豊饒の女主人に住んでいたのは間違っているだろうか?   作:コトコト

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今回は感想欄に要望があった人物を出してみました。
まぁサブタイでわかると思うけど…


恋と野菜とプレゼント

最近ベル君がヨソヨソしい。

 

ベル君のおかげでこの酒場、豊饒の女主人に働かせてもらって1ヶ月の月日が過ぎようとしている。

初めは住ませてもらってる申し訳なささから心苦しい日々を送っていたけど今ではみんなとも仲良くやれている。

店の仕事も最初はベル君に教わりながら厨房にいたけど今では会計兼ウエイトレスをしている。これもみんなのおかげだし何よりベル君のおかげだ。だけど最近、そのベル君のことで少し悩みがある。

 

ベル・クラネル、通称ベル君、このオラリオには数年前にやって来て普段は豊饒の女主人でミア君の手伝いで料理とかを作っている。

彼自身もミア君曰く自分に引けを取らない料理の腕前だ、ボクもここに来てから何回か食べさせてもらってるけどベル君の料理は確かに美味しい、ミア君程ではないにしろ小さい屋台くらいなら出しても申し分ない腕だと思う。そんな彼が1ヶ月前、ちょうどダンジョンの帰りに道端で倒れていた僕をここに住まわせてくれた張本人、ボクもあの時ベル君に会わなかったままだとどうなってたか…まぁそんなわけで彼はボクにとっての大切な命の恩人でもある。

 

ただ最近そのベル君の様子が少しおかしい。今更だがボクとベル君は同じ部屋で過ごしている、理由は単純に部屋が足りないからだ。

最初はシル君やアーニャ君とかが騒ぎ立ててたけどなんとか落ち着いた、未だにシル君はベル君と自分を同じ部屋にしようなどと提案してるけど。まぁ問題はそこじゃない。

先ほど説明した通りベル君は冒険者だ、ボクが来るまではミア君の言った通りここの手伝いを理由に多くても1週間に2回程度しかダンジョンに潜らなかったらしいけど最近ボクがきたおかげでその負担も少し減りアーニャ君たちの話によれば

 

「前のベルはまさに冒険者もどきそのものにゃ〜」

 

らしい、まぁボクも彼と同じ部屋だからすぐにわかったけど彼は何故かダンジョンに行くのにあまり気乗りしない性格らしい、それは殺生が苦手とかモンスターが怖いとかではなく、どちらかというとダンジョンの深層に行きたくないような気がする。

そのためダンジョンに潜ったとしても必ず5階層や6階層で帰ってくる、まぁ今まで目立つ怪我とかも見られないしそのあたりでは彼が無事だと安心する・・・ってそうじゃなかった、実は最近になってベル君がダンジョンに行くペースや時間が増えた。

もちろん今まで通り店の手伝いもしてるけど夜にもなればダンジョンへ行き僕が起きる時にはすでに店の掃除をしている、はっきり言うとベル君と2人だけになる機会が減った気がする。というか避けられてる気がする。

まぁ確かにベル君だって男だ、ボクみたいな女の子と一緒の部屋で生活するんだ、それは困ることもあるだろう。だけど、なんというか今更感がすごい、他にも僕との会話をあからさまに避けたりもはや有罪確定だ。

 

「はぁ〜」

 

やっぱりボクが何かベル君を困らせてしまったのだろうか、心配のせいかため息が漏れる。

 

「最近あなた達は元気がない、どうしたのですか?」

 

そう心配してくれるのはウエイトレスのリュー君、今日はリュー君に買い出しについて教えてもらうことになっている、話によればデメテルファミリアにお得意様がいるらしい。

にしてもデメテルかぁ〜、最近忙しいからタケにもミアハにも会ってないなぁ〜ヘファイストスにも会ってボクがしっかり働いてる事を認めさせないと…

 

それにしても、最近何か大切な事を忘れてる気がするなぁ〜、気のせいだと思うけど。

 

「いや最近なんかベル君に避けられてる気がして…はぁ〜」

 

ボクがそう言うとリュー君も何か思うこともあるような仕草をする。

 

