とある能力の代償   作:きんぴら大根

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更新また遅れちまった・・・


行間 往見霧香①

最近良く、小学生の頃の夢を見る。

あれは10歳の頃だろうか、それより前か。いつも遊んでいる友達の1人が学校に来なくなった。いわゆる不登校という奴だ。その理由は先生や親、クラスなど公に知られることは最後までなかった。私「達」はそれを最後まで隠し通した。せっかく今の立ち位置を確保したのだ、そう易々と手放せる訳がない。それが私がお父さんについた最初の嘘であり、今でも心の引き出しから顔を覗いてくる。

 

目を開けるとそこは白い箱の中。これが今の私の日常。そこには季節、昼、夜なく時計はずっと24時間を繰り返す。なぜ最近こんな夢を見るのだろう、よりによってこんなどうでもいいことを。どうせならもうちょっといい夢を見たかったとも考えたがそれじゃあ起きた後辛くなるだけだ。ただ子供達のパーソナルリアリティを『観る』だけの単調な毎日。それは半年以上前からずっと続いている。

 

 

高校の期末試験が終わり、これから春休みに入ろうとするときだった。今年の春休みは友達の大半が実家に帰ることとなり、学園都市で友達と過ごすのはあまり出来そうにない。そんなとき、先生から呼出しがかかった。テストの採点が終わってる訳ないので、成績に関することじゃないと思うけど、どっちにしろかったるいことには変わりない。

 

職員室に入ると、スーツ姿の男が待っていた。名前は透野俊介、私の父さんと同じくらいの年だった。その男は自分にも君と同じくらいの娘がこの街にいるといい、他愛無い雑談を始めた。私がレベル3の能力者であることにも触れ、「娘はレベル0だから、君のことを羨ましく思うだろうな」と少しはにかんだように笑った。

 

少し打ち解けた雰囲気になった後、男の話は本題に入った。自分が勤めている施設で研究を手伝ってほしいということだった。研究の内容については着いてから説明するらしい。能力者の研究協力ではかなりの額が支払われる。物価の高い学園都市で過ごしている身としては本当にありがたい。遊ぶお金だって女子高生としては死活問題だ。少々拘束時間が長いけどそれを差し引いても私にとっては魅力的な提案だった。

 

 

 

 

場所は第10学区、あまりなじみの無い場所だ。高校の施設見学のときに一回だけ行ったことがある気がするけど・・・正直覚えてない。

「殺風景で面白みのないところで悪かったね。まあバイト代に免じて許してくれよ」

 

そう軽口を叩きながら透野俊介は私と目的の研究施設に向かった。私と同じぐらいの子どもを持った父親。彼の話は嘘だとは思わなかったし、家族を持っているというだけで無意識に警戒感を解いていたのかもしれない。でも私は後で思い知った、普通の幸せな家族を持っている人間であっても、どこまでも残酷になれるということに。

 

 

 

 

施設の中には、カプセルのようなものに入った子供達がずらりと並んでいた。私はショックで思わず口に手をあててしまった。

 

「ああ、驚いたかもしれないけどね。この子達は精神的な疾患で寝たきりになってしまった子供達だ。実を言えば、非合法な実験でこうなってしまってね」

 

「非合法って・・・」

 

「たまにいるんだよ、研究の成果を出せず学園都市から見放された研究者たちが、犯罪組織等にバックを受けてこういうことをやる人達がね。最近は大分少なくなったけどまだなくならないみたいだ。僕らはこういう子達を引き受けて治療法を模索している。出来れば君にも手伝ってほしい」

 

今目にしたものは私にとって少なからずショックを与えた。ただこの男が私に語った話は私の動機を強くするのには十分だったし、男の話は当時の私には非常に誠実な印象を与えた。

 

「今までそんなこと全く知りませんでした。もちろん手伝わせてください。でも、私はいったい何をすれば・・・」

 

「君は人のパーソナルリアリティを『観る』ことが出来るんだよね?」

 

そう、それが私の能力「深層視点(インターオブザーブ)」だ。能力の有無に問わず、他人の精神的な核となる人格を観る能力。当然パーソナルリアリティは人格と密接なものであるため、それを観ることとほとんど同じだ。ただ、通常のテレパスと違って、表層的な心理状態がわかるものじゃないので日常生活では全くと言っていいほど役に立たない。まあだから変に友達に避けられることは無かったので、その点では良かったのだけれど。

 

「ええ、そうでうすが・・・私がこの子達を全部?」

 

「いやいや、被験者となる子達は当然絞るよ。ローテーションで回してはいくけどね。いくつかのサンプルが採れるだけでも十分すぎる成果だから。じゃあ、さっそくこっちに来て」

 

別室に行くと、6人の子供がカプセルの中で眠っていた。この子達が被験者に選ばれたのか・・・

 

「さて、まずはこの子達を能力で観察してくれ。その後この機械を付けて能力で観たものをしっかりとイメージしてほしい。この機械は君が頭で思い浮かべた映像を投影するものだ。とはいってもちゃんとイメージしないとぼやけて見れなくなるからそこだけは気をつけてくれ。今日のところはここまでで、手伝ってもらうのは明日からだ。じゃあお疲れ様、明日は学校の最寄駅の近くに車を回しておくよ。場所わかるかな?」

 

「はい、何度も利用しているので平気です。今日のところはありがとうございました」

 

いつものアパートに帰ると、一目散にベットにダイブした。今日は色んな話を聞かされて本当に疲れた。とりあえず休憩したい。

 

(でも知らなかったな・・・学園都市の実験であんな目に遭っている子たちがいるなんて・・・)

 

ネットの掲示板で噂しているのは知ってた。でもそんなものはただの都市伝説みたいなものだと思ってたけど・・・

 

「色々考えるのも面倒くさいし、とりあえず寝よ」

 

試験勉強でかなり夜更かしが続いていたので、私はすぐに眠りについた。気が付いて起きたら夜中の2時で、いきなり生活リズムが狂ったことを恨めしく思った。

今回の春休みは少し退屈なものになっちゃうだろうなと、このときの私は呑気に春の長期休暇を憂うだけだった。

 




自分で考えた能力第一号の初披露です。
ダサくないはず、多分(震え声)
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