不定期(やる気のある数カ月はバンバン投稿、萎えたら……)で
両親は居らず、唯一の肉親である姉も両親の代わりにと朝や夜な働き詰めであった。
もちろん、姉もそう歳が離れているわけでもなかったから、できる事など限られていた。それでも、弟のためにと身を粉にしていたのを知っていた。
何度となく「俺も千冬姉のために、学校出て働くよ」と言ったが、姉は「お前は高校に行き、大学へ進め」と頑なに断り続けた。
そして、忘れもしない日がやってくる。
当時、姉と親しくしていた篠ノ之束と言う(当時は自称)科学者が、宇宙を翔けるマルチスーツとして開発した【
その日を境に生活は一変する。姉はISにかかりきりになり、今まで以上に帰ってこなくなった。
知らない間に姉には国家公務員と言う肩書が付き、気がつけば世界で一番のIS乗りになっていた。
その頃「自分のやりたいことをやればいい」と言った姉の言葉に甘え、己を磨くことにした。
幼い頃から続けていた剣道に加え、書道を始めた。剣道の師範に、心の磨き方を尋ねた時に勧められたからだった。
剣にも筆にも心が表れる。だから普段は波一つ立たない水面のように穏やかに。起こす波は荒々しくも美しく。自然の力を見せつけるような雄大で、懐の深いおおらかな力で。
その一方で学業も頑張った。小学生のうちから無遅刻無欠席はもちろん、テストで90点以上は当たり前。先生に質問されれば進んで手を上げた。
そんな彼だから、周囲は「お姉さんと二人暮らしでも、一夏くんは立派だから頑張っていける」と温かい応援をくれた。
小学4年の春だった。仲の良かった篠ノ之箒(束の妹だ)は剣道の師範であった篠ノ之柳韻先生共々、突然引っ越してしまった。
姉は相変わらず家に帰ってこない。
剣道の鍛錬は警察署で行われる地域の剣道クラブに移すことになった。もちろん、見知った人ばかりで、一夏が柳韻の元で剣道をしていたことも知っていたし、篠ノ之家が引っ越したことも知っていたから快く迎えてくれた。
変わらず書道も続け、剣道クラブの人とみんなで書を嗜む事もあった。
真面目で運動もできて、頭も良いと評価されていたが、変に敵を作らなかったのは周囲の友達と程よくバカをしていたからだろう。ある日は公園でサッカー、別の日には友達の家でゲーム。長期休暇には秘密基地も作った。同学年なら誰もがこう言うだろう。
「一夏(君?)、もちろん友達だよ」
小学5年の春、中国から転入生が来た。もちろん、はじめこそ出自故にいじめられもしたが、気がつけばいつもつるむ仲間に入っていた。
姉は昨年の大会で優勝したからテレビで見かけることが増えた。偶に着替えを取りに帰ってくるようになった。
中学生になった。
小学生最後の道場対抗大会で全国ベスト4にまで勝ち進み、自信がついた。姉も褒めてくれた。
部活では今までやったことのないことをしようと思い、吹奏楽部に入った。もちろん、剣道も書道も続けている。
夏休み、姉が初めてISの競技会に見に行くことを許してくれた。さらに言えばはじめての海外旅行でもある。
それが、姉の運命すらをも狂わせてしまったが。
視界は真っ暗。動こうにも手足は縛られ、口にも何かを咥えさせられて喋れない。耳に入るのは遠くを走る車の音と、耳慣れない言語で話す男たちの声。
一夏は自らの立場を理解した。映画の見すぎかとも思ったが、間違いなく自分は拐われた。人質だ。見返りになり得るのは唯一、姉だった。
それから何時間たっただろう。もしかしたらまだ数分しか経っていないかもしれないが、男たちがざわめき出した。その直後だ。大きな音を立てて大勢の人間の足音が聞こえた。布団を叩くような音がして、誰かが呻き声を上げて倒れた。
「一夏、大丈夫か!」
「千冬姉、ごめん」
第一声は、謝罪だった。
中学2年になった。
小学5年の時に来た中国人、凰鈴音が中国に帰ってしまった。家族の都合があったらしい。いつもつるんでた仲間の一人、五反田弾と3人でお別れ会をして、空港に見送りに行った。
姉はドイツで仕事をしている。あの日から帰って来ていない。
中学3年になった。
部活も順調、コンクールの成績は振るわないが、2年前の薄っぺらい音とは違い、今は男の肺活量と力強さを生かしてトランペットパートを引っ張る立場になった。
剣道は相変わらずコンスタントに道場対抗では上位に食い込んでいる。個人戦に出る機会がないのが少し残念な気もするが、自己鍛錬のためだ、そこまで結果にこだわることも無い。
そして、2年生の頃からではあるが、女子から告白されることが増えた。もちろん、男として嬉しくないわけがなかった。けれど、ここで誰かと付き合うことは熱い視線を俺に向けながらも見てみぬふりをし続けていた鈴に申し訳が立たないし、そもそもそんな気にもなれなかった。
弾は俺の性分を知ってるからか、口では「モテる男は辛いな」なんて軽口を叩きながらもちゃんと一線引いていてくれた。結局地元に残った古馴染みはお前と御手洗くらいだ。
何度となく使ってきた「運命の転換」
その言葉が一番しっくりくるのはこの日以外にない。
高校受験当日、会場で道に迷ってしまった時のこと。ふと半開きのドアが目についた。
らしくもない、と思いながらも誰かいないかとドアを開けると、鉄が居た。
表現としては不可解だが、目の前には紛れもない鉄、国産IS 打鉄がおいてあった。自身の人生を、姉の人生を狂わせ続けてきたIS、それに興味がなかったかといえばもちろん嘘になる。当然、恨みも後悔も、喜びも何もかもごちゃまぜになった感情のままに、手を伸ばしてしまった。
「……くん? 織斑くん?」
「あっ、えっと、はい!」
そして舞台は現在に至る。
高校1年の春。
姉は同じ場所に居る。