【完結】BLEACH ー鬼神覚醒ー   作:春風駘蕩

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陸之章 泣いた若鬼
1.Wake you up


 予想外の登場とともに変貌した魔化魍、蛟の姿は一護たちに大きな動揺をもたらした。

 本来、自然に悪意などが混ざって生まれるとされる魔化魍が、人間の死後の魂がなんらかの要因で堕ちて生まれるはずの虚になるなど、長い歴史の中でも確認されたことがない。

 しかし確かに目の前に姿を現していることが、鬼たちの間に混乱の波紋を生じさせていた。

 

「馬鹿な……虚と魔化魍が一体化するなんてありえない!」

「ありえないも何も、今目の前で起こっちゃってるでしょうが‼︎」

 

 後ずさる威吹鬼を正気に返すように轟鬼が音撃弦を構える。どんなに敵の姿が変わろうと、鬼の敵であることは間違いないのだ。

 鬼である自分たちが、ここで退くわけにはいかなかった。

 

「奴が何者だろうと、魔化魍に違いはないでしょ‼︎」

 

 音撃弦を振りかざし、蛟に向かって猛然と駆け出す轟鬼。威吹鬼も迷いながら、強敵に向かう轟鬼のフォローをしようと音撃管を構え、弾丸を撃ち出した。

 飛来する鬼石の弾丸を盾で防ぐ蛟が、向かってくる轟鬼に鎌槍を振り下ろした。

 轟鬼の操る巨大な刃が風を斬り、頭上から食らいついてくる鎌の刃を受け止める。激しい火花とともにかち合う刃は、蛟の鎌の方が競り勝って轟鬼を弾き飛ばした。

 

「うおっ⁉︎」

 

 予想以上の膂力によって弾かれ、バランスを崩した轟鬼はたたらを踏んで後ずさる。無防備になった轟鬼に追撃を加えようと鎌槍が振り回されるが、接近した威吹鬼が回し蹴りを繰り出して意識をそらす。

 蛟は盾で威吹鬼の蹴撃を防ぎ、押し返して体勢を崩すと鎌槍で轟鬼ともども斬り裂いた。

 

「ごわっ‼︎」

「ぐはっ⁉︎」

 

 とっさに武器で防ぐ二人だったが、鎌槍は二人の鬼の体重も物ともせずに吹き飛ばし、威吹鬼と轟鬼は木々の幹を粉砕しながら地面に倒れこんだ。

 かろうじて音撃武器は手放さずに済んだものの、肉体に受けたダメージからなかなか立ち上がれなくなる。

 加えて、牛鬼の猛攻によって傷ついた体は織姫によって癒されてはいるが、心労までは回復してはいない。ただでさえ明日歌の裏切りによって心が揺らいでいる状況で、全力を発揮することができずにいた。

 しかし、何も手が出せないわけではなかった。

 

「音撃射! 疾風一閃‼︎」

 

 ベルトの円盤を音撃管の先端に装着した威吹鬼が、蛟に向かって甲高く雄々しい音撃を放つ。

 肉体に弾丸として埋め込んだ鬼石に振動を伝え、内側から清めの音を叩き込む技が炸裂し、凄まじい音波が襲いかかる。

 だが、蛟は自らの体内で振動する異物に不快そうにするだけで、大した反応を見せない。それどころか大きく胸を膨らませ、威吹鬼に向かって巨大な顎門を開いた。

 

「オオオオオオオオオオオオオ‼︎」

 

 突如として放たれる、大地が振動するほどの凄まじい咆哮が威吹鬼たちを吹き飛ばす。音撃を物ともせずに繰り出された爆音は、太く根を張っていた木々をも吹き飛ばし、森の中に大きな空間を広げる程の威力であった。

 織姫は茶渡の大きな体に守られながら、吹き飛ばされて重傷を負う二人を凝視して言葉を失った。一護と石田、ルキアとレンジも吹き飛ばされないように他の木々にしがみつくのが精一杯で、援護に回るほどの余裕はなかった。

