大弾正忠帝国海軍  士官学校編   作:弾正忠信長

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前回は、秀吉編の主人公である、秀吉と信長の出会いを中心に、書かせていただきました。

今回は、現在に話を戻し、秀吉が尾張の海軍士官学校へ入隊した日を中心書いていきます。


秀吉編 海軍士官学校 入隊式

今から40年前の、信長と秀吉の出会いから話を戻し、秀吉の海軍士官学校配属初日と、「海軍特別年少兵制度」について話そう。

 

 

海軍への入隊試験は、本来、推薦を受けた現役の帝国軍人のみが、受験を許可されている。

 

信長は、自ら選び抜いた「元帥の弟子」達を、「織田軍→帝国軍→帝国海軍」という過程を経ずに海軍に入隊させる方法として、既存の入隊制度に加え、「海軍特別年少兵制度」なるものを、新たに成立させた。

 

 

これは、弾正忠大学の特待生の過程を終了した卒業生に適用され、試験に合格すれば、大学を卒業して、そのまま海軍士官学校へ入隊となる制度だ。

 

前にも記述したが、弾正忠大学の教育カリキュラムは、帝国軍人に対して行われる教育を前提としており、一般入試で弾大へ入学した学生も、卒業する頃には、帝国軍人と差ほど変わらない「知識」が身に付いている。

 

信長に見出され、特待生として弾大へ入学した「元帥の弟子」達には、帝国軍人と全く同じ内容の教育と、厳しい訓練が実施される。

 

それゆえに、彼ら特待生が大学を卒業する頃には、「知識」も「肉体面」も「精神面」においても、帝国軍人そのものの状態といえる。

 

 

秀吉は、この過酷な大学生活を送り、見事、特待生として弾大を卒業。

 

 

超難関の「海軍特別年少兵入隊試験」を受験し、見事合格。

 

秀吉は、海軍士官候補生として、

「尾張海軍士官学校」へ配属となった。

 

秀吉が耐え抜いた、地獄のような大学生活は、後程紹介しよう。

 

 

 

 

海軍士官学校へ配属になった者達が受ける最初の訓練は、身体測定から始まる。

 

訓練学校配属初日の午前は、

身長、体重、肺活量、体内貯蔵心力量、視力検査、聴力検査などを受け、昼休憩を挟んだ後に、体力検査を受ける。

 

この体力検査がまたキツいもので、多くの新人を苦しめるものとなる。

 

その内容は全体の体操から始まり、短距離走、長距離走、走り幅跳び、腕立て伏せ、腹筋、背筋力の測定、障害物を利用したコースのクリア時間の記録測定などが含まれる。

 

定められた基準点に達しないと、基準点に達するまで延々と測定されるのもあって、訓練生活における最初の試練と言えよう。

 

以上が、初日の訓練日程だ。

 

 

無事に検査測定を終えた訓練生達には、衣嚢(いのう)と呼ばれる、海軍勤務で使用する全ての衣類が入った布製の袋が支給される。

 

中には、透明なビニールに包まれた第一、二種軍装の、夏服と冬服がそれぞれ二着ずつ、訓練服として、伸縮性、通気性の高い長袖シャツ長ズボン、運動用として半袖シャツ短パンがそれぞれ三着ずつ、シャツ(夏冬用)が四着、作業用つなぎ二着、腹巻き一、靴下八、毛布大小各一、軍靴二足、制帽一、戦闘帽子一である。

 

これらが収まった衣嚢袋は、かなり頑強に作られており、ナイフや拳銃弾程度ならば、容易く防いでしまう。

 

これだけの官品(国から支給される装備品)を納めるだけあり、衣嚢は厳重に施錠する事が可能で、盗難防止に大いに役立っている。そのため、この頑強さが求められるのは必然的ではある。

 

下着類や歯ブラシなどは、私物から使用することになっており、唯一、紛失しても始末書を書かないですむものだ。

官品の紛失をした場合は、始末書と共に鉄拳制裁が待っている。

 

