【完結】魔法少女リリカルなのは ーThe Ace Chronicleー   作:春風駘蕩

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4.新たな日々

「…で、…高町さんはご家庭の事情で何日か学校をお休みするそうです」

 

 教卓の上から担任教師がそう報告すると、なのはのクラスメイトたちは皆それぞれの表情に心配そうな表情を浮かべる。

 彼らにとってのなのはといえば、真面目で正義感の強い、多くの人に好まれる性格の持ち主であり、実家が人気の美味しい喫茶店を営んでいることで有名な存在である。

 そんな彼女が家庭の事情で欠席すると言う展開に、クラスメイトたちは何かあったのではないかと口々に不安をこぼしていた。

 

「でも、病気や怪我で…不幸な事があってお休みするわけではないので…ということですから心配しなくても大丈夫ですよ」

 

 彼らの困惑を察した教師が彼らの不安を取り除こうと付け加えると、ようやくざわめきが収まり生徒たちは安堵の表情を浮かべ始める。

 ただ一人、アリサだけは表情を変えることなく、どこか遠いところを眺めていた。

 

「高町さんがお休みの間のノートとプリントは…」

「はい……あたしがやります!」

「アリサさん……それじゃあ、よろしくね」

「はい」

 

 担任教師に笑顔とともに託されるのを見て、アリサの近くに座っていたすずかはホッとしたような笑みを浮かべた。

 なのはの想いを聞いてから、どこか落ち着かない様子を見せていたアリサが、友達のためにできることを見つけたことに安堵を覚えていた。

 

「さて…それじゃあホームルームをはじめましょう」

 

 そこからは、いつも通りの日常が始まる。

 だが、たった一人クラスメイトがいないだけで、すずかにはパズルのピースが一つ外れているような、そんな寂しさを抱かされているような気分になった。

 

(なのはちゃん……元気でいるかな……)

 

 窓の外の、どこまでも広がる青い空を眺め、どこにいったのかも知らされていない親友のことを思う。

 少なくとも、この空の下の何処かにいるのだと自分を納得させ、寂しさを紛らわせようとした。

 

 ―――なのは……。

    しっかり頑張ってきなさいよ……。

 

 アリサもまた、遠く空を見つめて親友の笑顔を幻視する。

 何を隠しているのか、何を頑張っているのかは結局教えてはくれなかった。だが必ず帰ってくると誓ったのだ、ならば信じるほかにないだろうと無理やり自分を納得させる。

 きっと共にいるのであろう、長身の金髪の女性のことを思い出しながら、ありさはムッと唇をかんだ。

 

 ―――なのはに怪我でもさせてみなさいよ…。

    絶対許さないんだからね!

 

♤ ♢ ♡ ♧

 

「ギィエエェエ!!!」

 

 緑色の光の鎖にがんじがらめにされた巨大な鳥が、苦悶の咆哮を上げてジタバタと悶える。

 鳥というには爬虫類の特徴が大きく現れた、前兆十数メートルはあろう巨体に勢いよく引っ張られかけるが、万全の状態での魔法により強度を増した鎖はユーノの手元でびくともしていなかった。

 

「捕まえた……‼ なのは、バインドの練習…やってみて!」

「うんッ!」

【Restrict lock!】

 

 空中でユーノのサポートを受けるなのはが、レイジングハートの先端を向けて答える。すると、宝玉の前方に桜色の光が収束し、新たな術式が空中に描き出された。

 覚えたばかりの魔法を発動させ、押さえつけられている巨鳥の全身に桜色の枷を食いつかせる。より強固になった拘束により、巨鳥は白目をむいて悶え苦しむこととなった。

 

「クエエエ!」

「そう…! バインドを上手く使えば動きの速い相手も止められるし、大型魔法も当てられる!」

「うん……!」

 

 実に狙いやすくなった標的に、なのはは再びレイジングハートを構える。即座に相棒は自身の形を変え、封印法を放つための大砲へと変貌していく。

 

【Standing ready. Cannon mode.】

「ジュエルシード、シリアル8………封印!」

 

