とある能力の代償   作:きんぴら大根

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2話 失踪

「やったー!即入学OKだって!!しかも強能力者の精神感応(テレパス)!」

 

検査の結果に霧香は大はしゃぎしていた。もう心の中で学園都市の高校に行くことは決定事項のようだ。そんな娘とは対照的に母親の葉月はあまり浮かない表情をしていた。

 

「いきなりレベル3ってなかなかいないって学園都市の人も驚いてたよ!」

 

「今の検査の段階でわかることはこれぐらいですが、まだまだ未知な部分も多いです。能力をより詳細にカテゴライズすることも、じっくり時間をかければ可能でしょう。現時点では精神感応(テレパス)とさせていただきました。あとはご家族でじっくりと話し合ってください。丸3日の検査お疲れ様でした」

 

検査の担当者がそう告げた後、娘の霧香の要望で学園都市を散策してから往見一家は帰ることになった。家に帰った後すっかり疲れて寝静まっている霧香をよそに、陵と葉月はずっと話し込んでいた。

 

「能力開発って頭の中いじられるんでしょ。それでもし娘に何かあったら・・・」

 

妻の葉月の方は能力開発に相当抵抗があるらしく、学園都市に娘を行かせることに消極的だった。

 

「能力開発についての安全性は研究者の人からちゃんと説明があったじゃないか。それに学園都市で教育を受けられるなんてまたとない機会だぞ。奨学金だってかなり出るし・・・」

 

金銭的にも悪い条件ではなかった。今後の能力の発達を見込まれ奨学金はかなりのもので、当初受験する予定だった公立高校と比べてもさほど変わらない授業料であった。学園都市の教育を受けられる世間のステータスは大きく、親としても娘の将来の心配をしなくてすむ。陵は妻とは対照的に学園都市の高校に行かせたいという希望は強かった。

 

「まあ本人もそう言ってることだし・・・わかったわ、明日あの子に話しましょう」

 

翌日両親は自分たちの意向を霧香に伝え、学園都市の高校に入学することが決定した。手続きはそれなりに大変だったものの、思っていたほど厳しくはなかった。

 

 

そうして時は過ぎ中学校の卒業式を迎え、霧香は学園都市へと行くことになった。

下宿先の環境を整えるため、かなり早い時期に行くことになった。当然不安もあったが、これからの学生生活にかける期待の方が大きく、一日も早く学園都市に行きたいと楽しみにしていた。

 

「仕送り使い過ぎるんじゃないぞ。計画的にな」

 

「お父さんってホント変なところ気にするんだから、大丈夫だよ」

 

「月に一回ぐらいは連絡入れてね。私たちも心配するから」

 

「わかった」

 

「留年したりするなよー、お父さんも泣くぞ」

 

「その前にお母さんに殺されそうだけどね」

 

「それもそうだな、あはは」

 

「あんたたちねえ・・・」

 

家族でしばらく談笑した後、霧香は学園都市のゲート前までの電車に乗り、新しい生活へと出発した。

 

 

それから1年間は毎月連絡が両親に届き、娘が充実した高校生活を送っている様子をしっかりと伺い知ることが出来た。夏休みは親元に帰ってくることはなかったが、友達と大いに遊び倒している写真が添付されて送られてきた。友達つくるのは得意だったなと陵はそれを見て笑みがこぼれた。

冬は親元の方に帰ってきて家族一緒に過ごした。霧香が学校での生活を本当に楽しそうに語るのを見て、やっぱり学園都市に行かせて良かったとしみじみ思った。

だが春休みに入ってから連絡が途絶え、音信不通状態になった。

 

最初の1ヶ月ぐらいは連絡を忘れているだけかと思い、大して気にはならなかった。しかし2ヶ月を過ぎても何の連絡もなく、こちらから電話しても返事もない。葉月と陵の不安は募っていった。学校に問い合わせると、新学期から登校していないという。下宿先にも帰っておらず、風紀委員(ジャッジメント)や警備員(アンチスキル)が現在捜索中であるとのことであった。

 

「ふざけるな!そういうことならなぜもっと早く私たちにそのことを言わなかった!」

 

「すいません。保護者の方に無用な心配をかけるわけもいかず・・・」

 

「無用だと?行方不明で未だに見つかっていないんだぞ!」

 

「とにかく落ち着いてください。我々も今最善を尽くしています。また何かわかったことがあれば逐次報告致しますので」

 

そう言って学校側は一方的に電話を切った。陵はまるで他人事のような学校側の態度に怒りが湧いた。アンチスキルの事務所に問い合わせてみても何も得られなかった。学園都市の保護者会にも相談したが、あまり期待できるような対応はなかった。日本の警察に相談しても管轄外だと一蹴された。

 

「だから言ったじゃないの。私は最初から反対だったのよ、あの子を学園都市に行かせるのは!」

 

「そんなに強く反対してなかったじゃないか!それに今そんなことを言っても・・・」

 

「いつだって楽観的すぎるのよあなたは。1ヶ月連絡がなかったときも大丈夫だろうって全然取り合わなかったじゃない!」

 

「うるさい!だから今そんなことを言っても始まらないだろ!」

 

娘が行方不明だと分かった後、3ヶ月間陵は妻と毎日言い争うようになった。そして妻は家を出ていってしまい、マンションには陵1人が残された。

 

 

それからは憔悴とした毎日を陵は送ることとなった。もう何もかも失ったような気持ちだった。

もっと妻の言うことに耳を傾けるべきだったかもしれない。「いつだって楽観的すぎるのよ」という言葉がいつも頭に反響していた。

 

そうして季節は夏を迎えたある日曜日、部屋でずっと寝ていたときに突然インターフォンの音が鳴り響いた。ゆっくり体を起こしてインターフォンに出ると中年の男二人の姿があった。

 

「警察のものです。娘さんのことで話があるのですが・・・」

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