海軍での生活の上で、この衣嚢には、与えられた官品(一種、二種軍装は個人ロッカーで管理)と、筆記具、私物等が納められる。

つまり、自分の財産の殆どが、常時この衣嚢に入っていることになる。

 

 

 

ーーーーー入隊式典ーーーーーーー    

 

 

 

 

測定が終わり、日が落ち始めた頃。

 

無事測定を終えた新入訓練生達は、訓練場の一角に設けられた温泉施設で汗を流し、各々、訓練学校の玄関前に設けられたテントに集合し、自分の名前が書かれた衣嚢を受け取る。

 

衣嚢を受け取った訓練生達は、下駄箱がある昇降口を見て右側にある階段を、衣嚢袋を肩に担いで駆け足で上がり、三階の更衣室に向かう。

更衣室では、すでに待機している教官の指導によって、私服を全て脱ぎ捨て、支給された第一種軍装の着装を命ぜられる。

 

さすが、選び抜かれた帝国軍人の集まりなだけあって、着装を素早く完了したその姿は立派なものだ。

 

立ち振る舞いだけは、一人前の海軍士官そのものだ。

 

制服を受け取った秀吉は、真っ白な第二種軍装をその手に取った時の感動は、想像を絶するものだったろう。

40年前に見た登舷礼で、あの場で海軍士官達が着ていた軍装と同じ物が目の前にあるのだから。

しかし、着装を命ぜられたのは一種軍装。

二種軍装は、しばらくはお預けだ。

 

 

 

「うおおお!! オイラは遂にやったぞぉーー!! やっと海軍の一員になったでさぁ!!。」

 

 

 

秀吉は、体育館へ移動が始まる少しの休憩の間にトイレへと立ち、トイレの窓を開け、胸一杯にさけんだ。

薄闇が辺りを支配し始めた周辺に、秀吉の声が響きわたり、注目を集める。

秀吉はその様子に気づいたのか、我に帰り頬を赤らめる。

 

 

 

「おっと、いかんいかん。更衣室に戻るでさあ。」

 

 

「相変わらず騒がしいのう、秀吉。」

 

 

「!? の、信長様!? あ、いや、これはそのう。」

 

 

 

秀吉がトイレから出ようとしたその時、海軍士官学校入隊式の挨拶に訪れていた信長が、秀吉の声を聞きつけたのか、トイレの出口に姿を現していた。

秀吉は驚きのあまり、直立不動の姿勢で固まっていた。

 

 

 

「お主が待ち望んだ軍装、着心地はどうであるか? さぞ、胸が熱くなっているであろう。先程の雄叫びに、それが見られる。」

 

 

 

 

信長は、自分の弟子の晴れ姿を見、喜びに笑顔を見せながら言葉を掛けていた。

嬉しいのは、秀吉だけではないのだ。

 

 

 

「へい!! それはもう、感動に打ちひしがれているでさぁ!! 全て、信長様のおかけでさぁ!!。」

 

 

「うむ、余もお主の軍装姿を見て感動しておる。お主は誰よりも、修行に真摯に励んでいたからのう。

余は、お主のその姿をよく見ておったぞ。」

 

 

「は、はいでさあぁ! これからもよろしくお願いでさぁ。」

 

 

 

 

秀吉は声を震わせながら、信長へ感謝の言葉を送った。

過去の修行を思い出し、辛かった日々を乗り越えた秀吉には、信長の労いの言葉は心に深く染み渡ったことだろう。

 

そんな二人を余所に、秀吉を呼ぶ声が廊下に響いた。

 

 

 

 

「秀吉ー!! どこにいるんだぁ!! 休憩は終わりだぞお!! 」

 

 

「うむ? あの声は勝家か、久しぶりに顔を見るとしよう。」

 

 

 

秀吉が利用したトイレは、階段の直ぐ脇にあるため、よく、階段から上がってきた人と接触しやすい状況にある。

 

教官は、秀吉がトイレにいると聞きつけ、駆けてきた。

 

 

 

「秀吉、ちと勝家に挨拶をしてくる。

お主もお呼びのようであるから、共に参ろう。」

 

「はいでさぁ! 」

 

 

 

二人はトイレから出て、下階の集合場所へ向かった。

すると。

 

 

 

「秀吉ーー!!! ん?」

 

 

「うむ?」

 

 

 

先頭を歩いていた信長と、下階から上がって来た勝家が、周囲に聞こえる程の、

ゴン!! という鈍い音を立てて、互いの頭を打ちつけた。

この接触で、勝家は後方に尻餅をついた。

 

 

「うぐっ! 痛っぅ!! 誰だ!! こんなぶつかりやすい所を、あ、る、??? 