 レイジングハートの砲口から放たれた桜色の閃光が、巨鳥の全身を飲み込みみるみるうちに蒸発させていく。過剰な魔力を取り込んで巨大化した体はあっという間に元の大きさに戻り、外見も大きさに見合ったものに変わっていく。

 

「ギャアァアアアァアアア!!!」

 

 爬虫類のようであった凶暴な顔つきは可愛らしい小鳥のものに戻り、びっくりした様子でその場からパタパタと飛び立って行った。

 後に残されたのは、空中に静かに佇む一つの宝石。沈黙したそれにシリアルナンバーが刻まれたことを確認すると、なのははユーノの方を振り向いて満面の笑みを浮かべた。

 

「やった!」

 

 思わずガッツポーズを取るなのはに、ユーノもホッと安堵の表情を浮かべる。

 しばらく達成感の余韻に浸っていた彼女たちであったが、ふと耳に届いた音にビクッと震え、すぐさまデバイスを構えた。

 

「!」

 

 音の正体は、眼下の森の中を駆けていく複数の存在の足音であった。先頭を走る大きな四足歩行の影を追い、二人の人間が凄まじい速度で木々の間を駆け抜けていっている。

 凄まじい形相の狼に似た暴走体に追随しながら、若き女剣士は標的を冷静に追い立てていく。ただでさえ常人離れした速度であるのに、進みづらい入り組んだ森の中を減速することはなく、かなりの長時間を走っていながら一切息を切らせていなかった。

 

『シグニア、ターゲットは2時方向に移動。18秒後にジンガーの待機場所に入るわ』

「了解…!」

 

 離れたところから状況を把握している仲間のナビゲートを受け、インシグニアは自身の距離や走る方向を変えて、標的自身が追い込まれていることを悟らせず巧みに暴走体を誘導していく。

 

「グォオオオオォオオ‼」

 

 咆哮を上げる暴走体の至近距離に接近し、その勢いのまま大きく跳躍すると、インシグニアは力強く剣を振るう。

 方向を変えようとしていた暴走体の前方に切り落とされた太い枝が落下し、バサバサと付近にいた鳥や獣が逃げ惑う。暴走体も慌てて方向を変え、騎士が待ち構えている方向へと逃走を再開した。

 

『ナディア、追い込んでください』

「わかってる…!」

 

 通信越しに命じられ、ナディアはボウガンを構えながら腰のホルスターから一枚のカードを引き抜く。三頭首の番犬が描かれた赤い(エース)を、ボウガンの銃身に取り付けられたリーダーに差し込んでスライドさせる。

 

MIGHTY(マイティ)

「レイバレット‼」

 

 ボウガンの先端から射出されたいくつもの光の矢が暴走体の前方に炸裂し、衝撃波を生む。

 またも暴走体は方向を無理やり変えさせられ、苛立ち混じりの咆哮を上げながら懸命に足を動かした。

 しかしその先には、獰猛な笑みを浮かべて槍を構えて待ち構えている、緑の(エース)の騎士の姿があった。

 

MIGHTY(マイティ)

「待ちくたびれたぜ……! インパクトスタッブ‼」

 

 ハッと大きく目を見開き、慌てて引き下がろうとした暴走体だがもう遅い。槍の石突きに取り付けられたリーダーにカードを差し入れ、槍の穂先に魔力を収束させていく。

 正面から迫る暴走体の牙と爪を紙一重で躱すと、ジンガーは槍を大きく振り回し、暴走体の真下から無防備な腹に強烈な一撃を叩き込んだ。

 

「ゴァッ……‼︎」

 

 暴走体はまともに声も上げられず、腹から伝わる衝撃で盛大に胃と肺の中のものを撒き散らされ、その勢いのままに吹き飛ばされる。

 巨体がまるでボールのように撥ね飛ばされていき、地面に頭から突っ込んで大きく陥没させた。

 ピクピクと痙攣する暴走体の首元近くにインシグニアが立ち、カードを刀身のリーダーに差し込んで魔力を解放させる。

 