「私が知る限りベルはたとえ嫌いな相手でもあからさまに避けるような真似はしません、彼は優しいですから」

 

リュー君はその後に「ですが…」と続ける。

 

「避ける理由としては苦手意識や怖い相手、隠し事などが可能性としてあります。ちなみに私の場合は前者です」

 

その横顔はどこか寂しさを感じられた。

確かにリュー君の言う通りボクはここに来てから未だにベル君とリュー君が一緒にいるところを見たことがない。しかしベル君は話を聞く限りリュー君のことを尊敬してるし少なくても嫌ってはいない、苦手意識や怖いなどなら仕方ないけどそんな想像できないなぁ。

 

「そういえば確かにリュー君とベル君が話してるのは見たことないね、なんでなんだい?」

それを聞くとリュー君は少し落ち込んだ?ような表情になって語り出した。

 

「最初はどちらかというと私の方が彼を警戒していました、シルが連れてきたとしてもあの職場に男性を入れるのは抵抗がありました。」

 

まぁリュー君はエルフだし少し訳ありみたいだからそのあたりは当たり前だろう

 

「ですが流石シルが連れてきた人物です、彼は純粋で優しいですしよく働きます。ですが遅すぎた、私がそのことに気づく時には今の状況になっていたのです」

 

「えっ!?つまりどういうことだい?」

 

「おそらく私が心を許すまでに私に対する何かしらの恐怖を持ったと私は考えます。私あまり笑いませんから」

 

思ったより深刻そうな悩みだなぁ。まぁ確かにボクも最初はリュー君を厳しそうとかそう言う感じにてらえてたけど実際はただ真面目なだけなんだとわかった、今日みたいに教えてくれることだってあるし。

 

「シルにも相談してもらってるのですが…」

 

どうやら大きな変化は見慣れないらしい、まぁシル君は神である僕から見ても少しわかりづらい子だから。なんだかベル君を狙ってるようだけど今のところは心配しなくても大丈夫だろう。たぶん。

けれども今は同僚が困っている、ここは僕も力になってあげるべきだ。

 

「そう言うことならボクに任せてよ、ボクからもベル君にアプローチしてみるからさ」

 

「本当ですか?それなら心強い」

 

相変わらず静かな顔だけどどこか感情がこもった声でリュー君が言った。

 

「もちのろんさ!」

 

ボクはいつも通り親指を立ててそう答えるのだった。

 

 

______________________________________________________________________

 

 

「色とりどり鮮やかな野菜だ、さぁ買った買った」

 

「新鮮さならうちの魚だ、メレンで直送してもらったからな。ガハハ」

 

「力をつけるなら肉が一番!今なら安くするよ〜」

 

様々な声が飛び交う市場、所狭しに並ぶ出店にはそれぞれの食材が並びその匂いがこの市場の賑やかさをより一層引き立てる。

そんな市場で、建物と直接隣接している店の前に2人はいた。2人の前には青い髪に薄い化粧をした女性が待ってましたと言わんばかりの様子でいた。

 

「おっはよう!リューちゃん。今日は何をお探しで?」

 

「おはようございますブルマさん、今日はーーーー」

 

2人はいつも通りのやり取りをし、リューは注文を言うと持っていたバスケットをブルマに渡す、ブルマは注文がわかると後ろの家の戸を開けバスケットをどこかへ置くと大声で

 

「注文入ったわよ!さっさと働きなさい!」

 

そう檄をとばすと小さなため息をついて戻っていった。

 

「にしても驚いたわね、よく見たら神がいるじゃない。またミアが厄介ごと抱えたの?」

 

どうやらヘスティアに気づいたらしく肘をつけながらそう聞いてくる、どうやら注文が来るまではこうして雑談をするのがいつも通りらしい。

 

「いいえ、彼女はベルが拾ってきたので」

 

「ボクはヘスティア、よろしく」

 

初対面で緊張しているのか、ヘスティアはそうぎこちない返事を返す

 

