ガンダムSEED 天(そら)の英雄    作:加賀りょう

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シン視点になります。


第66話 予期せぬ客

 宙域へと出て、シンは必死に追撃をした。しかし、奪取したばかりだというのに、相手はMSを完全に乗りこなしている。共に出撃したザクウォーリアに乗るレイ、ルナマリアと共に追い詰めるが、沈めることは出来なかった。

 帰還命令を受け、シンはミネルバへと戻ってきた。インパルスから降りると、同じく戻ってきたレイ、ルナマリアが待っている。

 

「仕留められなかったな」

「あぁ……何なんだあいつら」

「突然襲ってくるなんてね……」

 

 二人も悔しさを滲ませている。初陣でもあった今回。功績は何も挙げられていない。

 

「おう、ルーキー3人、グラディス艦長がお呼びだ。艦長室に向かえ」

「「は、はい」」

「……了解しました」

 

 格納庫にいる技術者と見られる男性に声をかけられ、シンらは無重力の床を蹴り移動する。初めての艦内だが、事前に地図は受け取っていた。とはいえ、頭の中に入っているわけがない。

 

「なぁ、場所わかるか?」

「シン、ちゃんと確認したの? それくらいわかるわよ」

「確認した……けど、初めて中に入るんだ。仕方ないだろ」

 

 不貞腐れたように言い返せば、フッとレイが笑う。その態度に、シンは更に不貞腐れた。

 

「お前はついてくればいい。ほら、行くぞ」

「ちょっ、待てよレイ!」

「はぁ……」

 

 レイを追うシン。ルナマリアは呆れながらも、二人の後を追った。

 艦長室へ入ると、思ってもいない人がおり、シンたちは固まる。

 

「えっと、レイ。あの人ってもしかして」

「……最高評議会のウルスレイ議長閣下だ」

「何でここにいるの? それに、あの人たちは?」

 

 小声で確認しあうが、間違いないようだ。画面の奥でしか見ることしかない大物である。更にもう二人知らぬ人たちがいる。否、正確には見たことがないわけではないので、知っていることは知っている。かのオーブ代表首長であるカガリ・ユラ・アスハ、それにかつての英雄の一人であるアスラン・ザラだ。このような人たちが、何故ミネルバにいるのか。

 シンらが驚いていることを理解しているタリアは、苦笑しながらシンたちに向き直った。

 

「来たわね。初出撃はまずまずといったところ。今後、再び出撃することもあるから肝に命じておきなさい」

「「「はっ」」」

「それと……例の襲撃で避難していたはずの議長閣下とアスハ代表たちが紛れ込んでしまってね。下手にシェルターに入るより、艦内の方が安全だと思ったということで……。それで議長がパイロットに会いたいと仰ったので貴方たちに来てもらったの」

 

 タリアでさえ困惑しているのが目に見えている。その横で、ウルスレイは微笑んでいた。

 

「お初にお目にかかります。ウルスレイ・ガイと申します。突然、お邪魔してしまいご迷惑をおかけしますが宜しくお願いします」

「えっと……」

「……こちらこそ、宜しくお願いします。ですが、議長がここにいることファンヴァルト閣下はご存知なのですか?」

 

 レイがファンヴァルトの名を出せば、シンやカガリはビクッと反応する。

 一方で、質問されたウルスレイは笑みを崩すことなく答えた。

 

「勿論、知りません。報告はこれから、ですよね艦長?」

「……はい。議長は元よりオーブ代表までいることは、これから直ぐに報告します。閣下の母艦も直ぐそこに来ていることですし」

「ということです。それで、貴方方の紹介をお願い出来ますか?」

 

 議長からの言葉を無視することなどできない。レイはシンとルナマリアに視線を移し、頷く。

 

「私はレイ・ザ・バレル。こちらがシン・アスカ、そしてルナマリア・ホークです」

「なるほど、そうですか。噂の卒業生上位3名がミネルバのパイロットたちなのですね。これは、期待させていただきたいと思います」

「……ありがとうございます」

 

 礼を告げるレイだが、全く気持ちはこもっていなかった。しかし、優等生であるレイは場をわきまえているのか、下手なことは言わない。シンは、どうしてよいかわからないので、レイに任せたままだ。

 その後、特に用件があるわけではないということで、シンたちは艦長室を出ていった。

 

「なぁレイ」

「なんだ?」

「あれって、アスハ代表だよな? 確かシリウェルさんの──」

「あぁ、従妹だと聞いている。俺から見れば、名ばかりの代表だがな」

「随分辛辣ね……」

 

 ルナマリアの指摘にもレイは涼しい顔だ。オーブ代表ということに、シンも複雑な感情を抱いているがそれはカガリ自身に対してということではない。

 ただ、オーブから避難してきた人に対して帰還を求めている言動には、不義理を感じていた。その申し入れをしているのが、現代表であるカガリだ。同じアスハ家でも、プラントに避難したオーブ国民を助けて援助してきたのは、シリウェルでありオーブのアスハ家ではない。言うなれば、彼らはオーブから逃がしただけで何もしていないのだ。今さら、帰ってこいだなんてふざけているとしかシンには思えなかった。

 

「ここまで来たのだからオーブまで送ることになりそうだが、俺は関わりたくない」

「レイ……そうだな。けど、一応アーシェには言っておいた方が言いと思うから、俺はブリッジに行ってくる」

「……そうだな。彼女は無関係で入られないからな」

「あぁ。それじゃ、またあとでな」

 

 シンは壁を蹴って、移動していく。姿が見えなくなるのをレイとルナマリアは見送るが、ふと気がつく。

 

「でも、シン……ブリッジの場所わかるの?」

「……個室ならともかく、ブリッジがわからないことは……ないだろ。たぶん、な」

「そ、そうよね……」

 

 


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