大弾正忠帝国海軍  士官学校編   作:弾正忠信長

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読んでいただき、ありがとうございます。

今回は、秀吉と信長の出会いを中心に、書かせていただきました!


秀吉編 2話 出会い

訓練生達の話の中で、明日、海軍創設者の織田信長が、秀吉の地元にある、蜂須賀海軍士官学校へ視察に訪れると知った秀吉は、即、その視察の見学を教官達に願ったが

 

 

 

「だめだだめだ。 訓練生でもないただの大学生のお前が士官学校に入れるわけがないだろ! 海軍を崇拝するお前の気持ちはわかるがなぁ」

 

 

 

海軍士官学校は、一般人の立ち入りを厳しく制限している。

学校内には、機密保持厳守の資料や、暗号表などが無数に存在しているためだ。

 

弾正忠家は、それらを護るため、士官学校周辺は高い塀と鉄柵で囲ませ、厳重な警備体制を施させた。

 

通常の警備であれば、織田軍の兵が警備に付くが、帝国全土にある海軍士官学校の警備は、帝国陸軍兵が24時間警備に当たっている。

その警備体制はまさに、「鼠一匹たりとも通さぬ」が如くだ。

 

 

 

「そ、そうなんでやすか。」

 

 

 

秀吉の落胆は凄まじいものであった。

しかし、ある訓練生の言葉が、彼の人生をさらに変える事になる。

 

 

 

「秀吉! いいことを教えてやるよ。

信長様は今大学生だ。

年もお前と近いんだぞ? たしか、95歳だ」

 

 

 

この星の人間は、その寿命の長さから、我々地球人の教育とはかけ離れた教育体制をしている。

 

学校教育が始まるのは、年齢が10歳からだ。

小学生が受ける教育期間は、20年。

 

中学、高校、大学の教育期間は、一貫して30年間の教育をうける。

 

つまり、

(小学生)20年(中学)30年(高校)30年(大学)30年

 

大学院まで進み卒業するとなると、学校教育期間は、じつに120年間にも及ぶ。

 

当時の秀吉は、高校を卒業し大学へ入学したばかりの90歳。

一方の信長は95歳。

 

秀吉は運命を感じずにはいられなかっただろう。

 

 

 

「ということは、信長様はあと25年は学生でおられるんですね!? こうしちゃいられんでさぁ!!」

 

 

「お! 何か活動でもするのか?」

 

「兄貴ぃ! 男にゃぁやらねばならない事があるんでさぁ!!」

 

 

 

 

秀吉は木下食堂名物の、特製カツ丼を急いで食べ始めた。

訓練生達は、やれやれ という表情を浮かべながら、秀吉の今後の行動を予想し、応援することを決めた。

 

その和やかな雰囲気の中、訓練生お気に入りの木下食堂に、ある人物が訪れる。

 

 

 

 

「お、ここであるな? 蜂須賀海軍士官学校生お気に入りの食堂とは。」

 

「そうらしいな。おれたちも食ってくか?

ちょうど昼食の時刻だ。」

 

「うむ。舌の肥えた海軍訓練生達が気に入っているのであれば、間違いないであろうしな。」

 

 

 

 

海に面した、木々の生い茂る美しい通りにある、この木下食堂。

 

士官学校から歩いて5分の距離で、休日には訓練生達で大賑わいだ。

 

店内は、壁にある無人島の風景画が目を引く、とても落ち着いた雰囲気で、カウンター8席に、四人掛けテーブルが7席に、海を眺められる窓際のお座敷には、10人程が座れる。

 

本日も、昼時の時間帯もあってか、店内には訓練生達だけでなく、家族連れやカップルで賑わっていた。

 

飾らず、素朴な味わいが人気の店で、地元ではお袋の味として有名だ。

 

海軍訓練生達の訓練一年目は、休日であっても、地元への帰省が許されない。

 

そんな環境のためか、帝国軍出身の屈強な訓練生達であっても、帝国軍以上に厳しい海軍の訓練の中で、表面上ではわかりにくい隠れホームシック状態になる訓練生は少なくない。

 

そんな訓練生達を癒やしてくれるのが、士官学校勤務の一流の精神科医の治療ではなく、この木下食堂だ。

 

