本編はちょっとうろ覚えです;
そしてここが一番変えたかったところ、になります!
それは突然だった。現地住民からの通報により探索任務が与えられたのだ。場所は連合の息のかかった研究施設があったという。何があったかは不明だが、その規模はかなりのものだったらしい。何故かその調査を行うようシンやレイたちに命令が下された。指令本部からの指示というが、シリウェルからの命令ではなさそうだ。
「なんで俺たちがそんな探索任務なんか……」
「いい加減にしろよ、シン。これも命令だ。俺たちは軍人なんだからな」
命令に従う。それが軍人なのはわかっている。だがこれまでそんな任務を下されたことなんてない。そもそもミネルバは最新鋭の艦、MSを所持している部隊だ。わざわざシンたちが出向かなくともとどうしても思ってしまう。
不満を抱きつつも、コアスプレンダーに乗り込みレイと共にシンはその研究施設へと向かった。
「……なんだ、ここ」
「……っ」
薄暗い研究施設内に入り込む。だが入った途端、その異変は起きた。前を歩いていたはずのレイが立ったまま動かないのだ。
「レイ?」
「っ……う」
「レイ⁉」
表情はこわばり、徐々に顔色を失くしていくレイ。ついにはその場に膝をついてしまった。一体何があったのか。苦しそうな悲鳴を上げるレイ。必死にシンが呼びかけるが、反応はしない。眼の焦点が合っていない。
「レイ、レイ! しっかりしろ! どうしたんだよッ」
「はぅ……はぁはぁ……」
発作を起こしたように呼吸が荒くなっていく。一体何が起きているのかわからない。だがそのままにはしておけない。シンは無理やりレイの腕を引っ張り、立ち上がらせると来た道を引き返す。尋常じゃないレイの様子。コアスプレンダーへと戻り、ミネルバと通信回線を開いた。
「こちらシン・アスカ、ミネルバ応答してくれ」
『シン? どうしたの?』
すぐに管制担当のメイリンが顔を出した。
「研究施設に入った、レイの様子がおかしくなって。周りはなんか人みたいなのもいっぱいあって、だから――」
『ちょ、シンそれだけじゃ――』
『何があったの?』
すぐにタリアが画面に現れる。何を説明していいかなどシンにもわからない。だがこのままではだめだ。タリアに事情を報告すると、一度帰艦するようにと言われた。確かにこのままのレイを放置はできない。シンはなんとかレイを連れて、一度ミネルバへと帰艦することにした。
レイが倒れたことで何か外的要因があるのではと、シンも医務室で検査を受けることになった。結果は陰性。何も問題はない。だがレイが倒れたのは事実だ。何が起きたのか。それをもう一度確かめるため、もう一度研究施設へと向かうことになった。今度はタリアらも一緒だ。
「これ……」
「人体実験、でしょうね……」
研究施設内部はひどい惨状だった。ポットのようなカプセルのようなものにも、大きな試験管を模したようなものにも、そこかしこに形跡が残されている。人だったであろうそれが。
「艦長、これは」
「想像でしかないけれど、おそらくブルーコスモスの研究施設だったのでしょう」
いたたまれない状況だった。こんなことをしてまで、戦争を続けたかったのかと嫌気がさしてくる。まだ小さな子どもだっていた。血だらけになって、どうしてこんなことをと思わずにはいられない。
「あ、これ……まだ動いているみたい」
「ルナ?」
ルナマリアが端末に触れると、そこからデータの羅列が流れ始めた。時折顔写真のようなモノも流れてくる。そこでシンは目を見張った。
「え……」
「ちょっ……まさか」
「……」
シンだけじゃない。ルナマリアも、タリアたちもそこに目を奪われた。何故ならそこには、シリウェル・ファンヴァルトの名前と共に幼い頃の顔写真があったからだ。
「な、んだよ、これ……」
「……閣下の、血液と遺伝子データね」
「艦長……これは」
「わからないわ。でも……閣下の遺伝子データがここで研究に使われていたということは事実なのでしょう。開始された年数からみても、まだ物心がつく前からでしょうけれど」
「ということは、このことはファンヴァルト閣下は」
「当然、ご存じないでしょうね」
タリアとアーサーが話す会話が突き刺さっていく。シリウェルが研究に使われていた。一体どうしてなのか。そもそもここは大西洋連邦の研究施設、ブルーコスモスが使っていただろう場所だ。その場所にどうしてシリウェルのデータがあるのか。
「なんで……なんでこんなこと……」
「シン……」
「閣下が幼い頃にメンデルに出入りしていたということは聞いたことがあるわ。バイオハザードを起こして廃棄されたとされているけれど、それもブルーコスモスが起こしたという噂だった。その時でにもデータを盗んだのでしょうね」
データを確認しながらタリアが説明する。メンデルのことは耳にしたことはあるが、そこまでは知らない。
「強化人間への適合実験……エクステンデット。眠っている力を引き出すと共に、ナチュラルでありながらコーディネーターにも匹敵する強化を施す、か。なるほど、それで閣下のデータを」
「どういうことですか?」
「閣下はハーフコーディネーター。でも第二世代のコーディネーターにも匹敵する優秀さを持っている。ナチュラルに強化を施すという意味では、普通のコーディネーターよりも近しかったのかもしれないわ」
「そういうことじゃありません!」
「シン!」
そういうことは問題ではない。問題なのは、シリウェルの力が使われたということ。そのデータがあるということは、シリウェルも同じように実験を受けていたということではないのか。まだ幼い頃にだ。そのようなこと許されるわけが、許されていいわけがない。
「落ち着きなさい、シン」
「でも!」
「すべて過去のことよ」
今更何を言ったところで意味はない。過去の話だ。でもそれを使って実験をしていたという事実は許せるものではない。子どもを兵器に仕立てる。そのためにシリウェルのデータを使った。そんなことをしてまで戦争を続けたいのか。戦争を起こしたかったのか。
「シン……」
「このことは私から閣下に報告するわ」
ある程度何が起きていたのかは調べた。長居は無用だと施設から退去しようとしたその時だった。シンたちの前に、一人の少女が現れたのは。その顔にシンは見覚えがあった。そう、あの海で会った少女だったのだ。
「ステラ⁉」
「殺す!」
その手にはナイフ。大西洋連邦に属する者であるという制服。このタイミングでこの場に姿を見せたということ。それはつまり……。
「まさか……君はっ」
「はぁ!」
襲い掛かってきたステラに対し、シンは反射的に攻撃を回避する。だがステラも即座に対応してきた。眼前に迫るナイフ。剣呑な眼差しには確実に殺意が込められていた。
「コーディネーター殺す!」
「っ」
殺されるわけにはいかない。シンとてこの場でやられるわけにはいかないのだ。ナイフを持っていた手を掴み、腹部に一撃を与える。
「はぁ、はぁ……」
「シン大丈夫⁉」
「あ、あぁ……けど、この子」
意識は奪った。しばらくは動かないだろう。だがステラは大西洋連邦の人間だ。そして――。
「強化人間、エクステンデットね」
タリアの言葉が冷たく脳裏に突き刺さった。