爆音を立てて空から降ってきたのは黒くて太いなにか。
決して嫌らしい意味合いはないが、ずんぐりむっくりな見た目と、黒光りする見た目はとてもじゃないがカッコいいとは言い難い。
砂煙が晴れてそのシルエットがはっきりすると、人型であることはわかったが、頭らしきところが赤く光っているのがひと昔前のロボットっぽい。
例えるなら、そう、ラ○ュタのロボット兵。ただ、目は複眼らしい。なぜわかるかって?
砂煙がバッチリ晴れちまったからだよ。
冷や汗が頬を伝ったのを感じると、ずんぐりむっくりの肩越しに鈴を見る。
「聞こえるか、凰、織斑」
「はぃっ!」
「き、聞こえる……」
腰が抜けそうなところギリギリで繋ぎ止められたのは、コアネットワーク越しに聞こえる千冬姉の声があったから。
ずんぐりむっくりは俺から目を話さないし、腕がサイコガンみたいになってることを考えると、アレは絶対に飛び道具なわけで。
他の武器を持ちようがない事を考えるとあのサイコガンでアリーナのシールドをぶち破ったと考えるのが妥当だと行き着く。
ということは、シールドをぶち抜けるほどの威力で人間撃ったらどうなるか。どうなるんだろう。蒸発してきえるんかな。想像はしたくないから今はやめておこう。
「今すぐそこから退避しろ。教員機が向かってる、黒いのは先生方に任せておけ」
「けど、観客席の扉が開いてない。全面ロックがかかってるんじゃないですか、先生」
「……そうだ、だが、お前たちに危険を冒させるわけにはいかないんだ」
「まてよ、千冬姉! 全面ロックって、逃げ場もないってことだろ!」
逃げ場もない。逃げられない。
明確な死が迫りくる。ああ、今まではなんだかんだ聞こえなかったが、耳に入るざわめきはほとんど悲鳴じゃないか。
怖い、恐ろしい。死が、死が死が死死死死死死死………!!
「うわぁぁぁぁあ!!!」
「ちょっと! 一夏!」
気がつけばわけもわからず黒いのに飛びかかっていた。
音の壁すら超えていそうなつもりなのに、世界はスローに流れ、視界の右端に捉えた黒いやつの首を、雪片が青白い輝きを持って断ち切った。
頭が飛ぶ。赤い目は空中でもなお、俺を捉え続け、地面に落ちるその瞬間まで赤い目に俺が映っていた。
「一夏、後ろ!」
「はっ……!」
鈴の叫び声だけが周囲の悲鳴を切り裂いて聞こえた。というか、ネットワークでの通信だったからかもしれない。
その声に振り向き、零落白夜を発動。首なしずんぐりむっくりのサイコガンから放たれた光が雪片の刃にあたっているのだけはわかる。
「
衝撃砲の攻撃でぐらつくずんぐりむっくり。もちろん、プロがその隙を逃すわけもなく、サイコガンを青龍刀で下向きに弾くとすぐさまその腕を肩から切り飛ばした。
だが、ずんぐりむっくりの動きは止まらず、残った腕のサイコガンは鈴に向き、頭と片腕を失ってもなお明確な殺意をばら撒き続けていた。
「やめ、やめろよ、くそ、この野郎!」
「一夏、ダメ!」
制止を聞かずに再びの突進。今度は雪片を袂に持った突き。無音で踏み出し、一瞬で距離を詰め……!
