ガンダムSEED 天(そら)の英雄    作:加賀りょう

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4月に投稿すると言っておきながら、遅くなりました。申し訳ないです。
ここから原作でいうところの種運の開始となります。展開は似ていますが、ほぼ捏造になると思います。


第七部 黒き運命
第63話 不穏な門出


 それから約1年後―

 

 本日、プラントのアーモリーワンでは、新型艦のMSのお披露目が行われる。

 最新艦の前に立ち、シンはその巨体を見上げていた。そこに、後ろから歩いてきていたアーシェも並ぶ。

 

「これが、ミネルバ、か」

「どうしたの? もしかして、緊張してるとか?」

「そんなんじゃないさ……ただ、漸くなんだなって思って」

「そうだね……あっという間だったけど、これで漸く兄様の力になれる」

「あぁ」

 

 アカデミーへ入学してから、力を手にすることを目指してきた。シンとアーシェは無事にアカデミーを卒業し、ザフト軍に所属することになった。所属隊はグラディス隊。目の前にあるミネルバが母艦となるのだ。シンはエリートの証でもある赤服を与えられMSパイロットとして最新鋭の機体を扱うことになる。

 同じくアーシェもグラディス隊に所属する。しかし、軍服は一般兵と同じ緑だった。ミネルバの副操縦士として艦に乗る。

 国防本部委員長であるシリウェルの妹としては、不出来かもしれないし、アーシェ自身もその結果に落ち込んだ。だが結果を知ったシリウェルの反応は逆だったのだ。赤服ともなれば、ルーキーと言えども戦場を駆けるパイロットとなるのが普通だ。しかし、一般兵のルーキーにはそれが求められることは少ない。アーシェの成績からして、パイロットには向いていないため、それがないことに安堵したという。アーシェとしては複雑な想いだ。

 とはいえ、いずれにしても兵であることには変わらない。戦艦を動かす任務を与えられたなら、その行動は間接的に人を殺めることを忘れるなと、シリウェルからはキツく言われている。

 シンに至っては、それ以上に厳しく言われた。MSに乗るということの意味を。

 シンは再び艦を見上げる。

 

「シンは、ここにいていいの?」

「え?」

「ほら、私はミネルバに乗るけど、シンの集合場所は機体の格納庫のところだよね?」

「……あぁ」

 

 シンの機体とは、ZGMF-X56Sインパルス。最終調整が終わったので、本日ロールアウトすることになっていた。

 

「これから行くさ。アーシェは?」

「この後、艦のクルーの挨拶があるから、このまま向かうつもり」

「そうか。それじゃ、また後でな」

「またね、シン」

 

 手を振るとシンは、アーシェに背を向けて駆けていった。

 ミネルバのクルーには、シンらの同期も多く配置される。パイロットも同じだ。シンと同じくエリートの赤服を着ることになったレイ、赤服の紅一点であるルナマリア・ホークがミネルバに配属される。

 

 アモーリワンに新造された格納庫。そこにシンの機体がある。レイやルナマリアが乗る機体は、ザクウォーリアで、既にミネルバに配置されているらしい。シンのインパルスだけが、調整遅れのため格納庫にいるのだ。

 

「あった……これだ」

 

 シンは格納庫内にあるインパルスの前に立った。この機体の基本設計はシリウェルによるものだという。それだけで好奇心が疼くものだ。

 軍服のままシンは、インパルスへと乗り込んだ。

 機体のOSを立ち上げると、文字の羅列がモニターに流れる。3つのパーツをドッキングすることができ、それぞれをここから操作することもできる。事前に資料はもらっているため、後は実際に動かすだけだ。

 

『シン・アスカ、OSの状態を確認してくれ。問題があれば、調整する』

「は、はい……えっと、大丈夫みたいです。問題ありません」

『わかった。シリウェル様にも伝え──―』

「えっ」

 

 その時、大きな爆発音と共に地面が揺れ動いた。まるで地響きのようだ。地球上ではないため、それはあり得ない。ならば、何が起きているのか。

 ピーピーという音がインパルス内に流れる。通信だ。シンは回線を開くスイッチを押した。

 

『インパルスパイロット、シン・アスカで間違いないですか?』

「はいっ。えっと、一体何が?」

『国防本部所属ミーア・ヴァストガルです。本部より指令です。アモーリーワンにて襲撃がありました。場所は、MS格納庫。そこから近くになります。直ちに出撃し、対象の排除をお願いします』

「出撃、ですか? その、俺はえっと」

『時間がありません。ジュール隊他は、宙域へ回しています。近くにいる隊はグラディス隊のみなので、急ぎ対応願います。同じくミネルバへも出撃命令が出ています』

 

 ミネルバまで出撃する。それは出航式というお披露目もなくなるということだ。それだけの事態だということに、シンの手が震えた。これが初陣だ等と、弱音は吐いていられない。震えを堪えるように操縦捍を握りしめる。

 

「わかりました。シン・アスカ、出撃します」

『……後武運を。宜しくお願いします』

「はいっ」

 

 武装を確認し、シンは拘束を解除した。パイロットスーツを着ておけば良かったと後悔するが、既に遅い。

 

「……大丈夫だ。ちゃんと出来る」

 

 シュミレーションはしてきたのだ。動かすことも出来た。やれるはずだと、シンは己を鼓舞する。

 

『インパルス、動くのか?』

「国防本部より指令がありました。このまま行きます」

『っそうか。わかった。無茶するなよ。総員、インパルスが出る。離れろっ』

 

 モニターから格納庫にいる人たちがインパルスから離れるの確認し、シンはインパルスを動かした。

 格納庫から出て向かう先は、爆発があった場所。これが、シンの初めての出撃となった。

 


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