【完結】魔法少女リリカルなのは ーThe Ace Chronicleー   作:春風駘蕩

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2.星光と雷光

「そっか……アリサちゃんと喧嘩しちゃったんだ」

「違うよ……私がぼーっとしてたから……」

 

 真夜中の街中、その一角の街路樹の下で、私服を強い風にはためかせるなのはは魔法を発動しながら、今日あったことをユーノに話す。

 本当はユーノに余計な心配をかけさせたくないために黙っていようと思ったのだが、時間の経過とともに隠していることに罪悪感が芽生え始め、気づけばぽつぽつと自身の悩みを告白していた。

 ユーノ自身も、なのはの不調の原因になりえる情報はできるだけ取り除いてあげたかったし、そもそもの原因は自分であると思っているためにそれを聞くのは義務のように感じていた。

 

「……なのは、魔法の練習はもう少し生活を顧みてメニューを組みなおそう。なのはが倒れたら元も子もないよ」

「……ううん。それはだめだよ。私がもっと強くなれば、それだけ早く事件を解決できるでしょ? 遅れちゃったら、それこそ元も子もないよ」

「なのは……」

 

 ユーノはなのはに心配そうな目を向け、そして少女の意志を変えられない自分自身の不甲斐なさに歯噛みする。

 アインにはなんとか説得してみると豪語したのに、何の役にも立てていないことが悔しくて仕方がない。アイン自身もなのはに弱いようだし、頼むといわれたために努力はしたいが、妙なところで少女は頑固だった。

 しかし、なのはがまだ幼いこともあり探索にも時間制限がある。あまり遅くなれば家族に心配され、これまで以上に秘密の行動が困難になるかもしれない。

 

「うーん……そろそろ帰らないとかも……」

 

 すっかり真っ暗な空を見上げながら、やや気だるさを感じる体を叱咤しながら捜し歩き続ける。発動していないジュエルシードの反応は微弱で、「ある」ということはわかっても「どこに」「ある」かまでは判別できなかった。

 この場合は地道に街を歩き、その反応が強い場所を直に発見しなければならず、非常に手間と時間がかかっていた。

 

〔この辺りだと思うんだけどなぁ……アインさんはどうですか?〕

〔こっちはダメだ。今までよりも反応が薄い。正確な位置まではまだ掴めそうにない〕

 

 少し離れた場所から魔力の反応を探すアインが、若干の不機嫌さを感じさせる低い声で答える。

 彼女が不機嫌なのはジュエルシードが見つからないからではない、件の白い害蟲の異形の出現を気にしているからだ。

 なのははアインの苛立ちや怒りを感じ取り、内心で首を傾げる。あの異形たちのことをダークローチと呼んでいたり、今まで見せなかったデバイスを躊躇いなく使うようになったりと、確かな因縁があるように思えた。異形たちの出現以来、なのはやユーノが夜に外を出歩くことを気にし始めていた。

 なのはもアインの不機嫌さには気づいていたが、時折見せる険しい表情や近寄りがたい雰囲気にのまれて詳しく聞くことができず、もやもやとした感覚を覚えることがあった。

 

〔なのはは家に戻って……あとはボクとアインさんで探すから〕

〔……二人だけで大丈夫……?〕

〔うん……〕

〔無茶はするなよ。ただでさえ君には前科があるからな〕

〔わ、わかってますよ!〕

 

 最初に一人で世界を渡ったことを言われ、ユーノは慌てる。念話越しにアインは疑わしげな視線を向け、ユーノはだらだらと冷や汗を流す。信用されていないようで複雑な心境になっていた。

 なのはは苦笑しながら、走り去っていくユーノを見送るとため息をつく。取り繕っていた笑みも崩れてしまい、悲しい気持ちを持て余した切なげな表情だけが残っていた。

 

「……アリサちゃんとすずかちゃん……そろそろおけいこ終わってる頃かな……」

 

 星と月の光のみが照らす空を眺めながら呟かれた少女の声には、深い寂しさが感じ取れる。

 空に見えた一番星は、どこか弱々しい光に見えた。

 

 

「確かにこの辺りだ……」

 

 街を見渡せる高さを誇るビルの上で、フェイトはアルフとともに佇んでいた。

 ジュエルシードが発している魔力の反応を辿ってきたはいいが、あまりに微弱な反応のために詳しい位置を探れず、その場で足止めを食らっていた。せめて建物や障害物にに反応を阻害されないようにと高いところに登ってみたが、あまり違いはなかったかもしれない。

