元・遠月学園番外席次は料理を作らない=最悪の料理人=   作:九十九夜

2 / 5
感想ありがとうございます。
まさかこんなに早く感想をいただくとは思いもしませんでした。
設定やらはこれから後書きの方にちょくちょく書いていきたいと思います。




会いたくない

ガタン ゴトン

 

「あそこに座ってんの誰だ?」

 

「あんな人いたっけ?」

 

「おい誰か声かけろよ」

 

ーーーやっぱり目立ってる。

 

 

愛染(アイゼン) 出流(イズル) 15歳。

 

現在学生に混ざってバスで移動中。

 

内心では理事長とか堂島さんとか理事長とかに言いたいことで溢れかえっているが此処は我慢だ私。

あと少し、ホテルに着くまでの辛抱だ。

 

「ん?お前誰だ?」

 

一際大きくバスが揺れたことにより隣に座っていた男子生徒が起きたらしい。

 

「愛染出流。・・・君は?」

 

「俺?俺は幸平創真。よろしくな。愛染。」

 

ガシッと握手を交わす。

・・・?この手の感触は・・・

 

「創真。君は現場に入って長いのか?」

 

「?あ、ああそうだけど?」

 

「ふうん・・・。」

 

ガタンという音が響く。どうやら目的地に到着したらしい。

 

さて、私も行かなくてわね。

 

「じゃあ、私はこれで」

 

「ん?ああまたな」

 

そのままバスを降りる。

 

さっきの少年、創真の手は明らかに長期で現場に入っていたことのある手だった。

温室育ちではない、叩き上げ。

それに・・・いや、これは早計か。

 

 

「・・・大丈夫。君はきっとこんなところで退学になったりなんてしない。」

 

 

 

 

 

□ ◼️ □

 

 

 

 

 

「さて、と。・・・まずはフロント」

「おお、よく来てくれた。出流。」

 

「お久しぶりです。堂島さん、お変わりないようで。」

 

現れた筋骨隆々のスーツ姿の男・・・堂島銀と、白のカッターシャツに黒のパンツというラフな格好の女性、出流は握手を交わした。

 

「既に他のメンバーは到着済みだ。お前には別に部屋を取っている。案内しよう。」

 

部屋に着くまでの間に様々な話をした。

例えば今年の第10席は入学したての薙切の息女だとか、例の男に見つかりそうになって香り付きの食品サンプルを使って逃走したこととか・・・まあ、いろいろだ。

 

「しかしまあ、あの箱入り娘があの学園に、ね。まあ、当然と言えば当然か。」

 

あんな教育を施されていたのだ。あの男の執着もかなりのモノだろう。

・・・この世界で生きていくしかない小鳥へのせめてもの庇護のつもりか、薙切仙左衛門。

 

「薙切えりなが心配か?」

 

窓の外に停車された黒塗りの高級車を眺めている出流に堂島が声を掛ける。

 

「いや、全く。・・・奴がどう進もうがどう転ぼうが、私には成り得ないことは明白ですから。そんなものははなからしていませんよ。」

 

傍から見れば傲慢ともいえる物言いで目線を逸らして先を歩き出す出流。

 

「・・・そうか。」

 

もう一度彼女の見ていた車を見た堂島はそれだけぽつりと零すと彼女の元に戻った。

 

 

 

 

―――――――――

 

 

 

 

 

着替えてここで待っていろと言われて数分。

何だ此処、学生しかいないんだが。

 

「あ、愛染じゃねーか。おーい。」

 

向けられる視線をいなしつつホール内を見ていると見知った少年とその仲間らしき一団がこっちにやってくる。

 

「ん?ああ、創真か。さっきぶりだな。」

 

「ちょっ、ちょっと幸平!!いい加減にしなって!その人どう見ても上級生じゃん!!」

 

「はあ?じゃあなんで一年の合宿に上級生が来てんだよ」

 

「そ、それはほら、お目付け役とか・・・?」

 

「・・・ご想像にお任せしたいところだが、残念ながら同学年だよ。」

 

