「織斑先生、相談があるんだ」
「入れ」
クラス対抗戦から少ししたある日。夕飯時で、寮内の人も少ない時間に寮長室を訪ねていた。
先日の一件で、どうしても気になる、というより、俺自身おかしくなっちまったんじゃないかって思うから。身内であり、第一人者である織斑先生に相談、と言うわけだ。
「うわ、部屋の掃除くらいしろよ千冬姉……」
「適当に座っておけ。お茶をだしてくる」
千冬姉を目で追えば、冷蔵庫の中は酒の缶やら瓶やらがぎっしり入ってるし、生活感という意味ではマイナスだろう。
脱ぎっぱなしの服を退かして場所を作るとどうにか腰を落ち着けられたが…… 話が終わったら掃除するか。
「それで、この前のことか」
「ああ。俺さ、なんかもう、よくわかんなくなってそのまま黒いのの首ふっ飛ばしちまっただろ。あれってさ、今回は"中身がなかった"から良かったけど、もし人が入ってたらって考えたら――」
「なるほど。安心しろ、アレは正当防衛だ。お前はちゃんと、自分を守り、周囲を守るために剣を振るえている。大義名分はお前のものだ。って話を聞きたいわけじゃないだろうな」
黙って頷いておく。
もし、人が入っていたら、もし、その首を撥ねていたら、もし、鈴がめった刺しにしたのに人が入っていたら、セシリアが見事に心臓を撃ち抜いていたら。
「そうだな。次の実技でオルコットの首をふっとばしてみるか。それが一番早い」
「はぁ!? 何言ってんだよ! セシリアを殺せってか!」
「落ち着け。そうならないから試してみるか、と言っている。絶対防御はわかるだろ、一夏」
千冬姉の理屈はこうだ。
シールドバリア無効化の零落白夜を持ってしても、シールドはぶち抜けても絶対防御は無視できない。むしろ、むりやり絶対防御を発動させるのが零落白夜だ。
その絶対防御も、ISのエネルギーが続く限り(これはシールドエネルギーが、というわけではない)機能し続ける、それこそ絶対的な最終防衛ラインになる。
つまり、平時のISはシールドバリアと絶対防御の2層のバリアによって守られている。
刃や弾丸を叩き込み、たとえそれがシールドバリアを貫通、無効化したとしても絶対防御はIS自体が止まらない限りは何者も通さない。
断言されたのは千冬姉が経験済だから。シールドバリアの限界を超えた弾丸の雨を浴びても、痛いけど死なない状態だったというのだ。
「と言うわけだ。安心しろ、ISでISは殺せない。たとえ弾丸の一発二発貫通しても、操縦者保護機能があるから死ねない。まぁ、声も出ないほど痛いがな」
「ちょっと待てよ、やっぱ貫通してんじゃん!」
「そうだな。だが、刃全体を直径10センチの円筒に突き通すのは弾丸の比じゃないエネルギーが必要になる。可能性は低いから安心していい」
傷跡も残らんから安心しろ。と繰り返し言われたけど、なんだかモヤモヤするような……
いいようにはぐらかされた気分も多少ありつつ、今度は俺が千冬姉に刃を突き立てる番。
「まぁ、そういうことにしとくよ。それでさ、千冬姉」
「ん?」
「部屋の片付け、しようぜ」
織斑先生への質問は終了、今度は千冬姉への尋問タイム。俺の真横に落ちていた謎の言語が書かれたラベルを持ち上げ、ゴミ箱に突っ込む。千冬姉がああっ! とか柄にもない声を上げても無視。
「い、一夏! そのラベルは! ああっ!」
それから日付が変わるギリギリまで千冬姉の部屋を片付け、大量の空き瓶と放ったらかしの服、ホコリまみれのタオルなどを回収して洗濯に出し、自室に戻るとすぐに寝られた。
翌日の放課後、箒やセシリアなんかと駄弁っていると山田先生がトテトテと寄ってきた。なんだろう、のほほんさんとは違う系統の守ってあげたいタイプだよな。
「織斑くん、篠ノ之さん、お知らせです!」
「「はぁ」」
「篠ノ之さんのお引越しが決まりました! これで織斑くんは一人部屋ですよ。篠ノ之さんは鷹月さんと同室です」
それからお引越しは早めにお願いしますね、と念押しされて、箒に鍵を渡すと、放課後に仲のいい友達で集まって、青春ですねぇ。と言ってからまた職員室に戻っていってしまった。時々山田先生のキャラがわからなくなる。あのひと、千冬姉の後輩だから離れてても8つ上とかそんなもんなはずなんだが……
「なら早速動くとしよう。一夏、手伝ってくれ」
「ああ、もちろん」
「わたくしもご一緒しますわ」
「「セシリアはいいよ」」
「なぜですのっ!?」
箒とハモってしまったが、セシリア、生活力なさそうじゃん? なんか、朝とかも「セバスチャン、着替えを」とか、そんな。流石にそれはないだろうけど。
なんやかんや、荷物は整理されていたから2人で2往復程度で箒の荷物はお引越し完了。これで晴れて俺の部屋となったわけだ。
けれど、箒が引っ越したからお茶はないし、冷蔵庫からお漬物も姿を消した。これは俺の生活水準が急降下すること待ったなし。週末に買い物行かないとな。
「そうだ、一夏。セシリアと鈴とまた一つ協定を結んだのだ」
「勘弁してくれよ。今度はなんだ?」
「来月、学年別個人トーナメントがあるだろう? アレで優勝したら、なんでも一つ、言うことを聞いてもらう」
「なるほど。面白そうじゃん。俺が勝ったら誰が言うこと聞いてくれるんだ?」
「ふふん、聞いて驚け。私達3人を好きにしていいぞ。も、もちろん、お前が望むならあんなことやこんな――」
「わー! わー! うれしーなー! あー!」
しかし、表面上はこうやってごまかしたものの、箒もセシリアも。鈴だって美少女だということに間違いはない。その3人を好きにいいなんて言われたら、あんなことやこんなことも考えてしまうのは男の性。
ふふっ、
「やる気になったようだな。楽しみにしているぞ」
「おう!」
「それで、一夏はどうだったのよ」
「優勝したら私達を好きにしていい、と言ったら目の色を変えたぞ」
「やはり、一夏さんも男の子ですわぁ。ですが、優勝はこのわたくし。一夏さんを手に入れてみせますわ」
「セシリア、それは他の有象無象と言うことが変わらん。我々は一夏の為に、我々のために、プライドを持って動かなければ」
「そうよ、Win-Winな関係がベストよ。たとえ誰かが負けても、3人のうちの誰かが優勝すれば」
「私達の勝ち、そして私達の勝負の始まりだ」
「ふふふっ、楽しみですわ。箒さんは訓練機ですし、望み薄ですが」
「ぐっ……」
「その分、アタシたちが頑張りましょ? いまは互いに助け合いよ」
「済まないな、鈴、セシリア。恩に着る」
「その言葉はまだ早いですわ。わたくしたちこそ、箒さんには助けていただいておりますから、きっちり結果で報いなければ」
「そうね。まずは」
「4組の更式簪さん、日本の候補生ですわ。専用機はまだ無いようですが、十分脅威と判断します」
夜の寮、その中の一室 ……のクローゼットの中で乙女3人の戦いが静かに始まっていた。
1巻終了
ABのキャラは出さない方向で。
見た目はかわいい子多いですよねぇ。ヅカっぽかったり、ロングヘアーのギーク系とか。
( ゚∀゚)o彡゜メガネ!メガネ!