 

「ちょっと乱暴だけど……魔力流を撃ち込んで強制発動させてみるよ」

「あいつら……特にあの女に見つかっちゃうかもしれないけど?」

「大丈夫……私の方が先に封印できる、と思う」

「なんだか不安だねぇ……」

 

 自信がなさそうに余計な一言を付け加えた主人にぼやきながらも、仕方がないとアルフも嘆息する。

 高度な訓練を受けたフェイトとアルフを、軽く一蹴してしまうほどの武人が向こう側にいるのなら油断は禁物である。あの時アインが気まぐれを起こさなければ、自分たちはまず間違いなく捕らえられていたことだろう。

 

「よっしゃ、じゃあその役目はあたしがやるよ」

「え、でも大丈夫……? 結構疲れるよ?」

 

 ぐっと力こぶを作って前に出たアルフに、フェイトが心配そうな声をかける。

 アルフはふふんと自信満々に笑って振り返り、豊満な胸を張ってぷるんと揺らして見せた。

 

「フッ……あたしを誰の使い魔だと思ってるんだい?」

「……うん。お願い」

 

 フェイトは若干躊躇うそぶりを見せながら、素直に相棒の提案に従う。

 一歩下がるフェイトに見えないように、アルフは安心したような笑みを浮かべる。ただでさえジュエルシードの捜索に心血を注いでいる主人だ、これ以上心労をかけさせるわけにはいかない。ならばせめてこういった大雑把な作業くらいは手伝ってやれねば、使い魔としての名折れであろう。

 自らを光に包み、アルフは本来の姿である狼形態へと変化する。太くたくましい両足を広げ、コンクリートに掴みかかるように身構えると、全身の魔力を収束させていく。

 

「そんじゃぁ…………ウォオオオオオオオン‼︎」

 

 膨大な魔力を集め、アルフは雷として発現させていく。そして、バチバチと帯電する魔力に甲高い方向を放ち、天に向かって一気に放出させた。

 

 

 その衝撃は、凄まじいものであった。

 夜空にとてつもない勢いで暗雲が広がっていき、分厚く重い暗闇となって覆いつくしていく。頭上で鳴り響く雷鳴に街中の人々はおののき、時折走る稲光に首をすくめて怯えた表情を浮かべた。

 海鳴市を分かれて探索していたなのはたちも異変に気付き、戦慄の表情を浮かべて足を止めた。

 

「こんな街中で強制発動……⁉︎ 広域結界、間に合え……‼︎」

 

 何者かの、おそらくは例の少女たちの魔法の発動によるものと気づいたユーノはその場で静止し、一般人を避難させるためにすぐさま結界を発動させる。すでに異変に気付いている人たちがいるが、この際けが人や巻き込まれる人が出なければいいと魔法の発動にのみ集中する。

 雷鳴に気づいたなのはも表情を改め、胸元に下げていた相棒を手にすると、天に向かって掲げて見せた。

 

「レイジングハート、お願い!」

【Stand by ready.】

 

 すぐさまなのはの体が桜色の光に包まれ、私服が分解されて魔力で編まれたバリアジャケットに変換されていく。魔法使いの杖へと変わったレイジングハートをヒュン、と振り回すと、飛行魔法を使って強い魔力を感じる場所へ急いだ。

 

「あいつら……後でお仕置きだ」

 

 こめかみに血管を浮き立たせたアインが冷え切った目を細め、ゴキゴキと拳を鳴らし始めた。こんなにも堂々と魔法を発動することが後々どういう影響を与えるか考えないのか、自分の後始末の仕事をどれだけ増やしてくれるのか、そんな怒りが彼女の中で膨れ上がった。

 前回は少し飴をやったが、そろそろ鞭を与えてやったほうがいいかもしれない。理由がどうであれ、目的が何であれ、いい加減止めてやらねば今度は何をしでかすか分かったものではない。

 だが、少女たちの魔力を感じるほうへと踏み出そうとしたアインの足が止まる。

 

「……なのは、ユーノ。そっちはお前たちに任せるぞ」

 