え゛!?ご、ごめんなさい。と素直に謝ってくるお団子の少女に特に気にすることでもないのでいいえと適当に返した。

・・・早生まれだから歳が一つ上であることは確かなんだけどね。

このまま素直に健やかに育ってほしいと思う。

・・・それだけ私のまわりのは屈折・・・いや、癖の強い人物が多いという事だろうか。

 

「ん?でも制服は?幸平みたいな編入生だったらそれこそ式典で紹介されていただろうし」

 

「いや、私は」『おはよう諸君。ステージに注目だ、これより合宿の概要を説明する。』

 

あれは・・・ローラン・シャペル先生。

・・・まだ学園で講師を続けていたのか。

何はともあれあの人にもあまり関わりたくない。・・・なるべく大人しくしておくか。

 

「友情とふれあいの宿泊研修ねえ・・・今年は何人ぐらいが正しくその名の通りの合宿を送れるのやら・・・。」

 

僕の頃はあの時の制度もあって今年より倍の人数が受けたようだった気がする・・・それだけ退学(クビ)になるやつも多かったような気もするが。・・・まあ、私にとってはもう思い出したくもない経験の一端であること故あまり覚えていないとだけ言っておこう。

 

 

『審査に関してだが、ゲスト講師を招いている。多忙の中この日のために集まってくれた・・・遠月学園の卒業生たちだ。』

 

さて、水原さんとドナートさんと後は誰が・・・くうdhfpをjふぃw9!?

 

「んー・・・前から9列目、眉の所に傷のある少年・・・。あ、悪い悪いその隣だ。そう、お前退学。帰っていいぜ。」

 

なんで!?なんでアイツら此処にいんの!?私聞いてないんだけど!!

おのれ堂島銀。騙したな!!あの二人は来ないって言ったじゃないか!!

※言ってません

ひい!?近付いてきた!は、早く逃げねば・・・。

そろりそろりと後ずさっていると新たな影が付近に近づいてくる。

今度はなんだ?

 

「ごめんなさい・・・怖い思いをさせました。ところで貴女可愛いですね。ああ・・・とても食べ応えありそうです。」

 

こっちにもなんかいた!!ヤバイのいた!!

ははは早くににに逃げっ

 

「じ、じゃあ!あそこにいる部外者はなんでつまみ出されないんですか!おかしいじゃないですかっ僕だけなんてそんなの不公平だッ」

 

そう言って退学を言い渡された生徒の指差した先には・・・私?

 

「ん?」「あら?」「おや。」

 

卒業生たちから集まる視線。囲まれる私。

に、逃げ場なくなったああああっ

 

「えっと「やだ!いーくん?やっぱりいーくんですよね!!会いたかった!!」

「oh!やはりイズルでしたか。息災なようで何より。素敵なレディになったね。」

「あ?誰だお前?」

 

 

若干1名以外気づくの早!?頼むから今すぐ壇上に戻ってほしい。

ほら、シャペル先生も睨んでるから!!早く戻れ!そして私のことを忘れろ!!今すぐにっ!

そんな願いが届いたのかシャペル先生に気付いたらしいドナートが二人に呼びかけ壇上に帰っていった。

 

『はぁ。愛染・・・一応お前もこっちに来い。』

 

呼ばれちまったあああ

・・・こんなことなら無理にでもあの時逃げておけばよかった。

 

「・・・はい。」

 

フラフラと壇上に向かう。

集まる視線に「あんな奴見たことない」みたいな会話。

ええ、そうでしょうとも。

・・・なんでこんなことになったのだろうか。

 

「では、自己紹介から頼もうか。」

 

ニコニコと笑いながら堂島さんがマイクを差し出してくる。

 

「・・・愛染出流。」

 

更にニコニコしながら圧力かけてくる堂島さん。

あの、ほんと止めてくんない?マジで。

 

「・・・一応89期卒業生です。・・・とは言っても歳は君たちと変わらないから、かしこまらなくていいですよ。」

 

やることやってはやくかえろう。うん。

 

 

ーーーーー

 

 

「しかし、よかったんですか?参加しなくて。」

 

「ん?ああ、本当はお前には内部に入り込んで監査を・・・と思っていたからな。それがダメになってしまった以上運営(裏方)に回ってもらう。もちろん審査員もしてもらうつもりではあるが運営(こっち)がメインだな。」

 

