。それは本当に、平和だと人のためだと言えるのか?」

「……何を、言っている? ファンヴァルト? デュランダル?」

 

 混乱しているのは、カナーバだけではない。この場にいる議員達にも、何を話しているのかとどよめきが広がっていく。問われているギルバートは、じっとシリウェルを見ている。そこに含まれた感情は、嫌悪か悔しさか。それとも別のものか。

 

「ふっ……一体何の話だね? 私には」

「かつて俺を研究していたお前だ。遺伝子にも詳しい。運命を呪っているのか知らないが、お前が世界に、人に絶望しようがそんなことはどうでもいい。だが、人から未来を奪うことは、生きる力を奪うも同義。そんな世界で人は生きていけない」

「……」

「……お前を、議長にするわけにはいかない。人の運命は、遺伝子に定められてなどいない」

「ふっ……」

 

 観念したのかわからないが、ギルバートは自嘲するように笑みを浮かべる。そこには、シリウェルに対する怒りも含まれているようだ。

 

「それは君が力あるものだから言えることだ。遺伝子によって決められた世界ならば、本来の場所で才能を発揮できる。不安などない世界。戦争も起きない。それ以上の何があるというのだね? 遺伝子においても、君は上位の存在だ。今よりも世界に相応しい地位に就くことだろう」

「そんなもの、俺は望まない。人生の全てが遺伝子に決められる。そこに遺志はないなら、死んでいるものと変わりない。俺を殺すか、ギルバート」

 

 その言葉に、議会は静まり返る。次のギルバートの答を待っているのだ。

 

「……世界は変わらなければならない。君は、ラウを……レイを可哀想だとは思わないのか?」

「それは彼らに対する侮辱だ」

「なら、君は己を呪わないのか?」

「……だとしても、それは俺だけのものだ。お前にどうにかされるものではない。俺は俺の意志でここにいる。お前を止めるべきだと。レイのためにも……」

 

 ラウを失った今、レイは家族を失ったも同然。シリウェル自身も弟のように思っているレイだ。彼の未来さえも、ギルバートに定められたくはない。レイには、望む未来を進んでほしい。そのためにも、ギルバートの計画は止めなければならないのだ。この場で。

 

「……こうも早く計画が露見するとは思わなかったよ」

「デュランダル、お前は本当に?」

「それが平和のためですよ、カナーバ議長。……シリウェル、君を少し侮っていたようだ。私の協力者が不在となったのも、君の手か?」

「……」

「そうか……私の負け、か……」

 

 諦めたのか、ギルバートは両手を上げて降参の意を示す。この時点でギルバートを拘束する罪などはない。だが、議長という立場を渡すことも出来ない。ではどうするのか。

 

「ファンヴァルト、ギルバートは次の議長だった。それをどうするつもりだ?」

「……今は、ギルバートを議長にするわけにはいかない。世界を閉じる計画は、人から未来を奪う。進めさせる訳にはいかない」

「そうだな……ならば、君が議長となるか?」

 

 拘束する罪はないはずだが、カナーバは衛兵たちにギルバートの拘束を命じた。それだけ、この事実を重んじたということか。

 

「……」

「シリウェル……君の行為は、国防委員を越えている。私の計画を止めさせるというのならば、君はその責任をとってもらいたいものだな」

「俺は……軍のトップだ。政治と軍を一人の人間が掌握してはいけない」

「だが、君はそうはしない。もし、君が誤った道を行くなら、私は今度こそプランを実行する。どんな手を使ってもね……」

 

 それだけを言い残して、ギルバートは連行されていった。まだ諦めてはいない、というようにも取れる。拘束は正しかったのかもしれない。

 

「……ファンヴァルトの懸念も理解できる。なら、議長ではなくとも、政に関わってもらおう。これまで通り」

「カナーバ……」

「暫くは、私が議長を続ける。異論がある者はいるか?」

 

 議員達からも特に反対の声は上がらない。これで、臨時評議会は解散したが、議長は続投という形となった。想定外ではあるが、新評議会はこのメンバーで動かすことになる。

 

「……カナーバ、恩に着る」

「礼など不要だ。それに……ファンヴァルト、君自身もどうやら抱えているものがあるようだ。動ける地位にいた方がいいこともあるだろう」

「……あぁ」

 

 




ギルバートを退場させました。最初に話を考えたときに、これだけはやりたかった展開でしたので、ここまでこれたことに安堵しています。
この先も捏造たっぷりで進みます。見守っていただけると嬉しいです。
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