MIGHTY(マイティ)

「―――グラビティスラッシュ」

 

 金色の光を宿した剣が、暴走体の首を一切の容赦無く叩き斬る。完全にとどめを刺された暴走体は最後にビクンと大きく体を震わせ、やがて光に包まれて小さくなっていく。

 後に残ったのは、ぐったりとうつ伏せに倒れふす痩せこけた子供の野犬と、光を放ちながら浮遊するジュエルシードだけ。

 インシグニアが剣でジュエルシードに触れると一瞬で術式が発動し、シリアルナンバーが刻まれて完全に沈黙した。

 

「ジュエルシード・シリアル20……封印完了」

 

 デバイスの中に魔法の宝石を収容したインシグニアたちは、歓声を上げることも互いに健闘を称え合うこともなく、静かにその場に佇んでいるだけであった。

 

「すっごぉ~い……」

「なんて精度の高い連携だ…」

 

 管理局の地上本部を守っているという、歴戦の守護者の実力をまざまざと見せつけられ、なのはもユーノも呆然と立ち尽くすより他になかった。

 

 

「状況終了です……ジュエルシード・ナンバー8、20無事確保…」

「おつかれさま…なのはちゃん、ユーノくん」

『はぁい』

『回収完了しました』

 

 少しだけ疲れた様子ながら、達成感に満ちた笑顔を向けるなのはたちにエイミィも笑みを見せる。

 なのはとユーノが正式に現地協力者として迎え入れられてから早数日、オペレーターたちが発見・位置を特定したジュエルシードの位置まで転送されるようになったことで、以前よりも格段に封印・回収の効率が上昇していた。

 

「ゲートを作るね…そこで待ってて」

『はい!』

 

 元気よく答える二人に笑いかけ、エイミィは一旦通信を切る。

 その後ろでは、なのはたちの戦闘を観察していたリンディが羨ましげに頬に手を当てていた。

 

「んー…やっぱり二人ともなかなか優秀だわ……このままうちに欲しいくらいかも」

「ですねえ」

 

 艦長の評価に、部下のオペレーターたちも深く同意する。経験がまだ浅いとはいえ、すでに波の魔導師を凌駕する実力の片鱗を見せているなのはの存在は非常にありがたいもので、必要不可欠なものとなりつつあった。

 おそらく彼女たちの協力がなければ、現在のような収穫は得られていなかっただろう。

 しかし同じかそれ以上の結果を見せている存在が同乗していることに、リンディは笑みを一変させて険しい表情を浮かべた。

 

「そしてこの子たち……やっぱり言うだけあって凄いわね」

『まぁ……あの人の教え子だからな。でなければ〝地上の番犬〟など呼ばれまい』

 

 別の場所からリンディに送られている通信から、気だるげなアインの声が聞こえてくる。彼女は一人静かな森の中で、切り株の上に腰掛けて手持ち無沙汰な様子を見せていた。

 万が一ということで待機を命じられていたが、一行に仕事を任せられる気配がないことにやや不満げな顔になっている友人に、リンディは思わず苦笑していた。

 

「あの子たちの言う通り、かなりヒマになっちゃったわね…アイン」

『………人員が余るぐらいなら別に悪くはないだろう』

 

 そう言い返すアインだったが、以前インシグニアに言われたことを思い出しているのか、眉間にしわを寄せて目をそらしている。

 華々しい活躍を見せている後輩とは真逆に、誰もいない森の中でただ無駄に時間を浪費させられている様は、確かに彼女としては不本意なのだろう。

 少しだけ暇つぶしに付き合ってやろうかと思いかけたリンディは、突如鳴り響くアラートにすぐさま表情を変え、緊張した面持ちのオペレーターたちに視線をやった。

 

「! アイン!」

『ああ……わかっている。変身!』

 

