ガンダムSEED 天(そら)の英雄    作:加賀りょう

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第50話 国防本部

 目的地へと到着すると、そこには既にナンナが待機していた。

 

「お疲れ様です、シリウェル様。それに、ミーア」

「お、お疲れ、さまです。マイロード、さん」

 

 先に車を降りたミーアがオドオドしつつも挨拶をする。ミーアにとってはナンナも緊張せずにはいられない相手なのかと、思わず苦笑しながらシリウェルも車を降りる。

 

「ご苦労だった。ナンナ、マリクには伝えてあるか?」

「はい。国防本部には通達済みです」

「わかった。……行くぞ」

「はっ」

 

 シリウェルが先に動く。どちらが先に行くのかと、ミーアはナンナにさ迷う視線を向けた。

 

「貴女が先に」

「わ、私?」

「その後に付くから大丈夫。さぁ、早く」

「は……い」

 

 促されるままミーアが足を動かす。本部に到着するまで、多くの人達に頭を下げられ、敬礼をされる。全てはシリウェルに向けられたもの。ミーアは改めてシリウェルの立場を意識せざるを得なかった。

 

 国防本部に到着すると、シリウェルはミーアを紹介する。クライン家の遠縁で一人になったところを保護したと。

 

「今後、俺の秘書として付くことになる。不慣れだが、皆宜しく頼む」

「「「はっ」」」

 

 戦後のゴタゴタで孤児が居てもおかしくはない。それがクライン家関連ならば更に確率としては高い。一時は反逆罪として抹殺対象にもなったのだ。実際に、シーゲル・クラインは国防軍直属によって殺害されている。そこに多少の嘘があろうとも確かめることは既にできない。

 全員に不満の色がなかったことに安堵し、シリウェルはミーアに視線を向けた。

 

「……ミーア、挨拶はできるか?」

「は、はいっ」

 

 シリウェルの隣に立ち、ミーアはファンヴァルト家で学んだように姿勢を正し、顎を引いて真っ直ぐに皆を見た。

 

「ご紹介に預かりました、ミーア・ヴァストガルです。ご縁がありシリウェル様に拾われました。仕事をするのは初めてとなりますので、ご迷惑をお掛けするかと思いますが、どうか宜しくお願いします」

 

 と頭を下げた。

 淀みなくスラスラと話すミーア。本人は必死に取り繕っているのだろう。僅かに肩が震えていた。

 その肩にポンと手を置くと、ミーアは不安そうにシリウェルを見てきた。

 

「……良くできたな」

「あ、ありがとうございます」

 

 

 ☆★☆★☆★☆

 

 

 午前中の仕事として事務周りを処理していると、通信が入った。評議会からだ。

 

『ファンヴァルト、少しいいか?』

「カナーバ? 何かあったのか?」

『……話がある。来てもらえるか?』

「……わかった。1時間後に行く」

『頼む』

 

 通信を切ると、シリウェルは椅子の背もたれに体を預ける。こうして評議会から呼び出されるのは珍しいことではない。条約が締結されたとはいえ、まだまだ戦後処理としてやるべきことは残っている。仕方ないと言えることだが、本日の予定を変えなければならないため、通達をする手間が出る。

 

「隊長……」

「マリクか。済まない、レンブラントには明日に向かうと伝えてくれ。今日は無理だろうからな」

「はい。それは構いませんが、彼女は?」

「評議会には連れてけないな……」

 

 いくら秘書として付かせるといっても、最高評議会の中までは連れてはいけない。マリクやナンナでさえ、連れ立ったことはないのだ。かといって誰かに頼むのも問題がありそうだった。

 

「ミーア」

「は、はい? 何ですか?」

 

 手元にある資料に集中していたミーアが呼ばれたことで慌てて立ち上がった。

 

「俺は評議会に向かう。流石に連れていくわけにはいかない。マリクの側についてほしい。マリク、構わないか?」

「私は構いませんが……いいんですか?」

 

 マリクとてこの場にずっといるわけではない。これから軍港と工匠に向かう予定があった。そこにミーアを向かわせても良いのかということだ。

 

「評議会よりはいい。それに、事情を知っているお前しか任せられない」

「……それはそうですが」

 

 チラリとマリクはミーアを見る。視線を向けられたミーアはビクッと怯えたような表情を見せた。ミーアはマリクのことを覚えていない。あの時はそれどころではなかったので、シリウェル以外に誰がいたかはわからなかったようだ。だが、マリクの瞳から好意的ではないことを感じ取ったのだろう。

 

「おい、怯えさせるな」

「……すみません。わかりました。隊長が戻るまでは私がみます」

「頼む。ミーアも、いきなりで済まないがマリクと居てくれ」

「あ、え……でも」

 

 心細いのかミーアは視線をさ迷わせる。来たばかりで慣れないのは当然だ。だが、連れていくことはできないことに変わりはない。

 仕方なくシリウェルは、ミーアの頭に手を乗せた。

 

「えっ?」

「……心配することはない。すぐに戻る」

「……は、はい」

「隊長……」

「何だ?」

 

 今度はシリウェルに対しマリクは呆れた視線を向けた。

 ミーアの頭から手を避けて、シリウェルはマリクに向き直った。

 

「誤解をされかねない行動は控えた方が良いと思います。アマルフィが悲しむのでは?」

「……ユリシアが? 何故だ? 関係ないだろ」

「そうですよね、隊長はそういう人ですね……はぁ」

「マリク?」

 

 

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