 その場で立ち止まると、懐から尾錠型のデバイスを取り出して腰に装着する。赤いトランプが帯状に飛び出してベルトに変わる間に、新たな気配を感じた方へと方向転換した。

 その先に、奴らはいた。温泉地にも出現した、白い害虫の兵達たちがぞろぞろと群れを成し、無人となった建物の陰から姿を現し始めたのだ。その数は前回にも勝るとも劣らず、ぎちぎちと牙を鳴らす不快な音が波のように耳に届く。

 

「私は…………お客の相手をせねばならん。変身」

【TURN UP】

 

 デバイスにトランプを挿入し、手早くポーズをとってからレバーを引く。

 尾錠の全面が反転し、青いスペードの紋章が露わになると同時に、ベルトからトランプ型のスクリーンが飛び出して向かってきた異形たちを弾き飛ばす。甲虫の絵が描かれたそれをくぐり、騎士の鎧を身につけたアインは腰から剣を抜き放ち、異形たちに向かって咆哮を上げて颯爽と走り出した。

 

 

 無数に落ちる雷が、ついにひときわ強く輝く宝石の位置を探り当てる。その感触に、フェイトは思わず愛器を掴む腕に力がこもるのを感じた。

 

「見つけた……! バルディッシュ‼︎」

【Set up. Grave form get set.】

 

 戦斧が変形し、弓矢に似た、あるいは十字架のような魔力の刃が生える。封印のために特化した形状に変化したバルディッシュを携え、フェイトはジュエルシードが目覚めた方向を狙う。

 全く同じタイミングで、ジュエルシードの位置に気づいたなのはが、飛行魔法で飛翔しながらレイジングハートを構えた。まっすぐ視線を向けた先には、フェイトの魔法を受けて暴走を始める兆候を見せている。

 

「いけるよ…! レイジングハート‼」

【Cannon mode.】

 

 砲撃形態へと変形したデバイスの砲口を、ジュエルシドの輝きの中心へと向ける。幸運にも、ちょうど十字路の中心に浮遊していたそれを狙う障害物は、存在せず、足場を確保する必要もなかった。

 

「…………ッッッ‼」

 

 魔法名を唱える時間も惜しく、ため込んだ魔力を封印砲として放出させる。

 そのタイミングは奇しくもフェイト全く同じで、桜色と金色の光が青い閃光に激突する。

 光は凄まじい力で拮抗し、大気が振動して地響きをも生じさせる。ジュエルシードそのものが意思でも持っているかのように、放出される魔力の嵐が封印砲の魔力を押し返そうとしていた。

 

「ジュエルシード……封印ッッ!」

 

 決死の表情で魔力の放出を続ける二人が、さらに魔力放射の出力を上げる。ホースの噴水から川の激流までに威力が上がった封印砲の怒涛の勢いに押され、ジュエルシードの抵抗が徐々に抑え込まれていく。

 そしてやがて、青い閃光が桜色と金色の光に呑み込まれた直後、魔力の奔流があった場所には、静かに浮遊するシリアルナンバーが刻まれたジュエルシードがあった。

 

「やった! なのは、早く封印を……」

「させるかよッ‼︎」

 

 いち早く封印を促そうとしたユーノのもとへ、オレンジの毛並みを持つオオカミが襲い掛かる。咄嗟に障壁を張って襲撃を防いだユーノは、弾かれたオオカミが普通の獣ではないことを察する。

 

「君は……やっぱり使い魔……!」

 

 着地し、大きく距離を取ったオオカミがメキメキと自らの体形を変えていく様に、兜の緒を締めなおす気持ちで身構えた。

 

「フェイトの邪魔はさせないよ‼︎」

 

 大人の人間の女の姿に変わった狼―――アルフはそう言い、自分よりも小さくも油断ならない能力を有した少年に、再び襲い掛かっていった。

 

 

 レイジングハートをデバイス形態に戻し、ジュエルシードの方を見やる。正確には、ジュエルシードを間にして、なのはと向かい合うように降り立った金髪の少女を。

 たった二度しか会っていない、一方的に敵と認識され攻撃してきた相手。確固たる意志を持った冷たい目でなのはを睨み、なのに常に瞳の奥に見える寂しげな目が気になっていた、謎多き少女。

 この日のために魔法の練習を重ね、待ち続けていた。

 もう一度彼女と、真っ向から同じ目線で話し合うために。

 

「こないだは自己紹介できなかったけど……わたし、なのは……高町なのは。私立聖祥大付属小学校三年生」

 