 甲冑を纏ったアインが切り株の上から立ち上がり、剣を抜いて森の中に鋭い目を向ける。

 木々の影、資格から覗き込み取り囲むように蠢いている白い外殻の異形たちの姿を視界に捉えたアインは、数枚のカードを抜いて刃の溝にスライドさせ、猛烈な雄叫びとともに走り出した。

 

「ウェエエエエエイ‼」

【THUNDER, TACKLE, MACH. LIGHTNING STRIKE】

 

 空中に出現した三枚の光がアインの鎧に吸い込まれていく。雷と突進能力、高速化の能力が自身に付与されたアインは、己自身を砲弾としてアルビローチの軍勢に向かって突っ込んでいった。

 インシグニアたちのような美しい連携も策もない、ただただ荒々しい破壊の嵐の中、アインの獣のような咆哮だけが響き渡っていた。

 

♤ ♢ ♡ ♧

 

「…さ、これでミーティングは終わり…。みんな、配置に戻って引き続きジュエルシードの位置の特定作業を…」

「はい!」

「出来上がっている分は、モニタールームに転送してあります」

 

 ジュエルシード捜索のため、脚を使って走り回り、空を飛び回る作業を終えると、局員たちは一度アースラへと戻り方針の変更や報告の仕事に入る。

 全員が自分のやるべきことを理解し、テキパキと働いている姿を、なのははあっけにとられた様子で眺めていた。

 実働班であるなのはとユーノの仕事は一旦ここで終わり、次のジュエルシードの発動が確認されるまで休憩に入っていたが、なのはは別の意味で興奮して気が休まっていなかった。

 

「ねえ、ユーノくん」

「どうしたの? なのは」

「クロノくんやリンディさん…エイミィさんやオペレーターさん達…アインさん…みんな今回のジュエルシードみたいな事件や災害が起きないように…頑張っているお仕事なんだよね…?」

「…そうだね。危険なこともあると思うけど、やりがいのある仕事だと思う」

 

 食堂で用意してもらった定食を口に運んでいたユーノは、局員たちに見とれている様子のなのはに思わず笑みを浮かべていた。

 

「…なのははこういう仕事に興味があるの?」

「ええと…!」

 

 不意に投げかけられたユーノからの問いに、なのはは慌てながらも小さくうなずいた。考えていたことが見透かされてしまったような気分になり、なのはの頬に朱が差した。

 

「う、…うん! ……ただただ、みんなすごいなぁ、って…」

 

 よく言えば純粋に、悪く言えば単純に、平和を守るために懸命に働いている彼らの姿に圧倒され、強い憧れを持ちかけていることを認める。

 魔法という、地球人にはない力を巧みに使い、地球よりもはるかに高度な科学力でそれをサポートする。自分が魔法と出会わなければ決して見ることのなかったであろう光景に、なのはは強く惹かれ始めていた。

 

「………自分の力で誰かを助ける事が出来るなら、それは…すごく素敵だな、って……思う…」

「…なのはにはそういう仕事、きっと向いてると思うよ」

「そ、そうかな…?」

「うん。ボクなんか、現在進行形でなのはに助けてもらってばかりだしね…」

 

 命を救われただけではない、ペット扱いだったとは言え衣食住まで世話になっていたユーノは恥ずかしそうに苦笑する。

 また、なのはの能力の高さを借りなければ、自分が原因とも言えるジュエルシードの回収にこれ以上関われなかった可能性も考えると、なのはには頭が上がらなくて仕方がなかった。

 

「……ユーノくんを助けて、レイジングハートと出会って、アインさんに戦い方を教えてもらって……色々な事があって……」

 

 なのはもユーノと同じく、出会いと始まりの日のことを思い出しながら目を閉じる。

 瞼の裏に浮かぶのは、ジュエルシードをめぐって戦ううちに、自分の脳裏に刻まれてきた記憶や芽生えた感情。勝利の喜びや達成感、敗北の痛みと悔しさ、友達への後悔と決心、様々な思い出が蘇ってくる。

 

「……将来のこと、進みたい道……自分にできること、自分にしかできないこと…自分がやりたい事がぼんやりとしか見えてこなくて…辛い時期もあったんだ…」

 

