ガンダムSEED 天(そら)の英雄    作:加賀りょう

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第4話 オーブへ

 数日後、シリウェルはシャトルに乗っていた。地球のオーブへと向かうためだ。

 その指令が下されたのはついさきほどのことだった。

 目的はヘリオポリスで建造されていたという戦艦、そしてMSたちについて問い質すため。

 

 オーブとプラントは友好国だ。オーブが率先して大西洋連邦に協力していたとなれば、この関係を崩すには十分な理由になる。最もオーブへ首脳陣が大西洋連邦に協力したことを認めることはないだろう。証人も証拠となるコロニーも既にない。コロニーが崩壊したことにザフトも関係しているが、それを責めて来ないのは後ろめたいことがあるからだ。とはいえ、プラントも無関係な人たちを巻き込んだということ自体は許されることではない。この辺りも含め、話をつけるのが今回のシリウェルの役目だった。

 

「あまりゆっくりは出来なかったな……」

「シリウェル様」

 

 帰宅後直ぐに指令が下ったので、家族と話す時間すら作れなかった。それでも母と妹の顔を見ることは出来たので良かった方だろう。

 今回は隊を動かすことはしていない。出来るだけ秘密裏にオーブへ向かう必要がある。人数は最低限だった。

 護衛としてナンナが同行している他、何故かユリシアも共に来ていた。後は、隊の中から数人だけだ。

 無論、一番の護衛はナンナであるので、今も側にいるのは彼女だ。元々、公私混同するつもりもないのでユリシアを特別扱いすることはない。ユリシアもここには部下の一人として来ているのだが、シリウェルは彼女を連れてくるつもりはなかった。こうして同行しているのは、彼女の希望でもある。軍人としての射撃の腕は申し分ないが、シリウェルの護衛としては然程戦力としてみてはいない。シリウェル自身の力が優れているからなのだが、それでも彼女を連れてきたのは今回の休暇で相手をすることが出来なかったことが理由だ。

 交渉が終わればすぐにカーペンタリアに向かうつもりではあるが、どこかで時間を作って相手をする必要があるという認識をする程度には、シリウェルも考えていた。

 

 

 

 ☆★☆★☆★☆

 

 

 

 シリウェル達を乗せたシャトルは、オーブ連合首長国のオノゴロ島にある飛行場に降り立つ。事前に申請をしていたためか、飛行場には多数のオーブ軍人が待ちわびていた。

 先にナンナが降り、シリウェルが降りる。すると、一斉にオーブ軍が敬礼した。

 

「えっ……!?」

「な……」

 

 共に来ていた隊の者達が困惑している。しかし、シリウェルは先頭に控えていたオーブ兵士を見て納得した。

 手を上げ、その礼に応える。

 

「随分なお出迎えだな、モリスン」

「お待ちしておりました、シリウェル様」

「今の俺は、プラントの使者だ。礼を尽くす必要はない」

「お立場がどうであろうとも、貴方は紛れもなくアスハ家のお方。我らが礼を尽くすのは当然です」

「公式な訪問でないとは言え、誉められたことではないが……皆の想いは受け取っておく」

 

 かれはモリスン・アマダ。オーブ軍の中で一佐の階級に当たる。モリスンだけでなく、ここにいる兵士たちはアスハ家に恩と尊敬の念を抱き、支持してくれている者達だ。母が現首長家の生まれということもあり、シリウェルもアスハ家の者として見てくれているのだ。しかし、シリウェルはザフト軍に所属する軍人。公ではないから許されるのかもしれないが、本来ならあり得ない対応だ。

 

「……伯父上はどこに?」

「いつものお部屋でお待ちしております。ご案内します」

「頼む」

 

 用件は既にわかっているのだから、さっさと終わらせたい。

 シリウェルはナンナらへと振り返った。

 

「お前たちは待機だ。終わり次第カーペンタリアに向かう。準備をしておいてくれ」

「シリウェル様、ですが護衛は……」

 

 ナンナさえも連れていかないことに、不安そうな声が上がる。オーブは友好国とは言え、他国には違いないのだ。

 

「オーブの曹兵たちが俺を害することなど出来ない。大丈夫だ」

「しかし……」

 

 シリウェルにとっては身内のようなものかもしれないが、今回の件はそもそもそのオーブの裏切りによるものという意識がプラント側は強い。すんなりと受け入れられるものではない。

 

「……わかった。なら、アマルフィ」

「!? は、はいっ!」

 

 仕方ないとばかりにシリウェルがため息を吐きながら呼ぶ。突然名前を呼ばれて、ユリシアは緊張した面持ちでシリウェルを見た。

 

「お前がついてこい」

「わ、私が、ですか?」

「非公式な会談だが秘書がいても文句はないだろう。他はここで待機。モリスン、行くぞ」

「はっ」

 

 異論を言われる暇を与えないようにモリスンへと声をかけ、シリウェルは奥へと歩いていった。向かう場所は既にわかっているかのようにモリスンの前を行く。

 

「あ……えっと」

「アマルフィ、隊長を頼む……」

「は、はい。わかりました」

 

 他の隊員に頼まれれば頷く以外に選択肢はない。ユリシアは頭を下げ、急ぎ足でシリウェルを追った。

 残されたのは、オーブ軍とザフト軍。お互い面識のない者同士。流れるのは沈黙だった。

 

「……」

「……」

「……で、では我々は持ち場に戻ります。シリウェル様が戻られるまで何人かは警備のため、ここに居りますので」

「は、はい。では、こちらも機体の確認などをしております」

 

 同じ場所にいても話すことなどないだろう。唯一あるとすれば、シリウェルのことだが気軽に話すような間柄ではない。

 持ち場に付くのが正しい判断と言えるだろう。

 隊の中には、今回の件でオーブをよく思わない者もいるのだから。

 

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