 唐突な自己紹介に、金色の少女は眉を顰める。白い少女の意図が読めず、困惑を鋭い眼差しの奥に隠してバルディッシュの切っ先を向ける。

 

「ジュエルシードは諦めてって……次は手加減できないって、言ったはずだよ」

「それを言うなら……どうしてジュエルシードを集めてるのかって、わたしの質問にも答えてくれてないよね」

 

 答えはない。答えるつもりがないのか、余計なことを離して情報を与えることを恐れているのか、はたまたその両方が。

 

「……お話しないと、言葉にしないと、伝わらないことってきっとあると思うの」

 

 しかしなのはが一歩を踏み出すと、怯えるように肩を震わせる。冷たい刃のようだった表情にも戸惑いと恐れが浮かび、少女の本来の性格が表れたように見えた。

 何度傷つけても、怖がらせようとしても決して臆することなく向かってくる、そんな相手が初めてなのか、少女は明らかに、なのはに対してこれまでとは異なる感情を抱いていた。

 

「それにまだ、あなたの名前も聞いてない‼︎」

 

 決意の表情で、なのはは少女に自分の意志を伝える。

 少女はそれを困惑した、しかしどこか躊躇うような表情で見つめると、ふいと視線を逸らす。

 しばらくぐっと何かをこらえるような表情で佇んでいたかと思うと、デバイスを構えなおしてなのはに向き直る。その表情は、先ほどと同じ決意を固めた表情だった。

 大鎌を振り上げ、自らの周囲に魔力による雷の球体を配置する。戦闘態勢に切り替えた彼女は、いまだ自分を真剣な表情で見つめてくる白い少女を睨み、大鎌を振りぬいた。

 

 

「おおおおおおおおおお‼」

 

 醒剣ブレイラウザーを振るい、真っ向から爪を振るいあげてくる異形たちを次々に斬り伏せていく。以前と同じく、硬い装甲の隙間を狙って正確な斬撃を浴びせられ、急所を穿たれた異形たちはさしたる抵抗もできずに弾き飛ばされ、討ち棄てられていく。

 刻まれた傷口から火花と体液が撒き散らされ、一太刀で仕留められて倒れて屍を積み重ねていきながら、異形たちはせめてもの報いのようにアインの鎧や当たりのアスファルトを緑色に汚していく。

 しかし、やはり数があまりに多すぎた。いくら斬っても、その分だけ数を増やしているかのように別の個体が姿を現し、アインを超えてジュエルシードの方へ向かおうとしている。

 しかし、ジュエルシードは封印されたものの、それが回収された気配が感じられない。今もなお宙に浮いたまま、町の中心で輝き続けている。これでは、異形たちに獲ってくださいと言っているようなものだ。

 

「…………あいつらは一体何をしているんだ」

 

 視線を向ける先には、浮遊したままのジュエルシードをはさんで戦闘を繰り広げ、何かを話している二人の少女たちの姿が見える。

 彼女らの方に近寄っていこうとする異形を抑えるアインの苦労など知らず、魔法を繰り出し合って時に激突し、必死な顔で話しかけるなのはと憮然とした態度でそれを聞くフェイト。すぐ近くにはせめぎ合っているユーノとアルフの姿まで見えて、アインの額に血管が浮き出そうになる。

 

「チッ……誰も封印せんとは、わたしにはできんといつも言っていただろうに」

 

 横を通り抜けようとした異形を片手間で切り捨て、アインは苛立たし気に舌打ちする。

 ジュエルシードがどれほどの危険性があるのかはまだ知らないが、古代の代物が生易しいものであるはずがない。それを放置している事態に、アインは少女たちの危機的意識の低さを嘆く。

 今すぐにでも叱りつけたいが、次々に押し寄せてくる異形の軍団を押さえつけるのに忙しくこの場を離れられない。苛立ちが蓄積し、アインの表情が阿修羅のように険しくなっていった。

 

 

 桜色と金色の閃光が夜空に走り、激突し、弾けて消えていく。自身をすれすれでかすっていく魔力の弾丸を躱し続けながら、己の意地を通す少女たちの戦いは続く。

 速度で勝るフェイトの魔力弾を鍛えた目で回避し、なのはは弾幕の数で対抗する。雨のように降り注ぐそれらを高速で回避するフェイトだったが、なのはのデバイスの先端に高速で収束していく光に大きく目を見開く。