 最初は状況や自分の感情に流されるだけで、地に足のつかない戦いばかりを続けていたと思う。けれどフェイトと邂逅し、アインに導かれ、初めて自分の意志というものが芽生えていた。

 父を失いかけた幼い時から抱いていた空虚を満たすなにかが、まだはっきりとしていないが見えてきた気がしていた。

 

「………まだ道はしっかり見えていないけど、でも…はっきりわかっている事はあるんだ。今、自分がやりたい事…!」

 

 そう言って満面の笑みを見せるなのはに、ユーノは思わず見とれてしまう。

 幼く、まだ頼りなかった少女は、日常ではまず出会わない衝撃的な出来事と直面し、少しずつ経験を積んでいき、少女を強く育んだ。

 見た目は全く変わっていないのに、どこか大人に近づいているように思え、ユーノは喜びとともに寂しささえ覚えてしまっていた。

 

「……そっか」

 

 ユーノは優しい笑み浮かべ、内心でなのはの成長を祝う。

 願わくばこの清らかな心がずっとこのままであることを願い、成長中の彼女と語り合える時間を大切にしようと思った。

 だが、そんな穏やかな空気は、突如悪意に満ちた声に遮られてしまった。

 

「やってられねぇってんだよ…ホントによォ!」

 

 響き渡る怒鳴り声に、なのはとユーノはビクッと肩を震わせて縮こまる。恐る恐る視線を巡らせ、少し離れた席でテーブルを囲んでいる者たちを伺った。

 そこでは、先ほど凄まじい連携を以って瞬く間にジュエルシードを封印した騎士たちが、アースラのメンバーとは異なる制服を着崩して座っていた。

 さっき大声をあげたのは、その中で行儀悪くテーブルの上に脚をかける目つきの悪い男性のようだ。

 

「こんなど田舎の管理外世界に引っ張り出されて……こちとら向こうに仕事をため込んでるってのに‼ いい迷惑だぜチクショウが!」

「落ち着きなさいよジン……わざわざ口にする必要なんてないでしょ?」

「ため込んじまったら愚痴にならねぇじゃねーかよ‼」

 

 なだめるナディアだが、彼女自身もジンガーの不満に共感するところがあるのか似たような表情で頬杖をついている。インシグニアは我関せずといった様子で目を閉じていて、咎める様子は見られない。

 急激に冷え込んでくる食堂の空気に戸惑っていたなのはとユーノは、少し離れた席に移ろうと静かに腰を上げた。

 

「………ああいう人も、たまにはいるからね。大人の世界って…すごく大変だから」

「う…うん」

 

 先ほどまで任務に対して真摯に向き合っていた局員たちを見ていた分、人目も気にせずわめきたてているものを見てしまったなのははかなり落ち込んでしまっている。

 なのはの夢を全力で応援する気でいたユーノも、あれだけ騒いでいる男を見て少し幻滅した様子である。

 

「……なんで仲良くできないのかな。リンディさんたちも必死に頑張ってるのに」

 

 アースラメンバーは愚痴ばかりをこぼすジンガーに険しい目を向けているが、ジンガーたちと同じ部隊の者たちは同意するようにうなずいたり、アースラメンバーを睨んでいたりしている。

 かつてないほどに張り詰めた空気の中、ジンガーは構うことなく暴言を吐き続けていた。

 

「胸糞わるぃぜ………なんだってあのアルデブラントのクソ女と一緒に仕事しなきゃいけねぇんだよ」

「ジン……その辺にしときなさいよ」

「あまり目立つのも考えものですよ?」

 

 流石に悪目立ちしすぎたのかと思ったのか、ナディアとインシグニアがジンガーを止めに入るが、一度開かれた口はもう止まらない。

 しばらく近づかないようにしようと視線を外したなのはの耳に、その言葉は届いた。

 

「あ~あ…あんな女、さっさと死んでくれた方がこっちは助かるってんだよ‼」

 

 その瞬間、なのはの目から光が消え去った。

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