 

「イブキさん! トドロキさん!」

「これは……! 牛鬼よりも強力……‼︎」

 

 戦慄する死神たちをよそに、余波を受けて弱った木々がメキメキと音を立てて倒れていく。

 たった数秒の間に、あたりは爆撃でも受けたかのような壊滅状態に陥り、悲鳴のようなきしめきがあらゆる場所から聞こえてきていた。二人の鬼はその中でがれきにまみれ、ピクリとも動けずに倒れ伏していた。

 その中心をまるで王のように我が物顔で歩く蛟の顔に浮かんでいるのは、これ以上ないほどの優越感であった。

 

「やはり半端者では手足の役にも立たんかったな。せっかくの我が力も無駄にしおって……鬼を一匹も仕留められんとは」

「⁉︎」

 

 気に入らなさそうに呟いた蛟に、一護が目を見開く。

 蛟の言葉から察するに、半端者が牛鬼のことを言っているのなら、あれを差し向けたのはこの蛟ということになる。ということは、その正体であった明日歌に手を加えたのはこの魔化魍であるということではないのか。

 

「どういうことだ! まさか……明日歌はお前が⁉︎」

 

 表情を変えた一護が蛟を睨みつければ、魔化魍は心底愉しそうな笑みを浮かべて一護を見下ろした。

 

「あれは好都合だった。もともと我が同胞の血が混ざった半端者だったようでなぁ……少し我が血を混ぜてやったのよ」

 

 そう口にした蛟の肩の上に、一匹の毒々しい色をした小さな蛇が現れた。尻尾の先が肩にくっついているところを見るに、おそらく蛟の分裂体のようなものなのだろう。

 この蛇を操った蛟が自らの魔化魍の血を明日歌に混ぜ、無理やり与えた力で彼女の理性を奪い牛鬼に変えたのだろう。彼女は体に染み込んだ血に枷を外され、破壊と殺人衝動を抑えられなくなり、鬼の力を暴走させられたのだ。

 全ては、同士討ちを狙った蛟の策略だった。

 

「あのまま邪魔な貴様らをまとめて始末してくれれば都合が良かったものを……なんの役にも立たぬ塵であったがな」

 

 吐き捨て、つまらなそうに明日歌をなじる蛟の言葉に、一護の血が沸騰する。

 短い間ながらも背中を合わせて戦った仲間を、その思いを踏みにじり利用した魔の者に怒りの炎が湧き上がっていた。

 

「てめぇえええええ‼︎」

 

 激情に突き動かされるまま、一護は蛟に向かって疾走する。踏みしめた足場が大きく陥没し、爆風があたりに吹き荒れるほどの勢いで突撃し、黒く輝く斬月を振りかざす。

 策も何もない無謀な特攻に石田とルキアが目を剥いた。

 

「黒崎やめろ! 迂闊に動くな!」

「一護!」

 

 仲間の制止も聞かず、斬月の刃が蛟の鎌槍に叩きつけられる。火花を散らせ、巨大な斬魄刀を受けながらも蛟は一歩たりとも後退せず、鬱陶しいハエを払うように押し返される。

 一護は自分で跳躍して距離を取りつつも、見下した顔に一太刀でも叩きつけようと何度も刃を振りかざす。

 

「テメェだけは……テメェだけは許さねぇ‼︎」

 

 鍔迫り合いになり数センチ手前まで顔を近づけて睨む一護に、蛟が向けるのは冷たい目。遥か下位に存在する者の戯言を蔑むような見下した目で一護を一瞥し、斬魄刀を弾き返す。

 刃の軌跡が浮かぶたびに激しく火花が散り、暗闇の中をまぶしく照らし出す。甲高い金属音がいびつな音を反響させ、生じた風があたりの草木を揺らして吹き飛ばす。

 

「おおおおおおおお‼︎」

「死神ごときが、我に向かって頭が高いわ‼︎」

 

