織斑一夏[感性 A+]   作:卯月ゆう

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その12

 6月の初頭にもなれば学園生活に慣れ、また、周囲の女の子もたった一人の男というものにも慣れてきて、精神的にすり減ることも少なくなってきた。

 一人暮らしにも慣れて普段は箒やら鈴やら、セシリアやら、誰かしらが遊びに来てはゲームするなりマンガ読むなり、好き勝手に過ごしている。

 余談ではあるが、セシリアは鈴にかなり毒されたらしく、だいぶ俗っぽくなった。普段着はどんどんグレードダウンして、今では休日に「Yes, your majesty」と書かれたTシャツとジャージ姿でいるのをよく見かける。

 やはり英国面は譲れないらしい。

 そんなことはさておき、貴重な休みを利用して俺は弾の家に遊びに来ていた。入学早々に遊びに来て以来だったから、だいぶ久しぶり感がある。

 

「お前も苦労してんだな。てっきり楽園かと思ったが、よくよく考えりゃ地獄だわな」

「ほんとだよ。オカズはそこらじゅうにあんのに処理できないんじゃ生殺しもいいとこだぜ。いい加減機体変えたらどうだ?」

「それでも今は一人なんだろ? できんじゃん。そういうお前はいきなり千冬さん使い始めてどうしたんだよ」

「無理無理。いくらファ○リーズしてもバレんだよ。一度鈴にバレかけてめっちゃ焦ったんだからな。リアルで千冬姉スタイル始めたんだよ。その練習」

「うわー、俺が女だったらドン引きだわ。ああ、そうか。お前IS乗れんだったな」

 

 日頃の鬱憤を晴らすかのように昼間から下ネタ混じりの会話を繰り広げつつ、ISを題材にしたゲーム、ISVSで対戦。ゲームでも千冬姉の暮桜でヒットアンドアウェイは最凶クラスの戦い方で、修正が入ってもなお嫌われている。攻撃が当たると硬直するゲームシステムにも問題があるんだけどな。

 零落白夜でシールドエネルギーを削りきったところで弾がコントローラーを投げてゲーム終了。情けない声を上げながら倒れたところでドアが開いた。

 

 

「お兄、お昼でき、た…… 一夏さん!」

「よっ、邪魔してるぞ」

「えっ、あのっ、お久しぶりです!」

 

 はぁ、そして弾の妹、蘭にもまた好き好き光線を放たれているのだ。どうしてこうなった!

 弾が謂れのない罪で妹から断罪されている間にゲームをセーブしておくと、いつの間にか蘭は消え、幾分小さくなった弾が、食堂へと誘ってくれた。

 食堂、というのも、弾の家は大衆食堂。一旦外に出てから店の正面に回り、入ってテーブルを見ると、あちゃー、さっきのキャミソールとショートパンツみたいなカッコとは大違いの蘭。そんな気合い入れてもわたしゃ振り向きませんぜ。

 

 

「遅い、バカ兄。一夏さんのもあるので、ゆっくりしてってくださいね」

「ああ、ありがとな」

 

 兄の威厳とやらはないらしい。

 奥の厨房で大きな鍋を振るう弾のお爺さん、厳さんに一言言ってから早速頂こう。

 

 

「一夏さん、IS学園の生活って、どんななんですか?」

 

 食事も終えて、水を飲んでいると蘭ちゃんが聞いてきた。ここはどう答えるべきかなぁ。

 

 

「うーん、どんなって、朝起きて、朝飯食って、教室行って授業受けて、飯食って授業受けて放課後は自主練なり復習なり。そんで飯食って、風呂入って寝る」

「そうなんですか…… って、そんなのはわかってるんです! もっとこう、授業でなにしたとか!」

「って言われてもなぁ。関連法令とか、動かし方の理論とか、そんなんだからネットで調べれば出てくるよ」

 

 彼女には申し訳ないが、本当にそのとおり。実技の授業もまだだし。

 言葉にしてしまうとそれ以上でもそれ以下でもないから仕方ない。

 女の子のISスーツはエロいぞ、とか制服が好き勝手にイジれるからみんな違ってかわいい。なんて事を聞きたいわけじゃないだろうし。

 

 

「むぅ〜」

「期待に答えられなくて悪いな。けど、憧れの学園だって普通の学校だからな」

「けどよ、一夏。周りはみんな女の子だろ、それも、代表候補生なんて美少女ぞろいじゃねぇか。なんかねぇの?」

「同じ学年の候補生にISの模擬戦付き合ってもらったりはするな。やっぱり時間で言えば俺の100倍とか乗ってるからすげぇ参考になるよ」

 

 