夫婦二人三脚で切り盛りしており、その穏やかな雰囲気と、心優しい人情味溢れる2人を前に、訓練生達は自然と愚痴をこぼす。

 

夫婦には、高校生になる娘もいる。

この娘も、学校が休みの日は店を手伝っている。

この娘がこれまた美しく、この娘を目当てにくる一般客も多い。

まさに、看板娘だ。

 

 

 

「あら? 秀吉さん!! いらしてたんですね! 私、また新メニューを作ってみたんです! 味見をお願いしてもいいですか?」

 

 

 

秀吉を見つけた娘は、満面の笑みを浮かべ、秀吉に自分の創作した料理の味見を願った。

 

秀吉が美味すぎると評価したメニューは、忽ちメニューとして提供され、人気メニューへと変貌を遂げる。

 

 

 

「あ、ねね殿! すみませぬ。今日はこの後にやらねばならぬ事が出来てしまったんでさぁ。また来週にきますんで、その時に食べさせて下さいでさぁ。」

 

 

 

 

そう、彼女の名は木下ねね。

将来、秀吉と共に海軍訓練生となる、

「元帥の弟子」になるまえの彼女だ。

 

 

 

ねねは、あれ? いつもと違うな? という表情を浮かべながら。

 

 

 

 

「やらなきゃならないこと? 何ですかそれは?。」

 

 

「はい! オイラは弾正忠大学へ編入するでさぁ!!。」

 

 

 

訓練生達は皆、ヤッパリなという表情を浮かべていた。

 

 

 

 

「え、だ、弾正忠大学!? あの帝国を代表する超名門大学にですか!? 

帝国で唯一、お金の掛かる大学ですし、お金持ちばかりしかいない大学です! そんなとこに行っても、次元の違う頭脳や考えを持った同級生達には秀吉さん絶対付いていけないでしょうし、なにより! 弾正忠大学への中途編入なんて聞いたことがありません!!」

 

 

 

ねねは、自分の意見は濁す事なく伝える女で、今回の機関銃トークがいい証拠になったであろう。

 

ねねの言う通り、秀吉の通っている地元の蜂須賀大学と、弾正忠大学(以後、弾大と名称)との偏差値はかなりの差があった。

 

毎年行われる弾大の入試には、帝国全土の名門校から、成績の優秀な学生達が怒涛の如く押し寄せて来る。

その受験生たちの平均的な偏差値は、驚異の97だ。

 

帝国に存在する全ての学校は、授業料が一切掛からない。

 

帝国建国当時は、弾大においても授業料はなかったが、弾大は弾正忠家が直接運営をしている大学であり、弾正忠大学出身というだけで、どこの公共機関でも、就職の際に書類審査の段階で採用される。

 

しかし、優秀な受験生達が弾大を受ける最もたる理由は、織田軍への入隊が優先されることにある。

 

 

弾大での教育カリキュラムは、高級官吏である帝国軍人に実施される内容を前提としている。

 

他国に、外政官として派遣されることもある、彼ら帝国軍人。

政務以外にも、他国での災害発生時(自国は織田軍が災害対応をする。)には、救助支援隊として派遣されることもある。

これらも、帝国軍人達の立派な仕事だ。

 

そのため、彼らには高度な語学力や、知識が必要とされる。 

 

 

その任務をこなすため、織田軍入隊直後から、大弾正忠帝国軍人として恥ずかしくない教育が施される。

 

その教育は、礼儀作法からはじまり、各国の母国語のマスター、あらゆる格闘術、武器の整備や射撃技術、馬術、社交ダンスなどと、どの国に派遣されても、帝国の顔として恥を掻くことのない教育が実施される。

ちなみに、今上げた科目は、全体からすればほんの一部にすぎない。

 

 

弾大では、こうした教育が受けられるので、織田軍への優先的な入隊や、昇進、帝国軍への推薦などを非常に受けやすい。

 

 

もし、織田軍への入隊がかなわなくても、弾大の卒業生には優れた語学力や知識が備わっている。

 

それを生かして、国会の事務職や書記、各大臣の秘書、各国の帝国大使館の職員など、国務関連の仕事に従事する職員の殆どは、弾大出身である。

 

 