 何度押し返されようとも諦めない一護に、蛟はついに怒りの咆哮を放った。

 強烈な黒い霊圧、上位の虚が放つ技のような閃光をまとった鎌槍が振り抜かれ、一護はとっさに斬月を盾にする。しかし津波のように凄まじい霊圧の勢いに押され、一護は防御の甲斐もなく軽々と薙ぎ倒され、木々を粉砕しながら吹き飛ばされていった。

 

「ぐおわっ⁉︎」

 

 転がっていく一護に、蛟は追撃を加えようと再び霊圧を鎌槍に込めていく。

 赤黒い閃光が再び放たれ、呻く一護に食らいつこうとした瞬間、一護の倒れる地面に一陣の銀の閃光が走った。

 

「吠えろ! 蛇尾丸‼︎」

 

 蛇の尾のようにしなる連接刃が一護を地面ごと吹き飛ばし、蛟の攻撃から救い出した。

 宙に巻き上げられた一護の真下を閃光が通り抜け、不発に終わる。しかし直後に閃光が弾け、凄まじい爆風があたりに四散してあらゆるものを吹き飛ばしていった。余波だけで致命傷となりうる、凄まじい威力だ。

 

「小癪な……ぬ!」

 

 苛立ちからかもう一撃加えようとする蛟だったが、いつのまにか自分の足が凍りついて足止めされていることに気づく。続いて幾本もの光の矢が飛来し、盾で防いで不快そうに顔を歪める。

 袖白雪の切っ先を地面に突き立てたルキアが、起き上がった一護に鋭い目を向けた。

 

「落ち着け、一護! 奴は虚の性質を得ているとはいえ、魔化魍でもある! 死神の攻撃もまともに効かん‼︎」

「……クソ‼︎ じゃあどうすりゃいいんだよ⁉︎」

 

 一度やられて頭から血が降りたのか、一護は無謀な特攻を試みる前に斬月を構え直した。

 しかし蛟は、手段を考える暇も与えなかった。身をひそめる一護たちを狙って、蛟は赤黒い閃光を放って木々もろとも攻撃を始めた。嘲笑のような咆哮とともに、鎌槍を振り回して眼に映る全てを破壊し始めた。

 そんな光景を、戦闘能力の劣る織姫は呆然と離れた場所から見ていることしかできずにいた。

 

「黒崎くん……!」

 

 波長の違う虚と魔化魍は、それぞれ死神と鬼にしか倒せない。そんな法則があるゆえに、混ざり合った性質を持つ個体が現れただけで誰も手をつけられなくなっている。

 これが悪夢なら、早く覚めて欲しかった。

 手も足も出せずに這いつくばっている鬼や死神たちを心底愉快そうに見下ろし、蛟は高々と哄笑をあげた。

 

「今宵は宴……我らに仇なす忌々しき鬼どもを全て血祭りに上げ、人間どもを支配する時代が再び始まるのだ‼︎ ハハハハハハハハ‼︎」

 

 焦土と化している森の中で、ただ一人暴虐の限りを尽くす魔化魍の異形が嗤う。

 誰も止められない、止まらない。打つ手がなく、なすすべなく膝をつくしかない。

 そんな状況の中でも、諦めきれないのが彼だった。

 

「ふざけんじゃねぇ……!」

 

 散々吹き飛ばされ、叩きつけられ、傷ついた一護が斬月を突き立てて立ちふさがる。

 

「そんな下らねぇことのために……あいつに仲間を傷つけさせたのか‼︎」

 

 ズルズルと足を引きずり、滴り落ちる血に見て見ぬ振りをしながら、邪悪な意思に立ち向かう。

 

「あいつを泣かせたのか‼︎」

 

 脳裏に蘇る、少女の顔。

 戦い、守ることを誇りに思っていた彼女の心を、この魔物は踏みにじったのだ。

 

「あいつは、鬼として戦うことを夢見て努力してきたのに……その全部が無駄だったなら……あいつは、なんのために傷ついたんだよ⁉︎」

「使えぬ道具がどこで朽ち果てようと、我の知ったことではないわ」

 