「私はブルマよ、所属はデメテルファミリア。ここらで商いをしているわ、量は他のより少し少ないかもしれないけど質なら負ける自信はないわ、他にも用心棒とか色々とやってるから困ったら頼りにしなさい。」

 

「用心棒?」

 

「はい、ブルマさん達は元は凄腕の冒険者なのです、噂によればデメテルファミリアの創設から今までの影の立役者だとか」

 

「いやいや、そんな大層な事してないわよ、噂が一人歩きしてるだけ。一応憲兵だっているしそんなことだってあまり起こらないんだかーーーー」

 

ブルマが笑ってそう言った瞬間。

 

「だから高いっつってんだろ!」

 

ちょうど2人の真後ろの店で怒声が響いた。店の商品を見る限りどうやら冒険者向けの簡易薬屋どうやら商品の薬が高く冒険者が文句を言っているらしい。

 

「ですがこれが定価ですので、上げるも下げるもお客様だけといくわけにもいきません」

 

覇気のない定員が対応してるが男は聞く耳も持たない。

 

「ありゃソーマファミリアね、相変わらず必死だこと」

 

ブルマが呆れ顔でそう言う。

しかし周りはこの騒ぎに気付き始め先ほどとはまた違う、ざわざわと小言のような喧騒へと変わる。

 

「テメェら何チラチラ見てんだよ!あぁむかつくぜ、ギルドの連中の目は節穴だしよぉ、こいつの薬は高いしよぉ。あぁむかつくぜ」

 

周りを見回しながらそう怒鳴る男。

今の時間帯ではこの辺りに冒険者は少なく、商人だけである。冒険者がいたとしてもファミリア同士の抗争を避けるため手を出さないのが賢明だろう。そのためこのような客では商人は比較的弱い立場にいることが多いのだ。

 

「さっさと安くしろ!俺はこんなものに物のためにいちいち金を使うわけにはいかねぇんだよ!」

 

「ですからお客様、これ以上は安くなどできま「うるせぇ!」ひぃっ!」

 

叩きつけられた腕、その音に完全にビビってしまった店員。

男の目はどこか狂気に満ちておりもはや正常な判断をする理性など既にないだろう。

 

「テメェらが悪いんだ!俺ま悪くねぇ!テメェらがグルになって俺を嵌めてんのはわかってんだぞ!俺は悪くねぇ!テメェらが!」

 

そう同じ言葉を呪文のように叫び続ける男、店員はついに男に見切りをつけたようで。

 

「お客様!私ももう我慢の限界です!残念ながら私ではお客様のご満足いただけないようですのでもうお引き取りください!」

 

先ほどとは変わってそう強く言い放つ、しかしその声も男の耳には周りの雑音と同じものであり男の様子は変わらないまま、そして男はついに強硬手段に出る。

 

「うるせぇ。テメェのことなんか知るか!テメェはさっさと俺に薬をよこせばいいんだよ!」

 

そう怒鳴ると同時に腰にさしていた短刀を店員に突き出した。

 

「さっさと持ってる薬袋に詰めて渡せ!言っとくがテメェが悪いんだからな!俺に刃向かったテメェが!」

 

刃物を取り出し正気ではない冒険者、店員に先ほどの威勢はなく腰が引けてしまったのか尻餅をついた状態で震えていた。周りにいたもの達ももはや男が正気ではないことを瞬時に悟ると男がいる一帯から離れ他の店の者達も店に身を隠す、残っているのはヘスティア達のみ。

 

「あぁん?なんだテメェら!見てんじゃねぇ!」

 

短刀を突き出し威嚇する男、しかしヘスティアを除く2人にその行為は脅しの意味を持たないだろう。ブルマが静かに告げる。

 

「ねぇあんた、謝るなら今のうちにしておきなさいよ」

 

「なんだとテメェ!謝れだと?なんで俺が!テメェらが悪いんだろ、俺は悪くねぇ!」

 

刃物を振り回し怒鳴り散らす男、しかしブルマはそんな男など気にも止めず続ける。

 

「商売で少しくらいの暴言も、軽い脅しだってそのぐらいは許してあげるわ」

 

「何言ってんだテメェ」

 

