ガンダムSEED 天(そら)の英雄    作:加賀りょう

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短いです。


第64話 もう一つの視線

 シンが出撃する少し前のこと

 

 アーモリーワンにある会議室では、極秘にオーブ代表首長であるカガリとプラント最高評議会議長であるウルスレイ・ガイが会談を行っていた。暗い室内で、二人の最高権力者である女性が向き合っている。

 

「……プラントへ流出した移民をオーブへ戻せとおっしゃるのですか?」

「はい。彼らは元よりオーブ国民。戸籍の件においても、当人が一度オーブへ帰還することを依頼していたはずです」

「確かに、それは伺っています。ですが、彼らにも生活があります。避難後、必死に彼らはここで生きてきました。それをこちらの都合で振り回すわけにはいかないのです」

「それは……」

 

 正論すぎる言葉にカガリは言葉が出ない。カガリのガードとして付き添ってきたアスランは、肩を落とすカガリを痛ましそうに見るが、政治の世界の話においてアスランが口出しできることは何もなかった。その後も話は平行線を辿るばかりで進まない。息抜きと称して、ウルスレイ議長はカガリらを外へと連れ出した。

 

 真新しい施設にカガリもアスランも目を疑った。そこは間違いなく、最新鋭であろう機体らが並んでいたからだ。量産型のザクでさえ、アスランが知っていた時のものとは違う。それは、プラントがユニウスセブン条約に規定されている事項を厳守していないことを示していた。

 

「これはどういうことですかっ! 戦いはもう終わりだと、貴方方も言ったはずだ! これでは、また戦いが起きてしまいます!」

「アスハ代表、お言葉ですが……これはプラント国防委員長であるシリウェル・ファンヴァルト閣下のご指示です」

「な……」

「戦いはまだ終わっていない……閣下が必要だと認めた力。戦争がなくならない以上、力は必要なのですよ」

 

 激情を露わにするカガリとは対照的に、冷静に告げるウルスレイ。何よりも衝撃なのは、全てシリウェルの指示だということだ。同じ想いを持っていると疑っていなかった尊敬すべき従兄が、兵器を作り続けているという事実。カガリを打ちのめすには十分だった。

 

 ドーン。

 

「「!??」」

 

 刹那、爆発音とともに火が上がった。駆動音が聞こえるということは、MSが動いている。

 

「どういうことですか!? 状況の報告をっ」

『た、ただいまB格納庫より火の手あり! 侵入者です! 急ぎ避難をっ』

 

 ウルスレイが通信機へ怒鳴っていた。予期せぬ襲撃。漏れ聞こえる会話から読み取れるのはそれだけだ。直ぐに状況がわかるはずもない。じっと影に身を寄せていると、すさまじい風が横を通った。その影を追えば、MSだということがわかる。

 カガリを守るようにアスランが壁となり、MSから身を隠す。

 

 ダダダダっ。

 

 MSのパイロットがザフト兵でないことは一目瞭然だ。自軍を攻撃する馬鹿などいない。ウルスレイが叫んでいるが、爆音により聞き取ることが出来なかった。恐らくは避難を呼びかけているのだろうが、動けば標的にされる可能性もある。

 

「アスラン……」

「……わかっている。君は俺が守る。絶対に」

「でも……」

「何か手は……!? あれは……」

 

 困惑するカガリの手を取り、アスランは無事だったザクウォーリアへと乗り込んだ。すぐさま、状態を確認する。武装は心もとないが、あのままでいるよりはマシだろう。ちらりとカガリを見れば、不安がその瞳に現れていた。

 

「大丈夫だ、カガリ」

「……アスラン」

「動く。しっかり捕まっていろ」

「わかった……」

 

 久しぶりに動かすMS。まさかこんなことに巻き込まれるとは思ってもみなかったことだ。しかし、今は何としてもこの場を生き残ることを最優先としなければならない。アスランの手に力が入る。

 

 動き始めたザクを見て、相手は照準を当ててきた。しかし、アスランはかつてザフトのエースだったパイロットだ。攻撃を避け、反撃をする。更に相手は向きになり、近づいてきた。

 

「ちぃっ」

 

 万全ではない機体で相手をするのは、流石のアスランでもキツイものがある。もっと言うと、相手はザフト軍の最新機体。機体の性能では雲泥の差がある。

 このままでは押し切られる。アスランの表情に焦りが出た時だった。横をシュッと何かが横切った。

 後方から飛翔してきた物体が敵機体へと命中したのだ。

 

「何っ?」

 

 物体が飛んできた方向を見れば、見たことのない機体が立っていた。いや、その姿はどこかかつての敵機だったあれに似ている。

 

「ストライク……いや、違うあれは……」

 

 かつて親友のキラが乗っていた機体に似ているようだが、違う機体だ。その機体が滑走し、アスランの横を通り過ぎ敵機へと向かう。その様を、どこか茫然とアスランは見ているだけだった。

 

 

 

 

 

 

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