そんな大学が人気でないはずもなく、毎年の受験者数は、定員数を遥かに超える。

 

その、あまりの人気から、対策として高額の授業料を取ることにしたのだ。

 

しかし、授業料発生という対策を実施したにも関わらず、若干の受験者数減少にとどまり、大した成果はなかった。

 

経営陣である弾正忠家は、大学の規模を拡大せざるをえなくなり、現在の弾大の数は、帝国全土に6校建てられ、受験者の拡散をはかった。

無論、この6校の授業料、教育カリキュラムは同等である。

 

 

 

 

「弾大はエリート中のエリート、この帝国を将来支える人達を養成する大学です!!  そんな超名門大学に行ってなにをなされるのですか!?」

 

 

 

 

秀吉は地方にある弾大ではなく、帝都「尾張」の弾大へ進むと言っているのだ。

帝都「尾張」は、秀吉やねね達の地元である蜂須賀から、かなり遠方にある。

 

秀吉は、ねねの、顔を真っ赤にしてまで反対する様に驚きを隠せないでいた。

なぜ、ここまで反対されるのか?。

今の秀吉の頭には、海軍への入隊の事しか無く、ねねの、異常なまでの反対に、戸惑いと憤りを感じつつあった。

 

そこへ

 

 

 

「娘、未来ある若者の夢を邪魔するのは、関心せぬな。」

 

 

 

その言葉を発したのは、青色の弾正忠大学特有の色合いをした制服に身を包み、頭には、金色の織田木瓜紋が輝く大学制帽を被った、海軍元帥織田信長が、晴れ渡った空から降り注ぐ光を背に、その、凛々しき姿を店の前に現していた。

 

 

 

「!? げ、元帥閣下!? 」

 

 

 

 

海軍訓練生達は、突如目の前に現れた信長に驚愕。

全員、すっ転ぶ勢いで立ち上がると、肘を折り曲げた海軍式の敬礼を送った。

 

信長はこれに返礼し、訓練生達を座らせた。

 

 

 

「すまぬの。視察は明日の予定であったが、余は今日から大学が休みでな。

 

それを利用し、蜂須賀鎮守府や、士官学校近辺を観て周っておったのだ。

 

その折り、たまたまこの食堂をみつけてな。

ここの噂を兼ねてから聞いていて、とても興味があったのだ。

だから、昼食を兼ねて訪ねてみることにしたのだ。」

 

 

 

信長は言い終えると、「よろしいかな?」と言い、ピカピカの革靴をコツコツと鳴らしながら店内に入ってきた。

 

店のご主人は、慌てた様子で席へ案内し、

昼食に訪れていた家族連れやカップル達は、驚きのあまり、皆一様に口を開け箸が止まってしまっていた。

 

信長は、美しい海が一望できるお座敷へ通され、

靴を脱ぎ、用意された座布団に正座する。

 

 

信長は背筋をピンと伸ばして正座をしており、その、気品に満ち溢れる姿は、忽ち周りの人々の視線を集め、魅了する。

 

ねねは、慌ててお茶を用意し、信長へ運んでいった。

 

 

信長は「すまぬな。」と礼を述べ、お茶を一口飲む。

 

 

 

 

「して、娘。 先程そこの学生が我が大学に編入するのを反対していたが、それは何故なのだ?」

 

 

 

 

ねねは、目の前に現れた王族の信長を前に、完全に上がってしまっていた。

写真や、テレビでしか見た事のない織田信長を前にしては、さすがのねねも、何時もの強気な言葉が出て来ないようだ。

 

秀吉はというと、同じく目の前に現れた憧れの信長を前にして、こちらは驚きのあまり、よだれをたらしてしまうほど口が開き、放心状態となってしまっていた。

 

 

 

「あ、あのぉ、確かに、は、はは反対ではありますすす!!! 」

 

 

 

ねねは動揺を抑えられず、言葉を噛みまくってしまう。

しかし、回らない嗜好のなか、必死で秀吉への思いだけは伝えようと努力するが。

 

 

 

「うむ、して、その理由はなんなのだ?」

 

 

 

信長は、心底不思議そうな顔で尋ねていた。

 

 

 

「ですから、そのぉ」

 

 

 

ねねは顔を赤くし、段々小さくなっていった。

 