 直後、非殺傷設定で放たれた砲撃がまっすぐにフェイトのもとへ牙をむく。よけきれないと判断したフェイトはそれを障壁で防御し、太い砲撃を真正面から押しとどめる。

 しかし、徐々に押され始め、軋む自身の障壁を目にすると、このままでは危ないと判断し、すぐさま砲撃の直線上から離脱し、距離を取ってからデバイスを構えなおす。

 突きつけられる大鎌を見つめ、なのはは小さく息を吐いた。

 

「目的があるなら……ぶつかり合ったり、競い合うことになるのは…仕方ないかもしれない。だけど……何もわからないままぶつかり合うのは、嫌だ! わたしも言うよ…だから教えて。なんで…どうしてジュエルシードが必要なのか」

 

 これだけ戦っても、拒絶されても、なのははあきらめない。

 寂しげな目を浮かべる少女の思いを、ただ知りたくて。

 

「私がジュエルシードを集めるのは…それがユーノ君の捜し物だから。ジュエルシードを見つけたのはユーノ君で…ユーノ君はそれを元通りに集め直さないといけないから。わたしは…そのお手伝いで……」

 

 言いながら、なのはは自分の言葉に違和感を覚える。

 最初はそれだけだった。ただの正義感や同情で、困っているユーノの力になりたいと思った。

 だがいつしか、一生懸命にサポートをしてくれるユーノや、いつも近くで見守り、手助けをしてくれるアインを見ているうちに変わった。自分の独りよがりで怒らせてしまった親友たちや、帰りを待っている家族の姿を思い出して、変化が表れた。

 自分とは別の、戦う理由を持っているフェイトを見て、自分の意志に疑問を抱いた。

 

「お手伝いをするようになったのは偶然だけど…今は自分の意志でジュエルシードを集めてる。…自分が暮らしてる街や、自分のまわりの人たちに危険が降りかかったら……嫌だから。これが…わたしの理由」

 

 迷いながら、戦いながら考え続けてたどり着いた、なのはの答え。それはまごうこと泣き、なのはの本心からの思いと願い。

 真剣な表情で語りかけるなのはを、フェイトはじっと見つめ返す。

 どこか、まぶしそうに。羨ましそうに。

 

「…………私は」

「フェイト! 答えなくていい‼︎」

 

 重く閉ざされていた少女の口と心が、ようやく開きそうになった時だった。

 ユーノに対し執拗に攻撃を繰り返していたアルフが手を止め、フェイトを叱咤するように声を張り上げたのだ。

 しかしその声には主に対するものではない、なのはに対するいら立ちや怒りのようなものが見えた。

 

「優しくしてくれる人たちのとこでぬくぬく甘ったれて暮らしてるようなガキんちょなんかに……何も教えなくていい‼︎」

 

 その言葉にフェイトの、そしてその場にいた全員の表情が変わる。

 ハッと気付かされるように、あるいは愕然とするように、あるいはただ驚愕に、あるいは一つの予想が的中し、合点がいったというように。

 

「―――」

 

 その言葉を受けたフェイトの表情が消え失せ、開きかけた口がギュッと閉ざされる。元の氷のような彼女に戻った、あるいはさらに冷たい氷で覆われてしまったかのように、決意を強めたフェイトがジュエルシードに向かって降下した。

 一拍遅れたなのはは、自分の言葉が伝わらなかったことを悔やみながらも表情を改め、自分もジュエルシードのもとへと急ぐ。話が通じないなら、最初の意志を徹すまで。フェイトに何があったのかは知らないが、ユーノの悲願であるジュエルシードを渡すわけにはいかない。相手よりも先に封印すべく、それぞれのデバイスを振りかざす。

 だが、それは危険な行為だった。仮の封印を施されただけで、今もなお脈動を繰り返すジュエルシードに二人の魔法少女がデバイスを向けている光景を目にし、アインは血相を変えた。

 

「⁉ 待て、やめろ‼」

「え⁉︎」

 

 フェイトとほぼ同時にジュエルシードのもとにたどり着いたなのはが思わず尋ね返した時、レイジングハートとバルディッシュが甲高い音を立てて激突した。

 二人の魔力がデバイスから生じ、ジュエルシードのもとで混ざった瞬間。

 

 超新星(星の終焉)を思わせるほどの凄まじい閃光が、二人の間で発生した。




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