【完結】魔法少女リリカルなのは ーThe Ace Chronicleー   作:春風駘蕩

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2.それぞれの願い

 それは唐突にやってきた。

 アインの第六感ともいうべき独自の感覚が、危険な魔の宝石が目を覚ましたことを知らせてきたのだ。

 

「…………来たか」

 

 公道をブルースペイダーで疾走しながら、アインは向かう先に展開される封時結界を見据えてアクセルを噴かせる。

 感じ取れる人の気配が消えて行くことを確認し、アインは相棒に目を向けた。

 

「ブルースペイダー、局の連中は?」

It seems They will arrive soon.(もう間もなくかと。)

 

 待ち続けた応援がようやくきたらしい。というよりも、こんな辺境の管理外世界に出向くお人好し集団であることに少し安堵する。

 彼女たちとはしばらく面と向かって話をしていないが、この調子ならそれほど気負う必要はないのかもしれない。好意的な視線を向けられることはないだろうが、なのはを邪険にすることもないだろう。

 

「……あの子も来るな。さて、間に合えばいいが……」

 

 問題はまだ山積みである。目の前の一つ一つを確実に解決するしかない現状に不甲斐なさを覚えながら、アインは速度を上げるのだった。

 

♤ ♢ ♡ ♧

 

 結界によって一人も人間の姿が見えなくなった港のコンテナ置き場。その通路を挟むように、なのはとフェイトが対峙する。

 フェイトはやはり、確固たる決意を秘めた表情を。なのはもやはり、わずかにためらいを抱くような複雑な表情を見せている。一触即発というわけではなさそうだが、両者の緊張により張り詰めた空気がその場を支配していた。

 

(……奴らが、いないな。それに越したことはないが、なぜ今回に限って……?)

 

 コンテナの上で周囲を見渡していたアインが眉をひそめる。二度あることは三度あるというし、また再びかの蟲兵が出現するようなことがあれば、今回の事件との関わりは確実なものと考え、準備を進めていたのだが当てが外れたようだ。

 現れないのなら好都合と思いたかったが、どこか言い表せない不安や疑念をどうしても消しきれなかった。

 

「……」

 

 そんなアインに気づくことなく、なのはとフェイトは無言で見つめ合う。フェイトの目力の強さのせいで睨んでいるように見え、若干なのはが気圧されていたが、お互いの行動を待つように一歩も動こうとしなかった。

 

「あの……フェイト…ちゃん?」

 

 最初に口を開いたのはなのはだった。

 本人から聞いたわけではない彼女の名前を確認するように、恐る恐るといった様子で呼ぶと、フェイトはややぎこちなく首肯した。

 

「フェイト・テスタロッサ……」

「ん……フェイトちゃん」

 

 フルネームでの名前を知ることができて、少しは相手を知ることができたとなのはは安堵する。距離が縮まったとは思わない、しかしこれは確かな一歩なのだと、なのはの胸には新たな活力が生まれる。

 

「私は…フェイトちゃんと話をしたいだけなんだ」

「……バルディッシュ、起きて」

【Yes, My master.】

 

 なのはに応えることなく、フェイトは完全に修復されたバルディッシュに呼びかけ、戦斧へと変えて構える。

 これまでと同じ、余計な問答に応じるつもりがないという無言の返答に寂しさを覚えながらも、なのはもまた相棒を構える。語る術は口で話すことだけではないと、最近彼女は自分でようやくわかってきた。

 

「ジュエルシードは…譲れないから」

「私も譲れない……理由を知りたいから。フェイトちゃんがどうしてジュエルシードを集めてるのか」

 

 なのはが見つめる先にあるには、覚悟を決めた少女の強い眼差しーーーではなく、それに覆い隠されている苦しげな感情だった。

 

「どうしてそんなに……寂しそうな目をしてるのか」

 

 なのはの言葉に、フェイトは一瞬驚愕と動揺で後ずさる。憮然とした態度が崩れたように見えたが、フェイトはプルプルと首を振って何かを振り払い、先ほどよりも厳しい表情でなのはを睨みつける。