 蛟の操る鎌槍の先端に、より大きな霊圧が収束していく。一振りで地形を変えるほどの威力を持っていた一撃が、さらに強力になって一護に迫ろうとしていた。

 しかし、一護は退かない、引けない。

 奴の顔に一発叩き込むまで、下がるつもりはなかった。

 

「貴様もさっさとひれ伏すがいい‼︎」

 

 蛟が鎌槍を振るい、刃の軌跡が斬撃を飛ばした。

 周囲の木々を破壊しながら轟音とともに迫り来る斬撃を、一護は斬魄刀で真正面から受け止めた。

 

「がっ……あああああああ‼︎」

 

 凄まじい圧により押しつぶされそうになり、ガリガリと地面を抉りながら押し返されていく一護。凄まじい重力に両腕が悲鳴をあげ、ガクガクと手の中で刃が揺れる。

 気を抜けば一瞬で弾き飛ばされそうになる中、全身全霊をかけて斬月を手放すまいと耐え続ける。

 気づけば斬撃の勢いが、徐々に止まり始めていた。

 

「⁉︎ き、貴様……!」

「がああああああああああ‼︎」

 

 驚愕に目を見開く蛟をよそに、一護は咆哮とともに斬月を振り抜く。強烈な霊圧の斬撃はその一振りであっさりと霧散し、余波によりあたりの木々が大きく揺さぶられた。

 ざわざわと木の葉が擦れ合う合奏の中、斬月の刀身に霊圧が収束していく。

 先ほどまでとは異なる、赤い炎が混じった霊圧が刃に積み重なっていた。

 

「おおおおお‼︎ 月牙、天衝ォォォ‼︎」

 

 一護が斬月を振り抜いた瞬間、これまでとは比べ物にならないほどの圧が刀身から放たれる。

 かつて虚の力が暴走し、我を失った時に放ったものに近いほどの凄まじい斬撃が放たれ、暴風が仲間たちの方にまで吹き荒れた。

 蛟が鎌槍と盾を重ねて防ぐも、想定を超える威力に徐々に体勢が崩されていく。

 

「グォオオオオオオオオオオオオオ‼︎」

 

 苦悶の咆哮を漏らした蛟は、わずかな抵抗ののちに足が浮かび、そのまま遥か後方に向けて吹き飛ばされた。

 木々を背中で粉砕し、人型のトンネルを掘るようにして遠く吹き飛ばされていく。その胸には決して浅くはない裂傷が刻み込まれ、どす黒い血飛沫があたりを汚していった。

 煙を漂わせ、荒れ果てた森の中の空間。それは周囲に被害をもたらしながら、蛟に手傷を負わすことができた証。

 しかしそれを手放しで喜べるものは、この場にはいなかった。

 

「ハァッ……ハァッ……‼︎」

 

 荒く息をつく一護。

 それを石田と威吹鬼は、信じられないものを見る目で凝視していた。

 

「……黒崎、お前……!」

「……効いた? 死神の、攻撃が……?」

 

 石田は、虚の仮面をまとっていないにも関わらず発揮された攻撃に。威吹鬼は、死神の攻撃が魔化魍の亜種に効いたことへの驚きで。常識を破壊するような現実に、理解が追いついていなかった。

 いち早く我に返ったのは、織姫と彼女を守る茶渡であった。

 

「一度退くぞ! 奴がまた戻ってくる!」

 

 茶渡の言葉にハッとなり、踵を返す石田たち。

 だがその瞬間、蛟の消えた方向から強烈な熱と光が襲いかかってきた。蛟が口から放った青緑の業火が、蛇のようにのたくりながら噴き出してきたのだ。

 炎の蛇は巨大な顎門を開いたまま地面に食らいつき、直後に凄まじい爆発となって一護たちをまとめて薙ぎ払った。

 

「おわああああああ⁉︎」

 

