とある能力の代償   作:きんぴら大根

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10話 逃避行

引き金を引いた瞬間、爆発が起こった。フレンダがまだ破壊されていないトラップを使ったのだ。その爆風でほんのわずかだが、弾道がずれた。施設の一部が倒壊し、ケイとアイテム3人との間に瓦礫が積もる。

 

「滝壺!大丈夫!?」

 

フレンダが滝壺の元に駆け寄った。どうやら致命傷は避けたが、これ以上能力を使える状態ではない。ケイの放った2発の弾丸は確実に滝壺の体を貫いていた。

 

「麦野・・・ごめん、これ以上は無理かも・・・」

 

(クソが!あのゴキブリ野郎はどこだ!?)

 

麦野が見渡すももういない。抜け道は今まで放ってきたメルトダウナーのおかげでいくつもあった。ケイはそこから脱出し、アイテムの視界からすでに消えていた。

 

 

 

 

 

足音が近づいてきた・・・廃ビルの中へ身を潜めていた陵は、今度こそ身の危険が迫っているのを肌で感じてきた。今までは動き回っていたせいもあってか、そこまで恐ろしくなることは無かった。むしろ普段平穏に過ごしているときよりもかえって、現実感がなかった。まるでゲームをしているような感覚だった。それが今になって恐怖が全身から吹きだしている。自分の呼吸がどんどん荒くなっているのがわかる。まずい、とにかくここから逃げなければ・・・

ふいに足音が止んで遠ざかっていった。もういったのか?そう思い顔を少しだけ出しても誰もいない。ほっとしてため息をつき、その場から立ち上がると・・・

 

「やっぱりここにいましたか、超見つけましたよ」

 

絹旗が柱のかげから出てきた。

 

「うわああ!!」

 

思わず叫んで、銃を絹旗に向ける。

 

「無理してるのが超バレバレですよ。人、撃ったことないのわかりますから、あなた」

 

フーッ、フーッと呼吸を整えようとするもなかなか手の震えが止まらない。必死に標準をあわせようとするがぶれてしまう。それでもなんとか両手で抑えつけて銃口を向ける。

 

「どうか退いてくれ、私は子どもまで撃ちたくはないんだ」

 

私には娘がいるんだ、という言葉が出かかった。

 

「この後に及んで超見上げたことですが、聞けませんね。それにそんなオモチャじゃ、私は超殺れませんから」

 

ジリジリとこちらに近づいてくる。陵は標準を少し下の方にずらして、足の方を狙らった。今引き金を引かなければ、殺される・・・陵はとうとう絹旗に向けて発砲した。

 

「だから超効かないって言ったじゃないですか」

 

陵は目を疑った。確かに今、少女の体に銃弾が弾かれたのだ。

 

「ああああ!!」

 

完全に冷静さを失った陵は、絹旗を撃ち続けた。しかしがむしゃらに撃ち続けて

いては命中率は低く、当たったところでことごとく防がれてしまう。弾が切れ、再装填しようとするも、手が震えてマガジンがはまらない。

 

(さっさと終わらして麦野達のところに超合流しないと・・・)

 

一気に距離を詰めて、陵の頭を粉砕しようとした。

 

(なっ、煙!?)

 

突如、絹旗と陵の間に催涙弾が撃ち込まれた。そして数人のマスクをした男がこちらへ走ってくる。

 

「あんたが往見陵だな、こっちだ!」

 

数人の男に連れられ、陵は車に乗り込んだ。

 

(超逃がすか!!)

 

絹旗が追おうとするも、催涙弾をさらに撃ち込まれ、視界が塞がれてしまう。そして気付いた頃には、彼らの姿はもう無かった・・・

 

 

 

 

 

 

(何とか逃げられたな、だがまだ敵が追ってこないとも限らないし・・・)

 

ケイは施設の下に通っている下水管の中で体を休ませていた。今までの戦闘で体力は限界に近い。今のところ追手が来る様子もないが・・・

 

「クソッ、臭いなここは」

 

思わずぼやいてしまう。ここまで劣悪な環境はいつ以来だろうか。ああ、10年前ぐらいだったかなとひとりで苦笑していた。

携帯のバイブレーションがなっている。画面を見ると土御門からだった。

 

「おいおい、電話遅いよ。ひょっとして見殺しにする気だったのか?ずいぶん冷たいんだな」

 

「お前のようなクズ相手でも私情を挟むつもりはない。アイテムのことだってお前の相方からの電話で初めて知ったんだ。あのおっさんについてはお仲間のスキルアウトに向かわせたさ。もう確保したとの連絡もあった」

 

「で、アイテムが動いても気付かなかったことについては?」

 

「おそらく外部の連中だ。お前の雇用主に聞いた方が早いんじゃないのか?」

 

(ああ、そっちがらみか。ったく面倒になってきたな・・・)

 

「わかったよ。こっちは疲れてるんだ、じゃあ切るよ」

 

ケイはそう言って電話を切った。そして数秒と経たないうちに誰かから連絡が入った。

 

「噂をすればだな」

 

ケイの雇用主、白神からの電話だった。

 

「ケイ、今どんな状況だ?」

 

「どうもこうもないよ、アイテムに襲われて逃走中。今身を潜めて体を休めているよ」

 

「アイテム?ああ、たぶん厚労省の関係の連中が雇ったんだろうな。こちらの情報網にかからなかったのはそのためだろう。今こちらでも連中のきな臭い動きをチェックしたところだ。学園都市とつるんでずいぶんと好き放題やってるらしい」

 

「おいおい、そっちのショバ争いかよ。他の省庁の動きぐらいちゃんとチェックしとけよ」

 

「無茶言うな。いったいあいつらが何人学園都市にいってるかわかってるのか?俺達よりも学園都市との関係は深いんだ。全ての人脈を把握するなんて不可能なんだよ。こちらのやり方もある程度わかっているしな」

 

「で、どうすんだよ?これから」

 

「アイテムについてはこちらも何か手を打ってみる。学園都市正規の依頼ではないだろうから、統括理事会等に知られれば依頼は中止されるだろう。それまではおとなしくしてろ」

 

「努力してみるよ」

 

電話を切った後、白神はため息をついてイスにもたれかかった。正直ここまで大事になるとは思わなかった。厚生省だけじゃない。蜜月関係にある学園都市そのものを相手しなければならない可能性も十分にある。

 

「ま、これ以上売国奴どもに舐められるわけにもいかんしな・・・」

 

白神はそう1人つぶやいた。

 




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