!? の、信長様!? こ、ここ、これは大変な粗相を!! 申し訳こざいませぬ!! 

お怪我はございませんか!?」

 

 

 

 

 

勝家は、自分がぶつかった相手が信長と理解すると、尻餅をついた態勢から即座に、痛む額を、下階まで突き破る勢いで床に打ちつけ、信長へ粗相の御免を願う。

 

 

 

 

「うむ、心配するな、大丈夫だ。

お主は大丈夫か? 勝家よ。」

 

 

 

 

一方の信長は、身体の大きい勝家と接触したにも関わらず、その場から微塵も動いていなかった。

 

秀吉から見ると、まるで信長が勝家を弾き飛ばしたかのようであった。

 

 

 

「いえ、とんでもない! 私ごときの頭などなんともないです。」

 

 

 

とは言うものの、勝家の額は赤く染まっており、見た目かなり痛そうだ。

 

 

 

「そうか? かなり痛そうに見受けられるがのぅ。

ひとまず、余は大したことない。安心せよ。」

 

 

「ははー!! 寛大なるご処置、痛み入ります。(まるで、巨岩に体当たりしたかのようだ。さすが、弾正忠の肉体。)」

 

 

「して、勝家。

この秀吉を探しておったのであろう? すまぬな、余が引き止めていたのだ。

用はもうすんだゆえ、連れて行ってくれ。」

 

 

「はは! 信長様のご用件とあらば、例え何時間といえど、お待ち致します。

 

それでは、秀吉をお連れしますゆえ、これにて。」

 

 

 

 

勝家は、信長に、脱帽時の敬礼(背筋を伸ばして腰を素早く後ろに引く)を送り、秀吉を連れて下階へ降りていった。

その道中。

 

 

 

「うぅ! 」

 

 

 

勝家は、階段の途中で急によろめいた。

秀吉は慌てて勝家を支える。

 

 

 

 

「!? だ、大丈夫でありやすか!? 」

 

 

 

秀吉は、血の気の引いた勝家の顔を見て、全身が粟立つのを感じた。

 

 

 

「あ、ああ。心配するな、少し目眩がしただけだ。

皆を待たせてんだから、急がんとなあ。」

 

 

 

 

勝家は、作り笑顔を見せ、秀吉を安心させる。

 

 

 

「そ、そうでありやすか。」

 

 

 

秀吉は、疑問の表情を浮かべてはいたが、勝家が歩を進めたのに合わせ、秀吉も後に続いた。

 

一階のロビーに降りた秀吉は、入隊式典が行われる体育館の入り口前に、真新しい第一種軍装に身を包んで整列していた同期生の列に加わり、会場に入場する時を待つ。

 

 

 

「おい秀吉、お前どんだけ長い大便してたんだよ。教官が大変お怒りだったんだぞ。」

 

 

 

 

秀吉の同期生達が、集合時間に遅れた秀吉をからかう。

その表情は、実に愉快そうだ。

 

 

 

 

「へ、へい。本当に申し訳ないでさあ。

ちょっと信長様と話をしていたでさぁ。」

 

 

「え、。」

 

 

 

 

信長の名前が出た瞬間、同期生から笑顔が消えた。

 

 

 

「お、お前、信長様とどんな関係なんだ?」

 

 

 

 

同期生は、恐る恐る尋ねる。

 

 

 

「え? いや、何でもないでさぁ。

ただ、トイレですれ違って声を掛けられただけでさぁ。」

 

