原作とかなり違います!
最高評議会と国防委員、運命だと国防委員長って影薄くて見覚えがないんですよね……
この辺りの指令系統については勝手な創造も入っています。ご了承ください。
ロゴスを討つと言ったが、その前にミネルバは議長よりテロリストの討伐を命令された。国防本部からではなく、議長からという点にタリアは不信感を覚える。それでも従わないわけにはいかない。軍人としては。
『タリア、君ならどうするかね?』
『ギルバート』
ミネルバに乗る前に、一度だけ会ったかつての恋人。子どもが欲しくて、婚姻統制に従い結婚をした。間違いなく幸せだった日々。相手を亡くし、こうして軍属に身を投じても、どこかで彼を求めていたのは否定できない。
『ファンヴァルトは甘い。けれど、それを支持するものも多い。だがね、それでは終わらんのだよ』
シリウェルの考えでは平和は訪れない。ギルバートは断言した。変革が必要だと。その結果で自ら拘束されたというのに、彼はまだ懲りていないらしい。
『君も、彼を支持するのかな?』
『えぇ。軍人として、一人の人間として、信頼できる人だと思っているわ』
『この先も彼を信じて進むと?』
『……何が言いたいのかしら?』
『君は決められた運命を選んだ。それで幸せだったのかな?』
タリアには息子がいる。大切な我が子を抱きたかったから、婚姻統制に従った。愛する人ではなくても、大切な人との子だ。後悔はしていないし、家族はタリアにとって大切な存在、守るべき存在だ。幸せだった、そう言える。
『そうか……』
『ギルバート?』
『いやいい。それが君の答えなのなら、私も
再会はそれで終わった。最後にギルバートが言った言葉が気にかかるが、彼は拘束されている。何かができるわけではない。そう思うのに、どこかで胸騒ぎがするのもまた事実だった。
そこに来た議長からの命令だ。アークエンジェルをテロリストと断定する。オーブの姫を乗せているであろう艦を討てと。シリウェルがいくら公私混同をしないとはいえ、身内が乗った艦を討てとは命令しない。前面に出るなどして交渉をするはずだ。だからこそこの文面にも信憑性が出てくるのだが。
『テロリスト討伐に乗じて、身を隠せ』
短い文だった。相手が誰かなど考えるまでもない。議長の言葉を思い返す。あれは、ボギーワンを追っていた時だったか。
『ミネルバには、かつての英雄的行動をしたアークエンジェルのような存在になってもらいたいのですよ』
もしかすると、そのためにアークエンジェルが邪魔になったということなのだろうか。そう考える辺り、タリアは軍人失格なのかもしれない。
『常に己の行動とその意味を考えろ』
ミネルバの艦長になる際にシリウェルから告げられた言葉だ。軍の命令に従うのが軍人の役目。それは誰もがわかっていることだ。その中に於いて、大局を見据えるのがシリウェルらの役目だが、タリアたち前線にいる者たちは指示に従うのが役割。それでも時にその状況に適応する判断力が求められることもある。一番その場の戦況に詳しいのは艦長なのだから。
『艦長、アークエンジェル発見しましたが……』
「わかったわ。コンディションレッド発令をお願い」
『はっ』
最高評議会議長の命に従いアークエンジェルとフリーダムを討つか、それとも正体不明の文面をよこした相手に従うのか。タリアは口元に笑みを浮かべた。
「ギルバート、残念だけれど……私は駒ではないし、英雄でもないわ。何が正しいのか、それを見極めることを誰に委ねるつもりはないの」
ミネルバの乗員の命を預かっている立場だ。世界の命運を背負っているつもりはない。けれど、アークエンジェルの行動をテロリストだと討伐することに理解はできない。彼らは討たなければいけない相手ではない。こちらから出なければ、彼らはこちらを討つことはないのだから。
彼らのこれまでの行動を見れば、考えるまでもないことだった。それを討てと命ずる議長の真意を測るならば、彼らが邪魔だからとしか思えない。最高評議会議長として判断するにはあまりにも短絡過ぎる判断だ。
指示は受け取っている。議長の意に反することだとしても、その責任は彼が取ってくれるだろう。いざとなればタリアも責任を取るつもりではあるが、未来ある若い者たちが多く乗っているこの艦を、ただのプロガバンダに使われるわけにはいかない。
「議長と天秤にかけ、傾いた時点で私も既にそちら側にいくということになるのかもしれませんね」
そう、忘れてはならない。ザフトは義勇軍だが、そのトップにいるのは国防委員長だ。議長からの指示は命令系統から外れている特別なもの。指示系統が同じであれば、先の大戦のようになりかねない。先の大戦では、パトリックが議長と国防委員長を兼任してしまっていた。一人の人間の決定が政治も軍も動かすなど、危険極まりないのだから。
ブリッジに来るとタリアはメイリンの下へ向かった。呆けた顔でタリアを見上げていたメイリンだが、あるプログラムを渡すと口をパクパクとさせてしまった。
「あ、あの、これ……かん、ちょう」
「いいからやりなさい。閣下のご命令よ」
「は、はい!」
ミネルバ以外のザフト軍が攻撃を開始していた。どれだけの数がいようとも、あのアークエンジェルを討てるとは思えない。向こうはフリーダム一機のみ。それでもザフト軍の攻撃は掠る事さえなかった。
「さすがね……」
「艦長、こちらは」
「モビルスーツはインパルスのみ。それ以外は待機」
「えぇ⁉ そんな、それでは」
「これは議長からの指令だけれど、我々のトップは国防委員長であるファンヴァルト閣下よ。その指令は可能な限り考慮はするけれど、閣下の命令の方が優先される」
間違えてはならない。ザフト軍は議長の駒でも手足でもない。最高評議会の決定がザフト軍の方針に関わりがないというわけではなく、最高評議会には国防委員長も出席している。そこで決められたものは国防委員長も認めたものであるから従う命令となるが、議長のみであるならばそれは違う。
「ですが艦長」
「形骸化されていようとも、それがあるべき姿なのはかわらないわ。だからこそ私たちは閣下の命令の通りに動く。この先、アークエンジェル討伐に隠れて
それこそがシリウェルがミネルバに下した命令だった。