信長は、秀吉を横目にするねねを見、何かを察したのか、

 

 

 

 

「まあ、よいか。 その男の前では言えぬ事のようであるようだしな。」

 

 

 

 

 

信長はねねに微笑み掛け、「娘、名はなんと申す?」と訪ねた。

 

信長の不意の微笑みに動揺が収まったのか、ねねは。

 

 

 

 

「え? あ! はい!! 私は、木下ねね ともうします!」

 

 

 

と、いつもの微笑みを浮かべながら名乗った。

 

 

 

 

「木下ねねか、気に入ったぞ。

お主の煎れたこの茶、じつに見事だ。

ひさしぶりに美味い茶を飲んだ。 

ご主人、素晴らしい娘であるな。」

 

 

「ははーー!! 恐れ多いことでございます。殿下。」

 

 

ねねの父親であるご主人は、心ここにあらずという表現が相応しい緊張ぶりで、その様子が言葉使いからも窺える。

普段は物腰の柔らかい和やかな口調である。

 

 

 

 

「ご主人、オススメを2食頼めるかな?」

 

「はは! 承りました!! 直ぐ、お作りいたしますので、お待ち下され。」

 

 

「うむ、よろしく頼む。」

 

 

 

注文を受けたご主人は、即座に厨房へ駆けていき、腕を振るう。

 

一方、しばらく放心状態だった秀吉は、

やっと意識を取り戻した。

 

 

 

 

「はっ!! ここ! ここれは、の、の信長様!! ほほ、本日はオ、お日柄もよろしくぅ!!」

 

 

 

 

秀吉も、ねね同様に言葉を噛みまくる。

しかし、こちらはかなりの重傷だ。

 

訓練生や他の家族連れ達は、秀吉のあまりの動揺ぶりを見て緊張がほぐれたのか、張りつめていた空気は霧散し、少しの余裕と笑顔がチラつき始めていた。

 

 

 

「おい、お主。何を言っているのかわからぬぞ。」

 

 

「ひ、ひひひひ、ひ秀吉でさぁ!! オイラの名前は秀吉というんでざあ!!」

 

 

 

 

当の信長も、秀吉の様子を見て笑っていた。

秀吉は、緊張しながらも、信長に名前だけでも覚えてもらおうと思ったのか、仕切りに名前を連呼しだした。

しかし、気持ちの整理が出来ていないためか、しっかりと噛む。

 

 

 

「うむ、そうかそうか。 お主は秀吉というのだな。

面白き男よのぅ。」

 

 

 

 

信長は、口角が上がる程の笑顔をみせていた。

信長も、秀吉の人柄や雰囲気に和まされているようだ。

 

 

 

 

「秀吉とやら、聞けば弾正忠大学に編入したいそうであるな? お主は何を求め、我が大学への編入を望むのだ?」

 

 

 

 

信長からの質問を受けた秀吉は、憧れの信長と会話が出来るだけでも満足であったが、目の前にいるのは、自分が志すと決めた帝国海軍の創設者。

 

不意に冷静さを取り戻した秀吉は、自分の中に、野心にも似た、強く、どす黒い欲が芽生え始めている事に気付きはじめた。

 

 

 

 

「信長様! それは決まっているでさぁ。 オイラは、帝国海軍に入りたいのでさあ!!

 

海軍への校外学習で、オイラは登舷礼をみたのでさあ。

その瞬間から、オイラの世界は海軍の事でいっぱいになってしまってどうしようもないのでさぁ!!。

 

信長様! この秀吉、何でもしますからどうか! オイラを弾正忠大学へ入れてほしいでさぁ!!。」

 

 

 

 

秀吉は躊躇することなく、信長へ直接弾大へ編入させてくれるよう、嘆願した。

その凄まじい気迫と熱意は、常軌を遥かに逸したもので、そばにいたねねや、訓練生達を驚かせた。

 

その場にいた誰もが、秀吉が抱く海軍兵になることへの熱望を、本当の意味で知ることとなった。

 

 

 

 

「うむ、その熱意と気迫、疑いようのないモノであるな。

秀吉、お主今、何でもすると申したな?」

 

 

 

信長は、もう一度、秀吉の覚悟を確かめるかのように問いた。

秀吉は、間髪を入れずに。

 

