とある能力の代償   作:きんぴら大根

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9話 トラブル

ケイは仕事柄有名な暗部の組織と、その構成員の能力者のことにはそれなりの知識があった。アイテムもまたケイの耳に入るほどの組織だ。まさかアイテムほどの組織が動いているとは予想外だった。ケイは内心かなり焦っていた。構成員の人数は4人のはず。じゃあもう1人は・・・

 

「おっさん、聞こえるか?敵がそっちに向かってる。俺が何とか出口を作るからそれまで絶対に見つかるな。作れたらそこからすぐに逃げろ」

 

「ああ、わかった。だが君は」

 

「そっちに構ってる時間は無いんだよ!じゃあな」

 

「あ、おいっ・・・」

 

(状況は最悪だな、クソッ!)

 

ケイは壁の影からレベル5の1人、麦野沈利に標準を定めようとした。だが次の瞬間麦野がこちらに視線を向けて手をかざした。

 

(まずい!)

 

とっさに光線を回避したが、休む間もなく次々と襲いかかってくる。

 

「ギャハハ!ホントゴキブリみてえだな、ほらほら避けてみろよ!」

 

(そうか、滝壺に俺のAIM拡散力場を記憶されたか。こりゃますます絶望的になってきたな)

 

遮蔽物を盾に光線が物体を貫く間のわずかな時間で躱すものの、敵からは遠ざかり反撃のチャンスはますます遠のいていく。

 

(このままじゃジリ貧だ。賭けに出るしかないな・・・)

 

振り返って麦野達の方へ走りだし、打って出ようとした。そのとき麦野達のいる方から、激しい音と光が現れた。

 

(おっさんのスタングレネードか。こりゃあチャンスだ)

 

ケイは一気に麦野の方に駈け出したが、フレンダの爆弾がロケットランチャーのようにケイの方へ飛んできた。フレンダだけがとっさに反応して、耳と目を塞いで対応したのだ。

 

ケイは爆発で麦野たちの位置を見失うも、フロア全体が見渡せるようになった。事前に頭に入れておいた建物の配置図で外に面している壁を察知する。そこには巨大なダクトが通っているところがあり、そこだけ他の外壁に比べ極めて薄い。ケイはその付近に、本来はトラップ用の学園都市製対建造物の爆発物を投げ込んだ。

 

「出口は作った。早く逃げろ!」

 

陵は即座に外に飛び出す。それに続いてケイも逃げようとするもフレンダの相手でなかなか手を離せない。

 

「絹旗!何やってんだ!さっさとそいつを追え!!」

 

視覚と聴覚が完全に回復していないものの、麦野の声に応えるようにすぐに壁に空いた出口を抜ける。ケイは背後から発砲するも窒素装甲(オフェンス・アーマー)によって塞がれてしまう。

 

「絹旗は行かせたし、後はこいつを殺すだけね」

 

麦野が獲物に対して獰猛な笑みを浮かべ、能力を発動しようとする。だがそれよりも早いタイミングでケイが麦野達に銃弾を浴びせようとするも、前方に円盤状のメルトダウナーを盾として出現させ、弾丸を防ぐ。

 

(あのおっさんにも1人付いちゃったしな。早くこっちもどうにかしないと・・・)

 

一番の問題は滝壺と麦野の連携だ。どちらかが欠ければ、倒すまでには至らなくとも逃げることは不可能ではない。自分の位置情報が補足されてる限り、こちらの生存率はほぼゼロだ。一番現実的なのは、見ている限り戦闘に加わっておらず、おそらく標的としては最も狙いやすい滝壺を行動不能にすることだろう。

 

「おいおい、まさかこの程度で終わるんじゃあねえだろうなあ!」

 

ケイの発砲が止んだ途端、麦野がメルトダウナーを浴びせてくる。間一髪で躱し、今度は自分のスタングレネードを投げつけた。

 

「また来たって訳よ、麦野!」

 

(そう何度も同じ手を食らうかよ!!)

 

3人とも耳と目を塞ぐも激しい音は全く聞こえてこない。ケイはただ投げつけただけで、ピンは抜いていなかった。

 

(フェイクかよ、クソッ!ナメた真似しやがって!!)

 

麦野が気付くももう遅い。ケイは銃を再装填し、標的に銃口を向ける。このわずかな時間で狙えるのはただ1人だけだ。

 

(頼むから当たってくれよ・・・)

 

ケイの放った2発の弾丸が、滝壺に襲い掛かった。

 

 

 

 

 

 

 

危なかった・・・陵は今施設から脱出して廃ビルの影に隠れている。絹旗に見つかって、とっさにスタングレネードを使用したのだ。それが功を奏してか、ケイにもチャンスが来てどうにか逃げ出すことが出来た。だがそう遠くまで逃げた訳じゃない。敵もまだ近くにいるはずだ・・・

 

陵はポケットから携帯を取り出して、土御門に電話をかけた。

 

「往見だ!今敵に追われてる!早く何とかしてくれ!!」

 

「落ち着け。今どういう状況だ?」

 

「今施設から脱出して廃ビルに隠れてるところだ。見つかってないがまだ追手は近くにいるはずだ」

 

「相手の外見、特徴は?」

 

「少女だよ、まだ子供だ。他の連中も全員若い女性だった」

 

待て、ひょっとしてそいつらは・・・

 

「何人いたんだ?」

 

「あいつ以外に確認できたのは3人だ。とにかく助けてくれ!ケイも危ないかもしれないんだ!」

 

「わかった。お前に付いてるのは1人だけだな?」

 

「ああ、そうだが・・・」

 

「他の連中を向かわせるから、それまで持ち堪えろ」

 

土御門はそう言い残し、電話を切った。しかしなぜだ?統括理事会やそれに関わる組織の動きにはしっかり目を届かせていたつもりだ。ケイについては殺したいほど気に入らないが、さすがに仕事には私情を挟むつもりはない。何も動きがないものだと思っていたので特に連絡はしなかったのだが・・・

 

「まさかアイテムだとはな・・・」

 

まだ断定できるほどの情報はないが、十中八九そうだろう。しかしアイテムほどの組織を動かせて尚且つ情報網に引っかからないとするなら・・・

 

「外部の連中のしわざか・・・こりゃ荒れるな」

 

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