とある能力の代償   作:きんぴら大根

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更新遅れて申し訳ありません。では始めます。


15話 取引

取引に指定した場所は特力研(特例能力者多重調整技術研究所)跡地であった。多重能力の実現が不可能であると証明された場所、おびただしい数の子供の犠牲によりそれを証明した場所だ。学園都市の闇、いや「本質」の一端を示したところでもある。ケイがここを選んだのはひょっとしたら何かの意趣返しなのかもしれない。

 

車で向かう途中、ケイは電話で雇用主、白神に苛立ちを込めながら喋っていた。

 

「いい加減にしろよ、何で俺の相方の情報が洩れてんだよ?」

 

「ああ、それについてはこちらの失態だ。何か証拠でもあれば上の決定を変えれるかもしれんが」

 

「今それを取りに行くところなんだがな。どう考えたって時間内に娘さんを確保するのは無理だ。やるんならその証拠をそっちに送るからその後だよ。こちとらストレスで禿げそうなんだ、あんまり仕事増やすんじゃねーよ、じゃあ切るわ」

 

ここまでトラブルの多い仕事は久々だ。苛ついた自分を落ち着かせるように深く息を吐いた。そういや往見陵のことを見捨てても良かったんじゃないか。なぜそのことに今まで気付かなかったのだろうか。パイプ役としての役割すら無くなったのだからもはや守る必要すら無いはずだ。

 

(まあ、中々いいアイディアも思い付いてくれたことだしな)

 

初めて自分の思考に疑問が生まれたが、ケイはそれ以上考えることを止め、感覚を研ぎ澄ますことに集中した。

 

 

 

 

 

 

ケイたちが到着してから数分後に透野俊介は姿を現した。ブリーフケースを片手にスーツ姿でケイたちの方へ恐る恐る歩いてきた。

 

「透野俊介であってるな?さっそくだがその証拠とやらを渡してもらう」

 

透野俊介との取引の役を買ってでたのはケイであった。陵相手だと冷静な対応が出来ない可能性がある。スキルアウトなど論外だ。ケイは基本的に協力者を信用していない。

 

「ああ、わかった。これを渡せば娘を解放してくれるんだな?」

 

「その証拠とやらの信憑性を確認してからだ、つまらんガセネタのためにリスクは負えないだろ」

 

厚労省との契約書類、USB等の電子データに保存された膨大な研究記録、研究の援助に関わっている厚労省の役人など、俊介が持ってきたデータは多岐に渡る。

 

「今からこちらで確認するから少し待ってろ」

 

そう言うとケイはワンボックスカーに戻り、ノートPCにデータを読み込んだ。ここでやるのは確認作業ではない。読み込んだデータ全てを白神のところへ送信していたのだ。

 

(これだけのことをしたんだから指名手配ぐらいは解除してもらわないとな)

 

とは言え往見陵の存在が世間一般にクローズアップされたことで動きにくくなったことに変わりはない。相手もさらに警戒感を強めるだろう。どのみち早期決着を迫られることになる。

再びケイに白神からの電話が鳴った。

 

「データの受け取り確認した。これだけあれば捜査の主導権を戻すことが出来るな」

 

「なあ、これだけあれば救出する必要もないだろ。そろそろ仕事を打ち切っても・・・」

 

「ちゃんとデータを確認したのか?今確認した限りじゃデータの中身自体に違法性を示すものなんてどこにも無いんだよ。行方不明の往見霧香が研究施設にいるということを覗いてな。この分だと恐らく事件の全容を知るにはそこに乗り込むしかない、往見霧香の救出というお題目でだ。救出部隊はこちらで編成する。今は自分の仕事に集中しろ」

 

「ホント頼むよ」

 

電話を終えた後、ケイはその研究データに目を通す。『非投薬処置による能力発現観測実験経過報告』、その実験協力者として往見霧香の名前が入っていた。ケイには少し引っかかるところがあった。この実験の被験者としてではなく協力者とある点についてだ。通常能力者がこうした実験に携わる場合、被験者という立場で関わるのが通例である。そもそも違法性の高い危険な実験については、身寄りのない子供や、何らかの落ち度があり社会からドロップアウトした者、(あるいは無理やりさせられた者)をモルモットの対象にする場合がほとんどだ。往見霧香についてはそのどちらも当てはまらない。

 

「なあケイ、それ私にも見せてくれないか?」

 

「ああ、いいよ。居場所についてのデータもある。これが本当ならあんたの娘も生きてるよ」

 

往見陵がリスクを冒したおかげでかなり状況は進展した。どのみち結果が出るのは時間の問題だ。

ケイの携帯からまた電話が掛ってきた。白神からだと思いうんざりしながらも携帯を手に取ると、今度の電話の主は土御門からだった。もはや嫌な予感しかない。

 

「何か用か?土御門」

 

「暗部に動きがあれば連絡しろと言ったのはそっちだろ。今第10学区で猟犬部隊(ハウンドドッグ)の活動が確認された。一応耳に入れておこうと思ったんだが」

 

即座に電話を切って、ケイは透野俊介を半ば車に引きずるような形で乗せた。

 

「とっとと出発するぞ。おい、浜面さっさと出せ!」

 

「いったい何だってんだよ、クソッ!」

 

浜面が毒づきながらも車を急発進させる。ここからはそう遠くない距離であるため、不確かな増援に期待するよりは直接出向いた方が遥かに確実だ。

ケイは自分の装備を再確認し、戦闘態勢を整える。今車に乗っているメンバーの中で、頼りになるのは自分しかいない。

今おかれた自分の状況に自嘲気味に笑い、フロントガラスの方をまっすぐに見据えた。

 

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