「でもね!そんな物騒なものを出すなら話は別よ、私たちと交渉したいなら頭を使って口でしなさい。武器を使いたいなら迷宮にでも行くことね」

 

「このアマ、好き勝手言いやがって」

 

ブルマの発言が気に障ったのか男はゆっくりとした足並みでブルマたちの方へ歩いていく。そんな時だった。

 

「先ほどからうるさいぞ貴様、負け犬のように喚き散らすのなら他所でやるんだな」

 

その声はブルマたちの頭上、ちょうどベランダと思われる高さから響いていた。そして地面を蹴る音がすると同時に頭上に影が1つ横切る。

 

「ここは商売をするための所だ、その気がないならとっとと失せるがいい」

 

そう言いながら男の目の前に腕を組んだ状態で着地する男。

逆立った黒髪に険しい顔、青い作業着を着ているがその作業着越しからでもしっかりと確認できる。そして何よりわかるのはこの男から溢れ出す自分への自信やプライド。それらはどんなものにも平等に、この男が強者という事を認識させる。

突然の謎の男の登場に周りに避難したりと身を隠していたもの達からはその男の自信からか安堵の声が溢れる。このような強そうな男の前なら大人しく退散するだろうと思ったのだろう。

 

「あぁん?なんだテメェ!」

 

しかしそんな希望も虚しく、すでに正気を失っている男は目の前にいる男が自分とは違う、さらなる高みの次元にいることすら気づけづに持ってる凶器を突き出し脅す。しかし体の危機感知能力は目の前の男の強さを思い知っているようで小刻みに震えている。

 

「体は震えてるがこの俺に挑むその威勢だけは感心するな。来い、お前のような凡人の弱者と俺のようなエリートにして強者の格の違いを思い知るがいい」

 

男はそう言うと薄く笑みを浮かべながら自分の首元を指差す。

人体の中でも外界に近く顔と胴体を循環する血を運ぶ血管が密集している部位を指差しその男は凶器を持つ男に対して「来い」と言った。その行為が挑発という事は誰にでもわかることだった。その男のふざけた行為に周りからも不安げな様子が現れる。

 

「わかったよ…ならお望み通りーーー」

 

男はそう小さな声で呟き

 

「ーーーその生意気な面を真っ赤に染めてヤラァァ!!」

 

大きく振りかぶりながら男の首めがけて振り下ろした、なのに男は一向に避けるどころか動くそぶりすらせずそのまま立ち続ける。あたりからはそんな男の末路を悟った誰かの悲鳴が市場に響いた。

 

「せいぜいLV.2といったところか」

 

悲鳴が響き終わった後、失望混じりの声がした。その声は少なからずのその場にいたもの達を驚愕させ、その男に凶器を突き立てた男にとっては恐怖そのものだった。

突き刺していたはずの凶器は刃から崩れ落ち、その心許ない姿を晒していた。

 

「その錯乱した様子と先程までのうるさいく喚き散らしたのを見るにダンジョン内で信じてたものに裏切られ身ぐるみでも剥がされたか…」

 

その言葉を聞くと男はハッと我に帰りその声のぬしを睨みつける。

 

「図星か…裏切られたくらいでこのザマとはくだらん。ダンジョンではモンスター以上に同業者にも十分警戒するものだ、それが仲間だとしても。その覚悟がないくせによくそこまで行けたものだ」

 

「うるせぇ!お前に俺の何がわかる!」

 

そう叫ぶ男の目は先ほどのようなやけになったものとは違う、それよりも純粋となった憎しみが見える。

しかしそんな憎悪すら意に介さず、まるで道端の意思を見るような、価値のないものを見るような目で男は続ける。

 

「俺の何がわかるだと?笑わせるな。俺が貴様をわかったところでそれは時間の無駄というものだ、そもそも貴様と俺とは悩むものすら違う。貴様がエリートである俺に勝てぬように、エリートの俺が貴様の気持ちなど知りもしないことは当然のことだ」

 

そう言い男の手から凶器だったものを落とし言った。

刃物を失った男は先ほどの威勢が嘘かのように縮こまっていた。

 