 図星だったのか、なのはに対する敵意がより大きくなっているように見えた。

 その時、なのはたちから少し離れたコンテナの上から、まばゆい光の柱が立ち上がる。青く綺麗な光でありながら、同時に禍々しさを感じさせるそれはまさしく、ジュエルシードが目を覚ました反応であった。

 少女たちはその光を合図にするかのように、各々で戦闘態勢に入って行った。

 

「相変わらずスゴイね、こりゃあ…! これがロストロギアのパワーってやつか! ずいぶん不完全で不安定な発露のしかただけど…!」

「……まさに不発弾だな」

 

 冷や汗を流しながら興奮気味にこぼすアルフにそう返すアインだったが、少女たちを見やったまま微塵も動かない。

 今の彼女にとって、この一件は単なるロストロギアによる事件ではない。戦う理由を持った少女と、戦う理由を見つけた少女による意志のぶつかり合い。危険な勝負ではあったが、それを止めることはアインにはできなかった。

 

「理由があるなら…わたしはフェイトちゃんのことも助けたい! 話し合いで…なんとかできるってことない…⁉」

「……ッ、話す必要なんてないッ!」

 

 強く拒絶し続けるフェイトに、それでも懲りることなく向かって行くなのはの叫びがぶつけられる。

 その必死さからは、彼女が軽い気持ちで説得しようなどと考えているわけではなく、本気で相手を理解し、心に近づこうとしていることが否応もなく伝わってくる。

 フェイトもわかってはいるのか、なのはの眼差しと言葉を受ける度に苦しそうに表情を歪めていた。

 

(……おそらくこの戦いに、〝正義〟などという陳腐な言葉は似合うまい)

 

 見つめ合う二人の少女たちを見て、アインはそう感じていた。

 世界のためだとか、大義のためだとか誰も考えてはいない。ただ自分が貫きたい想いのために、彼女たちは空を舞うのだ。

 それが誰のためであっても言い訳にすることはなく、己の意思として望む未来を目指し続けている。

 

(あの子たちの〝願い〟と〝願い〟のぶつかり合い……その先にあるのは、私達とはまた違った結末なんだろうな……)

 

 だとすれば、どうかその未来が美しいものであってほしい。その過程に何があろうとも、最後に子供たちが笑っていられる世界があってほしい。

 それは、自分が選ぶことができなかった未来だから。

 アインが見守る中、なのはとフェイトはアスファルトの上に降り立ち、また相対する。

 

「……ジュエルシードには…衝撃を与えたらいけないみたいだ」

「うん…夕べみたいなことになったら、私のレイジングハートもフェイトちゃんのバルディッシュも…可哀想だもんね」

「…そして、あの人も」

「……うん」

 

 なのはとフェイトの目が、アインの方に向けられる。身を呈してフェイトを守り、いまも二人の勝負に水を刺さずにいてくれている騎士の右腕に視線を集め、それでも変わらない決意を確認する。

 

「だけど……ジュエルシードは譲れないから」

「わたしは、フェイトちゃんと話をしたいだけ…! きちんと真っ直ぐ!」

 

 フェイトは思わず、なのはの言葉から伝わる意志の強さに気圧される。今までブレていたものが一直線にまとめられたかのような、そんな少女の確かな想いが伝わってくる。

 数日の間に、なのはの中で変わった何かが、少女に新たな力を与えているかのように思えた。

 

「わたしが勝ったら…ただの甘ったれた子じゃないってわかってくれたら…! お話、きちんと聞いてほしい‼」

 

 魔力弾を配置し、なのはは再びフェイトに向けて突撃する。ユーノとアインに鍛えられた反射神経を全開にし、フェイトの速度に追いつこうと、フェイトに追いつこうとなのはは飛ぶ。

 それを側から見るアルフは、ただ言葉を失っていた。なのはの甘さを目にし、思わず口をついて出ていたあの罵倒の言葉がまさか、少女にここまでの成長を促してしまったのかと。

 

「……どうだ、あの子は」

「! な…何だってんだい」

 

 不意に声をかけてきたアインに、アルフはビクッと肩を震わせながら身構える。

 アインはアルフに目もくれず、なのはの方をどこか眩しそうに見つめ、儚げな笑みを浮かべていた。以前見た笑みとは異なるそれに、アルフは何故か、目を背けることができなかった。

