絶賛気不味いこの雰囲気なんとかしてもらえませんか。
あの後何があったかと言えば、錯乱したデュノアに半裸にされたり、我が雪片に釘付けになったあと、一言「一夏のえっち」と言われ、いろいろたまらなかったり。
そして、胸の大きさを隠すことをやめたデュノアさんとご対面に至る。あの場で襲わなかった鋼の心を褒め称えてほしい。
「えっと、そのだな。実を言うとお前が女なのはなんとなーく、予想がついてたんだ」
「僕も、一夏にはすごく警戒されてる気がしてたんだ。ロッカーには鍵かけるし、朝起きるとベッドには髪の毛一本落ちてない。シャワーの後もそうかな。綺麗好きって言うにはやりすぎな感じがしたんだ」
沈黙。
セガールは来ない。
「正直に話してほしいんだけど、目的はやっぱり俺だったりします……か?」
「うん。一夏と白式。そのためには殺し以外なら手段は問うなって。そろそろ上も痺れを切らしたころだったから、焦ってたんだ」
なぜ敬語。
だが、千冬姉仕込みの警戒策は効果テキメンだったようだ。日頃の苦労が報われる。
いまさらながら、寝るときはナイトキャップつけとけば掃除が楽になったんじゃないかとも思ってしまったが後の祭り。
「でもそれって――」
「だから、そろそろ、こうするしかないんだ」
言うが早いか、デュノアに押し倒される俺。え、なにこの状況!?
そそくさとジャージを脱ぎ、俺の短パンにも手をかける。ちょ、待てよ。
そんな悠長なこと考える余裕はなく、絶賛チェリーな俺は女の子に押し倒された、という現実で頭がいっぱいだった。
ふぅ。
結論から話そうか。俺は魔法使い見習いをやめた。
そして、お互いに賢者の時間が訪れている。
「デュノア」
「ううっ、ごめん、ごめんね。一夏、僕、ごめんなさい」
俺の雪片が零落白夜(意味深)してデュノアのシールドをぶち破り、直接ダメージを与えてしまってからというもの、デュノアはこの通り泣きながら謝り続けている。
俺も泣いている女の子のアフターケアは手慣れたつもりでいたが、このシチュエーションは初めてだ。
「その、俺もなんて言ったらいいかわかんないけど、お互いに混乱してたんだな」
「そ、そうだね。でも…… 僕の初めて…… あぁ……」
「お、俺も男だ。その時はその時、腹括るさ」
「そうだね。それで、どうするの、一夏。もう後戻りできないよ。僕はスパイ紛いの事をして、ここまでやっちゃった」
「そうだな…… ひとまず3年間はなんとかなるとして、その後が問題だ」
校則は破るためにある、とルールの穴を見つけるべく読み込んでおいたかいあって、特記事項という特別ルールに行き当たった。
中立不干渉を掲げる学園故に、学園の生徒は如何なる組織、政府から干渉されないという文言があるのだ。まぁ、有名無実化してるが。
「いっそ亡命でもしてみるか」
「ええっ! どうしてそうなるのさ」
「いや、一番手っ取り早いかなーと。ひとまず、織斑先生に相談してみるか」
ピロートークとしては最悪の内容だろうな。
そして、今更ながらデュノア、いや
「……なるほどな。社内、ひいては国内の立場を考えるとは難民要件に十分当てはまるだろう。だが、その後はどうなる? この学園に居続けるには本人の資質はともかく、資金的な問題がでるぞ」
「僕はもう、ISに乗れなくても良いかな…… って」
「そうか。私から政府に掛け合ってみよう。なに、生徒の亡命申請はお前が初めてじゃない」
技術スパイの任務を言い渡されたものの、良心の呵責から亡命する人は数年に一度現れるらしい。というかシャルロットで3人目だとか。
今年は俺というイレギュラーが入ったが故に、政府の息が掛かった生徒の多くはできるだけ俺のデータを集めてあわよくば髪の毛でもなんでも送ってくれ、という状態なそうな。
「流石に一日二日で、とは行かないが、悪いようにはならん。済まないが、もうしばらく辛抱してくれ。」
「はい、ありがとうございます、先生」
「この件には山田先生や他の先生方の協力を仰ぐが、いいか?」
「はい、もちろんです。よろしくお願いします」
「なにか進捗があれば伝えよう。今日は遅いからもう寝ろ。織斑、お前は残れ」
シャルロットが出ていくのを見届けると、まずは千冬姉に殴られた。
うわぁ、もう思い当たる節しかねぇ!
「一夏、お前、デュノアとセックスしただろう」
「……はい」
「それがどう言う意味か知らないわけでもないだろ。何に使われるのかわかったものじゃない! それに、表沙汰になれば立場がなくなるぞ!」
千冬姉からコンコンと怒られ、身も心もげんなりしてきた頃に、今度は泣き出した。もうやめてください、俺の心はボロボロです。
「本当に、もう二度とこんな事を言わせないでくれ。一夏、お前は自分一人のものじゃないんだ」
「ごめんなさい。俺が軽率だった」
「無理して耐えろとは言わない。今回も経緯があってこうなったんだろう。だが、後先を考えてからにしてくれ」
久しぶりに千冬姉の泣き顔を見た。そして、もう二度と泣かせないように心の中で誓いを立て、もう一度謝ってから部屋を出た。
「織斑先生、なんだって?」
「バレてたよ、何もかも……」
「何もかも、って、さっきのも?」
「ああ。多分、歩き方とか匂いとか、そういうとこじゃないか? シャルロット」
「な、なにかな」
はっきりと名前を呼ぶと、声色に含まれた緊張を察してか、はたまたその後の不安か、少し震えた声が返ってくる。
「なにがあっても、お前を守るように全力を尽くすよ」
「それは、告白、かな?」
「いや、俺なりのケジメだ」
原作沿いと言ったな、あれは嘘だ。
本妻シャルロット説急浮上