「俺も久しぶりの戦いで少し大人気ないことをした、これに懲りたらダンジョンなどに潜らず冒険者を辞めて商人でも始めるんだな。2度同じことで済むと思わないことだ」

 

だがその「ダンジョン」という言葉が再び男の怒りへの点火剤になったのか男は震える足のまますでに背を向け歩き出している男へ飛びかかる。

 

「言ったはずだ、2度同じことで済むと思わないことだ(・・・・・・・・・・・・・・・・・)と」

 

飛びかかる男に背を向きながらそう言い放った時にはすでにその男の真後ろで自分へ飛びかかった男を見下ろしていた。

そして右手をゆっくりと男へ伸ばすように動かし

 

「ーーーーーーーー」

 

何かを口で唱えると同時に男の手から光が発射され男に直撃する。その衝撃によって巻き上げられた砂煙が止む頃には地に伏した敗者とそんな敗者には目もくれず立ち去る勝者の姿があった。

 

___________________________________________________________

 

 

「この俺が手塩にかけて育てた野菜だ、さぁ受け取るがいい」

 

「何が『さぁ受け取るがいい』 よ、あんなのさっさと片付けなさいよね」

 

先ほどのボク達の目の前で暴漢を圧倒したこの人、ベジータと名乗っていて男。近くに来てもよくわかるその存在感と溢れ出る自分への自信を感じる、そしてさっきの出来事からも第一印象は怖いと思ってたんだけど…

 

「そもそもあなたの手塩にかけた野菜ってあなたの仕事はそれだけだからそりゃ手塩にかけるでしょうね、なんなら他の仕事もやってみる」

 

ブルマ君が挑発じみたことをいうけど

 

「ふんっ、この俺様が仕事をしてるだけでもありがたいというのに。欲張りなやつだ」

 

ベジータ君はその言葉もどこ吹く風のようで気にもしない。

そんな様子にブルマ君は続けてあれこれ言い続けるかベジータ君は変わらない態度を続けた。

 

そんな2人の様子を見てた僕はふと未だ賑わう市場から大通りへ向かうひときわ目立つ1人の少女の存在に気づいた、背丈や雰囲気からはベル君と同い年くらいかな、桃色の髪に丁寧に結ばれた2つの髪がはためいている。

その少女は顔がよく効くらしく騒動の内容を道行く人に聞いたり売店から食べ物などを貰いながら大通りへと向かっていた。そしてボクの目を何よりも引いたのはその少女が背負っている物だった。

それは布のような者に全体を包まれてはいるが、それでも隠しきれない大きさだった。だけど少女はそんなの気にするそぶりも見せず自分の体よりもひとまわり大きいソレを背負いながら器用に人混みをくぐり抜けていった。

見た感じの雰囲気といいその子は人間だけど冒険者とは違う雰囲気だった、表すなら今目の前にいるベジータ君ととても似たような雰囲気だった

 

「ブルマ君あの子…」

 

ボクがその子の事を聞こうとブルマ君に声をかけた時、ボクはしゃべることすら忘れその少女に目が釘付けになった。

 

正確にはその少女の先にいる人物、その人物は白い髪に綺麗な赤い目をした少年で少女を見つけると相変わらずの明るい笑顔で手を振っていた。少女も彼を見つけると大きく手を振り勢いよく彼に抱きつく。彼も顔を赤らめながらもまんざらでもない様子だった。

その少年は間違いもしない、ボクを助けてくれた少年。

 

ベル・クラネルだった。

 

 

___________________________________________________________

 

 

夕日が射す一室、その一室には1人の女神がいた。

純白の衣服に整った容姿、その可憐なる姿は平凡な一室には似合わず浮かべる不機嫌な顔も似合わないものだった。女神ヘスティアは部屋の一角、彼が彼女の為に譲ってくれたベットの上で座っていた。

 

(むぅ〜、ベル君のバカ!)

