とある能力の代償   作:きんぴら大根

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6話 通常業務

ケイの言っていた通り、朝は早かった。

陵は昨日の疲れがかなり溜まっていたため、ケイに起こされるまでずっと眠っていた。陵が着替えた後、ケイと陵の2人はすぐにスキルアウトの活動拠点の第7学区へと向かった。

 

スキルアウトの一組織のリーダー、駒場利徳は第7学区のスキルアウトを取り仕切っており、他の地区のスキルアウトへの影響力も非常に強い。彼もまた、日本の警察の『協力者』である。ケイとの関係も長く、武器密輸のルートの構築の手助けや、アンチスキルの打ち抜き捜査のタレこみなど、ケイは駒場に対してかなり強力にサポートしているらしい。ケイはちょうどその駒場と話しているところだ。

 

「駒場、3日後にガサ入れがある。新しい場所はこっちで用意してあるから早く移した方がいい」

 

「ああ、そうか。助かる」

 

「それと、以前刑事も来てたろ。お前のところに」

 

「ああ、ずいぶん前に『事故』で死んだ・・・」

 

「あいつから頼まれてた捜査、今もやってるのか?」

 

「一応継続はしてるが・・・」

 

「その報告は俺らにしてくれ。またこっちも再開することになった」

 

「俺らって・・・ああ、あのおっさんか。刑事には見えないが・・・」

 

「『協力者』だよ。あんまり詮索しないでくれよ」

 

「わかってる」

 

「それと最後になるが」

 

「何だ?」

 

「あまりやりすぎるなよ。俺も上も『協力者』は失いたくないからな」

 

「・・・・・・」

 

陵のスキルアウトに対しての認識がようやく固まりつつまった。スキルアウトといっても様々で、ただの不良集団、計画的な犯罪グループ、何らかの団体をバックにして活動している組織といったふうに、一括りにするのは難しい。共通しているのは大半がレベル0で、学園都市の社会からあぶれた者たちということだけだ。もっとも今やその社会の歯車のひとつになりつつあるが。

 

それからは民間会社の社員や研究者と会い、情報交換や取引に勤しんでいた。ケイは研究者からいくつかの物品を受け取っていた。対能力者用の武器といっていたが、効果のほどは不確かなようだ。

仕事には当然陵の娘の捜査も含まれていたが、半分以上は協力者との関係を絶やさないための情報交換や取引が占めていた。

 

「今日のところの外回りは終わりだ。あんたの娘さんの捜査の方は進展がなくて残念だったな」

 

「まだこれからだ。仕事は残ってるんだよな?」

 

「報告をまとめるだけだよ。アパートに帰ってからやろう」

 

ケイと陵は帰った後、ノートPCで報告書をまとめる作業に入った。もともとはケイがサポートする刑事の役目だったらしく、ケイ自身は報告書をまとめるのに慣れていなかった。対して陵は仕事で手慣れていたため、一度見本を見るとスムーズに取り掛かることができた。

 

「君とはいい役割分担が出来そうだな、ケイ」

 

「かもな。じゃあこれ全部あんたに任せていい?」

 

「おいおい、この分量を私一人でやるのか?かんべんしてくれよ。外回りの方だって手伝ったじゃないか。まだまだだったかもしれないが」

 

「あんた一人でやる方が速いって」

 

そんな会話がしばらく続いた後、「役割分担ができるって言ったのあんたじゃないか」と散々ケイはゴネていたが、しぶしぶ報告書の方も手伝うことにした。もっとも取り組む分量は圧倒的に陵の方が多くなったが。

 

次の日は主にジャッジメントとアンチスキルとの仕事だった。主に賄賂の受け渡しや、ここ最近の捜査の動き、そして陵の娘の捜索の経過報告を聞くことだ。昨日と同じく、霧香の捜査には進展はなかった。

ケイは自分と同年代ぐらいの、茶髪を肩ぐらいまで伸ばしたジャッジメントの少女と話している。少女の名前は羽原というらしい。

 

「ケイ、最近上の目が厳しくなってるから会う頻度減らした方がいいかもよ」

 

「ああ、そうだな。打ち合わせの場所もなるべく頻繁に変えるようにしよう」

 

「それとさあ、あのおっさん、刑事っていう感じじゃないよね?あれ誰なの?」

 

少し面倒くさいな、こいつは。協力者の中にはだんだんこちらとの取引に慣れていくにつれ、たかろうとする連中が出てくるのをケイはかなり見てきた。早い段階で釘を刺しておかないと後で面倒になる。

 

「さあな、とりあえず今日のところは終わりだ。余計な詮索は無しって言っただろ」

 

「そりゃそうなんだけどさあ、素人連れてきたらこっちのリスクだって増えるじゃん。今までと同じ条件のままだったら・・・」

 

「話、こじらせるつもり?」

 

ケイの雰囲気が明らかに変わった。さっきまでのぶっきらぼうな感じではなく、

抑揚のない、しかしとうてい聞き流すことのできないような冷たい声を発した。ジャッジメントで多少の荒事には慣れていた羽原でも、ここまで明確な殺意にあてられたことはなかったため、首を横に振ることしかできなかった。

 

「ああ、それとお母さん退院したんだって?おめでとう」

 

これ以上ないくらいの笑顔を浮かべてケイはそう羽原に言った。

 

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