ガンダムSEED 天(そら)の英雄    作:加賀りょう

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あけましておめでとうございます!
本年もどうかよろしくお願いしますm(__)m


久々の投稿になります。
あの場面で止めたままで「おいおい」と思っていた方もいたかもしれません;;

という事で続きです。
これから先、原作とは違う動きや出会いもあります!

長い目で見守っていてください(;^ω^)



第76話 母国での出会い

時は少し遡る……

 

 

 オーブへと寄港していたミネルバは、クルーたちに一時的な下艦を許可していた。その時間、シンはアーシェと共にある場所へと足を向ける。かつて、二人が出会ったあの場所へ。

 

 

「ここ、だよね」

「あぁ……」

 

 

 かつてのように破壊された道ではなく、きちんと舗装された道を歩いていけば塔と墓標らしき石碑があった。海の傍にある石碑には、鎮魂碑であることが記載されている。ここで亡くなった人は数えきれない。一人一人の名を刻むことなど出来ないのは当然だ。だが、ひとくくりにされていることには悲しみを覚えてしまう。ここで亡くなったのは、シンのかけがえのない家族。アーシェにとっては母だ。

 

 

「綺麗にされたんだね。ここを整えたのは、きっとカガリ姉様かな」

「……」

 

 アーシェの言葉に、シンはどこか理不尽な想いを拭いきれなかった。どうしてだかわからないが、ここに立つとあの当時の何もできなかった自分を思い出すからだろうか。それとも……。シンは頭を振った。

 

「……ここ、シリウェルさんは知っているのか?」

「知らないと思う。兄様、あまり自分のために時間を使わないから……」

「そっか」

 

 それはそうかもしれない。シリウェルは忙しい日々を送っている。それもプラントにおいては最重要人物灯されている人だ。シリウェルが動けば騒ぎになるだろう。ここで眠る人たちのために、そのような喧騒を持ち込んではならないという事まで考えていそうだ。

 そんな風に辺りを眺めていれば、海岸沿いにも墓標があるのが目についた。だが、そこには人の影がある。誰かが花を手向けにきたのだろうか。シンは導かれるように、その人影へと近づく。

 

「シン?」

 

 突然海岸へと歩いて行ったシンをアーシェは慌てて追いかけた。近づく気配に気づいたのか、墓標を眺めていた人物がこちらを向く。シンの手にある花を見ると、表情を和らげた。

 

「……ここにもせっかく花が咲いたのに、波を被っちゃったからまた枯れちゃうね」

 

 波をかぶった。それはミネルバが寄港したからか。それともユニウスセブンが落ちたからか。あるいはその両方。彼に意図はないのだろう。ただ事実を述べただけ。悲しそうな言葉とは裏腹に、その口調はどこか冷めたようにシンには聞こえた。感情の感じさせない言い方に、シンは苛立ちを感じてしまう。

 

「ここに花が咲いたからと言って、綺麗な場所にはなりませんよ」

「え」

「どれだけ整備されても、起きたことはなくならないから」

「君……もしかして」

 

 これではただの八つ当たりだ。相手はここであったことをただ純粋に悼んでくれただけのかもしれないというのに。

 

「あら?」

「……あ」

 

 そこへ少女の声が届いた。声のする方を見ればピンク色の髪が風になびいている。とても綺麗な人だった。どことなく、既視感を感じさせる姿にシンは一瞬言葉を失う。

 

「シン、そろそろ時間だから戻らないと……っ⁉」

 

 シンが見た方向をアーシェも誘われるかのように顔を向けた。すると、アーシェは口をパクパクさせる。驚愕している。シンはただ綺麗な人で、見たことがあるなという不思議な感覚だったのだ。だがアーシェはそれ以上の驚きを現していた。

 

「ま、さか……でも」

「……」

 

 驚いているアーシェに対し、ピンク色の髪の少女は少しだけ苦しそうな表情をすると深々と頭を下げた。もしかして知っている人なのか。

 

「アーシェ、知り合いなのか?」

「……ううん、私じゃない。兄様の、大切な人……」

「シリウェルさんの? そうか。ここはシリウェルさんにとって大切な故郷だって言ってたっけ」

 

 育ったのはプラントと聞いているが、オーブにもよく来ていたと言っていた。ならばそこに大事な人がいても不思議はない。ただ気になるのは、アーシェの反応だ。そして辛そうな表情をしている少女も。

 

 

「行こう、シン」

「え、あ……えっとすみません」

 

 誰だかは知らないが、何となく無言でその場を去るのも気まずいと言葉だけの謝罪をしたシンは、アーシェに手を引っ張られるがままその場から離れる。

 