「っぐっ……!」
「一夏!」
あの野郎、振り向きやがった! 反応できない、反応されないと思ったのに残った腕で横に薙ぎ払い、俺は勢いのままに壁へ。
俺に意識を向けた鈴も蹴り飛ばすと残った腕のサイコガンを俺に向けた。
ああ、死ぬんか、俺。
「チェックシックス、ですわ」
バチン、と電流がスパークするような音を立てて薄紅の光がずんぐりむっくりを貫くと、今度こそずんぐりむっくりは膝から崩れ落ち、地に伏した。
胸にキレイな穴の空いたずんぐりむっくりを、鈴が親の仇と言わんばかりに青龍刀でめった刺しにすればそこにはスクラップが残るのみ。
「「一夏、大丈夫か!?」」
「ごめんよ、千冬姉」
同時に聞こえた俺を気遣う声に、再び謝罪で返すと、なんだろう、緊張の糸が解けたと言うやつだろうか。一気に全身の力が抜けてしまった。
慌てて支えてくれた鈴には、ちゃんとお礼を言わないとな。
「ありがと、鈴」
「なに泣いてんのよ、もっとシャキッとしなさい。バカ」
ははっ、泣いてんのか。そりゃ、死ぬほど怖くて怖くて怖かったんだ、泣いたっていいだろう。
死ぬかと思ったし、死んでしまうかと思った。これほど怖いことがあるだろうか。今度は目隠しなしで、自分を死の縁ギリギリまで歩み寄ったんだ。それに、知ってる人まで死にかかった。もう、こんなの嫌になったってしかない。
「怖かった、怖かった……」
「アタシだって怖かったわよ。でも、一夏が飛び出してったら、誰が止めんのよ」
「その役目はわたくしにお譲りいただいても構いませんのよ?」
「セシリア、いいとこでやってくれたわ。もう少し早ければなお良かったんだけど」
フフン、と腰に手を当てるポーズのセシリア。タイミング的には命の恩人とも言える。確かに、もう少し早く助けに来てくれていたらもう少し楽になっていたかもしれないが、そんなことを言い出したらキリがない。助けてくれただけありがたい。
「観客席で避難誘導を手伝っていましたの。ドアが開かなかったので撃ち抜いてしまいましたわ」
「やっぱりね。何はともあれ、ありがと、助かったわ」
「絶体絶命のピンチに駆けつけてこそ、役が光るというものですわ」
鈴が小さく、アンタの日本人観はどうなってるのよ…… とつぶやいたが、俺は口だけ笑っておいた。
鈴とセシリアに両脇を抱えられて飛ぶのはなんともみっともない光景だったが、ピットに戻ると千冬姉と山田先生、それから2組の担任の先生が揃っていた。
「3人とも、怪我はありませんか!? あわわっ! 織斑くん、どうしたんですか!」
「腰抜けちゃって、ははっ」
俺はそのままパイプ椅子に体を投げ出して、山田先生から身体中をベタベタ触られる天国なのか地獄なのかわからない経験をすると保健室に運ばれた。
1時間も寝ていたら体は元通り動くようになり、それから軽く取調べ(と言っても、アリーナの映像見ながらこれはこうだったとか答えるだけ)を受けると開放された。
あとから聞いた話だと、IS乗ってて腰が抜ける、と言うのはアホの極みらしく、ある程度うまくなればISで体を支えるなんて造作もないことらしい。
なんでも、神経信号と実際の筋肉の動きは別物だからなんだとか。範囲的には2年生以降らしいが、大抵軍役となる専用機持ちには必ず叩き込まれることらしい。なぜかって? 戦場で生身が怪我してもIS乗ってる限りは生きられるからだよ。
「今日は災難だったな。なにか食べるか?」
「お茶漬けみたいな軽いの食べたい」
部屋で迎えてくれた箒は何も聞かず、ただ一言災難だったな、で済ませてくれた。
ご飯をレンチンして、お湯を沸かしてお茶を淹れ、冷蔵庫の中に常備される梅干しと昆布であっさり完成。お茶漬けの素じゃないのが箒らしい。
ゆっくりお茶漬けを啜る間も黙ってたし、食べ終わってからも何も聞いてこなかった。いまはその優しさが嬉しかったが。
翌日から授業は何事もなかったように再開。アリーナが一つ使えなくなってはいるが、代わりはあるし。
昨日のずんぐりむっくりについても織斑先生の箝口令によって気になるオーラは出しつつも、誰も聞いては来なかった。
ISABのキャラって出したほうが嬉しいですか?
私がぜんぜん遊んでないのでまだキャラクターを把握してないので難しい面もありますが、希望多ければ検討します。
活動報告に上げておきますので、お待ちしております