 

 

「もちろんでさぁ!!!!」

 

 

 

 

信長は張り裂けんばかりに声を荒げた秀吉の中に、巨大な大木のように太い芯と、決して折れることのない決意を確かめた。

 

 

 

 

「うむ、気に入った。恒興、新たな弟子を見つけたぞ。 名は秀吉だ。」

 

 

 

信長は、意を決したように、学生制服の胸ポケットからメモ帳サイズのリストを取り出すと、そこの名簿欄に秀吉の名前を書き足した。

 

そして信長は、誰かの名前を呼び出した。

その当人は、乗ってきた車を駐車場に止めてやって来、信長の呼び掛け声とほぼ同時に店内入ってきた。

海軍訓練生達は、先程同様、一斉に立ち上がり、恒興へ敬礼を送った。

 

 

店内に入って来た彼は、信長と同様の弾正忠大学の制服に身を包んでおり、

名を池田恒興。

 

信長と共に、帝国の代表として天界留学へ旅立った3人の内の1人だ。

恒興は、海軍創設者の信長を補佐する立場にある。

 

 

 

「ふう、やっと駐車場に停められたぞ。

さすがの人気食堂だな。

 

で? そいつが新しい弟子か。

確かに、凄まじい覚悟を感じるな。

 

秀吉って言ったか? 俺は池田恒興だ。

よろしくな。」

 

 

「これは池田様!! お目に掛かれて光栄でさぁ!! 

この秀吉、今日は人生で最高に幸せな日でありますでさぁ!!。」

 

 

 

「お? 俺の事知ってんのかい。こりゃ嬉しいねぇ。」

 

 

 

「とんでもないでさあ! この帝国で恒興様の事を知らぬほうがおかしいでさぁ!」

 

 

 

店内は、またの超大物の登場に、混乱寸前であった。

池田恒興といえば、帝国陸軍鉄砲隊の鉄砲奉行を任されている、池田家の嫡男であるからだ。

弾正忠帝国陸軍が、世界最強を誇っているのは、この、鉄砲奉行である池田家の射撃技術があってこそだ。

 

 

 

 

「そうなのか。俺も有名になったもんだぜ。

俺はてっきり信長と一緒に居ることが多いもんだから、女共の黄色い声援は信長へのものとばかり思ってたぜ。」

 

 

 

「いや、それに関しては、余への声援で正解ではないか?」

 

 

 

信長は悪戯な顔を浮かべながら言った。

 

 

 

 

「おい信長、少しは肯定してくれよぉ。

はあぁ、色男と一緒にいると、辛ぇもんだぜぇ。」

 

 

 

 

そんな2人の、仲むつまじい? 会話をよそに、周りの人達は苦笑いをするしかなかった。

 

 

 

 

「ふ、すまんの恒興。

 

さて秀吉、この手帳が何だかわかるか?」

 

 

 

 

信長は、左手に持っている本革のシステム手帳を、秀吉に見せた。

 

その手帳を開けると、中に名簿がある。

手帳は本革で出来ており、正面には織田木瓜が描かれている。

 

 

 

「へい、皆目見当もつかねぇでさあ?」

 

 

 

「で、あるか。これはな、余が責任を持って面倒を見ると決めた者達を記す名簿だ。

 

今、その名簿にお主の名前を書いたのだ。

今からお主は、この信長の弟子だ。」

 

 

 

 

未成年の学生の中には、現役の軍人以上に、優れた能力や実力を持った、ダイヤの原石とも言うべき人材が希に存在する。

 

信長は、そういった人材を、未来の海軍士官として確保するため、織田軍訓練学校の視察や、他大学の見学などを、大学の休みを活用しながら頻繁に行っている。

 

こうして選ばれた者達は、

後に、「元帥の弟子達」と呼ばれるようになり、この者達の中から、「弾正忠五大将」が生まれる事になるが、それはまだまだ先の話である。

 

 

 

「ほ、ホントでありやすか!? 信長様!!  オイラを海軍に入れて下さるんでありやすね!? ウオオオオオ!!! 身に余る光栄でさぁ!!!」

 

 

 

秀吉は、信長の弟子に加われた喜びを噛み締め、大いに喜んだ。

しかし、信長から、ある忠告を受ける。

 