 

 

 

秀吉が、「元帥の弟子」であることは、士官学校においても、ごく一部の教官を除いて、極秘である。

 

これは言うまでもなく、秀吉へ教育を行う教官達への配慮だ。

 

たとえ、厳しい指導を命令されていても、指導するべき訓練生が信長のお気に入りと知ってしまっては、他の訓練生と同様にとは、いかないだろう。

 

教官達の、いわゆる特別待遇を防ぐため、「元帥の弟子」達は素性を隠し、あくまで、正規の試験を合格して入隊が決まった一訓練生にすぎない事になっている。

 

 

 

 

「ねえ、君はどこの配置(軍艦で勤務する場所)がいいんだ? 僕はダントツで砲術部が望みだなぁ。」

 

 

「ほほう! 砲術部か! 戦艦の花形部署だもんなぁ。俺は耳がいいから、ソナー探知系が向いてるかもな。 秀吉! お前はどこがいいんだ? 」

 

 

「オイラか? そりゃ決まってるでさぁ! 」

 

 

 

 

秀吉は腕を組むと。

 

 

 

 

「オイラは! 皇国型戦艦の艦長になるでさぁ!!」

 

 

 

皇国型戦艦とは、天界海軍の巨大な軍艦を参考に計画されている戦艦のことで、現段階では計画中であり、建造すら始まっていない。

 

信長達が天界で見て来た帆船で、最大のもので、全長650メートル、最大幅120メートルという、もはや、島そのものと思う程に巨大な帆船があった。

 

信長達は、その規格外の帆船を見ただけで、腰を抜かしたそうだ。

天界には、人間界とは比較にならぬ程の強風が吹くため、このような帆船も成り立つが、人間界に吹く強風程度では、数メートルと動かぬだろう.。

 

 

信長は、帝国全土の科学者を集め、巨大な船体を動かせる程の推進力を持ったエンジンの開発を、巨額の報酬を支払い、取り組ませている。

 

 

 

「皇国型ねぇ、実現できんのかね? 帝国の優秀な科学者達が総出を振って開発してるみたいだが、俺は難しいと思うな。」

 

「僕もそう思うね。完成したら、それはとんでもないことになりそうだけど。」

 

 

 

ちなみに、皇国型戦艦の情報は、最重要機密の対象であり、外部に情報を漏らした者は、即、軍法会議に掛けられ、極刑となる。

 

士官学校内部であるからこその会話であることを前提として頂きたい。

 

 

 

「こら! そこ!! 一号艦(皇国型戦艦一番艦の事)の話を大っぴらにするんじゃない!! 」

 

 

「へ、へい!! 申し訳ないでさあ。」

 

 

「そろそろ入場だ。

  全体!! つけぇ!!! 」

 

 

 

教官の号令で、整列していた新入生達は背筋を伸ばし、式典会場の扉が開くのを待つ。

 

すると、会場内部から、軍艦マーチの演奏が始まり、それと同時に扉が開け放たれた。

 

扉から流れてくる華やかな演奏が、新入生達を包み込む。

 

 

 

「全体ーー!! 進めぇ!!」

 

 

 

またも教官の号令が掛かると、一列目から順々に体育館内部へ入場していく。

 

訓練生達の、その堂々たる行進は実に見事なもので、手足の動き、歩行の速度まで綺麗に揃っており、見る者に感動すら与えた。

 

 

 

「(うおーー!! これが軍艦マーチかぁ!! なんと力が湧き出てくる演奏でさぁ!! )」

 

 

 

 

式典会場内部に響き渡る、

帝国海軍行進曲「軍艦」を全身に受けながら、秀吉達新入生は、会場ステージ前に設けられたパイプ椅子へ向けて行進していく。

パイプ椅子の周囲は、祝いの花で埋め尽くされていた。

 

 

 

軍艦マーチの演奏を手掛けるのは、艦隊司令部所属の軍楽隊だ。

軍楽隊の演奏は、聞く者を虜にしてしまう程で、世界コンクールなどでは、常に優秀賞を取り続ける。

 

