バディカフェ“ゴールデンフリース”   作:雪咲

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 久しぶりに書き終わった……。今回はちょっとだけの登場ではありますが、辻 逆月さんの作品から登場人物をお借りしています。


《4》

「抹茶」

 

 日も沈んだ頃。和服姿の女性が入店するなり、抹茶を注文する。彼女の名前は不動(ふどう) 明乃(あけの)。不動名人と呼ばれている、タイトル持ちのプロファイターだ。

 

「アマリリス、抹茶を淹れてくれ」

 

「はい、ただいま。(ところでマスター、何で不動名人はあんなに不機嫌なんですか?)」

 

「(もうすぐ防衛戦だからじゃないか? 不動名人は私が相手するので、早く淹れてきなさい)」

 

「(りょ、了解です)」

 

 アマリリスが慌てた様子で厨房に入っていく。ゴールデンフリースでは普段は飲み物の抹茶を出していないのだが、不動名人の横暴……注文で茶碗と一緒に専用の抹茶も用意してある。そのせいか、この店に抹茶を飲みに来る人が増えてしまった。余談だが、アマリリスの抹茶に対する目利きも、不動名人の抹茶を淹れ始めてからどんどんと上達している気がする。

 

「不動さん。少し焦っている様にお見受けしますが、どうしてこちらに?」

 

「新代か桐生だ。彼奴らが時折ここを訪れていることは知っている。マスターの腕じゃ話にならねぇ、せめて新代以上の相手を用意しろ。今すぐだ」

 

「そう言われましても、桐生チャンプは本日は予定が詰まっているらしいですし、新代さんは世界中を巡っているので連絡が付かないのですよ……」

 

 そもそも、なぜ私が桐生チャンプと連絡が取れると思っているのだろう。

 

 私が受け答えをすると、不動名人はため息を吐く。お前も話にならない、という雰囲気は伝わった。とはいえ、不動名人は言葉さえ発しなければ、大和撫子らしい所作の美しさを彷彿とさせるのだ。

 

「知っていると思うが、オレはもうすぐ防衛線でな。デッキを少し調整したのはいいが、何分周りの連中は委縮して話にすらならねぇ」

 

「そうですね。不動名人のスタイルはその……荒々しいですから」

 

「桐生はともかく、新代は何年もバディファイトを触っているらしくそれなりに腕が立つ。ついでにあまり動じないので、想定外の相手と戦う時に良い」

 

「新代さんが相当な修羅場を潜っている事は私にも分かりますよ。お二人が出会ったのは『シンヤミゲドウ事件』と耳にしましたが」

 

「……待て。マスター、何故お前がそれを知っている? 箝口令が敷かれていたはずだぞ」

 

 珍しく、不動名人が動揺した様子を見せた。少しだけ目を見開く程度の僅かな動作だったが、最近はお客様の細やかな動作もつかめる様になってきた。

 

「こういう仕事をしている以上、様々な情報を耳にするので。――勿論、気軽に話したりなどしませんよ」

 

「……まあ、いい。虚を突かれたせいか、少しは落ち着いたよ。某事件と言えば、この間の絆ヶ丘学園で行われた大会で渦、中に居た娘と会ったよ。オレが軽くひねっておいたが」

 

「容赦ないですね。まだ小学生だったはずですが」

 

「それ位しねぇと、憎まれ役にならねぇからな」

 

 その先の事を、彼女は言わなかった。……不動名人にも、何か思うことがあるのだろう。

 

「不動さん、お待たせしました。抹茶です」

 

 不動名人は流麗な動きで抹茶を一口飲むと、少しだけ笑みを浮かべてアマリリスを見た。

 

「おう。……ふぅ、悪くねぇ。また腕を上げたな」

 

「あ、ありがとうございます」

 

 不動名人が少し落ち着きを見せた時、ドアを開けて新しい客が入って来た。……噂をして見れば。

 

「こんばんは、不動さん。もうすぐふーちゃんとの3番勝負じゃなかったっけ?」

 

「新代さん、こんばんは。すぐ紅茶をお持ちしますね」

 

「ありがとう、アマリリスちゃん。あ、砂糖とミルクもよろしくね」

 

「……ところで新代。あれは何だ?」

 

 不動名人が指さしたのは、新代さんが持ってきた巨大な麻袋だ。……何やらもぞもぞと蠢いている。

 

「むぐー! もごごご……」

 

「あ、忘れてた」

 

 今まで忘れていたかの様に新代さんが手を叩いた。そうして、彼女が開けた麻袋の中から、一人の少女が現れた。腰に二丁拳銃を付けた、中学生くらいの少女だった。

 

「プハァッ! 何やっているのよ、新代トウコ!」

 

「だって、銃奈ちゃん。また許可も無しに今度はドラゴンワールドのゲートを開いて、いちいち言っても懲りないんだから」

 

「だからって、単身乗り込んできて、あたしとデスタールぼこって、麻袋に詰めて連行するのって酷くない!? っていうか、トウコだって好き勝手ワールドを行き来しているじゃない!」

