元・遠月学園番外席次は料理を作らない=最悪の料理人=   作:九十九夜

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甘えるな。

「・・・というわけで、野試合(アンオフィシャル)の食戟を行うことになった。」

 

「はあ、随分大事になりましたね。」

 

「なんだ、やけにあっさりしているな。てっきりもっと何かしらアクションを起こすものかと思っていたが。」

 

興味なさげに返事を返す出流に堂島は首を傾げる。

 

3年前(・・・)の私だったらきっともっと違った反応を返したのかもしれませんが、いかんせんそれよりも早く外に出てしまったもので・・・これくらいの事態ならはあそうですかとしか・・・。」

 

取り敢えず食材の手配やらを終わらせるかと思い口を開こうとした出流に堂島は首を左右に振ることで制止した。

 

「今回は俺が取り仕切る。俺としてはお前にも出てもらった方がいいと思ったんだが・・・奴があまりにも激しく抗議したからなあ・・・申し訳ないが留守番を頼む。」

 

短く了解しました。と返事をした出流にあ、そうそう。と唐突に歩き出した堂島が立ち止まって口を開いた。

 

「スープを九人分作っておいてくれ。食材は用意しておいた。」

 

「・・・誰かに出すんですか?なら・・・」

 

「なに、ディナーで出すスープの試作だ。飲ませるのだって俺が厳選した料理人のみ。何もそこら辺のやつに試食させるわけじゃない・・・お前だって料理人だったら1,2回は保つといっていただろう?」

 

途端に鋭く睨みつけてくる出流の視線を物ともせず、飄々と堂島は言ってのける。

 

「嫌ですっ。第一、それはこれまでに1,2回でそうなった例がないというだけで確実にならない保証はっ!!」

 

「じゃあなんだ。またお前は逃げ続けるのか?」

 

強い拒絶を示した出流に今度は堂島が視線を厳しくさせて問いかけた。

「え。」と呟いて出流が目を見開き、堂島を凝視する。

動かない彼女をそのままに堂島は容赦なく言葉を続けた。

 

「一般人では耐えきれないと判断したお前は生徒に縋り教員に縋り上層部に縋った。それが駄目になったら料理人。国内が駄目なら海外。海外が無理なら信念すら放棄する。犠牲が増えるくらいなら自分は料理(大切なもの)すら放棄する。なるほど、傍から見ればそれは英断だし、心底残念だが素晴らしいとも言える。だが、俺からしたら、いいや、きっとお前に関わりのある人物なら十中八九こういうだろう。お前は、逃げているだけだ。」

 

「・・・・そ、れ・・は。」

 

ヒュッと出流は息を吸い込んだ。いつだって何も言わずに見守るだけだった堂島が、何故こんな時に限って容赦のない説教をしてくるのか。出流にはわからない。

 

―――なんで、どうして、今更。

 

そんな言葉がぐるぐると頭を飛び交い、じわじわと後ろめたい感情に侵食されていく彼女を余所に堂島は再び口を開く。

 

「いい加減目を逸らし続けるのはやめろ。苦しいのはわかる、助けてほしいという気持ちも痛いほど、な。だからいままで誰も何もお前に言わなかったし、言わせなかった。だがそれは決してお前を甘やかすためでも腐らせるためでもない。だから、敢えて言おう・・・甘えるな(もがけ)愛染出流。」

 

言いたいことを言い終えたのか、そのまま堂島は部屋を出て行く。

取り残された出流は緩慢な動作でズルズルと、その場にへたり込んだ。

 

―――何で今なんだ。なんで。なんでなんで何で・・・。

 

「そんなことを言うなら、なんであの時助けてくれなかったのよぉ・・・。」

 

喚くように言ったその言葉を皮切りに、顔を覆う事すらせずにボロボロと涙をこぼしていく。

まるで迷子の子どもの様に、恥も外聞もなく、彼女は泣き続けた。

 

 

 

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