 

「おっそろしいほどに頑固だ……逃げられると思うなよ?」

 

 アルフに向けられた言葉が、実感となって胸に響く。ただのお邪魔虫だと思っていた少女が、本気でフェイトの力になりたいと願ってここまでたどり着いた。

 自分の主人に近づきつつあることが今だに信じられないアルフにとって、なのはの姿は見た目以上に大きく感じられた。

 激突する二人が、一旦距離をとってデバイスを構える。相手の防御・回避を抜けて有効な一撃を加えようと、自身の魔力を注ぎ込んで狙いを定める。

 そして、示し合わせたように蹴り出し、真正面からデバイスを振りかぶった、その時だった。

 

「そこまでだ」

 

 聞いたことのない少年の声が響いた直後、青い光が迸ったかと思うと、なのはとフェイトのデバイスが突然何者かに掴まれ、押さえつけられる。

 ピクリとも動かせないレイジングハートとバルディッシュを凝視し、なのはもフェイトも困惑の表情を浮かべた。

 

「な…‼ なになに⁉」

「……ッ!」

 

 慌てふためくなのはと言葉を失うフェイトの間に魔法陣が展開され、中心から溢れた光の中から一人の青年が姿を現した。

 光沢のある黒髪に、一見少女にも見えなくない中世的な顔立ちで、なのはとほぼ同じくらいの背丈の少年が、静かな眼差しで二人を睥睨する。

 彼が纏う夜闇のように黒いバリアジャケットは制服のようなデザインでありながら、鋼の籠手と足甲を備えた物々しい形状。生真面目そうな表情も相まって、規律を武力で守る番人のような印象を抱かせた。

 

「フェイト‼」

「なのは‼」

 

 見知らぬ少年に捕らえられた二人に、ユーノとアルフが悲鳴に似た声を漏らす。素性の知れない、力も未知数の存在の近くに少女達がいては、迂闊に近づくこともできない。

 そんな中アインだけは取り乱すことなく、現れた少年を厳しいまで睨みつけていた。

 

「………遅いぞ、クロノ」

 

 クロノと呼ばれた少年は、アインのつぶやきに応えることはなく一瞥だけくれ、なのはとフェイトに咎めるような鋭い視線を送る。アインはその固い雰囲気に、思わず肩をすくめていた。

 

「ここでの戦闘行為は危険すぎる…こんな場所で戦闘して……また次元震を起こすつもりか?」

 

 少女達の迂闊な行動を叱責していたクロノの目が、次にアインに向けられる。今度は少女達を叱っていたときのような厳しさを持った目ではなく、どこか嫌悪感をにじませた険悪な眼差しであった。

 

「無論…あなたもだ。アルデブラント陸士!」

「……私もか?」

「当然です。現場にいながら二人の戦闘を止めることもせず…ただ傍観するだけなど」

 

 とぼけた調子で首をかしげるアインに苛立つように、クロノは敵意のこもった叱責をぶつける。憎悪に似た感情を孕んだその眼差しに、近くでそれを見たなのはとフェイトは思わず息を飲む。

 なのはは今まで目の前にしたことがない別の種類の敵意に、フェイトは母から向けられる負の感情に似た迫力に押され、怯えたように表情をひきつらせる。

 しかしアインはそれをさして気にした様子はなく、ため息をつきながら目をそらした。

 

「あいにく…その権限が私にはなくてね」

「どの口が……‼」

 

 もはやアインの一挙一動が気に食わないのか、クロノの表情はより険しくなっていく。

 アインと見知らぬ少年の間の軋轢に、なのはもユーノも戸惑うばかりであった。

 

「時空管理局か……‼」

 

 アルフはアインとクロノの会話から、彼らが属する組織にて面識があるものと察する。これまでは何故かアインがフェイト達を捕縛する意思を向けなかったために放置していた。

 だが手間取っているうちに他の局員がやってきてしまうなど、自分の迂闊さを呪わずにいられない。

 

(まずい…! まずいよフェイト…!)