 

 

 

「うむ、お主の喜び、大いに結構だ。

しかし、お主がこれから歩むのは、険しい棘道。

しかも、並大抵のモノではない。

未来の海軍士官たる器を鍛えるため、余は鬼にならねばならぬ。

 

秀吉、お主の覚悟は充分、余に伝わっておる。

今更承諾は取らん。

心せよ、秀吉。」

 

 

「はいでさぁ!!!! 粉骨砕身、オイラの命は信長様の物でさぁ!!! 」

 

 

 

 

以上が、信長と秀吉との初めての出会いである。

 

信長に選ばれた弟子達は、帝都「尾張」の弾大へ、特待生として通学する事となり、一般入試で入学した学生達とは、比較にならぬ程の過酷な教育環境に置かれることになる。

 

 

秀吉の話が纏まったのを見計らったかのように、座敷に正座する信長と恒興の下に食事が運ばれてきた。

 

メニューは、木下食堂人気No.1の、若竜の唐揚げ定食だ。

 

 

 

「殿下! 大変長らくお待たせし、申し訳御座いませぬ。こちらが、当店人気の定食でございます。お口に合うかどうか。」

 

 

 

ご主人は、自慢の料理を作り上げ、提供した。

その心情は、さぞ不安にかられているだろう。

 

 

 

「すまぬの。

うむ、これは美味そうであるな。

こんがりキツネ色に揚げられた唐揚げが、食欲をそそりよる。

 

では、頂こう。」

 

 

 

信長と恒興は、目の前に出された定食に舌鼓をうち、その美味さからあっという間に平らげてしまった。

 

 

 

「ふう、いや~うまかったぜ、若竜はこういった調理法もあんだな?。

ステーキにして食うもんだと思ってたぜ。」

 

 

 

 

若竜とは、天界との交易の中でもたらされた、食用の飛竜の事である。

上質な肉質と、スッキリとした脂が乗っており、その味は鶏とは比べものにならない。

繁殖力もかなりのもので、容易に飼育出来ることから、天界からもたらされると、忽ち帝国全土へと普及していった。

 

 

 

 

「ご主人、見事な料理を馳走になった。

我が海軍の訓練学校生が足繁く通うのも、納得の味わいであった。

それでは、時間もある、勘定を頼む。」

 

 

 

 

信長は、分厚い財布を内ポケットから取り出すと、現金を取り出し、勘定札へ挟んだ。

 

 

秀吉は、信長達の食事が終えると同時に、今後についての話を持ちかけた。

 

 

 

「信長様! オイラは、これから何をすればいいんでさあ?。 

なんなりと、お申し付けくだされ!。」

 

 

 

「うむ、先ずは、余達に付いて参れ。

この後は暇であるか? 秀吉。」

 

 

「はいでさぁ!! 御命令とあらば、例え火の中であろうと付いて行くでさぁ!! 」

 

 

「そうか。それは頼もしい限りだの。」

 

 

 

信長は、秀吉の浮かれぶりが可笑しく、店内で飛び跳ねて喜ぶ秀吉を見て笑顔を見せる。

信長達は、勘定を終え、店を出る支度を始めた。

 

 

そんな中、1人浮かない顔をしている娘がいた。

 

その娘は、ねねだ。

 

彼女は、両手を前で掴み、顔は俯かせていて、その様子は、暴走しそうな感情を必死で抑えているかのようだ。

 

 

 

「よし! 信長、秀吉、そろそろ出ようか。

悪いが、車まで少し歩くが、勘弁してくれよ?」

 

 

「是非もなかろう、店は混んでいたしな。

気にするでない。

ご主人、うまかったぞ。また、来る。」

 

 

「親父っさん!! 今日もうまかったでさぁ!! 

