「いきなりぶっ放すなんて、どう言う了見?」
「中国と英国の第3世代か。まだデータで見たほうが強そうだったな」
「挨拶代わりに砲弾を打ち込む国の方はずいぶんな物言いをされますのね」
「やろうってなら受けて立つわよ? セシリア、ジャンケンにする? 指スマでもいいわよ」
「面倒だ、ザコ2人が束になっても変わらん。一気に来たらどうだ」
「さすが、水代わりにビールを飲むだけありますわ。酔っぱらいの戯言なんて言い訳はナシですのよ?」
アリーナで中英独で煽り合いの末に武力衝突が起こった頃、俺とデュノアはまだ教室にいた。
「さて、今日も放課後練するけど、付き合ってくれるか?」
「もちろんだよ。今日はどこが空いてるのかな」
「第3アリーナだ」
「「ひえっ!?」」
そして、うにゅっと飛び出す箒。それに驚いて飛びつくデュノアと、それに"も"驚いて椅子から転げ落ちる俺。今日も平和だ。痛いけど。
「びっくりさせないでくれよ……」
「ホントだよ! 変な声出ちゃったし。うぅ……」
「そんなに驚くとは思わなかったんだ。今日は私も訓練機が取れたし、入れてもらおうと思ってな」
アリーナに来てみたはいいが、なんか物騒な音しないか?
模擬戦やってるとしても、やたらと多いし重い音ばかりだ。実弾系の武装テストをやってると言われたほうがまだしっくりくる。
「誰か模擬戦やってるみたいだね、見てみようか」
そんなデュノアの誘いに乗って客席に来てみれば……
おいおい、なにやってんだよアイツら。
「いい加減に落ちなさいよ、ジャガイモ野郎!」
「鈴さん、当てない砲撃を心がけてくださいな!」
「意外としぶといな。評価を上げてやろう」
中英独の見事な乱闘。鈴の衝撃砲はなぜか効いてないし、クソジャーマンの機体から伸びるワイヤーがセシリアの機体を絡め取って鈴の機体にぶつけたりしている。これ洒落にならなくね?
「デュノア、止めに行くぞ。箒も、乱入なら大歓迎だ」
「わかった」
「私の取り分を残しておいてくれ。あのザワークラウトには少しばかり因縁があるのでな」
ボーデヴィッヒが箒に何をしたのかは知らないが、隣でデュノアがISを展開したのを見ると、俺も部分展開。雪片を握りしめる。
「アリーナのシールドをぶち破る。第一撃は任せた」
「オーケー。遅れないでね」
雪片をシールドに押し当てて一瞬だけ、零落白夜を発動。最小限の隙間を開けるとデュノアが飛び込み、俺も続くと空中でISを展開。
上を見ると、どういうわけかデュノアが空中で固まっていた。
「一夏! コイツ、なにか仕掛けがあるよ!」
「面倒な」
映画の悪役がごとく手を向けた方でセシリアと鈴、そしてデュノアが何かに捕まったように動けないでいる。
くそ、仕組みさえわかれば……!
「一夏、そいつの第3世代装備は停止結界、見えないワイヤーみたいなものよ!」
「エネルギーの糸のようなもの! 零落白夜で切れるはずですわ!」
経験者は語るってか。仰せのままにまずはノーダメのデュノアとボーデヴィッヒの間の空間を零落白夜を発動させて雪片を振ってみる。
手応えあり。デュノアがマシンガンで鉛玉をばら撒きながら横方向への動きで揺さぶっていく。
「チッ、面倒な奴が来たな。だが、所詮
「セシリア、鈴、無事か!」
「なんとかね。そろそろ機体がヤバいかも」
「わたくしも同じですわ。いいようにされて、くっ……!」
二人をなんとかなだめて下がらせると、グッと姿勢を低くするボーデヴィッヒが見えた。瞬時加速でダッシュでも決めるのか。
対するデュノアは片手に大きな盾を構え、反対にはショットガンだろうか。
パンと空気が弾け、ボーデヴィッヒの機体が飛び出した瞬間。なにかが横から飛んできて黒いのに当たると、姿勢を乱したボーデヴィッヒはそのままデュノアの横を飛び去る。
「いい腕だ、篠ノ之」
「ありがとうございます」
飛んできた物体の射出された方をみれば、訓練機の打鉄を纏う箒と、いつもどおりのスーツ姿の織斑先生。箒は墜落したボーデヴィッヒの下へ。その途中で日本刀のようなブレードを拾うと首筋に当ててニヤリと笑った。
「不思議な糸でも使うか?」
「……Scheiße」
どうやら、ボーデヴィッヒを撃墜したのは箒の投げたあのブレードらしい。いつの間にあんな技身につけてたんだ?