海軍の兵士達は、入隊式でこの演奏を全身に受けた時、自分は本当に海軍の一員になったと自覚する者が、かなり多い。

 

 

新入生全員の入場が終わり、演奏が終了した。

 

 

着席の号令が掛かり、新入生達はパイプ椅子に腰を下ろし、元帥、信長の登壇を待つ。

 

軍艦マーチの演奏で賑やかだった館内は静まり返り、信長の挨拶を待つ人々には、緊張が走っていた。

 

 

 

「(すげー演奏だったなぁ! 俺もこれで海軍になった実感が湧いてきたぜ)」

 

 

「(たしかにな! 耳だけじゃなく、身体の芯にまで響くすげー演奏だったな! )」

 

 

 

 

新入生達は、司令部所属の軍楽隊の演奏の余韻に浸り、小声で言葉を交わす。

 

そこへ。

 

 

 

「ただいまより、弾正歴2870年、大弾正忠帝国海軍、第100回、尾張海軍士官学校の入隊式典を、開催いたします。

式典に先駆けまして、海軍元帥、織田信長殿下より、御言葉を賜ります。

 

織田弾正忠信長様、登壇!! 」

 

 

 

進行役が信長を呼び、ステージ裏に待機していた信長が、華やかに彩られたステージ上に登場すると、会場より大歓声が沸き起こった。

 

 

わああああぁぁぁぁ!!!!!

 

信長様~~-!!!!

 

元帥閣下ーーーーー!!!

 

 

 

 

信長は、ステージ上に設けられた演説台に登壇すると、右手を上げて歓声をおさめる。

 

 

 

 

「ただいま紹介にあずかった、織田信長だ。

新入生の諸君、今回の入隊、実に見事だ。

 

諸君らが、どれだけの苦労をし、ここに座っているのかを、余は理解している。

 

これから諸君らは、余の直属の部下として、帝国のため、愛する者のため、その命を懸け、軍務に着いていくことになる。

 

我ら帝国軍人は、国民の盾だ、帝国という玉を守る駒だ。

 

帝国が窮地に陥った時は、真っ先に命を張って闘う戦士なのだ。

 

 

その戦士になるためには、厳しい訓練が必要だ。

 

 

これから三年間、諸君らは厳しい訓練に耐え、卒業すれば、即実戦配備となる。」

 

 

 

信長が演説を行っている間の会場には、信長の声以外響くものがなく、新入生や、その他の出席者の耳に、心に、信長の声が浸透する。

 

 

 

 

「我が帝国海軍が設立され、今年で100年目だ。

そして諸君らは、記念すべき100期生だ。

 

海軍設立当初は、100人にも満たない、小さな軍隊であったが、今や、100万を超える大所帯となった。

 

しかし、広大な帝国の領土を守るためには、まだまだ足らぬ。

 

 

途中除隊は、勘弁であるぞ? 」

 

 

 

 

会場から笑いが起こった。

なぜなら、海軍設立から今日までに、訓練中における死亡を除いては、1人も海軍を辞めた者がいないからである。

 

 

 

 

「諸君らと、共に戦える日を楽しみにしている。 以上だ。」

 

 

 

 

「起立!!」

 

 

 

号令が掛かり、新入生達が一斉に立ち上がる。

 

 

 

 

「元帥に対しーー!!  敬礼!!!! 」

 

 

 

 

 

新入生達は、壇上の信長へ、海軍式の敬礼を送った。

 

 

信長は、「うむ。」と言うと、これに返礼し、腕を下ろした。

 

 

 

 

「直れ!!! 」

 

 

 

 

信長の返礼が終わると同時に号令が掛かり、全員が腕を下ろした。

 

 

その後は、海軍のお偉方や弾正忠家の役員やらの挨拶が終了し、入隊式典は、恙無く終了した。

 

 

 

 

「新入生退場」

 

 

 

 

進行役の言葉で、再び軍楽隊の演奏が始まった。

 

新入生は、入場時と同様の行進で、会場を後にする。

 

 

式典を終えた新入訓練生達は、士官学校居住棟四階にある多目的ホールに集められ、自分の属する班の割り振りを受ける。

 

 

 

教官の点呼で、訓練生達は威勢の良い返事を返し、教官の下に駆け足で向かう。

 

「尾張海軍士官学校 100期生 第一班!!

