翌日の朝、シリウェルは一人会議室へと来ていた。そこには既に白と黒の軍服を纏った将兵二人が控えている。
シリウェルを見るなり、立ち上がると敬礼した。
「おはようございます、シリウェル様」
「……おはようございます、ダカーハ隊長。そちらは、ハーシェ・グルンダ殿でしたね」
「知っていただけたとは恐縮です、ファンヴァルト隊長。自分は、ハーシェ・グルンダであります。よろしくお願いします」
「こちらこそ、よろしくお願いします」
ザフト軍内は連合に比べて人員不足だ。その中でもシリウェルはほとんどの兵の名前と顔、技術を記憶していた。現在のザフトが配備しているMS設計のほとんどに携わっている以上、使用者を知ることが必要だったのだ。製造したのにパイロットがいないのであれば、宝の持ち腐れでしかないのだから。
ダカーハはファンヴァルト隊母艦の艦長をしているレンブラントよりも年齢は上で、落ち着いた雰囲気の紳士という表現が適切だろう。指揮能力に優れた名将だ。
ハーシェはその副官であるが、まだ任命されて日が浅いためその実力は見れていない。能力としては支援をするなら優秀といったところだ。二人とも前線に出るタイプではない。
お互い、席に着くとすぐにシリウェルが切り出す。
「それで、上は何を持ってきたのですか?」
「……お見通しのようですね。実は、シリウェル様に新たなMSの設計の依頼が来ているのです。国防委員長であるザラ閣下から」
「ザラ閣下が……なるほど、地球軍のMSに後れを取ることのないように、か……」
連合のMSは映像で見る限りでも、かなりの機動性と戦闘力を持つようだ。扱えるパイロットがいない以上は、脅威とはならないが、あのMSを作り出せる技術力があることは事実。指をくわえてみていることはできないのだろう。このタイミングで国防委員である彼からの指示ならそれ以外にない。だが今回は、パトリックの判断は正しいといえる。
「わかりました。クルーゼ隊からMSの情報は得ていますか?」
「はい。こちらに。ですが、相手側にある一機については映像データのみとなります」
「十分です。映像があれば問題ありません」
情報は多い方がいいが、多ければいいというものでもない。ある程度の戦闘映像があれば、ほかの四機を比較しながら踏襲するのがいいだろう。
「では、今日中に帰国します」
「……お願いします、シリウェル様。我々の勝利のために」
「無論です」
データを受けとると、シリウェルは席を立つ。部下に連絡と準備をしなければならない。事前に帰国する可能性は伝えてあるから然程問題はないはずだ。
会議室から出ると、端末を操作する。
『隊長、どうかされましたか?』
「プラントに戻る。準備は出来るか?」
『……本当に予定通り直ぐにお戻りになるのですね』
通話の向こう側の相手は呆れ混じりだった。それもそうだろう。昨日到着して、一日休みはあったものの実際にはとんぼ返りに近い。
「どのくらい必要だ?」
『予定は組んでいましたので、二時間もあれば準備は可能です。……勘が当たりすぎです、隊長は』
「面倒を強いて済まないな」
『いえ、承知してますんで。むしろ、歓迎してますよ。では、二時間後にドックに来て下さい』
「わかった。頼む」
通信が切れるとシリウェルは重い息を吐く。
強行軍であることは地球に降り立つことを命じられた時から覚悟していたことだ。しかし、それでも重力の違う場所を行ったり来たりすることは、予想以上に体力を使う。
今回は任務というよりも、技術者としての仕事の意味合いが強いため、プラント本国でゆっくり体を休められるはずだ。これ以上、戦争を長引かせることは上層部も望んではいない。最も、それは相手側にも言えることだった。
そうして二時間後、シリウェルたちはプラント本国へと舞い戻った。