 爆発の衝撃と熱波に押され、空高く吹き飛ばされる一護ガチを撒き散らしながら落下する。

 小さな川のど真ん中に墜落した彼は、水飛沫を撒き散らしながらもがき、激痛に呻き声を漏らす。もはや疲労と負傷は限界に近い、意識まで持っていかれそうになり、うずくまったまま動くことができなかった。

 そんな時だった。水音を響かせながら、小さな影が姿を現したのは。

 

「……! 明日歌……!」

 

 足音に気づいた一護が目を見開いて凝視する。

 姿を消していた少女は、どこからか拾ったボロ布をまとって立ち尽くしていた。覇気も何もない、人形のように。

 

「……なんじゃ、ぬしか。まぁ良いわ……」

 

 声にもかつての強さはない。空洞のように虚ろな目で一護を見下ろし、乾いた笑みをこぼしていた。

 少女の変貌に呆然とするいちごだったが、背後に凄まじい殺気を感じてすぐさま飛び退く。先ほどまで一護がいた場所に轟音と水飛沫を従えて降り立った異形を睨み、一護は歯を食いしばった。

 どうやら、先の攻防から狩るべき最初の獲物に選ばれてしまったらしい。

 明らかに危険な魔化魍を前にしながら、明日歌は微塵も表情を変えず、手に持った音叉を見下ろしていた。

 

「……使え、というのか。戦えと、そういうのか……師匠よ」

 

 わずかに重さを感じる、師が使っていた音叉を持ち出した明日歌は目を細めて苦笑する。

 死体の残らなかった後には、これと刀だけが残っていた。まるで、明日歌に託すかのように。

 

「本当に、ひどい人じゃ……これだけ、ボロボロになっておる小娘に……慰めの言葉も、何もないのに」

 

 口数の少ない師の姿が、今になって蘇ってくる。大事なことは最後まで伝えず、言うだけ言って勝手に逝ってしまった。

 そんな、勝手な人だった。

 

「逃げろ明日歌‼︎ お前まで殺されるぞ‼︎」

 

 すでに満身創痍の一護が、斬月を立てて立ち上がろうとしながら叫ぶ。

 明日歌の姿を目に入れた蛟が、嗜虐的な笑みを浮かべながら口を開いた。同族の血が流れていようと関係ない、役立たずの半端者を排除するつもりのようだ。

 しかし死を目前にしても、明日歌は一歩も動こうとはしなかった。

 

「ああ、わかっておるよ」

 

 歌舞鬼の音叉の角を伸ばし、刀の刀身に当てて鳴らす。リーンと気持ちのいい音が響き渡り、空気が波紋によって揺らめき始めた。

 

「これは……わしが選んだ道じゃ」

 

 音叉を額にかざす明日歌の前で、蛟の口の中に業火が漏れ始める。鬼にもなっていない明日歌が消し炭になる未来が見え、一護は声を張り上げる。だが、轟々と燃えたぎる音にかき消され、自身も動くことができずに臍を噛む他にない。

 

「逃げたりなぞ、するものか……!」

 

 死んでいた明日歌の目に涙が滲み、光が灯る。

 怒り、悲しみ、様々な感情が混ざった複雑な炎が目の奥に燃え上がり、少女の額に鬼の顔が浮かび上がる。

 しかし少女の体を炎が包むよりも早く、蛟の吐き出した業火が蛇となって少女の体を飲み込んでしまった。

 

「明日歌ァァァァァ‼︎」

 

 一護の悲鳴と爆音が混ざる。

 魔化魍も哄笑が響き渡る中、少女を飲み込んだ蛇がのたくり回り、荒れ狂う。

 だがその様子が、徐々におかしくなっていった。獲物を飲み込んだ蛇が、まるで毒にでも侵されたかのように苦しげにのたうち回り、苦悶の咆哮のような音を出し始めたのだ。

 哄笑をやめ、訝しげに目を細める蛟。

 その目の前で、蛇がピタリと暴れるのをやめると同時に。

 蛇を飲み込むように、紫の炎が噴き上がった。

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