「時空管理局執務官、クロノ・ハラオウンだ。さて…詳しい事情を聞かせてもらおうか? まずは二人とも武器を引くんだ。このまま戦闘行為を続けるなら…」

 

 クロノが投降を呼びかけたその時、彼に向けてオレンジ色の魔力弾が降り注いだ。

 

「!」

 

 クロノはとっさに障壁を張って奇襲を防ぐが、炸裂した閃光に目を取られて、フェイトへの注意が逸れる。デバイスを掴む力が一瞬緩み、その隙にフェイトはクロノの拘束を振り払った。

 目を見開くクロノをよそに、距離をとったフェイトがデバイスを構える。

 

「君…‼」

(フェイト! 撤退するよッ! 離れて‼)

(アルフ⁉)

 

 猛スピードでコンテナの上を走るアルフからの念話にフェイトは目を見開くも、自体の不利を悟ってその提案を飲む。クロノを警戒したまま飛行を開始したフェイトは、発光を続けるジュエルシードの元に急いだ。

 クロノが狙撃しようとデバイスを構えた時、彼の隣を一条の赤い光が貫いた。

 赤い魔力の矢は自ら意思を持っているかのように宙を裂き、歪な軌跡を描きながらフェイトの背中に突き刺さり、爆発となって食らいついた。

 

「フェイトっ⁉」

 

 思わぬ攻撃を食らったフェイトは大きく目を見開き、カハッと吐血しながら体を傾がせていく。主人を襲った無慈悲な一撃にアルフが悲痛な叫びをあげ、駆け寄ろうとするがそれよりも早く二つの影が動いた。

 金と緑、金属の軽鎧を纏った二人の戦士がそれぞれ剣と槍を構え、膝をつくフェイトに切っ先を向ける。細い首に無骨な刃を突きつけ、拘束しようと手を伸ばしていく。

 

「あ……ッ‼」

「フェイトちゃん⁉」

「フェイト‼」

 

 アルフだけではなく、なのはも女の子に対する暴挙を目の当たりにして悲鳴をあげる。敵なのか味方なのかもわからないが、歩み寄ろうとしている相手が乱暴を受けようとしているのに黙ってはいられなかった。

 しかし、恐怖に目を見開き、顔をひきつらせるフェイトに無慈悲にも戦士の手が書けられようとした時だった。

 

「おおっと手が滑ったァ‼」

「⁉」

 

 フェイトの体を押さえつけようとしていた手に向けて、鉄製の何かが回転しながら飛来した。辛うじて戦士はそれを躱したものの、驚きで突きつけていた武器がフェイトからそれてしまう。

 フェイトはその好機を見逃さず、全身から雷電を放って戦士の二人を怯ませ、拘束を緩ませる。そこへアルフが唸り声をあげながら飛び込み、フェイトをさらうように抱きかかえて救出すると、勢いよく跳躍してコンテナの上に移った。

 一度立ち止まったアルフは目だけを向け、何事もなかったように佇んでいるアインに申し訳なさそうな表情を見せた。

 

(ありがとう…ゴメンよ!)

 

 念話も使えず、ただ心の中で感謝と謝罪を送るしかないアルフは、そのままフェイトを抱えて走り去っていく。

 瞬きするうちに遥か遠くへ消えていく使い魔の背を見送っていたアインは、ため息をついて目を閉じる。

 そして、周囲で聞こえる金属音に鋭い目を向けた。

 

「……おい、これは何のつもりだ?」

 

 不機嫌そうに呟くアインの首に添えられる、鋭い刃に目を向け、それを構えている二人の騎士に低い声をぶつける。

 金の鎧を纏っているのは、長い黒髪を三つ編みにした十四、五歳の少女。

 Aの文字をモチーフにしたような鎧をまとい、ブレイラウザーに似た剣を構えた彼女は、優しげな目をきりりと引き締め、への字に曲げた口で生真面目そうな性格を表している。

 鎧の上からでもわかるメリハリの効いた体つきは、アインほどまでは及ばないものの鍛え上げられていることがうかがえた。

 もう一人の緑の鎧を纏った騎士は、同じくAをモチーフにした鎧と槍を持った青年。

 長身をしなやかな筋肉の鎧で覆った彼は、どこかアインを小馬鹿にするような冷ややかな笑みを浮かべている。武装も何も持っていないアインの体を無遠慮に見下ろすその目は、やや嫌悪感を抱かせるものであった。