 

「私は許可ちゃんと取ってるんですー。……それに何処かの組織が動くよりは、私達の方が早いし」

 

「あー、もう! 納得いかねー!」

 

 銃奈ちゃんが地団太を踏んでいる横で、私はその隣に座っているデスタールに料理を振る舞った。

 

「今回の試作品だ。試食してくれないか?」

 

「え、デスタールとこのおっさん。顔見知り?」

 

 デスタールは早速試食を終えて、ナプキンで口を拭いた後に銃奈の疑問に答える。

 

「彼はおっさんでは無い、マスターだ。……少し、縁があったのでな」

 

「イワシを大目に発注してしまった時に、色々とあったのですよ」

 

「話は後にしてくれ。……新代、オレの相手をしろ。最終調整だ」

 

 抹茶を飲み終えた不動名人が私達の会話に割って入って来た。

 

「うんー? いいよ、明日はふーちゃんとの一大決戦だものね!」

 

「……言うな」

 

 不動名人と新代さんがファイトに向かおうとするのを、少し呆れた様子で銃奈ちゃんと呼ばれた少女が見つめている。

 

「あー、あたしとデスタールはどうすればいい?」

 

 その言葉に2階に上がろうとしていた新代さんが振り向いてサムズアップする。

 

「マスターさんの料理でも食べながら、私達のファイトを見ていればいんじゃない? ――勿論、料理は私の奢りサ!」

 

「何ナチュラルにヒーロームーブしてんのよ! むーかーつーくー!」

 

「……まったく、喧しい。お前らは水と油か」

 

「普通に界面活性剤が入ってると思うから、何だかんだ相性はいいと思うんだけどね」

 

「言いたいことは分かるが、意味が分からん」

 

「見てやるわよ、次こそは絶対たおーす!」

 

「銃奈は吾輩が見張っておこう」

 

「アマリリス、ガスコンロと調理器具を用意してくれ。私はテーブルを用意するから」

 

「分かりました、マスター」

 

 他に客も居ないので、全員で上の階へ向かうことに。……それにしても新代さんのファイトとか見たことが無いんだが、どの様なデッキを使うのか……。

 

 

 

 

 

 

「不動さん、準備はいい?」

 

「ああ、いつでも来い」

 

 新代さんは九と書かれた球体型のデバイスを宙に浮かべ、不動名人は刀型のデバイスを構える。

 

「一角、二角――数えて九角! 我ら、新たな時代の守り手也! ルミナイズ、『即決解決! ナインアンサー』!」

 

「雪降りし、花を纏いて、月を獲る――ルミナイズ、『夢刀雪月花』!」

 

「「バディファイト! オープン・ザ・フラッグ!」」

 

「ヒーローワールド! バディは《新・九角勇王 レディ・アンサー》!」

 

「カタナワールド! バディは《放浪の刀鍛冶 千子村正》!」

 

「不動さん、貴女が先行よ。このファイト、思いっきり楽しみましょう!」




 こんにちは、今回は辻 逆月さんの作品から天王銃奈ちゃんをお借りしました。……今回ファイトしない上に、ちょっと扱い酷めでごめんなさい。……ちゃんと活躍させますから!

 という訳で今回は説明していないキャラクターの説明。

・新代トウコ
 世界中を飛び回る自称正義の味方。“フューチャーヒーローズ”では有名な特撮『快決! レディ・アンサー』の初代中の人兼スタントマン。
 現在はパトロン兼親友の子を巻き込みながら、世界やワールドを旅している。
 実は既婚者で娘も一人いる。夫にはベタ甘だが、周りからは『ヒーローが悪の科学者にぞっこんの様に見える……』とツッコまれるとかなんとか。
 使用フラッグはヒーローワールドで、バディは《レディ・アンサー》系のカードだが、《レディ・アンサー》自体は実は夫のバディだったりする。
 角王の証を持っている様だが、果たして……。

 銃奈ちゃんとは仲が良いのか、反りが合わないのか。私のもよく分からない……。

・不動明乃
 見た目は麗しい大和撫子然とした美少女だが、言葉遣いは荒々しく、苛烈な女性。
 タイトル持ちのプロファイター。呼吸を乱し、感情を揺さぶり、耐性の無いファイターには過呼吸を起こさせる程のダーティなファイトを行う。耐性を持っていたとしても、相手の判断を狂わせ、相手の逆転手を叩き落としながら勝利するファイトスタイルを得意とする。
 それでも他のプロファイター達に好感を持たれているのは、単にトラッシュトークを行わない事、ファイトに関して貪欲なまでの勝利への姿勢、そしてファイト外での他ファイターへのリスペクトを行う誠実さあっての事。
 使用フラッグはカタナワールドとマジックワールド。バディは《放浪の刀鍛冶 千子村正》。

 2戦目にしてまたまた角王デッキ。……偶然、偶然なのです!
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