 やっとIS乗りっぽい答えたが聞けたからか、そこから掘り下げられて、満足気な蘭が店の手伝いに呼ばれて席を立つまでずっと質問攻めだった。

 

 

「蘭が困らせて悪かったな。ほれ、帰りに飲んできな」

「ありがとうございます。いや、でも、こうやって無邪気な質問なだけいいですよ」

「時々テレビでみるが、あんな裏が見え透いたこと聞かれりゃ、参っちまうな。ま、たまには気晴らしに遊びに来い」

「はい、そうさせてもらいます」

 

 厳さんの力強い手で背中を叩かれると、瓶コーラを持って弾の家を後にした。

 それからまた一度自宅に戻って荷物を整理すると再びIS学園へと戻っていく。まぁ、たまには無神経に言いたい放題言うのも悪くない。弾にまた遊びに行く、とメッセージを送ってから電車で寝ることにした。

 さて、今日の教室は朝から騒がしい。それもそのはず、今まで上級生のを指を咥えてみていただけの実技の授業が始まるのだ。そして、今日は個人のISスーツ発注ということもあって騒がしくなっている。学校指定のもいいんですがね。

 

 

「諸君、おはよう」

「おはようございますっ!」

 

 さて、今日も鬼軍曹の号令から授業が始ま…… らなかった。扉の外に人の気配がする。ってのは嘘で、山田先生と、知らない女の声が廊下から聞こえた。

 この時期に転入生だろうか?

 

 

「今日は転入生が来ている。紹介してからホームルームを始めよう。山田先生」

「はいはーい、それでは入ってくださーい」

 

 ここまでは普通だ。けれど、俺が聞いた声の数は3。転入生が2人ということになる。

 ざわめく教室。

 一瞬の静寂。

 俺が耳を塞ぐと、隣の席の子も耳を塞いだ。

 

 

「――ァァァッ!!!」

 

 耳を塞いでもなお聞こえる悲鳴奇声超音波。それが一段落したのを確認してから耳から手をおろし、改めて転入生を観察。

 金髪の美少女に、銀髪の美少女。金髪は制服のジャケットにスラックス。ちょっと待て、あのジャケットの合わせ目、隣の銀髪と()()()

 

 

「黙れバカども」

 

 織斑先生の一喝で静まる教室。

 目で山田先生に進めろ、と言っているのがわかる。それから、山田先生がおずおずと「じ、自己紹介、お願いします」と言えば、男物のジャケットを着た金髪が名乗りだした。

 

 

「シャルル·デュノアと申します。フランスからきました。不慣れなことも多いと思いますが、よろしくお願いします」

 

 さて、耳を塞ぐ…… 前に織斑先生が睨み、口を開いた生徒は何も出さずにその口を閉じることになる。

 ニコニコとした笑みがとても可愛いが、男物のジャケット着てるんだよなぁ。イチカ·アイはあの子が男ではないと告げているが、後で織斑先生に確認しておこう。なにか配慮をしないといけないのかもしれない。

 そして隣の銀髪。小柄ではあるが、左目の眼帯と腕を組んだ姿勢、明らかに軍服モチーフの(それもナチス時代の乗馬ズボンだ)制服が放つ威圧感は明らかに軍人のソレだ。

 

 

「いつまで黙っているつもりだ」

「はっ、ドイツ連邦軍、ラウラ·ボーデヴィッヒ少佐だ」

「ええっと…… 以上ですか?」

「ああ、そうだ」

 

 あー、これは千冬姉のドイツ勤め時代に何かあったやつですねー、そうですねー。

 そうでもなければ俺に睨み利かして歩いて来ないっすよねー。

 ほうら、腕を振りかぶって――

 

 

3()()()()()()()()()けど、ドイツでは初対面の人間を殴るのが挨拶なのか?」

「……ッ!」

 

 その腕払って胸ぐら掴み上げればちっこい体は宙に浮く。抵抗されると厄介なので怒られる前に突き飛ばしておこう。

 おうおう、反抗的な目で睨みやがる。俺だって同じくらい冷たい、それこそゴミを見る目で見返してやると織斑先生に引き剥がされ、ホームルームが始まった。

 

 

「以上でホームルームを終わる。織斑、デュノアの面倒を見てやれ」

「はい……」

 

 1限目から実技だ、さっさと移動してアリーナで着替えてしまおう。面倒な奴らに絡まれる前にな。

 

 

「デュノア、急げ」

「えっ!? わわっ、引っ張らないで!」

 

 変な噂を立てられないよう、手をつなぐようにではなく、思い切り手首を掴んで引っ張る。

 それでも思い思いに騒ぐバカどもはいるが、睨んでやるとさっきのボーデヴィッヒとの一件もあってか、すぐに黙ってくれた。

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