織斑一夏[感性 A+]   作:卯月ゆう

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その14

 デュノアとボーデヴィッヒが転入して5日。なんとなくわかってきたのは、基本的にシャルル・デュノアはお人好しだ。そして、箒や鈴、セシリアより教えるのが超上手い。擬音だらけの箒や、勢い任せの鈴、上半身15°捻らせるセシリアと違って、人間的だ。

 そんなデュノアについてもう一つ。本名はおそらくシャルロッテ。これは調べたのと、本人から聞いた情報を足し合わせての予想だ。シャルルと言う名はCharlesと綴るが、英語で言うチャールズ。それに対応する女性名はCharlotteでシャルロッテだ。

 そんな、シャルロッテ(仮名)さんにコーチングをお願いしている放課後。今日のカリキュラムは飛び道具の基礎。

 

「一夏は凰さんやオルコットさんを相手にする時、篠ノ之さんと戦うときよりも間合いを広く取ってると思うんだ」

「そうだな。飛び道具怖いし」

「ふふっ、そうだね。けど、凰さんの衝撃砲は別として、オルコットさんみたいな典型的なライフルを扱うタイプの人は白式のダッシュ力で間合いを詰めればもっと戦いやすくなるよ」

 

 デュノア先生の理屈では、ライフルみたいな長物は、距離を取って戦うと相手は狙いやすくなる。なんでかと言えば、狙われる側が大きく動いても、小さな動きで追随できるから。距離を詰めれば詰めるほど狙われる側の動きが小さくなっても狙う側は大きく銃を振らなきゃいけない。それは銃本体が長くなればなるほど顕著になる。

 その点、鈴の衝撃砲は邪魔になる銃身がなく、360°フリーに狙えるからめちゃつよと言う訳だ。

 逆に、衝撃砲の様な弾速が遅くて(それでも十分速いが)範囲に効く武器、他にはフレシェット弾や空中炸裂のグレネードランチャーなどは間合いを取って射撃後の次弾装填を待つのが定石だという。たいていそういうのはリロードが長いから。

 

 

「ってわけで、まずは体験してみよう。はい、銃」

「どうも、銃」

「見よう見まねでいいからとりあえず構えてみてよ。そうそう、もう少し左の脇は締めて。そして体に引き付ける。てぇーっ(撃て)

 

 デュノアから渡された銃を構え、タタタン、と小気味いい三点バースト。撃った弾は的のフチに当たっている。ヘッタクソだなおい。

 この前知ったが、この白式には射撃支援システムが搭載されておらず、視界の中に映るはずのクロスヘアや残弾数などが見えない。反動制御もないからすべて自分の実力。ひえーっ、なにこのマゾ機体。

 

 

「実際に撃ってみてどう?」

「いや、やっぱ飛び道具ずるいなーって」

「そうだね。自分の手が届かない範囲に一瞬で攻撃できるから、その特性を理解した上で対処しなきゃいけないんだ…… ねえ、周りが騒がしくない?」

「アイツのせいだろ。クソジャーマンめ」

 

 訓練機の隙間から獲物を探すようにうろつく黒いの。それを操るちっこい奴はグレーのISスーツで凹凸の少ない体を隠していた。やば、目があっちまった。

 

 

「おい、貴様も専用機があるのだろう? 私と戦え」

「断る。理由がないしな」

「貴様になくても、私には有る」

 

 何だこいつ、千冬姉の信者の類か。ホント、勘弁してくれよ。俺だって拐われたくて拐われたわけじゃねぇっての。それに、俺が後悔してないなんて思ってんのか? 罪悪感が無いなんて思ってんのか?

 

 

「どうせ『お前がいなけりゃ千冬姉が二連覇できた』って言うんだろ。巫山戯んな。俺が望んで千冬姉の邪魔したと思ってんのか? ああ?」

「だが、結果として貴様は拐われ、織斑教官は二連覇を果たすことなく引退してしまった! 貴様は教官の人生の汚点でしかない!」

「お前に何がわかるんだ。汚点扱いされるものの苦しみが、後悔が、罪悪が! 放っておけば言いたい放題言いやがって、テメェは千冬姉のなんなんだよ!」

「その辺にしておきなよ、一夏」

「ボーデヴィッヒさんも、その恨みは濡れ衣もいいところですわ」

 

 デュノアと騒ぎを聞きつけて飛んできたセシリアが間に入り、俺とボーデヴィッヒを引き剥がす。よく見れば鈴が周りの生徒を避難させて遠くから教官機まで来るではないか。

 

 

「チッ。私は絶対にお前を赦さない」

「恨む相手が違うぞ」

 

 機嫌が最悪だが、それを隠すことなくピットに下がってISを解除。そのままデュノアに一言断ってからさっさと着替えて自室に戻ると、スマホのToDoリストを確認。自主練は終わった事にしておこう。

 それから、風呂場の残り少ないシャンプーを全部流して捨てる。このあとの伏線もやることリストの内だ。

 そして、山田先生に呼び出されたから先にシャワー浴びておいてくれ、と書き置きを残してから自室を出て職員室へ。先生から呼び出されたのは本当だから仕方ないね。

 

 

「書類はこれだけです。それで、放課後の事なんですけど、ああいうのは程々にしてくださいね? 周りを巻き込むと危険ですし」

「それはあの腐れジャーマンに言ってやって下さい」

「言葉遣いには気をつけろ」

 

 真後ろから出席簿の一撃。我らが担任ではないですか。

 まぁ、職員室だし、居てもおかしかないが。

 

 

「ボーデヴィッヒからも聞いたが、売り言葉に買い言葉か。アイツもアイツだが、お前ももう少し冷静になれただろう」

「どうだか。あのアマ、まるで俺一人のせいで千冬姉が――」

「それは違う、お前は何も悪くない。直接関わった者として、真実を知っているのだから、もっと余裕を持て」

「努力するよ」

 

 呼び出された割に書類数枚にサインして印鑑押すだけだったので早いもの。千冬姉のお話含めても20分程で部屋に戻れた。さてさて、どうかね。

 予想通り、シャワーを浴びてるな。ここで、親切を装ってシャンプーの詰替えをお届けに上がればデュノアの正体がバッチリわかるわけだ。さて、白黒つけようぜ。

 

 

「デュノア、シャンプー切れてたろ、替え持ってきたぞー」

「い、一夏っ!? ちょっと待っ――」

 

 WAWAWA忘れ物〜的なノリで風呂場のドアを開けば――

 金髪の美少女がいた。

 ああ、纏めてたからわからなかったけど、意外と髪長いな。そんで、やっぱし肌キレイだなー。胸は…… あります。大きすぎず小さすぎず。形の良さそうな……

 

 

「きゃああああああっ!!!」

「すっ、すまん!」

 

 その場でシャンプーを置いて回れ右、のつもりだが、ここで予想外のハプニングが起きてしまった。

 風呂場に一歩踏み入れていた足が滑った。もちろん、コケるわけだ。デュノアを巻き込んで。

 まさかの天然ラッキースケベ! なんて考える余裕は無く、あっ、ヤバイ、と思った瞬間には顔面を床に叩きつけた痛みと、重量のあるものが自分の上に降ってきた感触を味わった。

 床とキスした俺の背中には、柔らかい感触が濡れたTシャツ越しに伝わってくる。そして耳元で聞こえる呼吸と、叫びと。

 

 

「わわわっ! 大丈夫!?」

「大丈夫だけど大丈夫じゃない…… 悪いけど早くどいてくれ」

 

 いろいろダメです! 主にアレとかソレとか!

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