 

「それはこちらのセリフです…何をやっているんですか…? クロノ執務官を妨害して、みすみす彼女たちを逃がすなど……」

「公務執行妨害……いやぁ、管理局への背信行為として軍法会議は免れませんぜ、先輩…?」

 

 アインを厳しく叱責する金の騎士の少女と、いやらしい口調で嘲笑する緑の騎士。

 その鎧と武器の形状、腰に巻かれたベルトの意匠に目を向けたアインは、なにかを察したように目を細めた。

 

「…そうか、お前たちが三頭狼(ケルベロス)…ノアの子飼いの部隊か」

「ノア提督(・・)です。…三等陸士ごときが立場をわきまえなさい」

 

 ガチャリと、アインの後頭部に尖った金属が突きつけられる。

 アインの背後に立ったのは、緑の騎士と良く似た形状の紅い鎧を纏った妙齢の女性。彼らとよく似た意匠のボウガンを構えた彼女の表情は、アインに対し対抗心を抱いているような反抗的なものだった。

 恐らくは、フェイトを射ったのは彼女のボウガンによるものだろう。

 

「わきまえろ、ねぇ…?」

 

 三人の騎士に刃を突きつけられながら、アインは不敵な笑みを浮かべる。

 ニヤリとアインの口元に冷たい笑みが浮かべられると、騎士達はざわりと血相を変えながら警戒を深める。デバイスも展開しておらず、包囲しているのは彼らだというのに、己の首に刃を突きつけられているかのような寒気を感じたのだ。

 

「雑魚共が、私に刃を向けるな……‼」

 

 獰猛な獣の形相に変わったアインが、バキバキと指を鳴らして騎士達を睨みつける。膨れ上がった殺気に騎士達が大量の冷や汗を流し始め、真っ青な顔でアインを凝視する。

 危険な状況と察したクロノがデバイスを構え、アインを捕縛しようと魔法を構築し始める。そばにいたなのはもユーノも、今まで見たことのないアインの凄まじい形相に凍りついたように動けなくなる。

 そんな緊迫した状況の中、アインの目前に半透明の画面が出現した。

 

『そこまでよ、アルデブラント陸士』

 

 厳しい声で静止を求める、若い女性の声。その声を聞いた瞬間、アインの殺気は霧散し表情も元に戻る。

 騎士達が荒い息をついて緊張から抜け出し、張り詰めた空気が徐々に緩み始めると、ようやくアインはスクリーンに映った女性、リンディを見つめて声を発した。

 

「……ハラオウン提督、ずいぶん遅いご到着ですな」

『皮肉を言っている暇があったらその剣をしまいなさい……あなたを逮捕しなくてはいけませんよ』

「できるのか?」

『試してみますか? 彼女たちが、果たしてあなたより格下なのか…』

 

 手の中でブルースペイダーを弄びながら、アインはちらりと騎士達の方を見やる。

 常人では気を失うほど、それも相当な実力者でも動けなくなるほどの殺気をぶつけてこの程度で済んでいる様子を見て、アインはデバイスを懐に戻した。

 

「やめておこう。時間の無駄だ」

 

 降参と言うように両手を挙げ、アインは肩をすくめる。騎士達はようやくそこで武器を引き、しかし包囲は解かないまま厳しい目でアインを睨みつける。

 危険な状況は脱したと判断したクロノは、アインの前のスクリーンに向けて申し訳なさそうに頭を下げた。

 

「すみません艦長、片方…逃がしました」

『ん…、ま、大丈夫よ。でね、ちょっと詳しい事情を聴きたいわ…その子たちをアースラまでご案内してね』

「了解です……すぐに戻ります」

 

 通信を終えると、クロノは改めてなのはとユーノの方を向く。

 何が起こったのか、クロノ達が一体何者なのか、何もわからずに立ち尽くすなのはに向けて、クロノは静かに告げた。

 

「すまない…君達には次元船アースラへ同行してもらう」

 

 そんな彼を、騎士達に取り囲まれたアインは意味深な表情で見つめていたのだった。

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