 

べそをかきながらも彼女の決意は固かった。

 

(ベル君め!大方あのドロボウ猫に色目遣わされて貢がされてるんだろう。ベル君のことだからそうに決まってる、この際ベル君に問い詰めてボクのファミリアにしてやる)

 

ベルを自分のファミリアの一員にするという当初の目的は無事思い出せたヘスティアだったがすでに彼女の脳には昼間の光景が染み付いており思い出すたびに歯をくいしばるのだった。

 

(ボクだって!ボクだって……)

 

その時近づいてくる足跡をヘスティアは感知した。

リズムの様な足取りを聴くに随分とご機嫌らしい、その様子にヘスティアは苛立ちを覚えながらも行動を開始する。

 

「ただいま〜…って誰もいないよね…」

 

そんなヘスティアの企みも知らず部屋へと帰る少年ベル、静かにドアをあけ中へ入ると誰もいないと思ってるのか服の内ポケットにあるナニカしっかりと確かめ部屋へと入る。

 

「おかえりベル君!」

 

「えっ!神様!?どうして?」

 

突然の人物に驚くベル、しかしヘスティアはそんなの御構い無しに崩さない笑みのまま行動に移る。

 

「さぁさぁ疲れてるでしょ、ほぉら座った座った」

 

ヘスティアは素早くベルに近づき手を引いて座布団に座らせる。そしてヘスティアは椅子をドアを塞ぐ様に置くとそこに腰を下ろす。その表情は笑みのままだがベルは直感的にそれが少なくても喜びなどから出る笑みではないと感じた。

 

「えぇと…神様、何かありました?」

 

ヘスティアの機嫌を損ねぬように慎重にそういうベル。

座布団から様子を伺うように椅子に座る少女を見上げる少年、その光景だけでもベルにとっては予想外だった。

 

「それはこちらの台詞だよベル君、今日も君は今の今まで迷宮にいたのかい?」

 

「あぁ…ハイ今日はずっとダンジョンに「嘘だね!」ぎくっ!」

 

すぐさま否定されそれが嘘だということが顔に出る、この様子を見れば神であるヘスティアでなくとも彼が嘘をついてることがわかるだろう。マズイと感じ始めるベルに嘘をつかれたことで更に気に障ったのかヘスティアは既に先ほどの笑みから不機嫌さがすぐにわかる表情となる。

 

「今日の昼時、随分と楽しそうだったじゃないか」

 

「えぇっと……あれはですね…」

 

問い詰めるヘスティアから顔を逸らしなんとか言い訳を考えようとするベル、しかしヘスティアは待ってくれないようでーーーー

 

「ベル君の………ベル君のバカぁぁぁ!!」

 

そう怒鳴ると同時に椅子を蹴りベルへと飛びかかる。ベルも突然の事で反応できず、反応できたとしてもなす術がないので自然と飛びかかるヘスティアを受け止める形となる。

 

「えっ!ちょっ、神様」

 

「バカバカバカバカぁぁぁーーーー」

 

ベルの胸に飛び込むとヘスティアはそう叫びながらベルの胸をぽかぽかと叩き続ける。ベルは突然のヘスティアの行動の対処で慌ててるようでぽかぽかと殴るヘスティアをなんとか鎮めようとするがどうすればいいのか困りそれと同時に押し付けられた柔らかい2つのソレの感触にも重なってどうすればいいかヘスティアを乗せたままオロオロとしていた。

 

そんな膠着状態の時、ぽかぽかと叩き続けるヘスティアの攻撃がベルの内ポケットには入ってたナニカに当たりそのまま床へと落ちる。それは一目で表すと四角い箱で特に装飾もなければ目立った特徴もない物だった。

 

「あっ!」

 

「むっ!」

 

ベルの驚いた様子を見て何かを察したのかヘスティアはベルにも負けぬ速さでその箱を手に取るとそれを開ける。

そしてその中身によって今度はヘスティア自身が驚かされることになる。

 

「えっ……」

 

その箱の中には2つの髪飾りがあった。

青い花弁のような飾り付けのリボンに小さな銀色の小鐘がついており動揺するヘスティアの手の震えに反応して小さくその音色を鳴らす。

 

「ベル君これは…」

 

ヘスティアはそう言いながらベルに目を向けるが。

 