瞬時加速したISって音速手前くらいは出てるぞ?
「模擬戦は一向に構わんが、アリーナのシールドまで破られてはかなわん。今後一切の私闘は禁止だ。この決着は今度のトーナメントでつけろ」
織斑先生がそういうのなら、ハイとしか答えられないだろう。クソジャーマンから熱い視線を受けつつも、互いにプイッとそっぽ向く大人な対応。これには織斑先生もため息で絶賛だ。
それから2対1でもからのクソジャーマンを圧倒できなかった2人を回収し、言い訳を聞き終えると人間とISの整備に向かった。
「ダメージレベルBですか…… これはちょっと。トーナメント参加は怪しいですねぇ」
「ウソでしょ……」
「そんな…… 下手に動かすわけにも行きませんし」
山田先生の言葉に対する2人の反応を見るに、どうやら想像以上に重症らしい。
ダメージレベルがB以上となると、下手に直すよりもISの自己修復機能に頼った修復のほうが後々に影響しにくいと言われている。その自己修復がそれなりに時間もかかる代物ってわけだ。まぁ、売られたケンカを買ったツケは高くついちまったっつーことだな。
「それでも、2人に大きな怪我なくてよかったよ」
「機体は大怪我ですけれど……」
「これじゃあトーナメント参加は難しそうね」
先生の帰った整備室で機体のデータを見ながらボヤく鈴。まぁ、あの協定というか、約束もあるからな。流石にこれで俺が勝っても後味悪いし、機会を改めるのがベストか。
「なぁ、あの約束だけど、また今度違う機会にしようぜ。代わりっちゃアレだけど、みんなで出かけよう」
「そうね、なんだか釈然としないけど」
「こうなっては仕方ありませんわ。箒さんにはわたくし達で話しておきますわ。元はといえば自分の責任ですし」
「そうね、箒には悪いけど」
隣のデュノアから袖を引っ張られ、約束ってなに? と小声で詰められる。ねぇ、目が笑ってない。
「トーナメントで優勝したら、言う事ひとつ聞いてもらう、って約束してたんだ。けど、こうなったら仕方ないよな」
「なるほどね。次があるとすれば…… 秋のキャノンボールファストかな? だいぶ先だけど、その頃にはみんなレベルが拮抗して面白くなるんじゃないかな」
「その時には、デュノアさんも入っていただきましょうか」
「そうね、そのほうが何かと楽しくなりそうじゃない?」
さて、この2人はデュノアの秘密を知ってか知らずか、はたまた俺を好き勝手するという本来の目的を忘れているのか。デュノアの参加が決まると、なにやら外が騒がしい。
やれ、織斑君を探せだの、デュノア君を探せだの、マズい雰囲気がマックスだ。しかし、すっかり得意になったパルクールもどきで逃げようにも整備室には窓がない。
「デュノア、隠れるぞ。鈴、セシリア、誰か来たら適当に誤魔化してくれ!」
「はいはい、わーったわよ」
「おまかせくださいな」
そしてデュノアを戸棚に押し込み、俺はまた工具の入ったキャビネットに。さすがに一緒に掃除用具のロッカーに入るような真似はしない。ソレなんてエロゲ?
自分の入った引き出しを閉めると同時に空気のぬける音ともに人間がなだれ込んできた。
「織斑君見てない!?」
「何よいきなり」
「見ての通り、わたくしは鈴さんと2人で居ましたので」
「なんだ、残念。ありがとね!」
「せめて何があったのか教えなさいよ」
なだれ込んできた女子の一人の話をまとめると、先日黒いずんぐりむっくりが乱入してきた事もあり、今度行われるトーナメントをより実践的にするべくタッグマッチ形式にするというのだ。
そこで男と組んでいい思いをしたい女子達が血眼になって探していると。こんな動物園のパンダみたいなの嫌だぞ?
「行ったわよ」
「ふぅ、大変なことになったね。僕たちはどうしようか。一夏?」
「一夏さん、もう出てきても大丈夫ですのよ?」
「……自力で出られねぇ。手伝ってくださいお願いします」
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