「堂島さんが送ってきたあの制服、ジョークだと思ってました。すみません。」

 

「詳細を伝えていなかった俺にも責任はある。気にするな。」

 

試験会場の監視カメラの集まるモニタールームにて、事も無げにそう言ってのける堂島。

先程醜態を晒してしまった自分とは打って変わって、不測の事態にも冷静に対処し笑っていられる堂島をみて自分もこうあらねばなと出流は苦笑を浮かべた。

流石にこの背丈で制服で潜入捜査などごめん被るが、どう頑張ったってコスプレにしか見えまい。

 

「逆に助かりました。あの面子と今会うのは・・・しんどいですから。」

 

特に一番面倒を見てくれたあの二人には本当に申し訳ない成長をしてしまった自覚はある。

いや、もっと言えば堂島さん含め私を構成するにあたって関わってきた全ての人に謝罪したいくらいだが。

 

「・・・案外。それは向こうにも当てはまるかもしれないぞ。」

 

「は?」

 

「いや。こちらの話だ。」

 

忘れてくれと言って堂島はその目をモニターに戻した。

きっとこれ以上は何を言っても教えてくれないだろうと諦めて出流もモニターに目を向ける、と―――。

 

『それ終わったら卵の黄身と白身を分けてくれ!』

 

『うん!』

 

「・・・あと15分無いっていうのに。」

 

【あ、あと20秒でそっちの鍋降ろしといて】

 

【は、はい!】

 

【イズルは手際がいいね。とても助かるよ!】

 

【そ、そんなことないです!】

 

幸平創真と・・・田所恵?の調理の光景にあまり思い出したくない過去がほんの少し甦った。

全然似ていないはずなのに・・・イラつくような、眩しいような不思議な感情が胸中に燻ぶっている。

 

「日向子の受け持ちが気になるか?」

 

「・・・いいえ。」

 

「そうか・・・ちなみに今調理している少年。彼は高等部からの編入生で名前は幸平創真。ペアの少女は田所恵。彼女は彼と出会うまで評価はほぼE。だが、彼と組んでからはその腕を着実に上げて行っている。目立たない実力者として名をつらねそうなくらい、な。」

 

全く、どっかの誰かさんと似ているよ。と力なく、されど何処か楽し気に堂島さんは笑う。

お前も気になるだろう?とでもいうかのような態度が、悪意はないのだとわかっていても鼻についてしまう。

なぜ、わざわざそんなことを私に言うのだろうか。

私にとってはもう終わったことで、過ぎ去ってしまったモノだ。

そんなものを穿り出そうとしないでほしい。

堂島さんの眼が見られずに視線を彷徨わせていると紅茶が空になっていることに気が付いた。

 

「・・・そう、です、か。ところで堂島さん。紅茶がもうないようですが、よろしければ私の分と一緒に淹れてきましょうか?」

 

「ああ、悪いな。」

 

隅に備え付けられた簡易キッチンに向かう前にじっと、なるべく画像を目に焼き付ける。

 

―――幸平創真に、田所恵。

 

 

【大丈夫!きっと君ならできるさ!俺が保証するよ!!】

 

 

【お前のせいだ!お前さえいなければ兄ちゃんは今頃っ・・・!!】

 

 

 

―――田所恵。お前は私の様には成るなよ。

 




愛染(アイゼン) 出流(イズル)

2月4日生まれ。
身長168cm
体重48kg
血液型O型

ドイツと日本のハーフ。
ブルーブラックの髪を横髪は肩につかないくらいに切っており、後ろ髪はうなじあたりで適当に括っている。
同年代の女子の中では長身の部類に入り、雰囲気も相俟って年上にみられることが多々ある。
父親の計らいで幼少時から学園に体験入学の態で度々訪れており、79、80期生とはこの時に知り合い、料理の道へ足を踏み入れる。
現在は学園に籍こそ置いているものの特例として卒業扱いになっている(本人曰く卒業の名を借りた追放)。
複数のストーカーに追われているらしく、あちこちを転々とする逃亡生活中。
自分が食べる分しか料理を作らない。どれだけ金を詰まれようが作らない。
ただし、衣食住(安全)を提供するのならちょっとした補助ぐらいなら受けないこともない・・・かもしれない。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。