「あぁ…やっちまった……」

 

ベルは手を顔に置き何かしら後悔していた、ほおが少し赤くなってることから何か照れていることも伺える。そして何か決心を決めると手を退きヘスティアと向かい合う。

 

「神様!」

 

「ひゃっ!な、な、なんだいベル君」

 

ベルの両手はヘスティアの方へ置かれており力は入ってはいないが力が入らないのはヘスティアも同じで2人の顔はすぐ近くで向かい合う。ベルは決心したようでしっかりとヘスティアの顔を見ているがヘスティアの方はベルの態度が先ほどよりも潔く、嘘ひとつない態度の急変に戸惑う一方であり顔を赤く染めながらオロオロとしておりベルの顔をまっすぐに見れなくなっている。

 

既に先ほどの立場は一転しており攻めるベルを受けるヘスティアとなっていた。

 

「ど、どうぞ受け取ってください!」

 

慌てるヘスティアに構わず箱を開けたままヘスティアへと差し出すベル。

 

「え、え?まさかこれをボクに?」

 

ヘスティアにそう聞かれるとベルは少し照れながら答える。

 

「えっと、神様と会った時から髪留めが痛んでるのが目に付いたので…」

 

「それじゃあ僕を避けたりいつもより迷宮に行ってたのは…」

 

「僕って周りからよく嘘つくの下手って言われてまして、資金集めも含めて頑張っちゃいました」

 

「それじゃああの時の女の子は…」

 

「あはは、見られてましたか。僕あんまに贈物とかしたことないしセンスもあまり自身がないので友達と相談しまして…」

 

恥ずかしそうにヘスティアからの疑問に答え続けるベル、その顔は今更ながらの恥ずかしさからか赤くなっている。そしてヘスティアも初めは疑った後悔があったのだが今は目の前の少年がそこまで自分のことを気遣ってくれたことを嬉しく思っていた。

ベルは平気なふりをしているがその体の所々は傷などがよく目立っており彼の努力が伺える。

 

「馬鹿だなぁ……」

 

その言葉は先ほどの怒りから来るものではなく少し呆れながらもここまで純情な少年に向けた女神の呟きだった。

 

「なぁベル君」

 

「な、なんですか」

 

「これ、つけてくれないかい?」

 

そう言うとヘスティアは椅子に座り直しベルに背を向ける。

 

「喜んで!」

 

ベルはそう元気よく言うとヘスティアの背後に立ち慣れない手つきで髪飾りをつけていく。小鐘の音が部屋に静かに響く。

 

「ベル君、ありがとう。そしてごめんね」

 

「いいえ神様、僕は神様に喜んでくれただけで満足ですから。このくらいの傷だってへっちゃらです」

 

自分の腕などに残る傷に目を当てながらそう答えるベル、甘すぎるその答えを聞きヘスティアは不思議とクスッと笑ってしまう。そしてベルが髪飾りをつけ終わるとヘスティアは立ち上がり綺麗に一度回転してみせる。一回転するだけのその光景だけでもなる音色と合わせて美しいものでありベルはその光景に見惚れていた。

 

そしてヘスティアはベルに向き直りーーーー

 

「大好きだぜ!ベル君!!」

 

ーーーーっと自分の気持ちを言うとともに抱きつく。

 

「僕もです!神様!」

 

ベルもそれに応えるようにヘスティアを受け止める。

 

彼女が言う言葉と少年が答えた意味はそれぞれ違うのだろう、だが今の彼女にとってはそんなことは大したことじゃない。

 

ただ自分がこの少年のことが好きという気持ちを実感していたかった。いや、それは少し違うかもしれない、なぜなら彼女は初めて少年と出会った時から彼のことが大好きで、今再びその気持ちに気付き実感したのだろう。

そんな彼女の頭の中では既に、先ほど思い出した筈だったある目的すらも、忘却の彼方へと消えていくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




うまくかけたか正直言って自信はないけど個人的にはまぁ満足です。

ちなみに今回ちらっと出てきたベル君の友達も他作品のキャラを少し出してみただけです。

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