 

前田利家!! 丹羽長秀!!

 

羽柴秀吉!! 滝川一益!!

 

松平家康!! 前え!!! 」

 

 

 

名前を呼ばれた5人は、腹から返事をし、駆け足で集合した。

 

 

 

「お前達が、記念すべき100期生の第一班だ。

 

ちなみに、この羽柴秀吉は弾大の特待生の過程を終了し、海軍特別年少兵試験を突破してきたエリートちゃんだ。

年もまだ130。

 

皆、可愛がってやってくれよ?」

 

 

 

 

教官は意味深な笑顔を5人に向けると、直ちに5人を整列させ、次の班分けを発表する。

 

 

 

班分けを終えた訓練生達は、各々の衣嚢を肩に担ぎ、自分達が寝泊まりする居住棟へ案内された。

 

訓練生達は、夕食まで、自由な時間を過ごす。

 

班分けされた訓練生達は、大抵は、自己紹介をしながら時間を過ごした。

 

 

 

 

「初めましてでさぁ!! オイラは、羽柴秀吉と申すでさぁ!! 

弾正忠大学を出たばかりの若輩者で、迷惑を掛けてしまうかもしれないですがぁ、よろしくお願いしますでさぁ!! 」

 

 

 

秀吉は、快活な挨拶を4人に送った。

 

 

 

 

「お前が秀吉か! まさか俺の班になるとは思わなかったぜ。

 

俺が、お前達の班長の前田だ! 大学は美濃大出身で、卒業後に織田軍へ入隊。

 

最終的に、帝国軍本部の参謀を勤めていて、元の階級は少佐だった。

 

 

よろしくな!!」

 

 

 

「私は丹羽長秀だ。

この前田と同期で、階級も一緒だった。

よろしく願う。」

 

 

「拙者は滝川一益と申す。帝国軍、堺基地勤務で警備をしており、いまに至り申す。

どうか、お見知り置きを。」

 

 

 

「それがしは、松平家康。帝国軍時代の階級は中尉。

海軍への強い憧れがあって、今、相当な感激を抱えている。よろしく。 」

 

 

 

秀吉達は自己紹介を終え、夕食まで談笑をして過ごした。

 

 

しばらくすると、館内放送で、夕食の案内が流れた。

 

放送が流れると、各班は自室から出て、扉の前で整列し、一斉に食堂へ移動する。

 

 

 

「海軍の食事は、かなりの豪勢ぶりだと聞いてるでさぁ! 楽しみでさぁ!! 」

 

 

「秀吉殿、拙者も同じ気持ちでこざる。

拙者の部署は、任務の特性ゆえ、食事は簡素なものでござった。」

 

 

 

そんな会話をしながら、秀吉達は四階の居住棟から一階の大食堂に到着。

 

今夜は、入隊祝いということで、新入訓練生達の食事は、最高級ランクのサーロインステーキのフルコース料理が提供された。

 

訓練生達は、その美味しさに感動し、明日からの厳しい訓練を控え、その士気を存分に上げているようだ。

 

 

食事を終えた訓練生達は、自分達の部屋に戻り、夕食の感想を述べた。

 

 

しばらくの談笑の後に、ある放送が流れた。

 

 

 

 

「明日の起床時間を伝える。

午前5時に起床、なお、起床時間になった際は、全館に起床ラッパが鳴り響く。

 

この起床ラッパが鳴り終わってから二分以内に、訓練服への着装を完了させよ。

放送は以上だ。総員、夜更かしはせず、明日からの厳しい訓練に備え、充分な休息と体調管理を取るように。」

 

 

 

ザザ、という音と共に、放送が終了した。

 

いよいよ、訓練生達に初めての訓練が実施される。

 

地獄の訓練の様子は、次回へ続きます


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