またくるでさぁ!!」

 

 

 

「どうもありがとうございました。またのお越しを心よりお待ちしております。」

 

 

 

ご主人は、柔和な笑顔を見せて、信長達を見送った。

その刹那。

 

 

 

「ま、待って下さい!!!! 」

 

 

 

店の周囲に、ねねの、悲痛にも似た叫び声が響きわたり、駐車場へ向かい始めた3人を引き留めた。

彼女のその目には、薄く輝くものがあった。

 

 

 

「わ、私も!! 私も連れて行って下さい!!! 秀吉さんと会えなくなるのなんて! 辛すぎます!!! 」

 

 

「!? ね、ねね殿? 」

 

 

ねねの、突然の呼び止めに、信長達3人は足を止め、その場に立ち尽くす。

 

秀吉は、ねねの突然の呼び止めに驚いていた。

当の本人は、自分がとんでもない事を口走った事に気がついたのか、はっ! と顔を上げると、

 

 

「あ、じゃなくて!! 私も海軍への配属が夢なんです!! どうか! 私も信長様の弟子にしてください!! お願いです!! 」

 

 

 

ねねは、顔を真っ赤にしながら、本心ではない海軍配属への動機を適当にあつらえ、嗚咽のように述べた。

 

あらかた言い終えると、

腹に手をあて、90度まで上半身を倒した辞儀をしながら、お願いしますと、さらに頭を下げた。

 

ねねの唇は、血が出るほどまでに強く噛み締められていた。

 

ねねは、信長の言葉を、同じ姿勢のまま待ち続けた。

 

 

しばらくの沈黙の後に、信長が言葉を掛ける。

 

 

「よかろう。 ねねよ、お主を弟子に貰おう。 これから宜しく頼む。」

 

 

信長は、ねねの申し出を待ちかねていたかのように、ねねの弟子入りを快諾した。

 

 

「え、えぇぇ!? ほ、本当によろしいのですか?! 」

 

 

 

 

「うむ。

実はのう、余はお主を初めて見た時に、未知数の才を感じていた。

 

もし、お主が余の下でその才を振るう者で在るならば、何かしらの事をキッカケに、余の弟子入りを願うだろうと信じていた。

 

余は、天にそれを委ねたのだ。

 

その結果、お主は余へ弟子入りを願った。

 

まさか、秀吉が引き金になるとは思わなんだがな。」

 

 

 

 

信長は、穏やかな表情を浮かべながら2人をからかう。

 

信長は、優れた先見の明の持ち主で、ねねと初めて会った瞬間に、未来の海軍士官の姿を観ていたのだ。

 

 

 

「あ、あああ! ありがとうございます!!

私に、信長様の期待に添えるようなモノがあるどうかはわかりませんが、精一杯精進いたします!! 」

 

 

 

 

ねねは、弟子入りできた事を確認し礼を述べると、3人の後を付いていこうとした。

 

しかし、信長はこれを制止し、ねねの正式な弟子入りは、高校を卒業した後での話だということを告げた。

 

 

 

 

「え!? そ、それでは私は秀吉さんに会え!!

 

あ! 差をつけられて置いてかれてしまいます!! そんなの、耐えられません!!」

 

 

 

「うむ、ねねよ、すまぬがそれだけは譲れんのだ。その代わり、このバッチを授ける。」

 

 

信長は、先程の手帳から、コイン程の大きさのバッチを取り出した。

 

ねねは、これを受け取った。

 

 

 

「これはな、余の弟子達全員に授けているバッチでな。

 

余の元帥府(信長の寝泊まりしている宿舎)への自由な立ち入りを可能とするものだ。

 

秀吉は、これから余とその他の弟子達と共に生活をし、通学をすることになる。

 

それ故に、この蜂須賀には当分帰っては来れぬ。

 

で、あるから、お主が秀吉に会いにくるが良い。

 

そのバッチのおかけで、お主は何時でも、会いたい時に秀吉と会えるのだ。

 

気に病むでないぞ? 」

 

 

 

「は、はい! 毎日伺わせて頂きます!!」

 

 

 

信長は、秀吉に聞こえぬ声量で、以上の事をねねに伝えた。

 

ねねの表情には、喜びの感情で溢れているのがわかるほど、幸福顔をしていた。

 

 

 

バッチを渡した信長を先頭に、恒興と秀吉を合わせた3人は、駐車場へ向かった。

 

 

見送りを終えた訓練生達と、木下食堂のねねたちは、次第に散り始めた。

 

 

ねねは、信長から頂戴したバッチを手のひらににぎりしめ、目の前に広がる美しい海顔負けの満面の笑みを浮かべながら、店内へ入っていった。

 

 

次回に続きます。

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