ガンダムSEED 天(そら)の英雄    作:加賀りょう

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主人公視点に戻ります。
今までもでしたが、この先もオリジナル展開多くなります。


第93話 分岐点

 宣言された通り、ウルスレイが演説する様子をシリウェルは戻った国防本部で眺めていた。

 

 あの後、アスランとラクスをカーリアンスにある自室に隠したままでウルスレイの話を聞いた。ちょうどその頃、ロシアのベルリンに大西洋連邦が進行していた。当然、放置はしておけない。防衛任務をミネルバに与えると伝え、ウルスレイも頷いた。問題はその後だ。

 

『常に敵を作り上げ、戦争を続けようとするものがいます。軍需産業複合体である死の商人ロゴス。彼らがいる限り、世界に平和は訪れません。いえ、彼らこそが我々平和を望む者たちの敵なのです。ナチュラルでもコーディネーターでもなく、彼らがいるからこそ戦争は終わらないのですから』

 

 死の商人ロゴス。画面に出された面々を見て、シリウェルは眉を寄せた。見知った顔もいる。オーブの首長家と関わるのある者たちの名前もある。そして当然のようにブルーコスモスの盟主ジブリールの姿もあった。彼らを討つ。それをしなければ、戦争はいつになっても終わらない。彼らを討たなければならない。ナチュラルでもコーディネーターでもなく、彼らこそが元凶なのだと。

 

「閣下……ご存知でしたか?」

「事前に知らされてはいたが、それまでは知らなかった。とはいえ、そういう存在がいたこと自体には納得する」

「そうですか」

「戦争で富を得る者がいる、利を得る者がいる。ただ……それはロゴスだけではないがな……」

 

 その一人は間違いなくウルスレイだろう。ロゴスを討つのはひとまずおいて置くとしてだ。彼らを討ったところで、戦争は終わらない。それもウルスレイにはわかっているはずだ。何度ブルーコスモスの盟主が討たれても、また誰かがその地位に就く。そうして銃を持たせるだけだ。ロゴスとて同じ。ロゴスという組織のメンバーを全員討ったところで、また別の誰かを据えた別のロゴスが現れるだけだ。

 高らかに宣言をするウルスレイに、あの場にいる最高評議会議員たちも、おそらくこの演説を聞いている多くの一般人たちも同意するだろう。戦争の原因、元凶、それを討つと言っているのだから。原因を取り除けば戦争が無くなる、そう考えているのかもしれない。むしろそう思わせるように誘導しているようにも見えるが、それは決してシリウェルの考えすぎではないはずだ。

 

『閣下、客人が来ております』

「誰だ?」

『その……エザリア・ジュール議員です』

 

 その名にマリクとシリウェルは顔を見合わせた。先の大戦では急進派として知られているエザリア・ジュール。議員として名を連ねてはいるものの、要監視者という状況に置かれていた。その彼女がここを訪れるなど、予想外過ぎる。

 

「通してくれ」

『はっ』

 

 監視者でもあるので、一人でこの場に来ることはできない。不自由であることはわかっているはずなのに、その上で国防本部に来る理由はなんだろうか。

 

「失礼いたします、ファンヴァルト閣下」

「……久方振りだ、ジュール女史。それで何用だ?」

 

 世間話をするような間柄ではない。幼少期から知っている相手とはいえ、今はシリウェルの方が立場が上であり、相手は先の大戦にてパトリックと共に戦争を扇動した側でもある。和やかな雰囲気になるはずもない。

 

「……私が信用できぬと言うのも無理はない。だが伝えておかねばならぬことがあることがあり、私が来た」

「疑われそうな立場でいる貴女が?」

「だからこそだろう。私の言葉など信じるはずもないと」

 

 シリウェルは表立ってパトリックに異を突きつけた。共に居たエザリアを信じられるはずがないと思われても不思議はない。そしてシリウェルとてエザリアの言葉すべてを信じるつもりはなかった。とはいえ、聞かないわけにもいかないだろう。

 

「まぁいい。話をしてくれ」

「あぁ……実は今最高評議会で、一部の者たちが議長に対する疑念を抱いている」

「何?」

「無論、多くの者たちが議長を信頼し、その言葉を信じ、疑うことなく従うことが良いと思っているが、一方で過激すぎる行動ではないかと、議長の行動に一定の疑念を抱く者たちもいるのだ」

 

 それが今まさに公表されているロゴスの一件でより深まった。アーモリーワンの襲撃、ユニウスセブン落下。これまですべてプラント側は後手に回ってきた。こちらから仕掛けず、どれだけ大西洋連邦に攻められても決して手を出すことはしなかった。それがここにきて突然のロゴス討伐である。まるで、そのタイミングを待っていたかのように。

 

「……」

「平和を願い、そのために温存してきたと言われればその通りだと、こちらも反論できぬが、本当にそうだろうか」

「何がいいたい?」

「ザラとは違う。だが、どこか得体のしれないような雰囲気を感じるといったところか。彼女が平和を望んでいるという意志を疑いはしない。しかし同時に、ロゴスを討つだけで平和が訪れるなとど楽観的に考えることもできない」

 

 エザリアの話に、シリウェルは口元を緩める。まさかここに来て、そう考えている者たちがいることに嬉しさを感じた。

 

「その話は、同じ考えを有する者たちの中で共有しておけばいい」

「それだけか?」

「……ロゴスを討つためにここまで準備してきたという観点は悪くない。問題はその結果に至る何かだ」

 

 そこまで考えてシリウェルは腕を組んだ。ウルスレイが求めるもの。それは間違いなくシリウェルが深くかかわっている。常々ウルスレイは言っていた。議長職はただ預かっているだけだと。そこに座るべきものはシリウェルだと。軍のトップでいる限りは無理だと伝えても、両方兼任すればいいだろうと微笑む。

 

「ジュール女史、ただ命令のままに動くのをどう思う?」

「……そうであるならば、議会など不要だろう」

「そうか、そうだな……感謝する。そう伝えてくれ」

 

 エザリアをここまで遣わしたことに。それを教えてくれたことに感謝するといえば、エザリアはどこか安堵したような表情を見せた。そのまま退室するのを見送ったシリウェルは、マリクに断りを入れると本部にある自室へと戻る。PCを立ち上げて暗号文を作成する。

 

「あとは任せた、シン、レイ……アーシェ」

 

 願いを込めて作ったメッセージを送る。送り先はタリア・グラディス。

 

『オーブ、およびアークエンジェル討伐の任を受けることがあれば――――』

 

 

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