「おい、アーシェ」

「……生きてたんだ、あの人」

「どういう意味だ? あの人ってあの綺麗な人のことか?」

「うん。兄様の特別な人で……私にも優しくしてくれた人」

 

 話しながらも足を止めることのないアーシェに、シンは戸惑う。優しくしてくれた相手ならば、どうしてこんな風に離れたのだろう。まるで避けるような態度だ。

 

「……アーシェはあの人が嫌いなのか?」

「そんなことないっ!」

「ならどうして――」

「嫌い、じゃない。けど……どうして兄様の傍に居てくれなかったのか。あの人がいてくれたら、兄様だってきっともっと自分の事を考えてくれたのにって」

 

 足を止めたアーシェは、シンを引っ張っていた手にギュッと力を込めた。少しだけ痛みを感じるそれに、アーシェの痛みが感じられるようでシンは繋いでいた手を持ち上げると、空いていた片方の出てそっと握りしめる。すると、アーシェはようやく表情を和らげてくれた。

 

「ありがとう」

「いや……」

「わかっているの。きっと事情があったんだって。だって私が知っているあの人なら、今の兄様を見て放って置くはずがないんだもん。それでもね、思っちゃって……どうして貴方がそこにいるのって」

「そんなにすごい人、なのか?」

 

 そんな風には見えなかった。見覚えがあるような気はするけれども、それだけだ。シンにとってシリウェル以上に凄い人などいない。

 

「母様がね、以前言っていたの。あの人は兄様と同じだって。意味はわからないけれど、それでも私もそう思う。あの人なら何とかしてくれるんじゃないかって……そんな風に思うから」

「そっか」

「だから、裏切られた気分になったのかもしれない。なんで兄様の傍にいてくれないのって、そんなの周りが決めることじゃないのにね」

 

 アーシェにとってあの人は、シリウェルの傍に居るべき人だった。けれど、全く別の場所にいて別の人と一緒にいる。それがショックだった。それだけのことだと。

 

「……自分勝手なことを押し付けちゃった。きっと私も嫌われちゃったかな」

「そんなことないだろ」

「どうしてわかるの?」

「あの人も辛そうにしてた。だから知ってるんじゃないか? そんな風にプラントの人々から思われているってことに」

 

 わかっているのに、それをしていない。だからこそ申し訳ないという想いがにじみ出ていたのではないか。都合のいい思い込みかもしれない。でもシリウェルと同等というのならば、それも全てわかっているような気がする。

 

「俺は何も知らないけど、大丈夫だと思う」

「ふふふ、知らないけどって無責任な言い方」

「仕方ないだろ、事実なんだから」

「そうだね。でもありがとう。シン」

 

 

 ミネルバへと戻ったシンとアーシェは、何やら慌ただしい雰囲気になっているミネルバ艦内に驚く。国防本部から、オーブを出港せよとの命令があったというのだ。

 

「MSも待機せよとの命令だ。二人とも直ちに持ち場につけ」

「はっ」

「はいっ」

 

状況はわからないが、国防本部ということはシリウェルからの指示ということだ。ならば従うのみ。アーシェと別れて、直ぐにパイロットスーツへと着替える。そうして格納庫へと向かえば既にレイとルナマリアも準備万端で待っていた。

 

「遅いぞ、シン」

「悪い。今戻ってきたんだよ」

「ふーん、アーシェとデートしてきたんでしょ?」

「デ、デートじゃないっ。ただ……墓参りみたいなもんだよ」

 

 正確にはただ慰霊碑へ立ち寄ってきただけだ。シンの言葉に、ルナマリアもレイも気が付いたようで表情が一気に暗くなっていった。

 

「ごめん、シン」

「そうだな。ここはお前にとってもそういう場所だったな」

「過ぎたことだし……ここで家族をなくしたのは俺だけじゃないから気にしなくていい」

 

 勿論、未だに家族のことを思い出すと悲しいし、辛い気持ちになる。それと同時に何もできなかった無力な自分へ苛立ちを感じるのもまた事実だ。あの時、シンが直ぐに動けば少なくともアーシェの母を死なせることはなかったはずなのだから。シリウェルも母を失うことはなかった。あの二人はそのようなこと考えていないだろう。それでも、彼女に庇われた事実はシンにとって忘れられぬ出来事なのだ。

 

『ミネルバ出港する、各員戦闘準備に入れ!』

「え……まだオーブの領海なのにか?」

「どういうことなの……?」

「……」

 

 警戒するアラートが鳴り響く。オーブは中立国。だからこそザフト艦であるミネルバも寄港出来た。だというのにこれは一体どういうことなのだろう。困惑をするシンとルナマリアとは違い、レイは冷たい表情でつぶやいた。

 

 

「オーブは、大西洋連邦に屈した。そういうことだ」

 

 

 

 

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